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別ルート もう一つの話。クロード編。
しおりを挟む今回のお話ですが………
クロード殿下とエリーゼが結ばれる、別ルートの話です。
もちろん、この話が「うーん」と思う方は、読むのはやめておいた方がいいと思います。
すみません。
エリーゼがユイナ・ミレーヌに刺されて意識を取り戻して、ユシリスに会いに南の領地に着いたところから始まります。
今回ブラッドは護衛としてついて行きますが、お互い主人と使用人の関係です。恋愛感情はありません。
元影であることは変わりません。
少し「うん?」となるところもあるかもしれませんが、今までの話の流れと少し違うところも出てきます。
それでは、興味のある方……
よろしくお願いいたします。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
夏休みまではあっという間だった。
お父様はわたしを南の領地にやることをとても心配した。
そのため、付き添いとしてユン、ミリア、ブラッドがピッタリとくっついてきた。
本当にピッタリとだ。
馬車に荷物はお願いしてわたし達は列車に乗った。
馬車で襲われるより列車の方が安全だと言うことになった。わたしの両端にユンとミリア。
前にブラッドが座った。
個室を三部屋取ったのでそれぞれゆっくり出来るのに、狭い個室に四人で座った。
「ねえ?もう少し離れてもいいと思うの」
「もし何かあったらどうするのですか?わたしはもう二度と後悔はしたくありません」
ユンが真剣な顔で言うので
「はい、わかりました」
としか言い返せなかった。
こうしてわたしの初めての遠くへの旅行は、親しい人たちと楽しく行くはずがただただ窮屈な旅となった。
寝る時は流石にブラッドは外に出たが、数人の護衛が交代で扉の外に立っていてくれた。
部屋にはユンがミリアが泊まる。
わたしが一人になることはなかった。
そして3日かけて南の領地に着いた。
夏なので暑くて当たり前なのだが、とにかく暑い。
いや、日差しが痛い。
駅を出ると、レンス殿下が馬車で迎えにきてくれた。
街中は木が多く、日陰が多いので思うほど暑くはなかった。
わたしとレンス殿下とブラッド。
ユンとミリアは別の馬車に乗った。
レンス殿下はブラッドを見ると、笑顔で
「久しぶりだね」と挨拶をした。
ブラッドは元王家の影。
知っていて当たり前なのか。
「エリーゼ様、彼はとても優秀で幼いぼくでも知っていました。貴女を守るために王家をやめて公爵家へ行ったのです。そして今も守っているんですね」
「ブラッドは今回ずっと見守ってくれたの。わたしがマリーナ様に拐われた時も。あ、今回の前の時ね。ブラッドは今の時もマリーナ様に拐われた時も助けてくれたらしいの。そしてユイナ・ミレーヌ様の時も助けてくれたの」
「彼の前で話していいのですか?」
「ユンとミリアとブラッドには話しているの。信じてくれているかはわからないけど、先の出来事をいくつか話したら、当たっているから少しは信じてくれていると思うわ、ね?」
ブラッドは頭を縦に頷いた。
「信じられませんが、旦那様もスコット様も同じ事を話されましたので今は信じております」
「エリーゼ様はいいね、信頼できる家臣が居てくれて」
「違うわ、みんなお友達なの。わたし前回は友達すらあまりいなかったの。だから今は心を許せる人達がいて幸せなの」
「僕も貴女達のような信頼出来る人がいてくれるといいのに……」
「あら?わたしはレンス殿下を信頼しているわ。わたしはクロード殿下とは駄目だったけど、貴方は兄として彼とも良い関係なのでは?」
「…僕のことを信頼してくれているのですか?嬉しいです……兄上とは今、やっと少し打ち解けられています。前の時があるので、僕の記憶が仲の悪かった時と仲良く育った時が混ざって気持ちがついて行かない時があります。でも兄上は誠実で優しい人です。前回の時の兄上は愚かでした。でも今の兄上は、あの愚かな時を忘れるくらい素晴らしい人です……
エリーゼ様には聞きたくない話ですね……すみません」
レンス殿下と話すとどうしてもクロード殿下の話が出てしまう。
わたしは気にしないようにしているが、彼は全てを知っているのでお互いが気を遣ってしまう。
「レンス殿下、自然と出てしまうのは仕方がないこと。敢えて避けるより自然の中で出る話はそのままで気にせず行きませんか?」
「わかりました」
レンス殿下も納得してくれて、これからのことを話した。
「エリーゼ様が泊まるのは、僕のお父様の従兄弟であるバルド侯爵の別荘です。今は管理人と使用人が屋敷の管理をしていて主人はいません。もちろん許可は得ています。なので安心して過ごしてください」
「わかりました、ありがとうございます」
わたしは主人がいない事に少しだけホッとした。
やはり人に気を使うのは疲れる。
「護衛はうちの公爵家からもそちらの別荘に配置させています。王都ほど犯罪は多くありませんがもしもの事があるのでブラッドもよろしく頼むよ」
「かしこまりました」
「お母様に会うのは医師の許可がおりた日になるので突然になるかもしれません、お母様の状態が良い時に連絡があります、それまではゆっくりしてください。こちらは田舎なので王都ほどではありませんが、街もそれなりに賑わっていますし、海があります。ぜひ一度海を見てもらいたいです」
南の領地での生活は静かに過ぎていった。
ユンとミリアと三人で散歩をしたり森の湖へピクニックに行ったりした。
海はレンス殿下が連れていってくれた。
私たち三人は海の水を指につけて舐めて、あまりの塩っ辛さに驚いた。
本当に塩の味がした。
そして、「貝」を初めて見た。
砂浜を歩くのも初めて。
普通に歩いているのに、なぜか足取りが重く感じた。
はしたないけど裸足で歩いてみた。
不思議な感覚だった。
砂浜を歩いていると暑いのに気持ちいい風が吹く。
その風が心地よくて裸足で歩く砂浜が楽しくて、また行きたいとお強請りして約束を取り付けた。
帰る前にもう一度行ってみたい。
そんな日々を過ごしていると、レンス殿下から
「今日、母上の体調が珍しく落ち着いているんだ。よかったらエリーゼ様会いにいきませんか?」
ユンとミリアと刺繍を刺していた時のことだった。
「もちろんよ、やっとユシリス様にお会いできるのね」
わたしは急いで支度をした。
ユンとミリアには待っていてもらって、ブラッドと二人でユシリス様のところへ向かった。
別荘からユシリス様が入院していると言う病院までは馬車で20分ほどの距離だった。
そこは病院というより、森の近くにある可愛いお屋敷だった。
真っ白な壁と赤い屋根。
2階建で横に長さがあり、庭は丁寧に手入れされたであろう花々が綺麗に咲き誇っていた。
外に出ている人たちはお年寄りの方も多く、車椅子に座り花をじっと見つめている人、ゆっくりと散歩をしている人、それを介護している人たち。
とても穏やかな時間がここでは過ぎているのだろう。
みんなとても優しそうな顔をしている。
ただ、屋敷の周りは、高い塀で囲まれてしっかりとした門があり、怖そうな門番が守っていて出入りはかなり厳重だった。
外からは人を拒んでいるように見えて重苦しく感じたが、中に入るとおとぎの国に入ったかのような場所だった。
わたしはレンス殿下とブラッドと三人で、ユシリス様の部屋へ向かった。
ブラッドは部屋の外で待つことになった。
先に入ったレンス殿下。
しばらくして「どうぞ入ってください」と声が掛かった。
わたしはあの幼い頃のユシリス様と、今回の前のあの意地悪で怖い記憶しかない。
今回の今のユシリス様はとても穏やかで優しい方だったらしい。
精神を病まれ今はどんな感じなのだろう。
噂ではただ寝込まれているとしか言われていない。
真実は隠されている。
わたしは、ゴクっと唾を飲み込み、久しぶりのユシリス様とお会いする。
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