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75話
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舞踏会の日。
アッシュの瞳に合わせたグリーンのドレスを身に纏った。
少しだけ大人っぽく髪をアップにし、化粧を施した。
制服を着て髪を一つに結び学校へ通う私と、鏡に映る私の姿はいつもと違う。
もし今日フェリックス様と舞踏会に参加することができたら……彼の髪の色に合わせた金の色と瞳の青を使い、ドレスを仕立てていただろう。
今のこの姿とは全く違っていた……
「とてもお綺麗です」
「ほんと、お姫様みたいですわ」
髪を整えてくれた専門のメイド達が私の後ろに立ち褒め讃えてくれる。
少し困った顔をして「ありがとう」と答えた。
私の顔を見て思わずメイド達が不味いことを言ってしまったことに気がついたのか「も、申し訳ございません」と謝られた。
「気にしないで。綺麗に仕上げてくれてありがとう」
「初めての舞踏会だから少し緊張しているの」
「ビアンカが?」
突然後ろから声をかけてきたアッシュ。
「あら?私だって緊張くらいするわ」
「俺がしっかりエスコートするから安心して」
「ええ、アッシュだから心配はしていないわ。でも、もし……あなたの大切な足先を踏みつけたらごめんなさいね」
ダンスは割と得意。だけど……アッシュと踊る練習はしていない。
お祖母様から突然の舞踏会参加を言い渡されたので、彼とダンスの練習をする暇はなかった。
やはり初めての舞踏会。
城内でオリソン国の重鎮や貴婦人達がたくさん集まる中、問題のあった私が社交界デビューをする。
注目が集まらないわけがない。
継母から殺されそうになった。
私を追いかけて王太子をやめたフェリックス様。そのフェリックス様は私を捨てガルカッタ王国の王女殿下のミリル様とお付き合いを始めた。
もうすぐ結婚するらしい。
周囲からコソコソと噂話をされるだけではなく冷たい視線を向けられるかもしれない。
侯爵家や本家であるフェリックス様のいる公爵家は守ってくれるだろうけど……フェリックス様のことがあるから守られれば守られるほど、逆に噂を提供しているようなものかもしれない。
3歳年上のアッシュは「ビアンカ、今日はぜったい守り抜くから。俺のそばから離れないで」と私の頬にそっと触れた。
「うん、アッシュのそばにいるね」
「任せろ」
ニコリと自信満々に微笑むアッシュのおかげで心が少し落ち着いた。
3歳年上なのに『様』をつけることも『兄様』をつけることもなく、『アッシュ』と呼ぶのは、母が生きていた幼い頃ミラー伯爵の屋敷にアッシュが住んでいたからだった。
まだオリソン国が内戦後で落ち着かない中、アッシュは体が弱く安心して暮らせないと我が家で2年ほど療養のため一緒に暮らしていた。
大好きすぎて療養中のアッシュのそばから離されると大泣きしていた私はアッシュの後ろを付き纏い、「アッシュ、アッシュ」と名前を呼んでいたらしい。
アッシュが帰ってしまうと知った時私はアッシュの帰る馬車にこっそり乗り込んでついて行こうとしたくらいアッシュが大好きだった。
優しくていつもそばにいてくれた大切な兄のようなアッシュ。
アッシュがいてくれるから今日の舞踏会も気後れせずに出席できる。
フェリックス様とミリル様も参加するであろう舞踏会に。
絶対惨めな気持ちにならない。
絶対顔を背けない。
絶対俯かない。
そして絶対………悲しい顔を見せない。
アッシュの瞳に合わせたグリーンのドレスを身に纏った。
少しだけ大人っぽく髪をアップにし、化粧を施した。
制服を着て髪を一つに結び学校へ通う私と、鏡に映る私の姿はいつもと違う。
もし今日フェリックス様と舞踏会に参加することができたら……彼の髪の色に合わせた金の色と瞳の青を使い、ドレスを仕立てていただろう。
今のこの姿とは全く違っていた……
「とてもお綺麗です」
「ほんと、お姫様みたいですわ」
髪を整えてくれた専門のメイド達が私の後ろに立ち褒め讃えてくれる。
少し困った顔をして「ありがとう」と答えた。
私の顔を見て思わずメイド達が不味いことを言ってしまったことに気がついたのか「も、申し訳ございません」と謝られた。
「気にしないで。綺麗に仕上げてくれてありがとう」
「初めての舞踏会だから少し緊張しているの」
「ビアンカが?」
突然後ろから声をかけてきたアッシュ。
「あら?私だって緊張くらいするわ」
「俺がしっかりエスコートするから安心して」
「ええ、アッシュだから心配はしていないわ。でも、もし……あなたの大切な足先を踏みつけたらごめんなさいね」
ダンスは割と得意。だけど……アッシュと踊る練習はしていない。
お祖母様から突然の舞踏会参加を言い渡されたので、彼とダンスの練習をする暇はなかった。
やはり初めての舞踏会。
城内でオリソン国の重鎮や貴婦人達がたくさん集まる中、問題のあった私が社交界デビューをする。
注目が集まらないわけがない。
継母から殺されそうになった。
私を追いかけて王太子をやめたフェリックス様。そのフェリックス様は私を捨てガルカッタ王国の王女殿下のミリル様とお付き合いを始めた。
もうすぐ結婚するらしい。
周囲からコソコソと噂話をされるだけではなく冷たい視線を向けられるかもしれない。
侯爵家や本家であるフェリックス様のいる公爵家は守ってくれるだろうけど……フェリックス様のことがあるから守られれば守られるほど、逆に噂を提供しているようなものかもしれない。
3歳年上のアッシュは「ビアンカ、今日はぜったい守り抜くから。俺のそばから離れないで」と私の頬にそっと触れた。
「うん、アッシュのそばにいるね」
「任せろ」
ニコリと自信満々に微笑むアッシュのおかげで心が少し落ち着いた。
3歳年上なのに『様』をつけることも『兄様』をつけることもなく、『アッシュ』と呼ぶのは、母が生きていた幼い頃ミラー伯爵の屋敷にアッシュが住んでいたからだった。
まだオリソン国が内戦後で落ち着かない中、アッシュは体が弱く安心して暮らせないと我が家で2年ほど療養のため一緒に暮らしていた。
大好きすぎて療養中のアッシュのそばから離されると大泣きしていた私はアッシュの後ろを付き纏い、「アッシュ、アッシュ」と名前を呼んでいたらしい。
アッシュが帰ってしまうと知った時私はアッシュの帰る馬車にこっそり乗り込んでついて行こうとしたくらいアッシュが大好きだった。
優しくていつもそばにいてくれた大切な兄のようなアッシュ。
アッシュがいてくれるから今日の舞踏会も気後れせずに出席できる。
フェリックス様とミリル様も参加するであろう舞踏会に。
絶対惨めな気持ちにならない。
絶対顔を背けない。
絶対俯かない。
そして絶対………悲しい顔を見せない。
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