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まずは少しずつ。
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ノエル君の熱は少しずつさがっていった。
「だっこぉ」
熱が下がってからはかなり甘えん坊になりわたしの姿が見えなくなると不安で泣くことが増えた。
アリスちゃんが近くにいればグズることはないけど他の人たちには慣れずに泣きじゃくるので困っている。
「はいはい、抱っこしましょうね?絵本を読んであげましょうか?」
「うん」
「アリスちゃんもここに座って」
ふかふかの絨毯に三人で座ってのんびりと過ごす。アリスちゃんもここの生活に随分慣れてきた。最初は緊張して泣いてばかりの二人だったけど今は笑顔も増え精神的にも安定してきた。
なのに………
「入ってもいいか?」
グレイ様が昼間顔を出しに来ると二人はピシッと固まって笑顔すらなくなる。
絵本を読んでいたのに内容すら頭に入ってこないみたいでわたしの服のどこかをギュッと掴んで離さない。
二人とも目を合わせないように下を向いてしまう。そんな二人を見てグレイ様は毎回ガクンと落ち込んで「これ」と言ってテーブルに二人の好きなクッキーやチョコレートを置いて出ていく。
二人になんとか慣れさせようとするのだけど怖がって「や、やだ」と言われてしまう。
「グレイ様がどうして怖いの?」
「おかおがね、ぐわって、しててね、からだがね、ぶわっておおきくて、やっなの」
ノエル君は涙目になってる。
アリスちゃんは割と人見知りがないのに
「おかおがね、おこってるの」
と言って怖がっている。
なんだかグレイ様が気の毒になってきたけど、強面の顔の人は世の中にたくさんいる。
それでもみんな父親になっているのだから、やはり今まで逃げてきたのがいけなかったのだと思う。
貴族の子育てでは乳母や使用人任せで親が全く関わらない家庭もある。
だけどわたしはお父様とお兄様に大切にされて育った。心が病んだわたしは子供を育てられなかったかもしれないけど今のわたしは心が病んでいない。
記憶がないおかげで以前のわたしを第三者として見ていられる。
多分現実の話なのに、自分のことなのに、どこか他人事に感じてしまう。
だからこそ、以前のわたしについ腹が立ってしまう。この子達に罪はない。ましてやわたしの子供ならあ大切にしなきゃ。アリスちゃんだって無理やりこの屋敷に連れてこられて辛い思いをさせられたのだもの。
二人まとめて大切にすると決めている。グレイ様が傷つこうが彼には努力をしてもらう。
どんな怖い顔だって慣れれば怖くなくなる……と思う……多分。
「グレイ様、部屋に入ってくる時は笑顔です!」
今日は入ってきてすぐにダメ出しをした。
「こ、こうか?」
普段笑わない人が笑うとこうなるのか………
無表情なのに口角だけが無理して上がってるのでメチャメチャ怖い………
ノエル君は慌ててわたしにしがみついてくるし、最近少し怖がらなくなっていたアリスちゃんは一瞬固まって慌てて目を逸らした。
「ハアアー…………」
「おい、お前が笑顔と言うから笑ったのになんだそのため息は?」
「見てください!二人ともいつも以上に怖がってますよ」
「ぐっ……あーー、もう!お前達俺が怖いのか?」
「「……………」」
二人とも突然話を振られて困惑気味。
「マ、マァ。むこうにいく」
怖いのか外に行きたがるノエル君。
「だめ、ノエル、あのひとは、ここのいちばんえらいひと、なのよ?いうこときかないと、またばしって、されちゃうわ」
「ばしっ?ノエルいいこにする。ティア、ノエルいいこ?」
ノエル君はわたしのことを『ママ』と呼んだり『ティア』と呼んだりする。
アリスちゃんは『ティア様』と呼んでくれる。
「ええ、いい子ですよ。
それにパパはバシッなんてしないわ、だから怖くないのよ?
でもいつもパパがお菓子を届けてくださるのだから、そろそろありがとうとお礼を言えるともっといい子になれると思うわ」
「ありがとぉ?」
ノエル君がキョトンとしてわたしを見た。
チラチラとグレイ様を見ながら小さな声で「ありがとぉ」と言った。
アリスちゃんは、タバサに習ったのかスカートをちょこっと摘んで「ありがとぉございます」ときちんとお礼を言えた。
「あ、ああ、俺もそこに座ってもいいか?」
恐る恐る絨毯のところに来てグレイ様が座った。二人ともわたしのそばにいてチラッと見ると顔を隠す。
「「「……………」」」
三人とも見事な無言。
さあどうするのがいいのかしら?
わたしは何冊か絵本を持ってきていたのでグレイ様に一冊絵本を渡した。
「これを俺が読むのか?」
グレイ様は絵本を広げ自分が読み始めた。
その姿が面白くて「ぶっ……あははは」と思わず声を出して笑った。
「ティアが読めと言うから読んでいたんだろう?」
「だって読むのは子供達に読み聞かせするためでしょう?子供にわかるように声を出して読んであげなきゃ。何、無言で一人読んでいるんですか?」
子供達はそんなグレイ様をじっと見て
「ティア、パパ、おかしいね?」とクスクス笑いながらわたしの耳元でこっそり囁いた。
「ほんと、ねっ?パパはダメダメなんだから?」
「だめだめ?」
「ええ、だからノエル君、絵本を一緒に読んであげて?ダメかな?」
「…………………いいよ」
ノエル君はわたしの体からそっと離れてグレイ様のところへ行くとあんなに怖がっていたはずなのに、彼の膝の上にちょこんと座った。
グレイ様は「えっ?」と思わず声が出たが慌てて口を塞いだ。
「パパ、よもう?」
「あ、ああ」
「あのね、このうさぎさんがね、おひめさまに、たすけて、っていうの、そしたら、おひめさまが、うさぎさんをだっこするんだ。あとね、おうじさまも、ほら、ここ、ね?かっこいいの」
ノエル君は絵本を見ながらグレイ様に説明を始めた。わたしがいつも二人に読み聞かせをしてあげるように、ノエル君がグレイ様に読み聞かせを始めたのだ。
その姿が可愛くて思わず口を押さえて笑った。アリスちゃんはそんな二人を見て
「ティアさま……アリス、ここにいていい?」と二人の邪魔をしないようにわたしのそばにくっついてきた。
「ええ、アリスちゃんにはわたしが本を読んであげるわね?」
ノエル君は嬉しそうに説明を続ける。ぎこちない返事をしながらも満更でもないのかグレイ様もノエル君に「これは?」とか「そうか」とか彼なりに怖がらせないように返事をしていた。
わたしもグレイ様もやっと親として一歩を踏み出したところだ。
「だっこぉ」
熱が下がってからはかなり甘えん坊になりわたしの姿が見えなくなると不安で泣くことが増えた。
アリスちゃんが近くにいればグズることはないけど他の人たちには慣れずに泣きじゃくるので困っている。
「はいはい、抱っこしましょうね?絵本を読んであげましょうか?」
「うん」
「アリスちゃんもここに座って」
ふかふかの絨毯に三人で座ってのんびりと過ごす。アリスちゃんもここの生活に随分慣れてきた。最初は緊張して泣いてばかりの二人だったけど今は笑顔も増え精神的にも安定してきた。
なのに………
「入ってもいいか?」
グレイ様が昼間顔を出しに来ると二人はピシッと固まって笑顔すらなくなる。
絵本を読んでいたのに内容すら頭に入ってこないみたいでわたしの服のどこかをギュッと掴んで離さない。
二人とも目を合わせないように下を向いてしまう。そんな二人を見てグレイ様は毎回ガクンと落ち込んで「これ」と言ってテーブルに二人の好きなクッキーやチョコレートを置いて出ていく。
二人になんとか慣れさせようとするのだけど怖がって「や、やだ」と言われてしまう。
「グレイ様がどうして怖いの?」
「おかおがね、ぐわって、しててね、からだがね、ぶわっておおきくて、やっなの」
ノエル君は涙目になってる。
アリスちゃんは割と人見知りがないのに
「おかおがね、おこってるの」
と言って怖がっている。
なんだかグレイ様が気の毒になってきたけど、強面の顔の人は世の中にたくさんいる。
それでもみんな父親になっているのだから、やはり今まで逃げてきたのがいけなかったのだと思う。
貴族の子育てでは乳母や使用人任せで親が全く関わらない家庭もある。
だけどわたしはお父様とお兄様に大切にされて育った。心が病んだわたしは子供を育てられなかったかもしれないけど今のわたしは心が病んでいない。
記憶がないおかげで以前のわたしを第三者として見ていられる。
多分現実の話なのに、自分のことなのに、どこか他人事に感じてしまう。
だからこそ、以前のわたしについ腹が立ってしまう。この子達に罪はない。ましてやわたしの子供ならあ大切にしなきゃ。アリスちゃんだって無理やりこの屋敷に連れてこられて辛い思いをさせられたのだもの。
二人まとめて大切にすると決めている。グレイ様が傷つこうが彼には努力をしてもらう。
どんな怖い顔だって慣れれば怖くなくなる……と思う……多分。
「グレイ様、部屋に入ってくる時は笑顔です!」
今日は入ってきてすぐにダメ出しをした。
「こ、こうか?」
普段笑わない人が笑うとこうなるのか………
無表情なのに口角だけが無理して上がってるのでメチャメチャ怖い………
ノエル君は慌ててわたしにしがみついてくるし、最近少し怖がらなくなっていたアリスちゃんは一瞬固まって慌てて目を逸らした。
「ハアアー…………」
「おい、お前が笑顔と言うから笑ったのになんだそのため息は?」
「見てください!二人ともいつも以上に怖がってますよ」
「ぐっ……あーー、もう!お前達俺が怖いのか?」
「「……………」」
二人とも突然話を振られて困惑気味。
「マ、マァ。むこうにいく」
怖いのか外に行きたがるノエル君。
「だめ、ノエル、あのひとは、ここのいちばんえらいひと、なのよ?いうこときかないと、またばしって、されちゃうわ」
「ばしっ?ノエルいいこにする。ティア、ノエルいいこ?」
ノエル君はわたしのことを『ママ』と呼んだり『ティア』と呼んだりする。
アリスちゃんは『ティア様』と呼んでくれる。
「ええ、いい子ですよ。
それにパパはバシッなんてしないわ、だから怖くないのよ?
でもいつもパパがお菓子を届けてくださるのだから、そろそろありがとうとお礼を言えるともっといい子になれると思うわ」
「ありがとぉ?」
ノエル君がキョトンとしてわたしを見た。
チラチラとグレイ様を見ながら小さな声で「ありがとぉ」と言った。
アリスちゃんは、タバサに習ったのかスカートをちょこっと摘んで「ありがとぉございます」ときちんとお礼を言えた。
「あ、ああ、俺もそこに座ってもいいか?」
恐る恐る絨毯のところに来てグレイ様が座った。二人ともわたしのそばにいてチラッと見ると顔を隠す。
「「「……………」」」
三人とも見事な無言。
さあどうするのがいいのかしら?
わたしは何冊か絵本を持ってきていたのでグレイ様に一冊絵本を渡した。
「これを俺が読むのか?」
グレイ様は絵本を広げ自分が読み始めた。
その姿が面白くて「ぶっ……あははは」と思わず声を出して笑った。
「ティアが読めと言うから読んでいたんだろう?」
「だって読むのは子供達に読み聞かせするためでしょう?子供にわかるように声を出して読んであげなきゃ。何、無言で一人読んでいるんですか?」
子供達はそんなグレイ様をじっと見て
「ティア、パパ、おかしいね?」とクスクス笑いながらわたしの耳元でこっそり囁いた。
「ほんと、ねっ?パパはダメダメなんだから?」
「だめだめ?」
「ええ、だからノエル君、絵本を一緒に読んであげて?ダメかな?」
「…………………いいよ」
ノエル君はわたしの体からそっと離れてグレイ様のところへ行くとあんなに怖がっていたはずなのに、彼の膝の上にちょこんと座った。
グレイ様は「えっ?」と思わず声が出たが慌てて口を塞いだ。
「パパ、よもう?」
「あ、ああ」
「あのね、このうさぎさんがね、おひめさまに、たすけて、っていうの、そしたら、おひめさまが、うさぎさんをだっこするんだ。あとね、おうじさまも、ほら、ここ、ね?かっこいいの」
ノエル君は絵本を見ながらグレイ様に説明を始めた。わたしがいつも二人に読み聞かせをしてあげるように、ノエル君がグレイ様に読み聞かせを始めたのだ。
その姿が可愛くて思わず口を押さえて笑った。アリスちゃんはそんな二人を見て
「ティアさま……アリス、ここにいていい?」と二人の邪魔をしないようにわたしのそばにくっついてきた。
「ええ、アリスちゃんにはわたしが本を読んであげるわね?」
ノエル君は嬉しそうに説明を続ける。ぎこちない返事をしながらも満更でもないのかグレイ様もノエル君に「これは?」とか「そうか」とか彼なりに怖がらせないように返事をしていた。
わたしもグレイ様もやっと親として一歩を踏み出したところだ。
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