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カレン。
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カレンの周りはいつも優しい温かな空気に包まれていた。
優しい祖父母、仕事の時はキリッとしているはずなのに家に帰ってきて母とカレンを見るとすぐにフニャっとなる父、今はいないけどいつも手紙が届いて心配してくれる優しい兄。
そして体が弱く寝込んではいるけど愛情いっぱい愛してくれる母。
近所の人たちも父親の仕事場のお城の人たちも皆カレンを温かく見守ってくれる。
ずっとそれが当たり前で、ずっとこんな幸せが続くのだと疑うことはなかった。
「カレン、ケーキを作るから手伝ってくれるかしら?」
「うん、おばぁちゃま、この前採ってきた木苺をのせるの?」
「そうよ。たくさん採ってきてくれたからジャムもあるわよ」
「やったあ!じゃあ、ケーキ作ったらパンも明日用に仕込んでおこうよ」
「わかったわ、カレンは食いしん坊さんだね」
「だって、すぐにお腹が空くの」
「ふふっ。育ち盛りだものね」
カレンとサラは顔を見合わせて笑う。
サラはこんな幸せがずっと続いて欲しいと願う。
誰にもカレンの存在が知られなければいいのにと。
なのに……
「君は……」
カレンはいつものように森の中に入って薬草を探し回っていた。
昨日から熱が下がらない母のために解熱剤として効能のあるタンポポ、ツユクサ、ユキノシタ、クズ、ドクダミ、よもぎなどを探し回っていた。
前回乾燥させておいた薬草がそろそろなくなる頃だった。
「最近は食べ物ばかり採りに行ってたから、薬草が少なくなっちゃった」
独り言をぶつぶつと言いながら森の中に入った。
だいたいどこに何が生えているかはわかっている。
いつものようにスタスタと歩いていると目の前に大きな影が。
だれ?
ふと見上げると男の人がカレンを見下ろしていた。
「おじちゃん、カレンの前に立ったらまえにすすめないわ」
頬をぷくっと膨らませて少し怒りながら知らないおじさんに文句を言った。
「ごめん、ごめん。可愛らしい女の子が一人で歩いているから心配でつい立ち止まってしまったんだ」
「だいじょうぶだよ。まいにちきてるもん」
「毎日?こんな森の中に?一人で?」
「ふふっ。おじちゃんも一人でしょう?」
カレンはそう言うと男の人に目をやってそのまま周りをじっと見つめてからもう一度男の人を見た。
「おじちゃんもカレンとおなじだね」
肩をすくめて笑った。
男は少し驚いた顔をした。
ーー気づいているのか?
気づかれないように周囲には常に数人の護衛が隠れている。
そして、『同じ』と言うことはこの女の子にも護衛がついていると言うことか?
男は周囲の気配を窺った。
しかし自分の護衛しか気配がない。
もしかして『影』か?
一瞬目が鋭さを増したが、ゴードンがここにいることを考えればカレンに『影』をつけることは当たり前なのかもしれないと思った。
ただ、『影』は見守るだけではなく護るために、暗殺も行うだろう。
安易にこの子に近付けば……そう思うも、その『影』よりも自身に付いている護衛達の方が実力は上だろう。
男はもう一度カレンに話しかけることにした。
「この森が好きなのかい?」
「だいすき!ここはカレンにとってもやさしいの」
「優しい?森が?」
「うん!」
男はカレンをじっと見つめた。
薄紫の瞳が男を見る、その瞳があまりにも綺麗で男は時を忘れたように見つめてしまう。
「………おじちゃん?」
カレンはあまりにも真剣な顔で見つめられて困った顔をしていた。
「すまない………昔……君と同じ瞳をした女の子がいたんだ」
「カレンとおなじ?そっかぁ、だからおじちゃんはそんなさびしそうにしてたのね?もうその女の子とはあえないの?だからさびしそうなの?」
カレンの言葉が胸の中に響く。
ーーもうその女の子とはあえないの?
そうだ……もう会うことはできない。自分が彼女を欲したせいで彼女は死んでしまった。
どんなに後悔しても彼女はもう戻ってこない。
たとえ目の前に彼女と同じ魂の女の子がいても……彼女だけど彼女ではない。
この女の子は新しい人生を歩んでいるのだ。
「カレン!!」
「あっ!おじぃちゃま!」
男の前に慌てて走ってきたゴードンはカレンを急いで抱き上げた。
「ここには来るなと言っておいただろう!!」
カレンはゴードンが怒鳴る姿を見たことがなかった。
ゴードンに抱っこされたまま怖くて泣き出した。
「おじぃちゃま……こわいよぉ」
「す、すまない……カレン……泣かないで……」
ゴードンは困り果ててカレンをなんとか宥めようとしていた。
その姿を見て男は「あなたのそんな姿を初めて見ました」と言った。
「うるさい、エリック!黙れ!」
優しい祖父母、仕事の時はキリッとしているはずなのに家に帰ってきて母とカレンを見るとすぐにフニャっとなる父、今はいないけどいつも手紙が届いて心配してくれる優しい兄。
そして体が弱く寝込んではいるけど愛情いっぱい愛してくれる母。
近所の人たちも父親の仕事場のお城の人たちも皆カレンを温かく見守ってくれる。
ずっとそれが当たり前で、ずっとこんな幸せが続くのだと疑うことはなかった。
「カレン、ケーキを作るから手伝ってくれるかしら?」
「うん、おばぁちゃま、この前採ってきた木苺をのせるの?」
「そうよ。たくさん採ってきてくれたからジャムもあるわよ」
「やったあ!じゃあ、ケーキ作ったらパンも明日用に仕込んでおこうよ」
「わかったわ、カレンは食いしん坊さんだね」
「だって、すぐにお腹が空くの」
「ふふっ。育ち盛りだものね」
カレンとサラは顔を見合わせて笑う。
サラはこんな幸せがずっと続いて欲しいと願う。
誰にもカレンの存在が知られなければいいのにと。
なのに……
「君は……」
カレンはいつものように森の中に入って薬草を探し回っていた。
昨日から熱が下がらない母のために解熱剤として効能のあるタンポポ、ツユクサ、ユキノシタ、クズ、ドクダミ、よもぎなどを探し回っていた。
前回乾燥させておいた薬草がそろそろなくなる頃だった。
「最近は食べ物ばかり採りに行ってたから、薬草が少なくなっちゃった」
独り言をぶつぶつと言いながら森の中に入った。
だいたいどこに何が生えているかはわかっている。
いつものようにスタスタと歩いていると目の前に大きな影が。
だれ?
ふと見上げると男の人がカレンを見下ろしていた。
「おじちゃん、カレンの前に立ったらまえにすすめないわ」
頬をぷくっと膨らませて少し怒りながら知らないおじさんに文句を言った。
「ごめん、ごめん。可愛らしい女の子が一人で歩いているから心配でつい立ち止まってしまったんだ」
「だいじょうぶだよ。まいにちきてるもん」
「毎日?こんな森の中に?一人で?」
「ふふっ。おじちゃんも一人でしょう?」
カレンはそう言うと男の人に目をやってそのまま周りをじっと見つめてからもう一度男の人を見た。
「おじちゃんもカレンとおなじだね」
肩をすくめて笑った。
男は少し驚いた顔をした。
ーー気づいているのか?
気づかれないように周囲には常に数人の護衛が隠れている。
そして、『同じ』と言うことはこの女の子にも護衛がついていると言うことか?
男は周囲の気配を窺った。
しかし自分の護衛しか気配がない。
もしかして『影』か?
一瞬目が鋭さを増したが、ゴードンがここにいることを考えればカレンに『影』をつけることは当たり前なのかもしれないと思った。
ただ、『影』は見守るだけではなく護るために、暗殺も行うだろう。
安易にこの子に近付けば……そう思うも、その『影』よりも自身に付いている護衛達の方が実力は上だろう。
男はもう一度カレンに話しかけることにした。
「この森が好きなのかい?」
「だいすき!ここはカレンにとってもやさしいの」
「優しい?森が?」
「うん!」
男はカレンをじっと見つめた。
薄紫の瞳が男を見る、その瞳があまりにも綺麗で男は時を忘れたように見つめてしまう。
「………おじちゃん?」
カレンはあまりにも真剣な顔で見つめられて困った顔をしていた。
「すまない………昔……君と同じ瞳をした女の子がいたんだ」
「カレンとおなじ?そっかぁ、だからおじちゃんはそんなさびしそうにしてたのね?もうその女の子とはあえないの?だからさびしそうなの?」
カレンの言葉が胸の中に響く。
ーーもうその女の子とはあえないの?
そうだ……もう会うことはできない。自分が彼女を欲したせいで彼女は死んでしまった。
どんなに後悔しても彼女はもう戻ってこない。
たとえ目の前に彼女と同じ魂の女の子がいても……彼女だけど彼女ではない。
この女の子は新しい人生を歩んでいるのだ。
「カレン!!」
「あっ!おじぃちゃま!」
男の前に慌てて走ってきたゴードンはカレンを急いで抱き上げた。
「ここには来るなと言っておいただろう!!」
カレンはゴードンが怒鳴る姿を見たことがなかった。
ゴードンに抱っこされたまま怖くて泣き出した。
「おじぃちゃま……こわいよぉ」
「す、すまない……カレン……泣かないで……」
ゴードンは困り果ててカレンをなんとか宥めようとしていた。
その姿を見て男は「あなたのそんな姿を初めて見ました」と言った。
「うるさい、エリック!黙れ!」
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