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入院中はお静かに!

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わたしが意識を取り戻したのは1週間後だった……らしい。

「栄養失調と過労?貴族のお嬢様がなる病気ではないわよ、細いと思っていたけどご飯を食べるお金もなかったと気づかなかったわ、気付いてあげられなくてごめんなさい」

「…………恥ずかしすぎて言えませんでした」
わたしは布団を被り目を合わすこともできなかった。

我が家の諸事情を詳しく知る者はいない。

お父様がお母様が亡くなり働かないでいることは有名だったけど、お母様はこの国内外で有名な画家だった人。
作品は沢山あるのだから生活に困るなんてあり得ないし、今どき栄養失調の貴族なんていない。

わたしはイリーンさんだから本当の話をすることにした。

「お父様は、お母様が亡くなり働く気力を無くしました。
生活のためでも絵を売ることを嫌がって、元々使用人用の屋敷を賃貸にして収入を増やして補っていたのです。それと小さな領地からの収入でなんとかやりくりできていたのですが、この2年ほど不作で領地収入は減って、お父様が管理していた賃貸もお父様が人が良くて払えないと言われると待ってあげたりお金がないと聞いて貸して、夜逃げされたりして、生活が困窮していました。
なのに家がない子供を二人、道を歩いていて倒れていたので助けて養うことになったのでさらに困窮してしまいました。
お恥ずかしい話ですが食い扶持が増えて自分が食べる分を子供達に回していました。
やっと最近父も働き出して絵も一枚だけでしたが売ってくれました。
それも病院代や建物の補修費用、借金の返済ですぐになくなり、まだまだ生活は楽ではありません」

わたしは、イリーンさんの顔を見るのが怖くて布団の中でボソッと言った。

「やっと少しまともに自分の分もきちんと食べる量を確保することができたのですが、もう胃がものをあまり沢山受け付けないのです」

イリーンさんは何も答えなかった。
わたしはずっと布団を被ったまま話していたので、そっと布団から顔を出すと、そこにはイリーンさんだけではなく職場の上司が数人いて、わたしの話を聞いて固まっていた。

え?いつの間に上司がここにきていたの?
わたしは上司に我が家の恥を話したんだと思うと恥ずかしくてまた布団を被って隠れようとした。

「セスティ・アイバーン!何故助けを求めない!
貴女のお母様が亡くなったのは確か5年も前でしょう?まだ貴女が13か14くらいの時のことでしょう?
一人でそんなに苦労する必要なんてないでしょう!」

「は、はい!イリーンさんごめんなさい。
婚約解消されたのですが、グリーンティア伯爵家が助けてくださってはいたのです」

「ランドル・グリーンティアは、セスティ・アイバーンの謂れのない噂に惑わされて婚約解消をした馬鹿な男でしたよね」

「知っていたんですか?」

「うちの部署の上の者達は知っています、貴女が酷い中傷に傷つき婚約解消されたことも貴女の父親が働かないでいることも」

「セスティ、一応君を雇う時に色々事情は調べているんだ。特に君は王太子殿下のことで問題があったからね」

「わ、わたしは、何もしていません!本当です!」

「わかっているよ、グリーンティア伯爵からの口添えもあったし、殿下からも君を守るように頼まれていたんだ」

「ただね、君の生活がそこまで困窮していたことまでは知らなかったんだ、すまなかったね助けてあげられなくて」

「いえ、これは我が家の問題ですから」

「グリーンティア伯爵には助けを求めなかったのかい?」

「少しでも収入を増やす方法は教えてもらいました。でも我が家の細かい事情は誰にも話したことはありませんでした」

「アイバーン殿はまだ王宮内で仕事をしていたな、君が倒れたことも知らせているのに顔を出さないとは……」

「アイツは娘がこんなに苦労して痩せ細っているのに、今まで妻が死んだからと嘆き暮らしていたのか?わたしは殴ってやりたいよ」

あー、わたしがいらないことを言ったばっかりになんだか空気が重たくなってしまった。

「あ、あの、お父様も今はまともに働きだしたのでもう大丈夫です」

わたしがそう言って終わらせようとしたら、部署で一番上の上司の所長が怖かった。

「働くのは当たり前だろう!アイツは娘が栄養失調になって過労で倒れたのにのほほんとしているなんて許せない」

いつもわたしにとても優しい所長にわたしはビクビクしていると

「セスティ、怖がらせてすまないね、ゆっくりと体を回復させて休んでいなさい。きみの父親の再教育はわたし達が全て請け負うからね」

上司達の顔が怖い。

イリーンさんなんか目をギラギラさせている。

お父様の命が……

わたしはイリーンさんだからつい本音を曝け出して話してしまったけど、まさかの他の人もいたとは。

かなり反省しながらも、まだ体調不良のわたしは考えることを手放して、とりあえずもうしばらく眠ることにした。

こんなにゆっくり安心して寝られるのは何年ぶりだろう。

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