あなたの愛はもう要りません。

たろ

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92話

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「花の居場所がある程度推測出来そうだ」

 魔法使いが私の記憶を読み取ってカイさんに告げた。

「じゃあ早速行こう」

 山の中には、たくさんの人を集めて行くことはしないらしい。

「カイさん、大丈夫?」

 思わず心配になって慌てて声をかけた。

「心配するな、サクがいるから二人で十分だ」

「ふん!何が俺がいるから十分なんだ!あんた一人でも全然平気なくせに!」

 ふふっ。
 うん、カイさんは本当にすごい人だと思う。だからこそ、私が馬車で襲われたことをとても後悔していて、もうこれ以上私が嫌な思いをしないようにと率先して動いてくれている。

 私の記憶はほとんど取り戻した。

 取り戻してまず一番!ミリル殿下ってなんて性格が悪いの!

 子供の頃からあんな性格だったのね!

 子供の頃の記憶ってぼんやりとしか覚えていないものだ。だけど今回、鮮明に思い出してしまった。

 納戸に閉じ込められた時の意地悪な言葉や意地悪な顔。私を見下す目つき。
 山に置いてきぼりにされた時の怖かった記憶。

 山の中を泣きながら歩き回り、偶然、綺麗な花を見つけた時。

『綺麗な花』

 泣くのも忘れて一人花を楽しんだ。
 たくさん咲いている深紅色の花に目が奪われた。

 だけど、薄着で歩いていた私は肌寒くなり花を一輪だけ持って、寂しくて怖い気持ちを誤魔化すために、大きな声で歌を歌いながら歩いた。

 そして、私を探し回っていた人たちに助けられてなんとか屋敷に戻ることができた。

 寒さと空腹と心細さで熱を出して寝込んだ。

 目覚めた時には、私はその時の記憶を失くしていた。

 寝込んでいる間に記憶を消されたらしい。

 その後、国に帰って、お母様が亡くなったショックと、継母との辛い生活の中で私の記憶は曖昧になっていった。

 そして、さっきまでこの部屋にいた魔法使いの『サク』さんに私は会ったことを思い出した。

 サクさんは突然現れ、山の中で泣いている私に『真っ直ぐこの道を下れ!』と教えてくれた。

 あの頃のサクさんは私よりも年上で10歳くらいのお兄ちゃんだった。

 泣いている私に怒っているような、そして困ったような顔をしていた。

 どうして山の中にいたのかしら?

 カイさん達が屋敷に帰ってきたら、私は領地へ向かうつもりだ。



 ミリル殿下がどうなったのか。
 まだ何も教えてもらえていないけど、このまま何事もなくフェリックス様と結婚することはないと思う。

 彼女の問題行動は、国際問題にまで発展している。

 「ごめんなさい」で許せるのは、子供の時だけだ。

 彼女は一国の王女。

 自分のわがままや勝手な思いだけで、好き勝手していいものではない。

 国民の命をも巻き込む大変な問題になる可能性もある。



 ひとりベッドで横になりながら、窓の外を見上げた。

 今日も青い空が続いている。

 あの山の中で迷子になりながら歩き続けた時も、空はとても青かった。



「ビアンカ」

 私はアッシュが部屋に入ってきたことに気が付かなかった。

「あ、ごめんなさい」

 アッシュは「全て思い出したのか?」と気まずそうに聞いてきた。

「うん……やっと思い出したよ」

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