16 / 81
王太子殿下 エリック。
しおりを挟む
「すぐに国へ帰る」
国王である父から婚約者であるアイシャの容態についての手紙を受け取った。
エリックはいずれ国王となり愛するアイシャと共に生きていく。
だからこそ母である王妃に諭されたとはいえ留学を決意したのだ。
幼い頃一目惚れしたアイシャ。
どうしても彼女を妻として娶りたい。
父である国王に頭を下げて頼んだ。初めてわがままを言った。自分の意思を貫いた。
アイシャと初めて出会ったのはエリックが7歳の時だった。
毎日王太子になるために課せられた厳しい勉強。
いい加減嫌になり教師の目を盗んで逃げ出し、裏庭でひとり芝生に寝転んだ。
青い空に楽しそうに飛んでいる鳥をただ目で追っていた。
豪華なたくさんの服、いつも王宮料理人が作る美味しい料理、たくさんの宝石や有名な画家の絵、宝剣など欲しいと思えばいつでも思うがままに手に入れられる環境。
大の大人達が傅き、自分のご機嫌を窺う。
これ以上の贅沢はない、何が不満なのか。
エリックを羨む者は多い。
でも、エリックは心から笑ったことはない。心から安心して他人に気を許すこともできない。
常に王太子としての威厳を保つようにと両親に言われ、品行方正に過ごさなければならなかった。
楽しいと感じることもなく、食べることも美味しいと感じることもなく淡々と生きていくしかなかった。
そんなある日、ふと逃げ出したいと思った。
ーーここから自分がいなくなったら……父上と母上は心配してくださるだろうか?
多分………厳しく叱られるだけなのだろうとわかってはいたが、逃げ出したくなった。
ふと窓の外で楽しそうに飛ぶ鳥達をみて。
だけど逃げ出したところで行く宛もない。
仕方なく裏庭に来たものの、どうしていいのかわからない。
与えられたことしか、したことがない。
自分の意思で物事を考え、行動したのは初めてだった。
自由に飛ぶ鳥を見て瞳には涙が浮かぶ。
ただ、飛ぶ鳥を見ているだけの自分。
「なにをしているの?」
頭の後ろから声が聞こえた。
女の子の声だとわかったが返事をする気にはなれない。
今瞳には涙が浮かび、目は赤くなっている。
泣いていたなんて思われたくない。
無視していると徐ろに顔を覗き込んできた。
「なぁんだ、へんじがないから、しんでるのかとおもったわ」
ーー死んでるわけないだろう?
「………」
腹が立ち無視を続けた。
「隣に座ってもいいかしら?」
そう言うと女の子は隣に座り一人で話をし始めた。
「わたしね、おとうさまにおしろにつれてきてもらったの。だってえほんに、おうじさまがすんでいるって、かいてあったの。あ、じは、よめないから、メイドのアンがよんでくれたの。
でもね、おうじさまなんてどこにもいないの。たくさんのフリルのついたキラキラしたおようふくをきて、あたまにかんむりをのせて、『ぼくはおうじさまなんだ』って言ってるひとをさがしたんだけど、つかれちゃって、いま、おやすみして、おはなをみてたの」
ーーフリル?そんなもの着ないよ。キラキラした服?どんな絵本を読んだんだ?
イライラしながら話を聞くエリックは、自分がその王子様だと絶対言わないと思った。
期待した姿とは違うと思われたくないし、ましてや面倒だった。
早くどこかへ行ってくれないかと思って不機嫌な顔をしているのにこの女の子はそんなことに気が付かずまだ話をしていた。
「おとうさまもおかあさまもいそがしくてあんまりあいてにしてもらえないの。
おにいさまも、おべんきょうがいそがしくて、じゃまにならないようにとしようにんに、いわれてるの」
「………」
「だから、かわりに、あなたがあそんでくれるかしら?」
ーーだから⁉︎⁉︎いやいや、おかしいだろう?
「ねぇ、あそこにさいているおはなは、なんていうの?」
「ねぇ、おなかがすかない?おやつっておしろでは、でるのかしら?」
女の子はお腹を撫でて「はああっ」と息を吐いた。
「おとうさまは、きょうはなぜかごきげんなの。りゆうはね、おかあさまがひさしぶりにおやしきにいるからなの。わたしがおやしきにいると、おかあさまのごきげんがわるくなるから、おとうさまにおしろにきたいと、おねがいしたのよ。
おとうさまと、『大人しくしているように』とやくそくしたからいい子でまってるのに、ずっとわたしのこと、ほうってるのよ」
女の子は一人でよく話す。
だけどよく話を聞いていると、両親にはあまり愛されていないようだ。
特に母親から嫌われていて女の子を見ると不機嫌になるらしい。
「わたし、おとうさまにかおがにているらしいの。だからおかあさまが『あんたのかおをみると、イライラするわ』といつもいわれてしまうの」
「………」
少しだけ女の子の顔をチラッと見たけど別に不細工ではなかった。どちらかと言うと………瞳が大きくほっぺが膨らんで口元は小さく……とっても可愛らしい女の子だった。
それこそ絵本から飛び出してきたみたいな可愛らしい女の子。
「わたしってかわいくないらしいの」
悲しそうに話す女の子にエリックはとうとう返事をした。
「君は別に不細工じゃないよ。可愛いと思う」
「ほんと?うれしい!ありがとう」
ニコニコと笑う女の子に何故か胸がドキッとしたエリックは「おやつが食べたければついておいで」と立ち上がった。
隠れていても仕方がない。そろそろ自分もお腹が空いてきたし、おやつでも食べよう。
「うん!わたしのなまえは、『アイシャ』っていうの!」
「僕は……リック……」
「リック?わかったわ。リック、おともだちね?」
エリックは自分より年下の女の子から友達と言われあまり嬉しくはなかったけど、嫌でもなかった。
そしてたまにアイシャは王城に遊びに来るようになった。
使用人達にアイシャが来たら声をかけるように伝えていた。
多分二人で遊んでいることは両親は知っているはず。なのに叱られることはなかった。
アイシャが宰相の娘でたまに連れてきては放置していて、エリックが息抜きに遊んであげていることを承知して両親が見逃していたことをのちのち知った。
アイシャはエリックに会えると満面の笑みで駆け寄ってきて「あそぼう!」と嬉しそうに言った。
駆けっこしたりかくれんぼしたり、たまに王城内にある湖のボートに乗ったりして遊んだ。
国王は表情に乏しいエリックがアイシャと遊んでいる時だけは子供らしく笑う姿を見て、二人が遊ぶことを許可していた。
王妃はアリアの娘だと言うのが気に入らない。
昔からアリアとはよく比べられていた。負けたことはなかったが、アリアが自分にご機嫌を取ることなどなかった。
周りは王太子の婚約者として顔色をうかがい、いつも気持ちの良い言葉を話しかけてくるのに、アリアだけは素知らぬ顔をしていた。
澄ましたその態度が気に入らなかった。だからアイシャに対しても好きになれなかった。
でも子供達のこと。あまり苛立ちを表に出して、王妃としての評価を落としたくはなかった。
だから裏で手を回した。
アリアが屋敷にあまり居ないことを知っているのでロザリアの耳元で囁いた。
『貴女なら公爵家の実権を握れるのでは?』と。
そしてアリアがいない時にロザリアがローゼを連れて公爵家に我が物顔で暮らすようになった。
天真爛漫だったアイシャはいつからか自己肯定感が低くなり、いつもビクビクとするようになっていった。
顔を出さなくなったアイシャに寂しさを覚えながらも少しずつ大人になっていったエリック。
それでもエリックはアイシャのことを忘れずにいた。婚約者選びが始まると知って、父にアイシャがいいと直談判したのだった。
国王である父から婚約者であるアイシャの容態についての手紙を受け取った。
エリックはいずれ国王となり愛するアイシャと共に生きていく。
だからこそ母である王妃に諭されたとはいえ留学を決意したのだ。
幼い頃一目惚れしたアイシャ。
どうしても彼女を妻として娶りたい。
父である国王に頭を下げて頼んだ。初めてわがままを言った。自分の意思を貫いた。
アイシャと初めて出会ったのはエリックが7歳の時だった。
毎日王太子になるために課せられた厳しい勉強。
いい加減嫌になり教師の目を盗んで逃げ出し、裏庭でひとり芝生に寝転んだ。
青い空に楽しそうに飛んでいる鳥をただ目で追っていた。
豪華なたくさんの服、いつも王宮料理人が作る美味しい料理、たくさんの宝石や有名な画家の絵、宝剣など欲しいと思えばいつでも思うがままに手に入れられる環境。
大の大人達が傅き、自分のご機嫌を窺う。
これ以上の贅沢はない、何が不満なのか。
エリックを羨む者は多い。
でも、エリックは心から笑ったことはない。心から安心して他人に気を許すこともできない。
常に王太子としての威厳を保つようにと両親に言われ、品行方正に過ごさなければならなかった。
楽しいと感じることもなく、食べることも美味しいと感じることもなく淡々と生きていくしかなかった。
そんなある日、ふと逃げ出したいと思った。
ーーここから自分がいなくなったら……父上と母上は心配してくださるだろうか?
多分………厳しく叱られるだけなのだろうとわかってはいたが、逃げ出したくなった。
ふと窓の外で楽しそうに飛ぶ鳥達をみて。
だけど逃げ出したところで行く宛もない。
仕方なく裏庭に来たものの、どうしていいのかわからない。
与えられたことしか、したことがない。
自分の意思で物事を考え、行動したのは初めてだった。
自由に飛ぶ鳥を見て瞳には涙が浮かぶ。
ただ、飛ぶ鳥を見ているだけの自分。
「なにをしているの?」
頭の後ろから声が聞こえた。
女の子の声だとわかったが返事をする気にはなれない。
今瞳には涙が浮かび、目は赤くなっている。
泣いていたなんて思われたくない。
無視していると徐ろに顔を覗き込んできた。
「なぁんだ、へんじがないから、しんでるのかとおもったわ」
ーー死んでるわけないだろう?
「………」
腹が立ち無視を続けた。
「隣に座ってもいいかしら?」
そう言うと女の子は隣に座り一人で話をし始めた。
「わたしね、おとうさまにおしろにつれてきてもらったの。だってえほんに、おうじさまがすんでいるって、かいてあったの。あ、じは、よめないから、メイドのアンがよんでくれたの。
でもね、おうじさまなんてどこにもいないの。たくさんのフリルのついたキラキラしたおようふくをきて、あたまにかんむりをのせて、『ぼくはおうじさまなんだ』って言ってるひとをさがしたんだけど、つかれちゃって、いま、おやすみして、おはなをみてたの」
ーーフリル?そんなもの着ないよ。キラキラした服?どんな絵本を読んだんだ?
イライラしながら話を聞くエリックは、自分がその王子様だと絶対言わないと思った。
期待した姿とは違うと思われたくないし、ましてや面倒だった。
早くどこかへ行ってくれないかと思って不機嫌な顔をしているのにこの女の子はそんなことに気が付かずまだ話をしていた。
「おとうさまもおかあさまもいそがしくてあんまりあいてにしてもらえないの。
おにいさまも、おべんきょうがいそがしくて、じゃまにならないようにとしようにんに、いわれてるの」
「………」
「だから、かわりに、あなたがあそんでくれるかしら?」
ーーだから⁉︎⁉︎いやいや、おかしいだろう?
「ねぇ、あそこにさいているおはなは、なんていうの?」
「ねぇ、おなかがすかない?おやつっておしろでは、でるのかしら?」
女の子はお腹を撫でて「はああっ」と息を吐いた。
「おとうさまは、きょうはなぜかごきげんなの。りゆうはね、おかあさまがひさしぶりにおやしきにいるからなの。わたしがおやしきにいると、おかあさまのごきげんがわるくなるから、おとうさまにおしろにきたいと、おねがいしたのよ。
おとうさまと、『大人しくしているように』とやくそくしたからいい子でまってるのに、ずっとわたしのこと、ほうってるのよ」
女の子は一人でよく話す。
だけどよく話を聞いていると、両親にはあまり愛されていないようだ。
特に母親から嫌われていて女の子を見ると不機嫌になるらしい。
「わたし、おとうさまにかおがにているらしいの。だからおかあさまが『あんたのかおをみると、イライラするわ』といつもいわれてしまうの」
「………」
少しだけ女の子の顔をチラッと見たけど別に不細工ではなかった。どちらかと言うと………瞳が大きくほっぺが膨らんで口元は小さく……とっても可愛らしい女の子だった。
それこそ絵本から飛び出してきたみたいな可愛らしい女の子。
「わたしってかわいくないらしいの」
悲しそうに話す女の子にエリックはとうとう返事をした。
「君は別に不細工じゃないよ。可愛いと思う」
「ほんと?うれしい!ありがとう」
ニコニコと笑う女の子に何故か胸がドキッとしたエリックは「おやつが食べたければついておいで」と立ち上がった。
隠れていても仕方がない。そろそろ自分もお腹が空いてきたし、おやつでも食べよう。
「うん!わたしのなまえは、『アイシャ』っていうの!」
「僕は……リック……」
「リック?わかったわ。リック、おともだちね?」
エリックは自分より年下の女の子から友達と言われあまり嬉しくはなかったけど、嫌でもなかった。
そしてたまにアイシャは王城に遊びに来るようになった。
使用人達にアイシャが来たら声をかけるように伝えていた。
多分二人で遊んでいることは両親は知っているはず。なのに叱られることはなかった。
アイシャが宰相の娘でたまに連れてきては放置していて、エリックが息抜きに遊んであげていることを承知して両親が見逃していたことをのちのち知った。
アイシャはエリックに会えると満面の笑みで駆け寄ってきて「あそぼう!」と嬉しそうに言った。
駆けっこしたりかくれんぼしたり、たまに王城内にある湖のボートに乗ったりして遊んだ。
国王は表情に乏しいエリックがアイシャと遊んでいる時だけは子供らしく笑う姿を見て、二人が遊ぶことを許可していた。
王妃はアリアの娘だと言うのが気に入らない。
昔からアリアとはよく比べられていた。負けたことはなかったが、アリアが自分にご機嫌を取ることなどなかった。
周りは王太子の婚約者として顔色をうかがい、いつも気持ちの良い言葉を話しかけてくるのに、アリアだけは素知らぬ顔をしていた。
澄ましたその態度が気に入らなかった。だからアイシャに対しても好きになれなかった。
でも子供達のこと。あまり苛立ちを表に出して、王妃としての評価を落としたくはなかった。
だから裏で手を回した。
アリアが屋敷にあまり居ないことを知っているのでロザリアの耳元で囁いた。
『貴女なら公爵家の実権を握れるのでは?』と。
そしてアリアがいない時にロザリアがローゼを連れて公爵家に我が物顔で暮らすようになった。
天真爛漫だったアイシャはいつからか自己肯定感が低くなり、いつもビクビクとするようになっていった。
顔を出さなくなったアイシャに寂しさを覚えながらも少しずつ大人になっていったエリック。
それでもエリックはアイシャのことを忘れずにいた。婚約者選びが始まると知って、父にアイシャがいいと直談判したのだった。
712
あなたにおすすめの小説
【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜
たろ
恋愛
この話は
『内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』
の続編です。
アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。
そして、アイシャを産んだ。
父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。
ただアイシャには昔の記憶がない。
だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。
アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。
親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。
アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに……
明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。
アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰?
◆ ◆ ◆
今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。
無理!またなんで!
と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。
もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。
多分かなりイライラします。
すみません、よろしくお願いします
★内緒で死ぬことにした の最終話
キリアン君15歳から14歳
アイシャ11歳から10歳
に変更しました。
申し訳ありません。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
「君は地味な裏方だ」と愛人を優遇するサイコパス気質の夫。〜私が去った後、商会の技術が全て私の手によるものだと気づいても、もう手遅れです〜
水上
恋愛
「君は地味だから裏方に徹しろ」
効率主義のサイコパス気質な夫は、妻であるクララの磨いた硝子を愛人の手柄にし、クララを工房に幽閉した。
彼女は感情を捨て、機械のように振る舞う。
だが、クララの成果を奪い取り、夫が愛人を壇上に上げた夜、クララの心は完全に凍りついた。
彼に残した書き置きは一通のみ。
クララが去った後、商会の製品はただの石ころに戻り、夫の計算は音を立てて狂い始める。
これは、深い絶望と、遅すぎた後悔の物語。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる