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106話
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その日の夜は、使用人達も張り切って二人に領地の新鮮な野菜やお肉を使いご馳走を振舞った。
久しぶりに屋敷も賑やかで笑い合えることが嬉しかった。
王都の屋敷からついて来てくれたシズナとセオルドも、二人のお世話をするのが楽しそうだった。
もちろんその後二人は、王都からついてきた使用人たちと久しぶりの再会で使用人達も集まり食事会を楽しんだらしい。
次の日は休みを取り、それぞれ仲の良いみんなで町へと繰り出すらしい。
侯爵家の使用人たちはみんな仲も良く、雇い主たちとの関係も良い。
伯父様や伯母様、お祖母様達が使用人たちに無理を言わず主従関係をきちんとできているからだろうと思う。
実家の伯爵家の空気があまり良くなかったのもやはり継母と父が使用人を大切に扱っていなかったからかもしれない。
次の日、お祖母様はやはり疲れが残り屋敷でゆっくりと過ごすことになった。
アッシュは町の変わった様子を見たいと、この地に住み管理を任せている貴族たちと共に視察に出かけた。
私はいつものように屋敷の敷地に建てた小さなハウスで、子供たちがいつでも通える教室を開いた。
これはオリエ様がシャトナー国で始めたことで、以前から興味を持っていた。
読み書きや簡単な計算、その子供に合わせた刺繍や編み物、騎士になるための剣術や大工の仕事などを教えるための場所を作った。
初めはみんなよそよそしく声をかけても来てもらえなかった。
仕方なく使用人の子供達の遊び場として開放し、そこで数人を雇い面倒を見ることにした。
もちろん手の空いた時は私も子供達と遊びながら字を教えたり、少し大きな子供達には刺繍を教えたりしていた。
その評判を領民が耳にして少しずつ子供が通うようになった。
流石にこの場所だけでは全ての子供を受け入れることはできなくて、この領地を任されているミラー伯爵と話し合い、どこからその運営費を出すか、かなり話し合った。
貴族はもちろん学校がある。平民の子供達も裕福な家庭ならばその学校へ通える。
でも貧しい家庭は働き手として必要だし、高い学費は払えず学校に通わせてもらえない。
この問題はどこの領地でもあり得ることで、田舎に行けば田舎に行くほど、高額な資金を投じる学校運営をなかなか貧しい子供達のためにすることができないでいた。
侯爵家からももちろん援助はしてもらう。でも、この領地で資金調達ができるのが一番いい。オリエ様達は子供達が刺繍や編み物が上手になったら、工房を開き売って子供達の仕事場を作ったと話していた。
すぐに利益が出るわけではないけど長期的に考えればいずれは採算が合うようになる。
何度もミラー伯爵や有志者を集め話し合った。まだ若い私は侯爵家の者だと言っても意見を聞いてもらえず、意見が通らないこともある。
屋敷に通う子供達の姿を見てもらい、どれくらいの成果があるのか時間をかけて知ってもらうしかなかった。
そんな中、領地の道は整備されていき、少しずつ人が増え、賑やかになっていった。
もちろん侯爵家が動いたことはミラー伯爵達も知っているけど、私の資金を投じ、陛下に援助を申し入れたのも私だとは知らなかった。あえて話すつもりもなかった。
だけど学校のことでなかなか話が進まないことをセオルドがアッシュに訴えた。
アッシュは陰ながら動いてくれて少しずつ無償でいつでも通える教室を何ヶ所かに開くことができた。
数年は手出しになるけどいずれは必ず利益が出る。
アッシュのおかげで今は毎日子供達と笑い合い過ごすことができる。
昨日もアッシュと散歩の途中、道で会った人たちに「ちょっとお待ちください」と声をかけられ採れたての芋や野菜をたくさん貰った。
アッシュは「領地に来てこんなふうに親しげに声をかけられたのは初めてだ」と驚いていた。
屋敷に帰った時には両手にたくさんのお土産があったのに、使用人たちは当たり前のように受け取った。
「なんでこんなに色々持って帰ったのにみんな驚かないんだ?」
「え?いつものことだもの。みんな顔を見るとあれを持って行けと何かしらくれるのよ」
「ビアンカ……お前、幸せ者だな」
「うん、ここに来てよかったわ」
アッシュは私の楽しそうな姿に安心していた。
「明日は視察に行くつもりだ」
「私は子供達の教室の当番の日だからついて行けないわ」
「ああ、お前が暇になったら出かけよう」
「新しいお店も増えたんだ。ぜひ一緒に食事に行きたいわ」
「わかった。時間を空けておくよ」
久しぶりに屋敷も賑やかで笑い合えることが嬉しかった。
王都の屋敷からついて来てくれたシズナとセオルドも、二人のお世話をするのが楽しそうだった。
もちろんその後二人は、王都からついてきた使用人たちと久しぶりの再会で使用人達も集まり食事会を楽しんだらしい。
次の日は休みを取り、それぞれ仲の良いみんなで町へと繰り出すらしい。
侯爵家の使用人たちはみんな仲も良く、雇い主たちとの関係も良い。
伯父様や伯母様、お祖母様達が使用人たちに無理を言わず主従関係をきちんとできているからだろうと思う。
実家の伯爵家の空気があまり良くなかったのもやはり継母と父が使用人を大切に扱っていなかったからかもしれない。
次の日、お祖母様はやはり疲れが残り屋敷でゆっくりと過ごすことになった。
アッシュは町の変わった様子を見たいと、この地に住み管理を任せている貴族たちと共に視察に出かけた。
私はいつものように屋敷の敷地に建てた小さなハウスで、子供たちがいつでも通える教室を開いた。
これはオリエ様がシャトナー国で始めたことで、以前から興味を持っていた。
読み書きや簡単な計算、その子供に合わせた刺繍や編み物、騎士になるための剣術や大工の仕事などを教えるための場所を作った。
初めはみんなよそよそしく声をかけても来てもらえなかった。
仕方なく使用人の子供達の遊び場として開放し、そこで数人を雇い面倒を見ることにした。
もちろん手の空いた時は私も子供達と遊びながら字を教えたり、少し大きな子供達には刺繍を教えたりしていた。
その評判を領民が耳にして少しずつ子供が通うようになった。
流石にこの場所だけでは全ての子供を受け入れることはできなくて、この領地を任されているミラー伯爵と話し合い、どこからその運営費を出すか、かなり話し合った。
貴族はもちろん学校がある。平民の子供達も裕福な家庭ならばその学校へ通える。
でも貧しい家庭は働き手として必要だし、高い学費は払えず学校に通わせてもらえない。
この問題はどこの領地でもあり得ることで、田舎に行けば田舎に行くほど、高額な資金を投じる学校運営をなかなか貧しい子供達のためにすることができないでいた。
侯爵家からももちろん援助はしてもらう。でも、この領地で資金調達ができるのが一番いい。オリエ様達は子供達が刺繍や編み物が上手になったら、工房を開き売って子供達の仕事場を作ったと話していた。
すぐに利益が出るわけではないけど長期的に考えればいずれは採算が合うようになる。
何度もミラー伯爵や有志者を集め話し合った。まだ若い私は侯爵家の者だと言っても意見を聞いてもらえず、意見が通らないこともある。
屋敷に通う子供達の姿を見てもらい、どれくらいの成果があるのか時間をかけて知ってもらうしかなかった。
そんな中、領地の道は整備されていき、少しずつ人が増え、賑やかになっていった。
もちろん侯爵家が動いたことはミラー伯爵達も知っているけど、私の資金を投じ、陛下に援助を申し入れたのも私だとは知らなかった。あえて話すつもりもなかった。
だけど学校のことでなかなか話が進まないことをセオルドがアッシュに訴えた。
アッシュは陰ながら動いてくれて少しずつ無償でいつでも通える教室を何ヶ所かに開くことができた。
数年は手出しになるけどいずれは必ず利益が出る。
アッシュのおかげで今は毎日子供達と笑い合い過ごすことができる。
昨日もアッシュと散歩の途中、道で会った人たちに「ちょっとお待ちください」と声をかけられ採れたての芋や野菜をたくさん貰った。
アッシュは「領地に来てこんなふうに親しげに声をかけられたのは初めてだ」と驚いていた。
屋敷に帰った時には両手にたくさんのお土産があったのに、使用人たちは当たり前のように受け取った。
「なんでこんなに色々持って帰ったのにみんな驚かないんだ?」
「え?いつものことだもの。みんな顔を見るとあれを持って行けと何かしらくれるのよ」
「ビアンカ……お前、幸せ者だな」
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アッシュは私の楽しそうな姿に安心していた。
「明日は視察に行くつもりだ」
「私は子供達の教室の当番の日だからついて行けないわ」
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「わかった。時間を空けておくよ」
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