63 / 64
63話 お父様。④
しおりを挟む
セシリナはもがき暴れた。
口を塞がれたが暴れ回り騎士の手から逃れ、声を出した。
「貴方!愛していると言ったじゃない?わたくしは貴方のためにアーシャを殺したのよ?貴方はわたくしだけを愛しているから。だから……」
「ふざけるな、俺がお前を愛しているだと?」
「だって、貴方はわたくしをずっと愛していると言ったわ。だからここまで探して会いに来てくれたのよね?初めは裏切られたと思って貴方を憎んだわ。演技だと……そう思ってビアンカも憎んだわ。でも……ここまで探しに来てくれた。もう一度貴方の愛を信じようと思ったの。だって愛しているもの」
「お前を捕まえるためさ」
「信じないわ、だってわたくしと貴方はどれだけ愛し合ったと思うの?貴方は激しくわたくしを抱いてくれたわ。それなのに裏切られたと知った時、どれだけ苦しんだか……それでも……」
「ああ、アーシャの代わりにすらならないが、目を閉じて我慢してお前を抱き続けた。優しく抱くなんて絶対無理だった。……気持ちが悪い」
ミラー伯爵は吐き捨てるように言った。
「仕方がなかった。ビアンカに何をされるかわからなかったからな。伯爵でしかない俺には国一番の財力のある公爵家に逆らうことはできなかった。
お前が公爵家の娘でなければ力で圧力さえかけてこなければ再婚など絶対にしなかった」
「う、嘘よ……わたくしはずっと貴方を愛していたの。それなのにあんな女と結婚して………貴方も苦痛だったでしょう?だから殺してあげたのよ?わたくしと幸せになるためにはあの女は邪魔でしかなかったから」
「邪魔なのはお前だ。俺はずっとお前のことを憎んでいた。ただ公爵家の圧力に仕方なくお前と再婚しただけだ」
何度言わせるんだと腹立たしい顔をした。
「何度でも言う。ビアンカのためにお前に優しく接するしかなかった。アーシャの死の真相を知るためにもお前を抱きたくもないのに抱いたんだ。それに大切なビアンカの命まで奪われては困るからな。だが大切な娘を拉致して怪我までさせるとは……ぜったいに許さない」
「認めないわ、わたくしは認めない!貴方の子供がこのお腹の中にいるの?ねえ、やっと妊娠したのよ?」
セシリナの言葉はその場凌ぎなのでは?と頭をよぎった。
しかし………
ミラー伯爵は固まった。絶対にあり得ないし認めたくない。自分と血の分けた子供が一番憎い女の腹の中にいる?
「………連れて行け」
冷たくそう言い放ってセシリナの顔を見ようとしなかった。
地下の倉庫の扉を開けるとそこにいたのはフラフラとなりながら壁に寄りかかり震えて立っているビアンカだった。
薄暗い倉庫、古い毛布を体に巻き付けているので怪我の状態はわからない。
ミラー伯爵は「ビアンカ!!」と思わず叫んだ。
虚な目をしてミラー伯爵に目を向けたビアンカ。
「………うさま……」
「こ、こないで!貴方なんか……いらない!貴方……なんか…大っ嫌い!」
弱々しい声だった。なのにミラー伯爵の心には大きく響いた。
娘からの完全な拒絶。
弱っているはずなのにビアンカはミラー伯爵を見て嫌悪を隠さなかった。
口を塞がれたが暴れ回り騎士の手から逃れ、声を出した。
「貴方!愛していると言ったじゃない?わたくしは貴方のためにアーシャを殺したのよ?貴方はわたくしだけを愛しているから。だから……」
「ふざけるな、俺がお前を愛しているだと?」
「だって、貴方はわたくしをずっと愛していると言ったわ。だからここまで探して会いに来てくれたのよね?初めは裏切られたと思って貴方を憎んだわ。演技だと……そう思ってビアンカも憎んだわ。でも……ここまで探しに来てくれた。もう一度貴方の愛を信じようと思ったの。だって愛しているもの」
「お前を捕まえるためさ」
「信じないわ、だってわたくしと貴方はどれだけ愛し合ったと思うの?貴方は激しくわたくしを抱いてくれたわ。それなのに裏切られたと知った時、どれだけ苦しんだか……それでも……」
「ああ、アーシャの代わりにすらならないが、目を閉じて我慢してお前を抱き続けた。優しく抱くなんて絶対無理だった。……気持ちが悪い」
ミラー伯爵は吐き捨てるように言った。
「仕方がなかった。ビアンカに何をされるかわからなかったからな。伯爵でしかない俺には国一番の財力のある公爵家に逆らうことはできなかった。
お前が公爵家の娘でなければ力で圧力さえかけてこなければ再婚など絶対にしなかった」
「う、嘘よ……わたくしはずっと貴方を愛していたの。それなのにあんな女と結婚して………貴方も苦痛だったでしょう?だから殺してあげたのよ?わたくしと幸せになるためにはあの女は邪魔でしかなかったから」
「邪魔なのはお前だ。俺はずっとお前のことを憎んでいた。ただ公爵家の圧力に仕方なくお前と再婚しただけだ」
何度言わせるんだと腹立たしい顔をした。
「何度でも言う。ビアンカのためにお前に優しく接するしかなかった。アーシャの死の真相を知るためにもお前を抱きたくもないのに抱いたんだ。それに大切なビアンカの命まで奪われては困るからな。だが大切な娘を拉致して怪我までさせるとは……ぜったいに許さない」
「認めないわ、わたくしは認めない!貴方の子供がこのお腹の中にいるの?ねえ、やっと妊娠したのよ?」
セシリナの言葉はその場凌ぎなのでは?と頭をよぎった。
しかし………
ミラー伯爵は固まった。絶対にあり得ないし認めたくない。自分と血の分けた子供が一番憎い女の腹の中にいる?
「………連れて行け」
冷たくそう言い放ってセシリナの顔を見ようとしなかった。
地下の倉庫の扉を開けるとそこにいたのはフラフラとなりながら壁に寄りかかり震えて立っているビアンカだった。
薄暗い倉庫、古い毛布を体に巻き付けているので怪我の状態はわからない。
ミラー伯爵は「ビアンカ!!」と思わず叫んだ。
虚な目をしてミラー伯爵に目を向けたビアンカ。
「………うさま……」
「こ、こないで!貴方なんか……いらない!貴方……なんか…大っ嫌い!」
弱々しい声だった。なのにミラー伯爵の心には大きく響いた。
娘からの完全な拒絶。
弱っているはずなのにビアンカはミラー伯爵を見て嫌悪を隠さなかった。
1,834
あなたにおすすめの小説
私があなたを好きだったころ
豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」
※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?
雨雲レーダー
恋愛
侯爵令嬢クラリスは、王太子ユリウスから一方的に婚約破棄を告げられる。
理由は、平民の美少女リナリアに心を奪われたから。
クラリスはただ微笑み、こう返す。
「そんなに好きなら、そっちへ行けば?」
そうして物語は終わる……はずだった。
けれど、ここからすべてが狂い始める。
*完結まで予約投稿済みです。
*1日3回更新(7時・12時・18時)
冷たい王妃の生活
柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。
三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。
王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。
孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。
「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。
自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。
やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。
嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。
元婚約者が愛おしい
碧井 汐桜香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。
留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。
フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。
リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。
フラン王子目線の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる