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96話
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カイさんは何故かサクさんのことは何も覚えていない。
その違和感を感じながらも、サクさんのことを尋ねても「お前、誰のことを聞いているんだ?」と呆れられてしまった。
なのに、ミリル殿下のことになると詳しく話してくれた。
ただ、私がフェリックス様のことを訊こうとしないのを分かっているから、あえて触れてこない。
「もう終わったことだわ」
窓から使用人達が忙しそうに働く姿が見えた。侯爵家自慢の庭には鮮やかな花々が綺麗に咲いていた。
その景色を見ながら独り言を呟いた。
「しっかりしなさい!ビアンカ!」
自分に叱咤し、領地へ行くのだからと気持ちを切り替えた。
ミリル殿下の国は内乱により王が入れ替わるだろうとのこと。その時王族の運命は、全員処刑か、運が良ければ幽閉になるのが普通。
ミリル殿下の行先に、明るい未来はない。
だからこそ王たる者達はその地位に相応しい責任や振る舞いを求められる。
単なる支配者ではなく、その立場ゆえに持つべき高潔さ、覚悟、義務感など当然持って然るべきなのだ。
傲慢でわがままなミリル殿下は今の国の情勢すら把握していないらしい。
多分「どうしてわたくしが帰らされるのよ!」と文句でも言っていることだろう。
フェリックス様との婚約の話も流れてしまい、このまま大人しく国へ帰るかしら?
明日帰ると聞いたけど。でも私が考えても仕方がないこと。
一旦中断され屋敷に足止めされていたけど、私も領地へ行く準備をもう一度するつもり。
明日はミリル殿下を避けて屋敷から出て買い物へ行こうと執事のジョンに話したら、多めの護衛をつけるならとお許しをもらった。
私が屋敷にいることで、ミリル殿下が最後に何かと難癖をつけて来るかもしれない。
顔を合わせたくもないし、街に出て侯爵家行きつけのレストランで食事をすることにした。
街でぶらぶらするのは危険だし、個室でしっかり安全な場所で過ごすことにした。
アッシュや侯爵家の人たちは忙しいようで、私とお祖母様の二人で出掛けることになった。
「領地に行ったら寂しくなるわね」
「でも温かい気候になったらお祖母様も来られるのでしょう?」
「もちろん、ビアンカと向こうで過ごすつもりよ」
お祖母様は領地のことを詳しく話してくれた。
これから私がどう暮らしていくべきなのか、領地の問題点などもしっかり把握されていてアドバイスをもらう。
「わたくしがもう少し若ければビアンカと共に領地を走り回り奮い立つのだけど、分かっていても体がついていかないの」
少し寂しそうにお祖母様が話してくれた。
アッシュや伯父様ももちろん領地改革をしなければならないことはわかっているけど、侯爵家の領地は広大で手が回らない。それぞれそこに住む領主に任せてはいるけど、昔ながらの手法で行っているため良くも悪くも変わることはない。
今は夢と希望を持ち、若さを武器に頑張ろうと思っている。
一緒に領地へ行ってくれるのは、執事のジョンの息子のセオルドと娘のシズナの二人。
私よりも5歳年上のセオルドと、「一度は嫁いで出戻りなんです」と笑って話してくれた10歳年上のシズナ。
シズナの旦那様は騎士だったけど、事故で亡くなって幼い息子を連れて実家に戻って来た。
そして侯爵家でメイドとして働いている。
自然の多い領地で再婚はせずに息子と静かに暮らしたいと、私について来てくれることになった。
セオルドはいずれ侯爵家全体を任される執事になるべく修業として私について来ることになった。
賑やかな暮らしになりそうな予感。
お忍び用の馬車のため座り心地良くないのだけど、お祖母様は文句も言わず楽しそうに私とおしゃべりをしている。
「あら?もう着いたのかしら?」
思ったよりも馬車が早くお店に着いたようだ。
その違和感を感じながらも、サクさんのことを尋ねても「お前、誰のことを聞いているんだ?」と呆れられてしまった。
なのに、ミリル殿下のことになると詳しく話してくれた。
ただ、私がフェリックス様のことを訊こうとしないのを分かっているから、あえて触れてこない。
「もう終わったことだわ」
窓から使用人達が忙しそうに働く姿が見えた。侯爵家自慢の庭には鮮やかな花々が綺麗に咲いていた。
その景色を見ながら独り言を呟いた。
「しっかりしなさい!ビアンカ!」
自分に叱咤し、領地へ行くのだからと気持ちを切り替えた。
ミリル殿下の国は内乱により王が入れ替わるだろうとのこと。その時王族の運命は、全員処刑か、運が良ければ幽閉になるのが普通。
ミリル殿下の行先に、明るい未来はない。
だからこそ王たる者達はその地位に相応しい責任や振る舞いを求められる。
単なる支配者ではなく、その立場ゆえに持つべき高潔さ、覚悟、義務感など当然持って然るべきなのだ。
傲慢でわがままなミリル殿下は今の国の情勢すら把握していないらしい。
多分「どうしてわたくしが帰らされるのよ!」と文句でも言っていることだろう。
フェリックス様との婚約の話も流れてしまい、このまま大人しく国へ帰るかしら?
明日帰ると聞いたけど。でも私が考えても仕方がないこと。
一旦中断され屋敷に足止めされていたけど、私も領地へ行く準備をもう一度するつもり。
明日はミリル殿下を避けて屋敷から出て買い物へ行こうと執事のジョンに話したら、多めの護衛をつけるならとお許しをもらった。
私が屋敷にいることで、ミリル殿下が最後に何かと難癖をつけて来るかもしれない。
顔を合わせたくもないし、街に出て侯爵家行きつけのレストランで食事をすることにした。
街でぶらぶらするのは危険だし、個室でしっかり安全な場所で過ごすことにした。
アッシュや侯爵家の人たちは忙しいようで、私とお祖母様の二人で出掛けることになった。
「領地に行ったら寂しくなるわね」
「でも温かい気候になったらお祖母様も来られるのでしょう?」
「もちろん、ビアンカと向こうで過ごすつもりよ」
お祖母様は領地のことを詳しく話してくれた。
これから私がどう暮らしていくべきなのか、領地の問題点などもしっかり把握されていてアドバイスをもらう。
「わたくしがもう少し若ければビアンカと共に領地を走り回り奮い立つのだけど、分かっていても体がついていかないの」
少し寂しそうにお祖母様が話してくれた。
アッシュや伯父様ももちろん領地改革をしなければならないことはわかっているけど、侯爵家の領地は広大で手が回らない。それぞれそこに住む領主に任せてはいるけど、昔ながらの手法で行っているため良くも悪くも変わることはない。
今は夢と希望を持ち、若さを武器に頑張ろうと思っている。
一緒に領地へ行ってくれるのは、執事のジョンの息子のセオルドと娘のシズナの二人。
私よりも5歳年上のセオルドと、「一度は嫁いで出戻りなんです」と笑って話してくれた10歳年上のシズナ。
シズナの旦那様は騎士だったけど、事故で亡くなって幼い息子を連れて実家に戻って来た。
そして侯爵家でメイドとして働いている。
自然の多い領地で再婚はせずに息子と静かに暮らしたいと、私について来てくれることになった。
セオルドはいずれ侯爵家全体を任される執事になるべく修業として私について来ることになった。
賑やかな暮らしになりそうな予感。
お忍び用の馬車のため座り心地良くないのだけど、お祖母様は文句も言わず楽しそうに私とおしゃべりをしている。
「あら?もう着いたのかしら?」
思ったよりも馬車が早くお店に着いたようだ。
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