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セリーヌ編 初恋。
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7歳の時初めてイーサン殿下にお会いした。
子供が集まるお茶会にお母様と初めて行った時だった。
人見知りがありみんなの輪に入るのが苦手で一人隅っこでじっとしていた。
「リーゼがいないからつまんない」
わたしは誰とも話せず、チラッとお母様の方を見るとお母様は大人の人達と楽しそうに話をしていた。
退屈だし一人で寂しかったわたしは、お茶会の席を離れて近くにある噴水へと歩いて行った。
我が家にある噴水に比べて豪華で庭園の真ん中に格調高く置かれていた。
小さなわたしは下から見上げて
「うわぁ、綺麗」
青い空に水しぶきがキラキラと輝いていてワクワクしながらずっと見入っていた。
「そんなに綺麗なの?」
後ろから声が聞こえた。
「うん!!」
思わず大きな声で返事をして振り返るとそこにはプラチナブロンドの綺麗な髪で瞳はシルバーで整った顔のイーサン殿下が立っていた。
慌てて「申し訳ありません」と頭を下げて固まっていたら
「気にしないで、ここの噴水とっても素敵だよね。僕も大好きな場所なんだ」
優しい笑顔で話しかけて来てくれた。
人見知りのはずのわたしが思わず興奮して話した。
「はい、とても綺麗です、ずっと見ていたいと思ってしまいました」
「君の名前は?」
「失礼致しました。わたしの名前はシトラー侯爵の娘でセリーヌと申します。本日はお茶会に参加させていただいております」
「母上が子供を集めてお茶会をするので僕も後で少しだけ顔を出すように言われているんだ。
今から行くところなんだけど君もそろそろ席に戻った方がいいのでは?」
そう言ってイーサン殿下がわたしに手を差し出した。
わたしは恐々と手を差し出した。
優しくギュッと握ってくれたイーサン殿下の手はとても暖かくてホッとした。
「行こう」
「はい」
お茶会の席に戻るまでのほんの7分くらいの短い距離だったけど、手を繋いで話をした。
歩いている両脇に咲いている綺麗な花のこと、イーサン殿下が今大好きで読んでいる本の話。
お茶会の席に着いた時、手を離すのが少し残念で、でも席に戻らないといけなくて。
「イーサン殿下、ありがとうございました」
周りの女の子達に
「どうしてイーサン殿下と一緒に来たの?」
「いいなぁ」
なんて言われてわたしはとても嬉しかった。
それからはお母様に頼んでお茶会がある時は出来るだけ出席させてもらった。
もう手を繋ぐことはなかったけど、会えば挨拶を交わすことができる関係になれて誇らしかった。
なのに、イーサン殿下はカトリーヌ様と婚約した。
もしかしてわたしが選ばれるのではないかと内心期待していた。
お父様もお母様も、「セリーヌとイーサン殿下は話をしたりお互い笑顔で挨拶をするくらい仲良しだからもしかしたら婚約もあるかもしれないわ」
「我が家は侯爵家だからイーサン殿下にとっては釣り合いが取れているはずだしセリーヌが選ばれてもおかしくはないだろう」
と言ってくれていた。
子供の集まりのお茶会は、イーサン殿下の婚約者選びや側近候補を選ぶためでもある。
だから親しくなったわたしは第一候補だろうと言われていた。
なのに……ほとんど顔を出したことがなかったカトリーヌ様が選ばれた。
わたしのどこが劣っていたのだろう。
彼女は確かにピンク色の髪がとても綺麗だし顔もとても可愛らしい。思わずわたし達同じ年の女の子も「可愛い」と思ってしまうし、男の子達は彼女に釘付けになる子もいた。
そしてイーサン殿下は……カトリーヌ様をいつも気にしていた。
他の女の子達はみんなイーサン殿下と仲良くなろうとするのにカトリーヌ様は興味がないみたいでイーサン殿下の顔すら見ようとしない。
お菓子を美味しそうに食べたり、青い空を見ていたり気がついたらいつの間にか姿が見えなくなったりしていた。
そんな彼女をいつも目で追っていたイーサン殿下。そしてそんなイーサン殿下をわたしは目で追っていた。
だからイーサン殿下がカトリーヌ様が気になっていることはわかっていた。
でも王子の婚約者は好きとかそんなことで判断することはない。カトリーヌ様は可愛らしいけど王太子妃として資質があるのか疑問視されていた。
見た目と違いとても元気で活発な人だったから。
それよりも令嬢としてはわたしの方が評判も良かった。
所作も知能も全てわたしの方が上だったはず。
なのに陛下も王妃様もそしてイーサン殿下もカトリーヌ様を気に入ってしまった。
わたしはカトリーヌ様に劣るところなどないのに。
お父様もお母様もかなりお怒りだった。
その怒りの矛先はわたしにきた。
「お前が優秀ではないから婚約者になれなかったのだ」
「どうしてもっとイーサン殿下に媚びらなかったの?」
毎日のように両親に罵倒された。
ーーわたしはイーサン殿下に選ばれなかったダメな子なの?あんなに優しかった両親なのにわたしへの態度はとても酷いものへと変わっていった。
子供が集まるお茶会にお母様と初めて行った時だった。
人見知りがありみんなの輪に入るのが苦手で一人隅っこでじっとしていた。
「リーゼがいないからつまんない」
わたしは誰とも話せず、チラッとお母様の方を見るとお母様は大人の人達と楽しそうに話をしていた。
退屈だし一人で寂しかったわたしは、お茶会の席を離れて近くにある噴水へと歩いて行った。
我が家にある噴水に比べて豪華で庭園の真ん中に格調高く置かれていた。
小さなわたしは下から見上げて
「うわぁ、綺麗」
青い空に水しぶきがキラキラと輝いていてワクワクしながらずっと見入っていた。
「そんなに綺麗なの?」
後ろから声が聞こえた。
「うん!!」
思わず大きな声で返事をして振り返るとそこにはプラチナブロンドの綺麗な髪で瞳はシルバーで整った顔のイーサン殿下が立っていた。
慌てて「申し訳ありません」と頭を下げて固まっていたら
「気にしないで、ここの噴水とっても素敵だよね。僕も大好きな場所なんだ」
優しい笑顔で話しかけて来てくれた。
人見知りのはずのわたしが思わず興奮して話した。
「はい、とても綺麗です、ずっと見ていたいと思ってしまいました」
「君の名前は?」
「失礼致しました。わたしの名前はシトラー侯爵の娘でセリーヌと申します。本日はお茶会に参加させていただいております」
「母上が子供を集めてお茶会をするので僕も後で少しだけ顔を出すように言われているんだ。
今から行くところなんだけど君もそろそろ席に戻った方がいいのでは?」
そう言ってイーサン殿下がわたしに手を差し出した。
わたしは恐々と手を差し出した。
優しくギュッと握ってくれたイーサン殿下の手はとても暖かくてホッとした。
「行こう」
「はい」
お茶会の席に戻るまでのほんの7分くらいの短い距離だったけど、手を繋いで話をした。
歩いている両脇に咲いている綺麗な花のこと、イーサン殿下が今大好きで読んでいる本の話。
お茶会の席に着いた時、手を離すのが少し残念で、でも席に戻らないといけなくて。
「イーサン殿下、ありがとうございました」
周りの女の子達に
「どうしてイーサン殿下と一緒に来たの?」
「いいなぁ」
なんて言われてわたしはとても嬉しかった。
それからはお母様に頼んでお茶会がある時は出来るだけ出席させてもらった。
もう手を繋ぐことはなかったけど、会えば挨拶を交わすことができる関係になれて誇らしかった。
なのに、イーサン殿下はカトリーヌ様と婚約した。
もしかしてわたしが選ばれるのではないかと内心期待していた。
お父様もお母様も、「セリーヌとイーサン殿下は話をしたりお互い笑顔で挨拶をするくらい仲良しだからもしかしたら婚約もあるかもしれないわ」
「我が家は侯爵家だからイーサン殿下にとっては釣り合いが取れているはずだしセリーヌが選ばれてもおかしくはないだろう」
と言ってくれていた。
子供の集まりのお茶会は、イーサン殿下の婚約者選びや側近候補を選ぶためでもある。
だから親しくなったわたしは第一候補だろうと言われていた。
なのに……ほとんど顔を出したことがなかったカトリーヌ様が選ばれた。
わたしのどこが劣っていたのだろう。
彼女は確かにピンク色の髪がとても綺麗だし顔もとても可愛らしい。思わずわたし達同じ年の女の子も「可愛い」と思ってしまうし、男の子達は彼女に釘付けになる子もいた。
そしてイーサン殿下は……カトリーヌ様をいつも気にしていた。
他の女の子達はみんなイーサン殿下と仲良くなろうとするのにカトリーヌ様は興味がないみたいでイーサン殿下の顔すら見ようとしない。
お菓子を美味しそうに食べたり、青い空を見ていたり気がついたらいつの間にか姿が見えなくなったりしていた。
そんな彼女をいつも目で追っていたイーサン殿下。そしてそんなイーサン殿下をわたしは目で追っていた。
だからイーサン殿下がカトリーヌ様が気になっていることはわかっていた。
でも王子の婚約者は好きとかそんなことで判断することはない。カトリーヌ様は可愛らしいけど王太子妃として資質があるのか疑問視されていた。
見た目と違いとても元気で活発な人だったから。
それよりも令嬢としてはわたしの方が評判も良かった。
所作も知能も全てわたしの方が上だったはず。
なのに陛下も王妃様もそしてイーサン殿下もカトリーヌ様を気に入ってしまった。
わたしはカトリーヌ様に劣るところなどないのに。
お父様もお母様もかなりお怒りだった。
その怒りの矛先はわたしにきた。
「お前が優秀ではないから婚約者になれなかったのだ」
「どうしてもっとイーサン殿下に媚びらなかったの?」
毎日のように両親に罵倒された。
ーーわたしはイーサン殿下に選ばれなかったダメな子なの?あんなに優しかった両親なのにわたしへの態度はとても酷いものへと変わっていった。
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