あなたの愛はもう要りません。

たろ

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118話

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「フェリックス様……」

 苦しむ彼のそばにいることしかできない時間は、あまりにも長く感じる。私自身も疲弊していくのがわかる。

 でも、そんな時間が……終わりに近づいていくのを感じる。
 それがすごく怖い。

 フェリックス様の容態は刻一刻と悪くなっていく。みんなが寝静まった真夜中も私は彼のそばから離れなかった。

 本来ならアリ達が交代で看病をするのだろうけど、私がフェリックス様から離れようとしないので、二人は別の部屋で待機してくれて必要な時だけ顔を出してくれた。

 シズナ達も、もう何も言わないでいてくれた。

 二人だけで過ごす時間はあとどれくらい……そう思うだけで胸が苦しくて……

 睡眠不足の体と慣れない看病に疲弊して、不安と恐怖の時間が私の心を蝕んでいく。

 もういっそ彼と共にこの世を去りたいとすら思えてくる。思考がおかしくなるのがわかる。

 朝方、少しフェリックス様の寝息が落ち着いてきて、私も睡魔に襲われ椅子に座ったままうとうととしていた。








「なぁ、起きろよ」

 どこかで聞いた覚えのある声が聞こえてきた。

「ったく、せっかく来てやったのに」

 重たい瞼をなんとか開けると……

「………サ…クさ…ん?」

「うん」

「………」

 もう声が出なかった。ううん、涙が溢れて何も言えなくなっていた。

「泣くな。コイツを助けたいんだろう?」

 こくんと頷いた。

「……助……かるの?」

 半信半疑で質問する。

「俺を誰だと思っているんだ?魔法使いだぞ」

「だ、だけど……いくら魔法使いでも人の生き死にまで助けるなんて……」

 ーーできるはずない……

 言葉にはできなくて、ぐっと飲み込んだ。

「できるさ。ただし、フェリックスを治す引き換えに大きな代償が伴うけど」

「できる…の?本当……に?」

 目を大きく見開いた。フェリックス様が助かる?もう、いつ死んでしまうかわからないこの状態なのに?

「ああ、だけど……」

「それはフェリックス様が代償を背負うの?それとも願った私?」

「……どちらも……いや、たぶん……辛いのはビアンカの方かもしれない」

「私が辛い?フェリックス様が死んでしまうよりずっとマシだわ」

「何が代償か聞かないのか?」

「そうだよね。教えてもらえる?」

「………『君』と言う存在が彼の記憶から消えてしまう」

「……え?消える?私が死ぬの?」

「その言葉通りさ。君のことを忘れてしまう。君と過ごした日々も、今こうしてフェリックスを助けるために必死で俺を心の中で呼び続けて、君のおかげで助けられたことも、フェリックスは全て忘れるんだ」

「なんだそんなことか……大丈夫。彼の記憶から私が消えても彼は生き続けるんだよね?それなら全然平気だわ」

 そう言った時、突然私の手を掴んだ。

 苦しみ衰弱しているフェリックス様が私の手を掴んでいた。

「だ、だめ…だ……」

 意識がないはずのフェリックス様が弱々しくも反対した。

「俺は……もういい……ビアンカを忘れて……生きていくなんて………耐えら…れない」



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