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カレン。④
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「カレン!!」
煙はもくもくと空へと向かい、辺りも煙の匂いが充満していた。
「ゴードン様!!」
近くにいた近衛騎士達が病人を診療所から助け出していた。
「カレンは?」
「大丈夫です、すぐに助け出しました」
カレンは一人の騎士が背中に背負って助け出していた。
高熱で虚な目をして意識がまだぼんやりしているカレンはゴードンの顔を見るとホッとしたのかまた意識を失った。
カレンは真っ赤な顔をして息が苦しそうだが、意識をなくしていたおかげでこの状況がわからないでいるようでゴードンは少しだけ安心した。
自分が命をなん度も狙われているなど知らなくていい。高熱で可哀そうだが今は何も知らずに眠っていてほしいと願った。
元気になった時にはもう全てを終わらせておいてあげたいと思った。
カレンの体調が良くなっていつもの明るい笑顔がみたい。
だから今はこの火事の原因とサラやキリアンの行方を探し出し、早く解決させようと心に誓った。
「この火事の原因を早く調べろ」
鎮火し始めた診療所をじっと見つめた。
まさかここでも火事が起こるなんて……
カレンのそばを離れる時、何人かの護衛をつけておいた。
もし護衛達がいなかったら……考えるだけで恐ろしかった。
バーバラは今やこの国の王妃になろうとしている。その力はエリックの次。
だがなぜ彼女までカレンを狙う?
エリックがアイシャを愛していたため、ローゼは執拗にアイシャを嫌った。そして同じ従姉妹なのに相手は公爵令嬢、それもまたローゼの自尊心を傷つけた。殺してやりたいほどの憎悪を持っていた。
リサは成人してもなお心の成長が遅れていると言わざるを得なかった。
人としてしてはならないこと、常識すら持つことができていなかった。
魔法使いとして優秀で公爵令嬢としての地位につき幼い頃からちやほやされ、叱られることもなく自分の思いのままわがままに傲慢に生きてきた。アイシャを研究材料としかみていないリサには人の心はなかった。
でも、バーバラはアイシャに対して特に接点もなくローゼのように恨み、リサのように好奇心はないはず。
「だれか、キリアンとサラが見つかったと言う報告はまだないのか?」
「まだ報告は入っておりません」
「そうか……わかった。陛下も今探してくれているところだ」
愛する妻の行方がわからない。ゴードンはすぐにでも自分も探し回りたいと思っていた。
でも目の前にいる愛する孫。
ゴードンはおんぶされたままのカレンを診察した。
「カレンは他の患者と共に私の使っている離宮に運んでやってくれ」
「よろしいのですか?他の者達まで」
護衛は戸惑っていたがゴードンは強い言葉で言い切った。
「あそこなら簡単に誰でも入ることはできない」
ゴードンの離宮はこの王城の中でも鉄壁の宮と呼ばれている。
騎士達は強靭で誰よりも鍛えられていた。
ただ、広い王城内の中でも奥にあるため体が弱ったカレンをそこまで連れて行くことは考えていなかった。診療所の方が設備が整っているため治療もしやすい。
こんなことになるなら最初からカレンをそこに運んであげればよかった。
ゴードンは「何があっても守り抜け」と護衛達に厳しい言葉を放った。
「かしこまりました」
護衛達は深々と頭を下げカレンを大切に抱えて離宮へと向かった。
「森へ向かう」
エリックが今キリアンとサラの行方を探してくれている。ならば安心していいだろう。
ゴードンは自らも森へ向かうことにした。
「二人が見つかったらカレンのところへ案内してやってくれ」
「はい」
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
森の入り口のところにエリックの護衛達が取り残されていた。
「陛下は?」
「森に入られました。我々はここで待機するように言われました」
「なぜだ?」
エリックはなぜ危険だと思わないのか?
「バーバラ妃と殿下と家族で話をすると言われました」
「もし何かあったらどうするんだ?」
ゴードンは目を細めてじっと森を見つめた。
「数人が隠れて控えております」
「バーバラ妃はどんな状態だ?」
サラとキリアンをどこかへ連れて行きカレンに危害を加えようとした。エリックに何かあったらこの国が混乱を招くとわかっているだろうに、なんて軽率なんだ。
「殿下と楽しそうに森へ入ったとバーバラ妃付きの者が言っておりました」
「ほぉ楽しそう?」
「はい、普段あまり感情を表に出さないのですが、殿下と二人で手を繋ぎ笑い合いながら散歩をしているようです」
「何かおかしな点はなかったか?」
「診療所の近くでバーバラ妃がとった行動が少々問題があったのではとの報告を受けております」
護衛達はゴードンからあえて聞かれるまで話さなかった。その話を避けていたかのように。
「ゴードン様の奥様であるサラ様が連れて行かれました。そしてお孫さんのキリアン様も。お二人を知らない者がかなり厳しい取り調べを行ったようです」
ゴードンの顔に怒りが見えた。
騎士達は思わず固唾をのんだ。強い語気に護衛達は震え上がった。
「今はどうなってるんだ?」
「陛下がやめるようにと命令されてお二人は陛下の護衛が保護りしております」
ゴードンはそれ以上何も聞かなかった。
「わかった」
そしてエリックの後を追うように森の中へと入って行った。
煙はもくもくと空へと向かい、辺りも煙の匂いが充満していた。
「ゴードン様!!」
近くにいた近衛騎士達が病人を診療所から助け出していた。
「カレンは?」
「大丈夫です、すぐに助け出しました」
カレンは一人の騎士が背中に背負って助け出していた。
高熱で虚な目をして意識がまだぼんやりしているカレンはゴードンの顔を見るとホッとしたのかまた意識を失った。
カレンは真っ赤な顔をして息が苦しそうだが、意識をなくしていたおかげでこの状況がわからないでいるようでゴードンは少しだけ安心した。
自分が命をなん度も狙われているなど知らなくていい。高熱で可哀そうだが今は何も知らずに眠っていてほしいと願った。
元気になった時にはもう全てを終わらせておいてあげたいと思った。
カレンの体調が良くなっていつもの明るい笑顔がみたい。
だから今はこの火事の原因とサラやキリアンの行方を探し出し、早く解決させようと心に誓った。
「この火事の原因を早く調べろ」
鎮火し始めた診療所をじっと見つめた。
まさかここでも火事が起こるなんて……
カレンのそばを離れる時、何人かの護衛をつけておいた。
もし護衛達がいなかったら……考えるだけで恐ろしかった。
バーバラは今やこの国の王妃になろうとしている。その力はエリックの次。
だがなぜ彼女までカレンを狙う?
エリックがアイシャを愛していたため、ローゼは執拗にアイシャを嫌った。そして同じ従姉妹なのに相手は公爵令嬢、それもまたローゼの自尊心を傷つけた。殺してやりたいほどの憎悪を持っていた。
リサは成人してもなお心の成長が遅れていると言わざるを得なかった。
人としてしてはならないこと、常識すら持つことができていなかった。
魔法使いとして優秀で公爵令嬢としての地位につき幼い頃からちやほやされ、叱られることもなく自分の思いのままわがままに傲慢に生きてきた。アイシャを研究材料としかみていないリサには人の心はなかった。
でも、バーバラはアイシャに対して特に接点もなくローゼのように恨み、リサのように好奇心はないはず。
「だれか、キリアンとサラが見つかったと言う報告はまだないのか?」
「まだ報告は入っておりません」
「そうか……わかった。陛下も今探してくれているところだ」
愛する妻の行方がわからない。ゴードンはすぐにでも自分も探し回りたいと思っていた。
でも目の前にいる愛する孫。
ゴードンはおんぶされたままのカレンを診察した。
「カレンは他の患者と共に私の使っている離宮に運んでやってくれ」
「よろしいのですか?他の者達まで」
護衛は戸惑っていたがゴードンは強い言葉で言い切った。
「あそこなら簡単に誰でも入ることはできない」
ゴードンの離宮はこの王城の中でも鉄壁の宮と呼ばれている。
騎士達は強靭で誰よりも鍛えられていた。
ただ、広い王城内の中でも奥にあるため体が弱ったカレンをそこまで連れて行くことは考えていなかった。診療所の方が設備が整っているため治療もしやすい。
こんなことになるなら最初からカレンをそこに運んであげればよかった。
ゴードンは「何があっても守り抜け」と護衛達に厳しい言葉を放った。
「かしこまりました」
護衛達は深々と頭を下げカレンを大切に抱えて離宮へと向かった。
「森へ向かう」
エリックが今キリアンとサラの行方を探してくれている。ならば安心していいだろう。
ゴードンは自らも森へ向かうことにした。
「二人が見つかったらカレンのところへ案内してやってくれ」
「はい」
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
森の入り口のところにエリックの護衛達が取り残されていた。
「陛下は?」
「森に入られました。我々はここで待機するように言われました」
「なぜだ?」
エリックはなぜ危険だと思わないのか?
「バーバラ妃と殿下と家族で話をすると言われました」
「もし何かあったらどうするんだ?」
ゴードンは目を細めてじっと森を見つめた。
「数人が隠れて控えております」
「バーバラ妃はどんな状態だ?」
サラとキリアンをどこかへ連れて行きカレンに危害を加えようとした。エリックに何かあったらこの国が混乱を招くとわかっているだろうに、なんて軽率なんだ。
「殿下と楽しそうに森へ入ったとバーバラ妃付きの者が言っておりました」
「ほぉ楽しそう?」
「はい、普段あまり感情を表に出さないのですが、殿下と二人で手を繋ぎ笑い合いながら散歩をしているようです」
「何かおかしな点はなかったか?」
「診療所の近くでバーバラ妃がとった行動が少々問題があったのではとの報告を受けております」
護衛達はゴードンからあえて聞かれるまで話さなかった。その話を避けていたかのように。
「ゴードン様の奥様であるサラ様が連れて行かれました。そしてお孫さんのキリアン様も。お二人を知らない者がかなり厳しい取り調べを行ったようです」
ゴードンの顔に怒りが見えた。
騎士達は思わず固唾をのんだ。強い語気に護衛達は震え上がった。
「今はどうなってるんだ?」
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そしてエリックの後を追うように森の中へと入って行った。
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