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114話
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「………久しぶりだな」
「………」
彼の声があまりにも優しくて声が出なかった。
「俺に会いにきたんだろう?」
「…………」
コクンと頷いた。
でも顔を上げることができなくて地面をただ見つめた。
茶色土と所々に生えた雑草が目に入る。それをただ黙って見つめていた。
「ビアンカ………もう納得した?今の俺には何もない。静かに死を待つだけだ」
頭の上に聞こえてくる話し声に耳を塞ぎたくなる。
手が震えた。
唇を強く噛み締めてガリッと下唇を噛んでしまう。鉄の味が口の中に広がる。
顔を上げてフェリックス様を見つめた。
「何か……治療法が……あるかもしれない」
弱々しい声が出た。
フェリックス様は静かに首を横に振る。
「ない。いろんな医者に診てもらった。でも、今の医療では助からないと言われた……ビアンカ、俺はこの土地で静かに過ごしたい……君を傷つけたことは申し訳なかった。でも、もう忘れて欲しい」
「忘れたよ?頑張って忘れた。忘れて新しい人生を歩もうと思ったよ。なのに……あなたが死ぬなんて聞いて、そうなんだで終われなかった」
涙が溢れる。
これはフェリックス様へのまだ残っていた愛情?それとも同情?
自分でもよくわからない……だけど、フェリックス様のところへ会いに行きたいと思った。
ふとサクさんが言った言葉を思い出す。
「素直でいてくれ」
うん……サクさん。
わたし、素直になったよ。やっと素直に彼と向き合える。
だからお願い、サクさん。
わたしの命をあげるからフェリックス様を助けて……
心の中でサクさんを呼んだ。突然現れるわけがないのに。もう誰の記憶にも残っていないサクさん、どこにいるのかもわからない。
「フェリックス様……最後まで諦めるなんて貴方らしくない。諦めないで!」
「君になんの権利があって俺を責める?」
「違う……ただ、まだ諦めてほしくなくて…………「やめてくれ!俺をこれ以上惨めにさせないでくれ」
フェリックス様はそう言うと袖を捲り上げ細くなった腕を見せた。
「筋力もなくなり体重も減った……もう俺は君を守ることもできない……」
フェリックス様の瞳に光るものが見えた。
もうこれ以上話をしたくないと彼は私に背を向けた。
それは完全な拒絶。
わたしは彼の後ろ姿を黙って見送るしかなかった。だってわたしには彼を助ける術も、彼のそばにいる資格もない。
もう彼を忘れると決めたのは私だったから。
「宿に戻ろう」
そう呟いて宿へ戻った。
「帰ろうかな……」
部屋に入ると椅子に座りテーブルに顔を伏せたまま時間が過ぎる。
諦めて帰ろう……そう思うのにいっこうに体が動かない。
領地に帰ればたくさん仕事が待っている。お祖母様も心配して私が帰るのを待っている。
アッシュも代わりに仕事をこなしてくれている。
みんなに迷惑と心配をかけているのに……フェリックス様の姿が頭から離れない。
シズナが心配して部屋に顔を出して、「ビアンカ様お食事はどうなさいますか?少しでも食べましょう」と声をかけてきた。
「食欲がないの」
「でも……少しでも……」
「ごめん……一人にさせて」
「わかりました、何か用事があればすぐに声をかけてください」
「うん、ありがとう」
シズナは何か言いたそうにしていたけど私が俯いたまま顔を上げないので、それ以上は何も言わずに部屋を出た。
どれくらい時間が経ったのだろう。
窓の外から雨音が聞こえてきた。
私はその雨に誘われるように傘もささず外に出た。
冷たい雨がとても気持ちいい。
雨の中歩けば泣いていても誰にもわからない。
「………」
彼の声があまりにも優しくて声が出なかった。
「俺に会いにきたんだろう?」
「…………」
コクンと頷いた。
でも顔を上げることができなくて地面をただ見つめた。
茶色土と所々に生えた雑草が目に入る。それをただ黙って見つめていた。
「ビアンカ………もう納得した?今の俺には何もない。静かに死を待つだけだ」
頭の上に聞こえてくる話し声に耳を塞ぎたくなる。
手が震えた。
唇を強く噛み締めてガリッと下唇を噛んでしまう。鉄の味が口の中に広がる。
顔を上げてフェリックス様を見つめた。
「何か……治療法が……あるかもしれない」
弱々しい声が出た。
フェリックス様は静かに首を横に振る。
「ない。いろんな医者に診てもらった。でも、今の医療では助からないと言われた……ビアンカ、俺はこの土地で静かに過ごしたい……君を傷つけたことは申し訳なかった。でも、もう忘れて欲しい」
「忘れたよ?頑張って忘れた。忘れて新しい人生を歩もうと思ったよ。なのに……あなたが死ぬなんて聞いて、そうなんだで終われなかった」
涙が溢れる。
これはフェリックス様へのまだ残っていた愛情?それとも同情?
自分でもよくわからない……だけど、フェリックス様のところへ会いに行きたいと思った。
ふとサクさんが言った言葉を思い出す。
「素直でいてくれ」
うん……サクさん。
わたし、素直になったよ。やっと素直に彼と向き合える。
だからお願い、サクさん。
わたしの命をあげるからフェリックス様を助けて……
心の中でサクさんを呼んだ。突然現れるわけがないのに。もう誰の記憶にも残っていないサクさん、どこにいるのかもわからない。
「フェリックス様……最後まで諦めるなんて貴方らしくない。諦めないで!」
「君になんの権利があって俺を責める?」
「違う……ただ、まだ諦めてほしくなくて…………「やめてくれ!俺をこれ以上惨めにさせないでくれ」
フェリックス様はそう言うと袖を捲り上げ細くなった腕を見せた。
「筋力もなくなり体重も減った……もう俺は君を守ることもできない……」
フェリックス様の瞳に光るものが見えた。
もうこれ以上話をしたくないと彼は私に背を向けた。
それは完全な拒絶。
わたしは彼の後ろ姿を黙って見送るしかなかった。だってわたしには彼を助ける術も、彼のそばにいる資格もない。
もう彼を忘れると決めたのは私だったから。
「宿に戻ろう」
そう呟いて宿へ戻った。
「帰ろうかな……」
部屋に入ると椅子に座りテーブルに顔を伏せたまま時間が過ぎる。
諦めて帰ろう……そう思うのにいっこうに体が動かない。
領地に帰ればたくさん仕事が待っている。お祖母様も心配して私が帰るのを待っている。
アッシュも代わりに仕事をこなしてくれている。
みんなに迷惑と心配をかけているのに……フェリックス様の姿が頭から離れない。
シズナが心配して部屋に顔を出して、「ビアンカ様お食事はどうなさいますか?少しでも食べましょう」と声をかけてきた。
「食欲がないの」
「でも……少しでも……」
「ごめん……一人にさせて」
「わかりました、何か用事があればすぐに声をかけてください」
「うん、ありがとう」
シズナは何か言いたそうにしていたけど私が俯いたまま顔を上げないので、それ以上は何も言わずに部屋を出た。
どれくらい時間が経ったのだろう。
窓の外から雨音が聞こえてきた。
私はその雨に誘われるように傘もささず外に出た。
冷たい雨がとても気持ちいい。
雨の中歩けば泣いていても誰にもわからない。
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