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舞踏会。
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舞踏会まであと少し。
アリスちゃんが正式にカルロとアリアの娘になった。アリスちゃんがアリアになついた事ももちろんあるのだけど、グレイ様がーー。
「もしノエルがアリスと結婚したいと言い出したら二人のためにもアリスを貴族令嬢にしておいた方が話が進みやすい。カルロは男爵だから」
ーー知らなかった。
低位貴族は領地を持たず、高位貴族の屋敷で働く者もいる。伯爵家では代々執事や家令をしている家系の人が受け継いでいる。
カルロの場合は、先代が侯爵の時に借金で首が回らなくなり爵位を返そうとしていたカルロの父親を手助けして、今も親子で執事をしているとグレイ様が教えてくれた。
グレイ様の両親はカルロの両親と共に領地で暮らしている……らしい。
わたしたち夫婦の関係について色々と異を唱えたいだろうけど、遠くで見守ってくれているのだろうな。
ーーこんな嫁、本当なら文句の一つや二つ言いたいだろうに。
と言う事で、アリスちゃんはカルロ達と暮らし始めた。だけどこの屋敷から出て行ったわけではない。元々この屋敷の同じ敷地にカルロ夫婦の家は建てられている。
だから二人が出勤している間はこの屋敷でノエル君と二人で過ごしている。
ノエル君が朝起きた時と夜眠る時はそばにいない。だけどノエル君なりに理解してくれているようだ。
「アリアはアリスのままだから、よる、がまんする」
「うん、アリスも、『まま』ってよべるひとが、いてね、とってもうれしいの」
「アリスがわらってる!ノエルね、アリスのえがおがいっちばん、すきぃ!」
「アリスもノエルがわらってるかお、だいすき!」
「おんなじぃ!」
「うん、おなじだね。こんど、アリスのおへやにあそびにきてね?」
「いつ?いま?いくいく!」
「きょうはだぁめ!もうすぐあたらしい、カーテンとベッドがくるの!そしたらきてもいいよ」
「そんなのどうでもいいのに。ぼく、アリスのおへやであそんでみたいな」
「ままがおしごと、おやすみのひ、ね?」
「アリアはいつおやすみ?あした?ねえ?あしたおやすみだよね?」
二人の話を近くで聞いていたアリアはクスクス笑いながら「ノエル様、明日はお仕事です。遊びにぜひ来て欲しいのですが、旦那様の許可が必要です」
「ぱぱ?わかった。ぱぱ、こわいけど、きく!ぱぱ、おこるかな?ままはやさしいのに、ぱぱのおかおは……コワイノ」
「旦那様は怒っているように見えますが、ノエル様のことをとても大切に思っております。怒ったりしないのでぜひ話しかけてあげてください」
「こわくない?」
「ええ、怖くなんてありません」
「ノエル、アリスといっしょにいこう」
「うん!!」
「ノエルがアリスの家に遊びに行きたい?」
「だめ?」ノエル君が必死でグレイ様の顔を恐々見つめている。見つめる目はキラキラしてる。
ーーノエル君の見つめる顔が…か、可愛い!グレイ様も少し顔が緩んでる。
絶対内心悶えてるはずだわ!
「あーー、うん、行くならままも一緒に行くように」
「わたしも?ええ、もちろんついて行くわ」
「「やったぁ!」」
ーーふふっ、二人はずっと仲良しね。昼間はずっと一緒にいられるからお互い寂しくはないみたい。
よかった。二人の笑顔がこのままずっと続いて欲しい。
グレイ様が二人が結婚を、なんて言ったけど有り得ない話ではないわ。こんなに仲良しさんなんだもの。
でも、わたしは幼馴染でとても仲が良かったのに、クリフォードと結ばれることはなかった。まぁ、クリフォードにわたしへの恋愛感情があったのかは分からないけど。
わたしは……大好きだったな。今はかなりグレイ様に絆されている気がする。
彼が真っ直ぐに『ティアを愛しているんだ』と言ってくれる言葉が嬉しく感じる。
初めは『何もこのおじさん』だったのに今は『安心して頼れる人』になった。
もうすぐ舞踏会。
この5年間の記憶を失くしてしまったわたしにとって初めて知人達と会う日。
ハンクスが宝石をいくつか持って屋敷に顔を出した。
「ティア様、今度の舞踏会にはわたしも出席するんです」
「あっ、そうなの?」
ーーなんだか顔が暗いは。
「アリス商団の代表なんだもの。しっかり顔を売るのに舞踏会はいい場所じゃない」
「……そうなんですが……セリナ殿下が嫁がれたウィルジマ国から…セリナ様とマルセーヌ公爵の叔母であるフランソア夫人も舞踏会に参加されるんです」
「そうなの?セリナ様の他にも呼ばれているのね?」
「フランソア夫人と一緒に……帰ってくるんです……アリス商団を作ったお方が……」
「アリス商団を?」
ーー別に困ることではないわよね?
「こんな話をティア様にするのは……セリナ様とご友人だと聞いているからなんです」
「セリナ様?ええ、そうね」
「僕は………アリス商団の代表ですが本当はアリスティアが代表になるべきでした」
ーーアリスティア様………なんだか不思議ね。アリスちゃんとわたしの名前が………
ハンクスは困った顔をしながら掻い摘んで過去の話をしてくれた。この話は貴族の間では皆知っているらしい。
記憶を失くしたわたしは知らなかっただけ。
今回、アリスティア様がフランソア夫人のお供として舞踏会に参加するらしい。
ハンクスはアリスティア様を今も愛していて今回なんとか話しかけたいのだとわたしに言ってきた。
仕事ではフランソア夫人と交流があるもののアリスティア様とは会ってもらえない。今回も避けられてしまうだろう。
フランソア夫人はアリスティア様の味方なので、どんなにハンクスが近寄ろうとしても邪魔される。セリナ様を介して話せるならとわたしに頼みにきた。
「それは難しいのでは?アリスティア様はハンクスのことをどう思っているのかしら?」
「……アリスティアは……この国で暮らすにはあまりにも辛い思い出しかありません。だからこの国から出て行きました。俺はそれを止めることができませんでした……復讐のため彼女を利用して死にそうな目に合わせてしまいました……顔を合わせることができませんでした……恨まれているはずなのに、彼女は優しすぎます……俺はやっとアリス商団を大きくして安定させることができました。やっと彼女に会ってこの商団を返すことができます。アリスティアに詫びて……」
「うーん、よく分からないけど、ハンクスはアリスティア様を愛しているのね?そしてアリスティア様も多分あなたを愛しているのね?
不器用な二人の恋愛……わたし、協力できるか分からないけど、アリスティア様に話しかけてみるわ」
ーーなんだか面倒なことになったけど、アリスティア様に興味がわいたので、会ってみたいと思った。
わたしは家族の愛をたくさんもらって育った、なのに歪んでしまった。アリスティア様は虐げられて育ったのに真っ直ぐに頑張って生きてきた人。
わたしとは真逆な人。とても惹かれる。
◆ ◆ ◆
【妹にあげるわ】の主人公のアリスティアとハンクスの話が少しだけ出てきます。
舞踏会での二人の再会とティアの友人達との再会が次のお話になります。
いつもいいね、エール、感想ありがとうございます。
アリスちゃんが正式にカルロとアリアの娘になった。アリスちゃんがアリアになついた事ももちろんあるのだけど、グレイ様がーー。
「もしノエルがアリスと結婚したいと言い出したら二人のためにもアリスを貴族令嬢にしておいた方が話が進みやすい。カルロは男爵だから」
ーー知らなかった。
低位貴族は領地を持たず、高位貴族の屋敷で働く者もいる。伯爵家では代々執事や家令をしている家系の人が受け継いでいる。
カルロの場合は、先代が侯爵の時に借金で首が回らなくなり爵位を返そうとしていたカルロの父親を手助けして、今も親子で執事をしているとグレイ様が教えてくれた。
グレイ様の両親はカルロの両親と共に領地で暮らしている……らしい。
わたしたち夫婦の関係について色々と異を唱えたいだろうけど、遠くで見守ってくれているのだろうな。
ーーこんな嫁、本当なら文句の一つや二つ言いたいだろうに。
と言う事で、アリスちゃんはカルロ達と暮らし始めた。だけどこの屋敷から出て行ったわけではない。元々この屋敷の同じ敷地にカルロ夫婦の家は建てられている。
だから二人が出勤している間はこの屋敷でノエル君と二人で過ごしている。
ノエル君が朝起きた時と夜眠る時はそばにいない。だけどノエル君なりに理解してくれているようだ。
「アリアはアリスのままだから、よる、がまんする」
「うん、アリスも、『まま』ってよべるひとが、いてね、とってもうれしいの」
「アリスがわらってる!ノエルね、アリスのえがおがいっちばん、すきぃ!」
「アリスもノエルがわらってるかお、だいすき!」
「おんなじぃ!」
「うん、おなじだね。こんど、アリスのおへやにあそびにきてね?」
「いつ?いま?いくいく!」
「きょうはだぁめ!もうすぐあたらしい、カーテンとベッドがくるの!そしたらきてもいいよ」
「そんなのどうでもいいのに。ぼく、アリスのおへやであそんでみたいな」
「ままがおしごと、おやすみのひ、ね?」
「アリアはいつおやすみ?あした?ねえ?あしたおやすみだよね?」
二人の話を近くで聞いていたアリアはクスクス笑いながら「ノエル様、明日はお仕事です。遊びにぜひ来て欲しいのですが、旦那様の許可が必要です」
「ぱぱ?わかった。ぱぱ、こわいけど、きく!ぱぱ、おこるかな?ままはやさしいのに、ぱぱのおかおは……コワイノ」
「旦那様は怒っているように見えますが、ノエル様のことをとても大切に思っております。怒ったりしないのでぜひ話しかけてあげてください」
「こわくない?」
「ええ、怖くなんてありません」
「ノエル、アリスといっしょにいこう」
「うん!!」
「ノエルがアリスの家に遊びに行きたい?」
「だめ?」ノエル君が必死でグレイ様の顔を恐々見つめている。見つめる目はキラキラしてる。
ーーノエル君の見つめる顔が…か、可愛い!グレイ様も少し顔が緩んでる。
絶対内心悶えてるはずだわ!
「あーー、うん、行くならままも一緒に行くように」
「わたしも?ええ、もちろんついて行くわ」
「「やったぁ!」」
ーーふふっ、二人はずっと仲良しね。昼間はずっと一緒にいられるからお互い寂しくはないみたい。
よかった。二人の笑顔がこのままずっと続いて欲しい。
グレイ様が二人が結婚を、なんて言ったけど有り得ない話ではないわ。こんなに仲良しさんなんだもの。
でも、わたしは幼馴染でとても仲が良かったのに、クリフォードと結ばれることはなかった。まぁ、クリフォードにわたしへの恋愛感情があったのかは分からないけど。
わたしは……大好きだったな。今はかなりグレイ様に絆されている気がする。
彼が真っ直ぐに『ティアを愛しているんだ』と言ってくれる言葉が嬉しく感じる。
初めは『何もこのおじさん』だったのに今は『安心して頼れる人』になった。
もうすぐ舞踏会。
この5年間の記憶を失くしてしまったわたしにとって初めて知人達と会う日。
ハンクスが宝石をいくつか持って屋敷に顔を出した。
「ティア様、今度の舞踏会にはわたしも出席するんです」
「あっ、そうなの?」
ーーなんだか顔が暗いは。
「アリス商団の代表なんだもの。しっかり顔を売るのに舞踏会はいい場所じゃない」
「……そうなんですが……セリナ殿下が嫁がれたウィルジマ国から…セリナ様とマルセーヌ公爵の叔母であるフランソア夫人も舞踏会に参加されるんです」
「そうなの?セリナ様の他にも呼ばれているのね?」
「フランソア夫人と一緒に……帰ってくるんです……アリス商団を作ったお方が……」
「アリス商団を?」
ーー別に困ることではないわよね?
「こんな話をティア様にするのは……セリナ様とご友人だと聞いているからなんです」
「セリナ様?ええ、そうね」
「僕は………アリス商団の代表ですが本当はアリスティアが代表になるべきでした」
ーーアリスティア様………なんだか不思議ね。アリスちゃんとわたしの名前が………
ハンクスは困った顔をしながら掻い摘んで過去の話をしてくれた。この話は貴族の間では皆知っているらしい。
記憶を失くしたわたしは知らなかっただけ。
今回、アリスティア様がフランソア夫人のお供として舞踏会に参加するらしい。
ハンクスはアリスティア様を今も愛していて今回なんとか話しかけたいのだとわたしに言ってきた。
仕事ではフランソア夫人と交流があるもののアリスティア様とは会ってもらえない。今回も避けられてしまうだろう。
フランソア夫人はアリスティア様の味方なので、どんなにハンクスが近寄ろうとしても邪魔される。セリナ様を介して話せるならとわたしに頼みにきた。
「それは難しいのでは?アリスティア様はハンクスのことをどう思っているのかしら?」
「……アリスティアは……この国で暮らすにはあまりにも辛い思い出しかありません。だからこの国から出て行きました。俺はそれを止めることができませんでした……復讐のため彼女を利用して死にそうな目に合わせてしまいました……顔を合わせることができませんでした……恨まれているはずなのに、彼女は優しすぎます……俺はやっとアリス商団を大きくして安定させることができました。やっと彼女に会ってこの商団を返すことができます。アリスティアに詫びて……」
「うーん、よく分からないけど、ハンクスはアリスティア様を愛しているのね?そしてアリスティア様も多分あなたを愛しているのね?
不器用な二人の恋愛……わたし、協力できるか分からないけど、アリスティア様に話しかけてみるわ」
ーーなんだか面倒なことになったけど、アリスティア様に興味がわいたので、会ってみたいと思った。
わたしは家族の愛をたくさんもらって育った、なのに歪んでしまった。アリスティア様は虐げられて育ったのに真っ直ぐに頑張って生きてきた人。
わたしとは真逆な人。とても惹かれる。
◆ ◆ ◆
【妹にあげるわ】の主人公のアリスティアとハンクスの話が少しだけ出てきます。
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いつもいいね、エール、感想ありがとうございます。
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