【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ

文字の大きさ
63 / 97

63話  アイシャちゃんの悲しい目覚め

しおりを挟む
ハイド様と会うことになった日、キリアン君も何故かわたしの隣に座っていた。

「アイシャお姉ちゃんが嫌なことがあったら助けてあげるのは俺だからね」

キリアン君は不敵な笑みを浮かべた。

ーー最近のキリアン君はなぜか可愛い天使というよりブラックキリアンに見えるのはわたしだけなのか……

「あ、ありがとう。でもハイド様はたぶん大丈夫だと思うわ」



そしてハイド様とカイザ様が部屋に入ってきた。

「ハイド様、お久しぶりです」
わたしは頭を下げて挨拶をした。

頭を上げると、何とも言えない顔をしたハイド様が立っていた。

「…まだわたしのアイシャではないんだな」
分かってはいるはずなのにショックを受けているようだった。

「アイシャ、バナッシユ国ではどんな風に過ごしたんだ?」

「ゴードン様の屋敷にしばらくお邪魔しておりました。そして、キリアン君のお母様やお祖母様にお会いして、そのあと、わたしの父と兄に再会しました。二人とは話をして少しずつですが誤解を解くことができたと思っています。
そしてエリック様……わたしの元婚約者で元王太子殿下であったお方……今は陛下の臣下になられているエリック様ともお話しする機会がありました。
わたしが転生をした意味はもしかしたら、このためにあったのではないかと思っています。
お互いの憂いが晴れたと思います」

ハイド様は「そうか…」と言うとしばらく黙っていた。

「……カイザ様にターナとリサの話は聞いていると思う」

「はい、聞きました」

「君は二人がもし改心したとして、アイシャと会わせるべきだと思うかい?」

「わかりません、わたしが知っているリサ様は気高くとても優しい、情け深い方だと思っています。でもリサ様を狂わせてしまったのはわたしのせいだと思っています。
わたしがリサ様の元で転生などしなければこんな不幸なことは始まりませんでした」

「アイシャお姉ちゃん、俺は生まれ変わってくれて嬉しい、それにアイシャお姉ちゃんがそうしたわけでもないだろ?」

「わたし達だって君が生まれてくることを待ち望んでいたんだ。リサはとても喜び慈しみ可愛がっていた。それは本当なんだ……ただ、それ以上に君の成長がリサよりも優れてしまっていたんだ。彼女は自分より優れているアイシャに嫉妬してしまったんだ、母親としては最低だ。人としても最低だと思う。
でも彼女は今まで常にトップで自分より優れた人をあまり知らないのだと思う。その傲慢さがアイシャに対しても無関心だったり、関心を持った時には酷い言葉を言ったりしたのだと思う」

「……わたしはリサ様の良いところを知っています。でもアイシャちゃんに対する態度はとても褒められるようなものではありません。わたしの頭の中に流れてきたアイシャちゃんの記憶はとても寂しそうでした。いつもターナちゃんだけの両親、それを横で笑ってみているだけのアイシャちゃん。
両親に褒められたくて必死で魔力制御の訓練をしているアイシャちゃん。勉強だって貴族令嬢としてのマナーや作法の勉強だってダンスの練習やピアノだって、別に好きでしたわけではなかった、
ただ少しでも頑張れば二人が褒めてくれるかもしれない、もしかしたらターナちゃんのように自分にも笑いかけてくれるかもしれないと必死で頑張っていたみたいです、いつも家族の前では、笑っていた。笑って誤魔化すしかアイシャちゃんがあの屋敷で過ごすことはできなかったのでしょう」

「……すまない、アイシャを除け者にするつもりなんてなかった」

「そうですか……ここに居るのにその存在自体を無視されてきたアイシャちゃんの苦しみが今もわたしの心を締め付けて……」

「アイシャお姉ちゃん、もういいよ、やめよう、これ以上話しても無駄だよ」
キリアン君がわたしを止めた。

「ハイド様はアイシャお姉ちゃんに会ってどうしたかったのですか?」

「わたしは……アイシャに一目会いたかったんだ。君を傷つけて以来会うことができなかったからただ心配だった」

「ハイド様、アイシャちゃんの体は元気です。でもまだ貴方達家族も含めアイシャちゃんには会わせるべきではなかったみたいです」

「わたしは君の父親なんだ、心配している」

「貴方が心配なのはアイシャちゃんではなくてリサ様とターナ様です。だから、アイシャちゃんを労る気持ちも彼女に寄り添う言葉もないのでしょう。アイシャちゃんが可哀想です」

「わたしは……アイシャを愛している。なぜ何だ?家族を愛してみんなで幸せになりたい、なのにどうして君がいると家族の輪が壊れてしまうんだ?」

「ふふ、それが本音何ですね?」
ハイド様の言葉がわたしの中のアイシャちゃんに伝わってきた。

「……お……と…う……ま………わた……ごめ……い…」

ーーこんな酷い言葉で目覚めるなんて……わたしはアイシャちゃんの中に入っていく……
アイシャちゃん、ごめんなさい、守れなかった、守ってあげたかったのに……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【書籍化決定】愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...