64 / 125
64話
しおりを挟む
「ビアンカ!!」
お父様の声に虚な目を向けた。
「………うさま……」
「こ、こないで!貴方なんか……いらない!貴方……なんか…大っ嫌い!」
弱々しい声しか出ない。
顔を見た瞬間、嬉しさよりも苛立ちを覚えた。
助けに来てくれたのはわかる。
なのに素直に喜べない。
この人から受けてきた冷たい仕打ちは忘れない。
この人のせいで母は亡くなった。
この人のせいでずっと苦しく辛い思いをしてきた。
この人のせいで今体は鉛のように重たく激しい痛みの中耐えていた。
全てはこの人のせい。
「………すまない」
お父様が苦しげな表情を見せた。
全く心は痛まない。
わたしのためにわたしに冷たくしたかもしれない。
わたしのために無理やり嫁がせたのかもしれない。
わたしのために継母と仲良くしていたのかもしれない。
だけどこの人がわたしに与えた苦しみはこの人にはわからない。
この人の気持ちがわたしにはわからないのと同じ。
「出て行ってください……あなたの助けなどいらない」
「わたしは君に触れない。他の者が助けるから」
お父様はそう言うと地下の倉庫から出て行った。
騎士の一人がお父様の後ろ姿を見送ってから、わたしのそばに来て「少し辛抱してください」とわたしを横抱きにして地下倉庫から救出してくれた。
背中の傷が痛くて、苦痛で顰めていると「背中に傷があるのですね?」と騎士の背中におんぶされてしまった。
かなり恥ずかしい格好ではあるけど、おかげで痛みが減ってホッとした。
屋敷には女性のお医者様が駆けつけてくれていた。
そしてオリエ様の姿もそこにあった。
「ビアンカ様!酷い怪我を!すぐに治療してあげてください」
「ええ、すぐに処置いたします」
男性はすぐに部屋から追い出されお医者様とオリエ様が残された。
制服を脱ぎ、下着姿になったわたしの体を見てオリエ様は何も言わずに手を握りしめてくれた。
オリエ様の手は少し震えていた。
かなり鞭で打たれ続けたので背中や太ももの傷はかなり酷い。
さらに顔にも鞭の痕があった。
頬を切れて真っ赤に腫れ上がっていた。
「オリエさま……」
不思議にオリエさまが傍にいてくれるだけで心が落ち着いた。
そんな時部屋の外が騒がしくなった。
「ビアンカ!どけ!ビアンカ!」
「ダメです!治療中です」
「中に入れろ!」
「中には女性のお医者様と女性の騎士のオリエ様しかおりません。ビアンカ様は治療中です!もうしばらくお待ちください」
聞こえてきたのはフェリックス様の興奮した声だった。
探してくださっていたのだろう。とても心配してくれていたことが窺える。
オリエ様がわたしの手を離すと「少し話してきますね」と部屋を出て行った。
フェリックス様に
傷の手当てが終わり新しい服に着替えた。
この屋敷は継母のもの。ここにいるわけにも行かずわたしは侯爵家へと連れて帰ってもらうことにした。
ただドレスは窮屈で傷に触るため、寝巻き姿でこの屋敷を出なければならない。
貴族令嬢としては他人にそんな姿を見せるわけには行かず、オリエ様が人目にあまり触れないようにとわたしにガウンをかけて馬車に乗せてくれた。
フェリックス様はそんなわたしの姿を仕方なく遠巻きで見ていた。
彼と目が合うと微笑んで見せた。
「大丈夫だよ」と彼に伝えたかったから。
お父様の姿もあったがわたしは気づかないふりをしてそちらへは視線を向けなかった。
自分でもとても性格が悪いなと思いながらもどうしてもお父様に優しく出来ずにいた。
お父様の声に虚な目を向けた。
「………うさま……」
「こ、こないで!貴方なんか……いらない!貴方……なんか…大っ嫌い!」
弱々しい声しか出ない。
顔を見た瞬間、嬉しさよりも苛立ちを覚えた。
助けに来てくれたのはわかる。
なのに素直に喜べない。
この人から受けてきた冷たい仕打ちは忘れない。
この人のせいで母は亡くなった。
この人のせいでずっと苦しく辛い思いをしてきた。
この人のせいで今体は鉛のように重たく激しい痛みの中耐えていた。
全てはこの人のせい。
「………すまない」
お父様が苦しげな表情を見せた。
全く心は痛まない。
わたしのためにわたしに冷たくしたかもしれない。
わたしのために無理やり嫁がせたのかもしれない。
わたしのために継母と仲良くしていたのかもしれない。
だけどこの人がわたしに与えた苦しみはこの人にはわからない。
この人の気持ちがわたしにはわからないのと同じ。
「出て行ってください……あなたの助けなどいらない」
「わたしは君に触れない。他の者が助けるから」
お父様はそう言うと地下の倉庫から出て行った。
騎士の一人がお父様の後ろ姿を見送ってから、わたしのそばに来て「少し辛抱してください」とわたしを横抱きにして地下倉庫から救出してくれた。
背中の傷が痛くて、苦痛で顰めていると「背中に傷があるのですね?」と騎士の背中におんぶされてしまった。
かなり恥ずかしい格好ではあるけど、おかげで痛みが減ってホッとした。
屋敷には女性のお医者様が駆けつけてくれていた。
そしてオリエ様の姿もそこにあった。
「ビアンカ様!酷い怪我を!すぐに治療してあげてください」
「ええ、すぐに処置いたします」
男性はすぐに部屋から追い出されお医者様とオリエ様が残された。
制服を脱ぎ、下着姿になったわたしの体を見てオリエ様は何も言わずに手を握りしめてくれた。
オリエ様の手は少し震えていた。
かなり鞭で打たれ続けたので背中や太ももの傷はかなり酷い。
さらに顔にも鞭の痕があった。
頬を切れて真っ赤に腫れ上がっていた。
「オリエさま……」
不思議にオリエさまが傍にいてくれるだけで心が落ち着いた。
そんな時部屋の外が騒がしくなった。
「ビアンカ!どけ!ビアンカ!」
「ダメです!治療中です」
「中に入れろ!」
「中には女性のお医者様と女性の騎士のオリエ様しかおりません。ビアンカ様は治療中です!もうしばらくお待ちください」
聞こえてきたのはフェリックス様の興奮した声だった。
探してくださっていたのだろう。とても心配してくれていたことが窺える。
オリエ様がわたしの手を離すと「少し話してきますね」と部屋を出て行った。
フェリックス様に
傷の手当てが終わり新しい服に着替えた。
この屋敷は継母のもの。ここにいるわけにも行かずわたしは侯爵家へと連れて帰ってもらうことにした。
ただドレスは窮屈で傷に触るため、寝巻き姿でこの屋敷を出なければならない。
貴族令嬢としては他人にそんな姿を見せるわけには行かず、オリエ様が人目にあまり触れないようにとわたしにガウンをかけて馬車に乗せてくれた。
フェリックス様はそんなわたしの姿を仕方なく遠巻きで見ていた。
彼と目が合うと微笑んで見せた。
「大丈夫だよ」と彼に伝えたかったから。
お父様の姿もあったがわたしは気づかないふりをしてそちらへは視線を向けなかった。
自分でもとても性格が悪いなと思いながらもどうしてもお父様に優しく出来ずにいた。
2,233
あなたにおすすめの小説
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
愛なんか消えてしまえと願う私は悪くないと思う
ましろ
恋愛
「赤ちゃんができたの」
母の言葉に目眩がした。
我が家の両親は恋愛結婚。身分差から駆け落ち同然で一緒になった二人は未だにその愛は消えず、燃え上がり続けているのだからある意味凄いわ。
でもね? どうしてそんなにも子どもを作ってしまうの⁉
私を入れて子どもは七人。お父さんの給料ではお手伝いさんなんか雇えるわけもなく、おっとりしたお嬢様気質の抜けないお母さんだけで家事育児などできるはずもなく。
そうなると働き手は長女の私だ。
ずっと小さな頃から弟妹のお世話と家事に明け暮れ、それなのにまだ産むと言うの?
「……ねえ、お母さんにとって子どもって何?」
「うふふ。それはね、愛の結晶よ」
愛。愛って何? 私はあなたの愛のために働き詰めなのですけど?
自分達の手に余るなら、そんなモノなど捨ててしまえっ!
❦R-15は保険です。
連載中のものが止まったままのくせに!とは言わないで(泣)
現在、作業中のものがなかなか終わらなくて息抜きのための不定期連載です。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
誓いを忘れた騎士へ ―私は誰かの花嫁になる
吉乃
恋愛
「帰ってきたら、結婚してくれる?」
――あの日の誓いを胸に、私は待ち続けた。
最初の三年間は幸せだった。
けれど、騎士の務めに赴いた彼は、やがて音信不通となり――
気づけば七年の歳月が流れていた。
二十七歳になった私は、もう結婚をしなければならない。
未来を選ぶ年齢。
だから、別の男性との婚姻を受け入れると決めたのに……。
結婚式を目前にした夜。
失われたはずの声が、突然私の心を打ち砕く。
「……リリアナ。迎えに来た」
七年の沈黙を破って現れた騎士。
赦せるのか、それとも拒むのか。
揺れる心が最後に選ぶのは――
かつての誓いか、それとも新しい愛か。
お知らせ
※すみません、PCの不調で更新が出来なくなってしまいました。
直り次第すぐに更新を再開しますので、少しだけお待ちいただければ幸いです。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
【完結】純白のウェディングドレスは二度赤く染まる
春野オカリナ
恋愛
初夏の日差しが強くなる頃、王都の書店では、ある一冊の本がずらりと並んでいた。
それは、半年前の雪の降る寒い季節に死刑となった一人の囚人の手記を本にまとめたものだった。
囚人の名は『イエニー・フラウ』
彼女は稀代の悪女として知らぬ者のいない程、有名になっていた。
その彼女の手記とあって、本は飛ぶように売れたのだ。
しかし、その内容はとても悪女のものではなかった。
人々は彼女に同情し、彼女が鉄槌を下した夫とその愛人こそが裁きを受けるべきだったと憤りを感じていた。
その手記の内容とは…
始まりはよくある婚約破棄のように
喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」
学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。
ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。
第一章「婚約者編」
第二章「お見合い編(過去)」
第三章「結婚編」
第四章「出産・育児編」
第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始
ガネット・フォルンは愛されたい
アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。
子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。
元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。
それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。
私も誰かに一途に愛されたかった。
❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。
❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる