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お散歩。
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「ねえ、お散歩の許可をお医者様にいただいたの。今からあそこの庭園を散歩したいわ」
窓際に立ちそっと庭園を眺めていたわたしはタバサにお願いをした。
「………ティア様は以前はあちらに行かれるのを嫌っておりました」
タバサは珍しく眉を寄せ顰めてみせた。
ーーどうしたのかしら?いつもならこんな顔をすることはないのに。
わたしが記憶を失くして数日、少しずついろんな話をしてくれた。辛い話もあるけど、優しくわたしの気持ちを考えながらゆっくりと寄り添ってくれたわ。
「以前のわたしは……庭園が嫌いだったのかしら?でもタバサは知っているでしょう?わたしがお花が大好きなこと」
「………承知いたしました。すぐに用意をいたします」
部屋から出るのは初めてだった。
カルロとお医者様、そしてグレイ様にしかこの屋敷では会ったことがなかった。
廊下を出るとたくさんの使用人とすれ違った。
みんながわたしに頭を下げる。
だけど少し違和感を感じる。
実家にいた頃は使用人達はいつもみんな笑顔を向けてくれた。
『ティア様!』『お嬢様!』
そう言って優しい笑顔で声をかけてくれた。
ここにいる人たちは声をかけようとすると腫れ物を触るようにビクッとしてすぐに離れて行ってしまう。
「ねえタバサ?わたしはこの屋敷に嫁いできたけど嫌われていたのかしら?」
「……そんなことはございません。ただ……ティア様が……いろいろ辛いことがあって……心を開くことが難しかったのです」
タバサは答えに詰まっているようだった。
「え?わたし?心を閉ざしていたの?……あっ、お父様達に無理やり嫁がされたから?でもそんなにずっと……」
ーーわからないわ、覚えていないから違和感だらけ。でも今のわたしにはそこまで心を閉ざしたのはなぜなのか……ハア、わからない。
屋敷を出て庭園をゆっくりと歩いた。
春の花々はとても綺麗で歩いているだけで心癒された。
ーーやっぱり外の空気はとても気持ちがいいわ。部屋に閉じこもってばかりいたらストレスでおかしくなっちゃうわ。
「ティア様はお疲れではないですか?」
「もうタバサったら、まだほんの少ししか歩いていないのよ?あっ……ねえあそこに可愛らしいお家があるわ。あそこはこの屋敷の離れかしら?」
庭園の奥に白い壁と赤い屋根が特徴的な可愛らしいお家があった。
侯爵家自体はかなり大きな屋敷で外から見ると「うわぁ、我が家に比べると大きさが全然違うのね」と思わず声が漏れたほどだった。
そんな屋敷には似つかない可愛らしいお家に興味が湧いた。
「ねえ、あそこのお家を見に行ってもいいかしら?誰が住んでいるの?近くまでなら驚かれないかしら?」
「おやめください……あそこには踏み入れてはダメだとここの旦那様に言われております」
「グレイ様が?そう……だったらやめておくわ」
グレイ様は目覚めた時一度会ったきりだった。あれから部屋に訪れることもなくわたしはお医者様に毎日診察してもらいながら部屋で過ごした。
やっと今日外に出ることができたけど……この知らない場所でこれからどう暮らしていけばいいのかよくわからなかった。
お父様やお兄様には連絡を出来ないでいる。
仲直りしたいと言ったら会ってくださらないのかしら?
会いたい。今はとにかくお二人に会いたい。
庭園のお手入れされた花達に癒されながらもなぜかあの可愛らしいお家が気になった。
何度となく見てしまう。タバサは言い出したら聞かない。絶対にあっちの方へは行こうとしない。
ダメだと言われたらさらに気になる。
グレイ様がダメだと言ったということはあそこにはグレイ様の愛人が住んでいるとか?
今のわたしにとってグレイ様は旦那様と言うよりもただのおじさんでしかない。
だって威圧的で怖かったし、26歳の男の人なんて16歳(のつもりだった)からするとおじさんでしかないもの。
別にグレイ様に愛人がいてもショックなんて受けないのに。
「はあ、タバサ、久しぶりに歩いたから疲れちゃった。喉も乾いたし、あそこのベンチに座って一休みしてもいいかしら?」
四阿にあるベンチを指さした。
「そうですね、あちらに座っていてください。誰かに飲み物を持ってきてもらえるように頼んできます」
タバサは急いで屋敷へと向かった。
ーーやった!
ちょっとだけ。
小走りであの可愛らしいお家へ向かった。
庭園とはまた違った可愛らしい花壇があってパンジーやビオラが咲いていた。
ーーあんまり近づいたらわたしの顔を見て嫌かもしれないわよね?
一応グレイ様の妻だもの。向こうは顔くらいは知っているかもしれないわよね?
勝手に愛人が住んでいると思い込んでいたわたしは少し離れた場所から見ていた。
白い壁の真ん中に木の扉がある。窓枠は屋根と同じ赤くて外から見えるカーテンはフリルがたくさん施されていてとても可愛い。
愛人ってわたしより若いのかしら?
ーーあっ……いけない、隠れなきゃ!
扉が突然開いた。
誰かが出てきた。
慌てて木の陰に隠れて、そっと覗いた。
綺麗な女性が出てきた。
あっ、うん、予想通りだわ。
「早く!ほんと鈍臭いわね」
女性は外から中を振り返り、誰かに文句を言っていた。
「もう!いい加減にしてちょうだい!手を煩わせないで!」
中に入ったと思ったらまた出てきた。
今度は女の子の腕を掴んで引きずって。
女の子は怖いのか震えてる。
ーー何?この光景は?
グレイ様の愛人と子供?
なんであんな目に遭ってるの?
女の子は泣きながら「ごめんなさい、たたかないで」と言っている。
窓際に立ちそっと庭園を眺めていたわたしはタバサにお願いをした。
「………ティア様は以前はあちらに行かれるのを嫌っておりました」
タバサは珍しく眉を寄せ顰めてみせた。
ーーどうしたのかしら?いつもならこんな顔をすることはないのに。
わたしが記憶を失くして数日、少しずついろんな話をしてくれた。辛い話もあるけど、優しくわたしの気持ちを考えながらゆっくりと寄り添ってくれたわ。
「以前のわたしは……庭園が嫌いだったのかしら?でもタバサは知っているでしょう?わたしがお花が大好きなこと」
「………承知いたしました。すぐに用意をいたします」
部屋から出るのは初めてだった。
カルロとお医者様、そしてグレイ様にしかこの屋敷では会ったことがなかった。
廊下を出るとたくさんの使用人とすれ違った。
みんながわたしに頭を下げる。
だけど少し違和感を感じる。
実家にいた頃は使用人達はいつもみんな笑顔を向けてくれた。
『ティア様!』『お嬢様!』
そう言って優しい笑顔で声をかけてくれた。
ここにいる人たちは声をかけようとすると腫れ物を触るようにビクッとしてすぐに離れて行ってしまう。
「ねえタバサ?わたしはこの屋敷に嫁いできたけど嫌われていたのかしら?」
「……そんなことはございません。ただ……ティア様が……いろいろ辛いことがあって……心を開くことが難しかったのです」
タバサは答えに詰まっているようだった。
「え?わたし?心を閉ざしていたの?……あっ、お父様達に無理やり嫁がされたから?でもそんなにずっと……」
ーーわからないわ、覚えていないから違和感だらけ。でも今のわたしにはそこまで心を閉ざしたのはなぜなのか……ハア、わからない。
屋敷を出て庭園をゆっくりと歩いた。
春の花々はとても綺麗で歩いているだけで心癒された。
ーーやっぱり外の空気はとても気持ちがいいわ。部屋に閉じこもってばかりいたらストレスでおかしくなっちゃうわ。
「ティア様はお疲れではないですか?」
「もうタバサったら、まだほんの少ししか歩いていないのよ?あっ……ねえあそこに可愛らしいお家があるわ。あそこはこの屋敷の離れかしら?」
庭園の奥に白い壁と赤い屋根が特徴的な可愛らしいお家があった。
侯爵家自体はかなり大きな屋敷で外から見ると「うわぁ、我が家に比べると大きさが全然違うのね」と思わず声が漏れたほどだった。
そんな屋敷には似つかない可愛らしいお家に興味が湧いた。
「ねえ、あそこのお家を見に行ってもいいかしら?誰が住んでいるの?近くまでなら驚かれないかしら?」
「おやめください……あそこには踏み入れてはダメだとここの旦那様に言われております」
「グレイ様が?そう……だったらやめておくわ」
グレイ様は目覚めた時一度会ったきりだった。あれから部屋に訪れることもなくわたしはお医者様に毎日診察してもらいながら部屋で過ごした。
やっと今日外に出ることができたけど……この知らない場所でこれからどう暮らしていけばいいのかよくわからなかった。
お父様やお兄様には連絡を出来ないでいる。
仲直りしたいと言ったら会ってくださらないのかしら?
会いたい。今はとにかくお二人に会いたい。
庭園のお手入れされた花達に癒されながらもなぜかあの可愛らしいお家が気になった。
何度となく見てしまう。タバサは言い出したら聞かない。絶対にあっちの方へは行こうとしない。
ダメだと言われたらさらに気になる。
グレイ様がダメだと言ったということはあそこにはグレイ様の愛人が住んでいるとか?
今のわたしにとってグレイ様は旦那様と言うよりもただのおじさんでしかない。
だって威圧的で怖かったし、26歳の男の人なんて16歳(のつもりだった)からするとおじさんでしかないもの。
別にグレイ様に愛人がいてもショックなんて受けないのに。
「はあ、タバサ、久しぶりに歩いたから疲れちゃった。喉も乾いたし、あそこのベンチに座って一休みしてもいいかしら?」
四阿にあるベンチを指さした。
「そうですね、あちらに座っていてください。誰かに飲み物を持ってきてもらえるように頼んできます」
タバサは急いで屋敷へと向かった。
ーーやった!
ちょっとだけ。
小走りであの可愛らしいお家へ向かった。
庭園とはまた違った可愛らしい花壇があってパンジーやビオラが咲いていた。
ーーあんまり近づいたらわたしの顔を見て嫌かもしれないわよね?
一応グレイ様の妻だもの。向こうは顔くらいは知っているかもしれないわよね?
勝手に愛人が住んでいると思い込んでいたわたしは少し離れた場所から見ていた。
白い壁の真ん中に木の扉がある。窓枠は屋根と同じ赤くて外から見えるカーテンはフリルがたくさん施されていてとても可愛い。
愛人ってわたしより若いのかしら?
ーーあっ……いけない、隠れなきゃ!
扉が突然開いた。
誰かが出てきた。
慌てて木の陰に隠れて、そっと覗いた。
綺麗な女性が出てきた。
あっ、うん、予想通りだわ。
「早く!ほんと鈍臭いわね」
女性は外から中を振り返り、誰かに文句を言っていた。
「もう!いい加減にしてちょうだい!手を煩わせないで!」
中に入ったと思ったらまた出てきた。
今度は女の子の腕を掴んで引きずって。
女の子は怖いのか震えてる。
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グレイ様の愛人と子供?
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