【完結】母になります。

アリスちゃんのこと。

　まだまだノエル君の親としての自覚はあまりないけど、ノエル君が可愛くて愛おしい。

　そしてアリスちゃんのこともとても愛らしくて守ってあげたいと思っている。

　二人同時に助けたのだからわたしにとっては二人とも大切。一人が息子で一人は使用人。

　その差をきちんとしないと、態度を分けないといけないと、カルロから注意された。

　もう二人とも体は元気になった。二人一緒に過ごさせて同じ扱いをするべきではない。

　ーーうん、確かに……
　それもノエル君は侯爵子息で跡取り。
　一方アリスちゃんは孤児院にいた子供。



　グレイ様とも相談した。

「ティアはどう思っているんだ？アリスを孤児院に帰したい？それとも使用人として扱う？」

「………わたしは……アリスちゃんのことも可愛いと思っていて………」

　ーー二人を同時に育てたい。それは……でも、貴族としてはおかしい考えなのかしら？
　きちんと使用人としてアリスちゃんを扱うべき？それが他の使用人に対してみせるべき態度なのかしら？

「俺はティアの気持ちに任せたい。アリスを養子に迎えることははっきり言って難しい、うるさい親戚どもが何を言ってくるかわからないし、アリス自身も嫌がらせを受けてしまうだろう。
　だけど、アリスをノエルの友人として迎え、共に過ごすことなら出来る。ここの使用人達もアリスの境遇を知っているし、アリスが弱った状態で保護されているのも見ているから同情的だ。だから特に不満を言う奴はいないと思う……」

「良かった……」

「それと………」
　グレイ様が少し躊躇った。

「えっ？」

「アリスを養子に出すのもいいかもしれない……」

「えっ？さっきと話が違いますよね？」

「君は知らないと思うんだけどカルロの妻がここで働いているんだ」

「カルロの奥さん？誰ですか？」

「メイド長のアリアだ。カルロとアリアの間には長い間子供ができないでいるんだ、もう今は諦めて二人だけで暮らしている」

「アリスちゃんを二人の子供に？」

「カルロはアンミリカにうまく騙され二人が虐待されていることに気が付かなかった……だがアンミリカのやり方は用意周到でバレないように二人に虐待をしていた。
　カルロが顔を出す時は可愛がり楽しそうに過ごしていた。それは食事を運んでいたメイド達も皆口を揃えて証言した。だから助けるのが遅くなったんだ。
　きちんと時間が決まった時にしかあの家に人が来ない。それを知っているアンミリカは全く顔を出したことがないティアが突然現れてかなり驚いたと思う」

「うん、でも、そんなにバレないものなの？」

　ーー3年間もバレない？そんなことありえない！

「アンミリカを雇う前は他の使用人達が面倒をみていたんだ……彼女が面倒をみるようになったのはここ半年くらいだ」

「そうなんだ……詳しい話は聞いてなかったわ。彼女を愛人だと思っていたから、グレイ様との愛し合っている話を聞くのも鬱陶しかったもの。捕まって今は取り調べ中だし、しっかり罪を償って貰わないといけないし、反省してほしいわ」

「鬱陶しい……愛人……絶対にあり得ない！しかし……アンミリカを雇ったのは失敗だった。あれは俺の……幼馴染なんだ……」

「じゃあ、やっぱり関係があったのね！」
　ーーわたしの勘は当たってた！ふふっ！

「違う！ただの幼馴染でそこに恋愛の感情なんで全くない！あいつは離縁して実家に戻ってきていて、俺がノエルのことで困っているのを知って、乳母になると言ってくれたんだ」

「ふうん……その言葉を信じたんだ！最低！最悪！グレイ様のアンミリカさんのことを話す時の言葉に親しみがあったのよね。
　やっぱり信頼関係があったんだ。アンミリカさんには絶対、グレイ様をモノにしようと思っていたはずだわ！」

「ぐっ……友達の言葉を信じた……俺が馬鹿だった……だが別にアンミリカと変な関係ではない、ただ幼い頃からの知り合いで仲が良かっただけだ……それを言わなかったのは変に勘ぐられたくなかったんだ！」

「勘繰る？う～ん、そこは別にいいかな。愛人だろうとなんだろうとわたしの知ったことではないもの」

「…………………ｼｯﾀｺﾄﾃﾞﾊﾅｲ」

　ーー何傷ついた顔しているのかしら？

「二人の関係なんてどうでもいいの、話が逸れたじゃない！
　そんなことよりも、カルロとアリアがアリスちゃんを養子に迎えたいと言っているの？それともグレイ様が無理やり言ったの？」

「……ﾄﾞｳﾃﾞﾓｲｲ………ｿﾝﾅｺﾄﾖﾘ…………………あ、あの、………二人が言ってきたんだ」

「もう！返事が遅い！わたしの言葉にいちいち傷付かないで！」

「……わかってるなら言うな……」

「もう！話が進まないでしょう？アリスちゃんの気持ちを聞かないと返事はできないわ。
　何故かカルロには二人とも懐いてはいるから……でもまだ4歳のアリスちゃんに説明してどこまで理解できるかしら？でもアリスちゃんはしっかりしているから……うーん、とりあえず様子を見て、アリアにも話してみないといけないわね」

「アリアはこの屋敷でもう15年以上働いてくれている。二人は30歳を過ぎてはいるがしっかりアリスを育てていけると思う」

「二人の人柄は接していてわかるわ。でもね、あなたの人を見る目には疑問しかないわ」

　ーーアリスちゃんの幸せ……これから考えなきゃ。