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70話
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「アイシャ、ずるいかもしれないけど今もう一度だけ聞くね、俺とバナッシユ国へ行かないかな?」
返事を先延ばしに……ううん、どうしていいのかわからなくて考えないようにしていた。
「キリアン様、わたしは前世のアイシャではありません。今はルビラ王国に住むアイシャです。
貴方はわたしでいいのですか?」
「俺にとって前世のアイシャはやさしいお姉ちゃんだった。いつも笑って抱きしめてくれる優しい人。
でも目の前にいるアイシャはどんなに辛くてもいつも我慢してみんなの前では必死で笑顔でいる強い子なんだ。
俺にとって君は最初からアイシャお姉ちゃんではなくアイシャなんだ」
ーーそう、わたしはただのアイシャとして見て欲しかったんだ。
だから、学園での生活は楽だったんだ。
わたしの前世なんかしらない。
ただのアイシャだったから。
「キリアン様、ありがとうございます。でもわたしはルビラ王国に生まれてこの国で育ったんです。だからわたしはこの国にいたい」
キリアン様はふっと笑った。
「うん、アイシャはこの国のアイシャだもんね、でもバナッシユ国にいつでも遊びに来て。みんな君のことを待ってるから」
「ありがとうございます」
「次会いに来るときは、絶対捕まえるからね」
キリアン様が何か小さい声で呟いたが、わたしには聞こえなかった。
ーーー
そして、キリアン様は自国へと帰って行った。
「さよならは言わないよ、また会おう」
「………はい」
告白する勇気もなくてわたしの初恋は終わった。
◇ ◇ ◇
メリッサとロウトの結婚式は、本人達の希望であまり豪華にはしなかった。
教会で式を挙げて、公爵家の屋敷のパーティー会場で、使用人みんなで準備をして親族と友人、そして屋敷のみんなが集まってお祝いをした。
まあ、使用人だけで百人は軽くいるので、かなり賑やかだった。
メリッサのウエディングドレスはシルクのレースをふんだんに使い体にフィットしたマーメイドラインのドレスで、メリッサの背が高く細い体にとても合っていて綺麗だった。
わたしは、結婚式の時もパーティーの時もひたすら涙と鼻水が出て、持っていたハンカチは全滅してしまった。
キリアン様からは二人に、バナッシユ国で作られている高級ワインをパーティーのためにとたくさん送られてきた。
お父様とお兄様からは、メリッサのドレスに合わせて髪飾りとネックレス、イヤリングが送られてきた。
どれもバナッシユ国で採れた高級な真珠をたくさん使った、細かい細工のされたものばかりだった。
「こんな高級なものいただけません」
メリッサは送られてきた装飾品を見て固まっていた。
「せっかくメリッサにくださったのだからぜひ使いましょう」
わたしの後押しに、「はい」と頷くしかなかったメリッサ。
「アイシャ様、わたしのお給料の何年分でしょうか?」
恐々と真珠のネックレスを触りながらボソッと言ったメリッサ。
わたしはそんなメリッサが本当はとても喜んでくれていたのをわかっていた。
「あら?そんなにメリッサは給料が少なかったの?お祖父様にお願いして増やしてもらうように頼んでおくわね」
「もう!そんなこと言ってません!」
二人でクスクス笑いながら、メリッサに真珠のネックレスとイヤリングをあててみた。
鏡に映るメリッサはとても綺麗だった。
そして今日、ドレスを着て飾りを付けてずっと嬉しそうに微笑んでいるメリッサがとても綺麗で幸せそうでわたしは泣いてしまった。
あ、ちなみに横にいるロウトはメリッサを引き立ててしっかり背筋を伸ばしてガチガチに固まって立っていた。
うん、主役はメリッサだもの。
ロウトは、結婚式が終わってからは、メリッサをとても愛おしそうにみていたけど、わたしはやはりメリッサにしか目がいかなかった。
「アイシャ様、俺のことも少しは褒めてくださいよ、どうですか?カッコいいでしょう?」
「うん、とても素敵だよ、メリッサを十分引き立ててくれているわ」
「俺の結婚式でもあるんですよ!」
「ふふ、二人ともとっても素敵だよ、わたしとお祖父様が参加する所為でパーティーもこの屋敷ですることになってごめんなさい」
わたしとお祖父様が参加することになれば護衛もたくさん配置しないといけない。場所も気楽に身内だけのところでとはいかなくなる。
でもどうしても参加したかったわたしのために、お祖父様が公爵家でしてはどうかと言い出した。
普段夜会や舞踏会を開く会場や小ホールなど離れの屋敷にあるし、料理人達も慣れたものだからみんな喜んで準備をしてくれた。
もちろん着付けや髪を結うのも化粧もみんなプロなので全く困ることはなかった。
困ったのはメリッサとロウトの実家と友人達だった。
でも高位貴族を呼ぶこともないので、堅苦しくないようにみんな軽装で畏まらずに気軽に参加出来るようにと手紙を送り、使用人たちも軽装で参加した。
ヴィズは泣き続けるわたしを見て呆れていた。
「アイシャ、鼻真っ赤だし目も腫れてるし、そんな顔で明日学校行けるのか?」
ーーいや、ほんと、やばいかも。
とってもアットホームで素敵な結婚式だった。
いつかこんな結婚式をわたしも挙げたいなと思ったことはお祖父様には内緒だけど。
言ったらお祖父様が「まだ早い!」と怒りそう。
返事を先延ばしに……ううん、どうしていいのかわからなくて考えないようにしていた。
「キリアン様、わたしは前世のアイシャではありません。今はルビラ王国に住むアイシャです。
貴方はわたしでいいのですか?」
「俺にとって前世のアイシャはやさしいお姉ちゃんだった。いつも笑って抱きしめてくれる優しい人。
でも目の前にいるアイシャはどんなに辛くてもいつも我慢してみんなの前では必死で笑顔でいる強い子なんだ。
俺にとって君は最初からアイシャお姉ちゃんではなくアイシャなんだ」
ーーそう、わたしはただのアイシャとして見て欲しかったんだ。
だから、学園での生活は楽だったんだ。
わたしの前世なんかしらない。
ただのアイシャだったから。
「キリアン様、ありがとうございます。でもわたしはルビラ王国に生まれてこの国で育ったんです。だからわたしはこの国にいたい」
キリアン様はふっと笑った。
「うん、アイシャはこの国のアイシャだもんね、でもバナッシユ国にいつでも遊びに来て。みんな君のことを待ってるから」
「ありがとうございます」
「次会いに来るときは、絶対捕まえるからね」
キリアン様が何か小さい声で呟いたが、わたしには聞こえなかった。
ーーー
そして、キリアン様は自国へと帰って行った。
「さよならは言わないよ、また会おう」
「………はい」
告白する勇気もなくてわたしの初恋は終わった。
◇ ◇ ◇
メリッサとロウトの結婚式は、本人達の希望であまり豪華にはしなかった。
教会で式を挙げて、公爵家の屋敷のパーティー会場で、使用人みんなで準備をして親族と友人、そして屋敷のみんなが集まってお祝いをした。
まあ、使用人だけで百人は軽くいるので、かなり賑やかだった。
メリッサのウエディングドレスはシルクのレースをふんだんに使い体にフィットしたマーメイドラインのドレスで、メリッサの背が高く細い体にとても合っていて綺麗だった。
わたしは、結婚式の時もパーティーの時もひたすら涙と鼻水が出て、持っていたハンカチは全滅してしまった。
キリアン様からは二人に、バナッシユ国で作られている高級ワインをパーティーのためにとたくさん送られてきた。
お父様とお兄様からは、メリッサのドレスに合わせて髪飾りとネックレス、イヤリングが送られてきた。
どれもバナッシユ国で採れた高級な真珠をたくさん使った、細かい細工のされたものばかりだった。
「こんな高級なものいただけません」
メリッサは送られてきた装飾品を見て固まっていた。
「せっかくメリッサにくださったのだからぜひ使いましょう」
わたしの後押しに、「はい」と頷くしかなかったメリッサ。
「アイシャ様、わたしのお給料の何年分でしょうか?」
恐々と真珠のネックレスを触りながらボソッと言ったメリッサ。
わたしはそんなメリッサが本当はとても喜んでくれていたのをわかっていた。
「あら?そんなにメリッサは給料が少なかったの?お祖父様にお願いして増やしてもらうように頼んでおくわね」
「もう!そんなこと言ってません!」
二人でクスクス笑いながら、メリッサに真珠のネックレスとイヤリングをあててみた。
鏡に映るメリッサはとても綺麗だった。
そして今日、ドレスを着て飾りを付けてずっと嬉しそうに微笑んでいるメリッサがとても綺麗で幸せそうでわたしは泣いてしまった。
あ、ちなみに横にいるロウトはメリッサを引き立ててしっかり背筋を伸ばしてガチガチに固まって立っていた。
うん、主役はメリッサだもの。
ロウトは、結婚式が終わってからは、メリッサをとても愛おしそうにみていたけど、わたしはやはりメリッサにしか目がいかなかった。
「アイシャ様、俺のことも少しは褒めてくださいよ、どうですか?カッコいいでしょう?」
「うん、とても素敵だよ、メリッサを十分引き立ててくれているわ」
「俺の結婚式でもあるんですよ!」
「ふふ、二人ともとっても素敵だよ、わたしとお祖父様が参加する所為でパーティーもこの屋敷ですることになってごめんなさい」
わたしとお祖父様が参加することになれば護衛もたくさん配置しないといけない。場所も気楽に身内だけのところでとはいかなくなる。
でもどうしても参加したかったわたしのために、お祖父様が公爵家でしてはどうかと言い出した。
普段夜会や舞踏会を開く会場や小ホールなど離れの屋敷にあるし、料理人達も慣れたものだからみんな喜んで準備をしてくれた。
もちろん着付けや髪を結うのも化粧もみんなプロなので全く困ることはなかった。
困ったのはメリッサとロウトの実家と友人達だった。
でも高位貴族を呼ぶこともないので、堅苦しくないようにみんな軽装で畏まらずに気軽に参加出来るようにと手紙を送り、使用人たちも軽装で参加した。
ヴィズは泣き続けるわたしを見て呆れていた。
「アイシャ、鼻真っ赤だし目も腫れてるし、そんな顔で明日学校行けるのか?」
ーーいや、ほんと、やばいかも。
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