53 / 69
動く!
しおりを挟む
マリウスさんからの告白は適当に流しておくことにした。
ーーま、もう会うこともないし、今日帰国するのだから。
わたしはお世話になった方々に挨拶をして船に乗り込んだ。
船に乗る間際、マリウスさんはわたしの耳元にそっと話しかけてきた。
「また会おう、連絡する」
わたしはその言葉にキョトンとして固まっていると、マーラが「急いで船に乗るわよ」とわたしを急かした。
「あ、う、うん」
わたしはマーラの後を追って急いで船に乗った。
チラッとオリエ様を見るとオリエ様の視線の先には例のイアン様がいた。
マーラ曰くお互い意識はしていたけど進展はなかったらしい。
二人の不器用な恋の話にわたしが口を挟むべきではないけど、勝手にもう一度結ばれたらいいのにと思わずにいられなかった。
やっと寮に帰宅した。
国外研修に行ったものは一週間出勤してから、一月ほど休みをもらえる。
わたしはやっと決心した。
自分のこころの枷を取り除くためにシャルトー国へ向かうことにした。
「カイさんメルーさん、マーラ、わたし実家に一度帰ろうと思います」
「おう、帰れ帰れ!」
カイさんはケラケラ笑った。
「心のままに親に言いたいこと言ってこい!」
「そうね、ずっと心の中でつっかえていたものを吐き出すのはいいのかもしれないわ」
メルーさんも賛成してくれた。
「もう我慢しないでいいと思うの。どんなに辛かったかどんなに悔しかったか親に言っておいでよ。そして帰ってきて待ってるから」
「………うん、ありがとう」
話しているとオリエ様も帰ってきた。
「カトリーヌ?どうしたの?」
わたしが泣いているのをみて慌ててオリエ様が近くに来ると
「カイさん!何したの?」
と何故かカイさんが怒られた。
「お、俺?何もしてない」
「オリエ、今日のカイは何もしていないわよ」
メルーさんもクスクス笑ってカイさんを助けた。
「オリエ様……わたし一度故郷へ帰ってこようと思います。そして気持ちの整理をしたいと思っています」
「…そう……カトリーヌは強い子なのね。わたしなんて…逃げてばかりだわ」
「そんなことありません!女性で元王太子妃で公爵令嬢だったオリエ様が騎士になってるんです。とてもかっこいいと思います。辛いことの方が多い中で騎士として生きていくのは大変なことなのですから!」
「カトリーヌを励ますつもりがわたしが励まされてしまったわ。わたしもカトリーヌの帰りを待っているわ」
「ありがとうございます、言いたいこと言って帰ってきます」
決心してから一週間、バタバタと時間は過ぎた。
国外研修の報告書をまとめたり山のようにある仕事をこなせるだけこなした。
そして長期休暇に入る前日の夜、友人達と食事に行った。
みんなで大騒ぎして飲んで食べて、酔っ払って、気がついたらいつの間にか寮の部屋で寝ていた。
「あ、頭が痛い」
二日酔いの最悪な状態でフラフラしながら寮を出た。
乗合馬車に乗り港へと向かった。
そこにはメルーさんとマーラが待っていた。
「やっぱり二日酔いね、このまま船に乗ったら辛いだけよ、はい、二日酔いの薬と酔い止めの薬。しっかり飲みなさい。それからこれはパン、少し胃に入れておかないとそれこそまた気分が悪くなるからね」
「……ありがとうございます」
「カトリーヌったらお酒弱いくせにあんなに飲むからだよ」
「いやいや、マーラ達が強すぎるのよ」
マーラ達この国の人達はお酒が強い。どんなに飲んでもケロッとしている。
それに合わせて飲んだわたしはえらいと思う。
笑いながら別れた。
「ひと月後帰ってくるから!」
「うん、みんなで待ってるから!」
そして船に乗り込んだ。
メルーさん特製の二日酔いに効く飲み薬はとにかく苦くて不味かった。でもおかげで気分はスッキリしたし酔い止めのおかげで船旅は一人でも楽しむことが出来た。
シャルトー国に着いたらリーゼ様が迎えにきてくれていた。
ジャン様もマッカーシー様も今は文官として王宮内に仕えていて忙しいらしい。
セリーヌ様は学校を卒業してお母様と二人でお姉さまの嫁いでいる国に移り住んだ。
平民にはなったけど、お姉様が侯爵夫人なのでお姉様の嫁ぎ先の領地で執務を手伝いながら暮らしているらしい。いずれはお婿さん方の親戚の養女になり貴族として嫁ぐことになるだろうとリーゼ様が教えてくれた。
「手紙を書こう」わたしがそう呟くと「うん、セリーヌも喜ぶと思うわ」と言ってくれた。
そしてわたしはひと月あまりをリーゼ様のお屋敷でお世話になることになった。
ーーま、もう会うこともないし、今日帰国するのだから。
わたしはお世話になった方々に挨拶をして船に乗り込んだ。
船に乗る間際、マリウスさんはわたしの耳元にそっと話しかけてきた。
「また会おう、連絡する」
わたしはその言葉にキョトンとして固まっていると、マーラが「急いで船に乗るわよ」とわたしを急かした。
「あ、う、うん」
わたしはマーラの後を追って急いで船に乗った。
チラッとオリエ様を見るとオリエ様の視線の先には例のイアン様がいた。
マーラ曰くお互い意識はしていたけど進展はなかったらしい。
二人の不器用な恋の話にわたしが口を挟むべきではないけど、勝手にもう一度結ばれたらいいのにと思わずにいられなかった。
やっと寮に帰宅した。
国外研修に行ったものは一週間出勤してから、一月ほど休みをもらえる。
わたしはやっと決心した。
自分のこころの枷を取り除くためにシャルトー国へ向かうことにした。
「カイさんメルーさん、マーラ、わたし実家に一度帰ろうと思います」
「おう、帰れ帰れ!」
カイさんはケラケラ笑った。
「心のままに親に言いたいこと言ってこい!」
「そうね、ずっと心の中でつっかえていたものを吐き出すのはいいのかもしれないわ」
メルーさんも賛成してくれた。
「もう我慢しないでいいと思うの。どんなに辛かったかどんなに悔しかったか親に言っておいでよ。そして帰ってきて待ってるから」
「………うん、ありがとう」
話しているとオリエ様も帰ってきた。
「カトリーヌ?どうしたの?」
わたしが泣いているのをみて慌ててオリエ様が近くに来ると
「カイさん!何したの?」
と何故かカイさんが怒られた。
「お、俺?何もしてない」
「オリエ、今日のカイは何もしていないわよ」
メルーさんもクスクス笑ってカイさんを助けた。
「オリエ様……わたし一度故郷へ帰ってこようと思います。そして気持ちの整理をしたいと思っています」
「…そう……カトリーヌは強い子なのね。わたしなんて…逃げてばかりだわ」
「そんなことありません!女性で元王太子妃で公爵令嬢だったオリエ様が騎士になってるんです。とてもかっこいいと思います。辛いことの方が多い中で騎士として生きていくのは大変なことなのですから!」
「カトリーヌを励ますつもりがわたしが励まされてしまったわ。わたしもカトリーヌの帰りを待っているわ」
「ありがとうございます、言いたいこと言って帰ってきます」
決心してから一週間、バタバタと時間は過ぎた。
国外研修の報告書をまとめたり山のようにある仕事をこなせるだけこなした。
そして長期休暇に入る前日の夜、友人達と食事に行った。
みんなで大騒ぎして飲んで食べて、酔っ払って、気がついたらいつの間にか寮の部屋で寝ていた。
「あ、頭が痛い」
二日酔いの最悪な状態でフラフラしながら寮を出た。
乗合馬車に乗り港へと向かった。
そこにはメルーさんとマーラが待っていた。
「やっぱり二日酔いね、このまま船に乗ったら辛いだけよ、はい、二日酔いの薬と酔い止めの薬。しっかり飲みなさい。それからこれはパン、少し胃に入れておかないとそれこそまた気分が悪くなるからね」
「……ありがとうございます」
「カトリーヌったらお酒弱いくせにあんなに飲むからだよ」
「いやいや、マーラ達が強すぎるのよ」
マーラ達この国の人達はお酒が強い。どんなに飲んでもケロッとしている。
それに合わせて飲んだわたしはえらいと思う。
笑いながら別れた。
「ひと月後帰ってくるから!」
「うん、みんなで待ってるから!」
そして船に乗り込んだ。
メルーさん特製の二日酔いに効く飲み薬はとにかく苦くて不味かった。でもおかげで気分はスッキリしたし酔い止めのおかげで船旅は一人でも楽しむことが出来た。
シャルトー国に着いたらリーゼ様が迎えにきてくれていた。
ジャン様もマッカーシー様も今は文官として王宮内に仕えていて忙しいらしい。
セリーヌ様は学校を卒業してお母様と二人でお姉さまの嫁いでいる国に移り住んだ。
平民にはなったけど、お姉様が侯爵夫人なのでお姉様の嫁ぎ先の領地で執務を手伝いながら暮らしているらしい。いずれはお婿さん方の親戚の養女になり貴族として嫁ぐことになるだろうとリーゼ様が教えてくれた。
「手紙を書こう」わたしがそう呟くと「うん、セリーヌも喜ぶと思うわ」と言ってくれた。
そしてわたしはひと月あまりをリーゼ様のお屋敷でお世話になることになった。
応援ありがとうございます!
14
お気に入りに追加
3,914
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる