あなたの愛はもう要りません。

たろ

文字の大きさ
56 / 125

56話

しおりを挟む
 平和な日々が始まった。

 優しいお祖母様や叔父家族と過ごす時間はとても穏やかで笑いが絶えない。
 朝食をすませ、制服に着替えると門の前にフェリックスが迎えに来てくれている。

 本当は彼は学校へ通わずに卒業試験さえ受ければ良かったはずなのに「学校へ一緒に通いたい」と、忙しいのに毎日迎えに来てくれる。

「お祖母様行ってきます!」




 学校へ着くとフェリックスとは別れ、自分の教室へと向かう。そこには友達になったミーシャ達がいる。

 平民とか貴族とか、学校の中では関係なく気の合う仲間と楽しく過ごせるのは新しい国の自由な考え方からきているようだ。

 平等を掲げた国、努力すれば認めてもらえる国。
 今はオリエ様に憧れて彼女の家に度々顔を出してはみんなで話をするのが楽しい。

 昼休み、昼食を食べようとみんなで校舎の裏にある池のほとりのベンチに座りおしゃべりをしていた。

 ここは元々小さな森があって、池もそのまま残されている。

 生徒達がのんびりと過ごせるように整備されていて、ベンチや四阿なども至る所に作られていて生徒達が自由に過ごせる場所だ。

「ねぇ、あそこを見て!」

 友人が指をさして驚いた顔で見つめていた。

「え?」「なになに?」

 指を刺した方向へ目を向けると池の中だった。何かが水飛沫をあげて動いている。

「ちょっと行ってみよう」

「うん」

 4人は恐々と動いているものを確かめようと池の中を見つめた。

「あ、アレは…………猫?」

 猫が必死で体を動かしてもがいていた。

 猫は水を嫌う動物。自ら池に入ること入るのかしら?

「助けなきゃ」

 池の中はあまり綺麗だとは思えない。中に入って助けるのは躊躇われた。
 それに制服でスカート。

 このまま中に入るのは……どうしよう。

 だけど目の前で助けを求める猫を放ってもおけないし。

「誰か男の人を呼んでくる」
「わ、私もその辺に誰かいないか探してみるわ」

 二人がすぐに走っていってしまう。

 私ともう一人の友人は「どうしよう」と顔を見合わせた。

「猫ちゃん、もうすぐ助けがくるから」

 人間の言葉なんてわからないだろうなと思いつつ、励ましの言葉を言うくらいしか出来ない。

「あ、あそこに人がいる!呼んでくるわ」

 友人も少し離れたところにいる男の人を見つけ慌てて駆け出した。

 私はこんな時何も出来ずにいる。

 目の前の猫は力尽きてしまいそうだった。

 今の私にできること……

 池にそっと近づき思いきって池に入った。そこまで深くはない。

 立つことができた。
 制服が濡れて体に引っ付いて歩きにくい。仕方なく泳いでみる。

 うん、なんとか前に進みそう。

 幼い頃、フェリックスに池に落とされ無理やり泳ぎを教わったおかげで泳ぐのは得意だ。

「待ってて」

 猫のところまで泳ぎ着くと猫を抱っこした。しばらく暴れてなかなか抱っこできずにいたけど力を使い果たしたのか優しく宥めたらなんとか落ち着いてきた。

 私はそのまま猫を片手に抱えて泳ぎ始めた。

 岸について先に猫を地面に下ろした。

「猫ちゃん待ってて、私もすぐに池から上がるから」

 地面に手を置きなんとか水の中から出ようと思ったら突然人影が出てきて頭を押さえつけられた。

「ぐはっ……」

 池の汚い水を飲み込んだ。むせて息ができない。

 やめて!く、苦しい……

 声にはならない。……手をばたつかせもがいた。

 だんだん意識が遠のく。

「ビアンカ、あんたのせいでわたくしの人生はめちゃくちゃになったのよ。あんたなんか死ねばいいのよ」

 ………この声は……






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

愛なんか消えてしまえと願う私は悪くないと思う

ましろ
恋愛
「赤ちゃんができたの」 母の言葉に目眩がした。 我が家の両親は恋愛結婚。身分差から駆け落ち同然で一緒になった二人は未だにその愛は消えず、燃え上がり続けているのだからある意味凄いわ。 でもね? どうしてそんなにも子どもを作ってしまうの⁉ 私を入れて子どもは七人。お父さんの給料ではお手伝いさんなんか雇えるわけもなく、おっとりしたお嬢様気質の抜けないお母さんだけで家事育児などできるはずもなく。 そうなると働き手は長女の私だ。 ずっと小さな頃から弟妹のお世話と家事に明け暮れ、それなのにまだ産むと言うの? 「……ねえ、お母さんにとって子どもって何?」 「うふふ。それはね、愛の結晶よ」 愛。愛って何? 私はあなたの愛のために働き詰めなのですけど? 自分達の手に余るなら、そんなモノなど捨ててしまえっ! ❦R-15は保険です。 連載中のものが止まったままのくせに!とは言わないで(泣) 現在、作業中のものがなかなか終わらなくて息抜きのための不定期連載です。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

誓いを忘れた騎士へ ―私は誰かの花嫁になる

吉乃
恋愛
「帰ってきたら、結婚してくれる?」 ――あの日の誓いを胸に、私は待ち続けた。 最初の三年間は幸せだった。 けれど、騎士の務めに赴いた彼は、やがて音信不通となり―― 気づけば七年の歳月が流れていた。 二十七歳になった私は、もう結婚をしなければならない。 未来を選ぶ年齢。 だから、別の男性との婚姻を受け入れると決めたのに……。 結婚式を目前にした夜。 失われたはずの声が、突然私の心を打ち砕く。 「……リリアナ。迎えに来た」 七年の沈黙を破って現れた騎士。 赦せるのか、それとも拒むのか。 揺れる心が最後に選ぶのは―― かつての誓いか、それとも新しい愛か。 お知らせ ※すみません、PCの不調で更新が出来なくなってしまいました。 直り次第すぐに更新を再開しますので、少しだけお待ちいただければ幸いです。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

【完結】純白のウェディングドレスは二度赤く染まる

春野オカリナ
恋愛
 初夏の日差しが強くなる頃、王都の書店では、ある一冊の本がずらりと並んでいた。  それは、半年前の雪の降る寒い季節に死刑となった一人の囚人の手記を本にまとめたものだった。  囚人の名は『イエニー・フラウ』  彼女は稀代の悪女として知らぬ者のいない程、有名になっていた。  その彼女の手記とあって、本は飛ぶように売れたのだ。  しかし、その内容はとても悪女のものではなかった。  人々は彼女に同情し、彼女が鉄槌を下した夫とその愛人こそが裁きを受けるべきだったと憤りを感じていた。  その手記の内容とは…

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

ガネット・フォルンは愛されたい

アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。 子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。 元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。 それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。 私も誰かに一途に愛されたかった。 ❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。 ❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。

処理中です...