6 / 73
6話 リュシアン初めての父との対面 ④
しおりを挟む
「貴女のことを信用して任せていたのに」
そう言って睨みつけていた旦那様は私の赤くなった頬を見てハッと我に返ったようで、怒りに満ちていた顔が少し青ざめていた。
「っ、す…すまなかった」
そんな顔をするなら最初から叩かなければいいのに。でも不思議に腹が立たなかった。
ああ、男の人なんてこんなものよね。
と、当たり前のように……思う?
これは……多分………記憶にないけど前世の元夫のことを覚えていたのだろう。忘れたくなるくらい、嫌な思い出しかない夫だったのかもしれない。顔も名前も思い出さない、だけど暴力を振るわれたことはなんとなく思い出した。
叩かれることに慣れている自分に苦笑した。
冷静に以前のことを思い出しながらも、足元で怖がって泣くリュシアンの泣き声に我に返った。
「リュシアン?ごめんなさい………大丈夫だから、ね?泣かないで」
屈んで泣き出したリュシアンを抱きしめた。
「か……あ…さまぁ!うっ……わぁ~ん」
私の胸に顔を埋めて泣くリュシアンは体が震えていた。
「怖かったわね、もう大丈夫。早くお部屋へ行きましょう」
抱っこして立ち上がり部屋へ行こうとした私の腕をぐっと掴んだ旦那様。
「待てっ」
「離していただけますか?」
冷たくそう言うと彼の手を振り払った。
「その子は……君の子供なんだろう?誰の子か知らないが伯爵家に置いておく許可を出した覚えはない」
なんてことを言い出すの?この人っ!!
「な、何を……この子は確かに私の子供です……リュシアンは………」
ーー貴方の子供でもあるんですよ?
そう言いたいのに最後の言葉が言えなかった。
ううん、言わせてもらえなかった。
「悪いがその子を屋敷に入れるのはやめてくれ。ソフィアに悪い影響があっては困る」
「………はあ……」
またため息が出た。
怒りよりも呆れてしまってこの人とまともに話すことが馬鹿らしく感じた。
「そうですか……では、私はこの屋敷を出て行かせていただきます。政略結婚でしたので、そろそろお別れしてもよろしいかと。業務提携も上手くいき互いに利益を上げられました」
「ま、待てっ。ソフィアはどうする?」
「貴方が連れてきた子供でしょう?子供に罪はないと思い、リュシアンと同じように愛情を注ぎ育てるつもりでした。でもリュシアンを追い出すのなら私はここに留まるつもりはありません。離縁状はいつでも貴方に渡せるように用意してあります。ジョンソンにお願いして預かってもらっておりますのでサインしてくださればよろしいかと」
もういつでも離縁できるように準備はしていた。こんな歪んだ夫婦関係なんていくら政略結婚とはいえ続けてはいけない。
この人は私が不貞を行ったと思っていたのだろうか。だから帰ってきてからもまともに私と会話をしようとしないし不機嫌だったの?
手紙で子供が生まれたと書いたけど……まさか自分の子供だと思っていなかった?
まともに会話をしていなかったのは確かだけど仕事の引き継ぎや説明で話はたくさんしてきた。一言……何か言ってくれれば……ううん、私も子供のことは避けて話そうとしなかった。
リュシアンがあまりにも不憫だ。
私は……最低な母親だ。意地になって……この子を不幸にしようとしていた。
ソフィアはまだ小さい。一度は私の手元にきた子供なんだからあの子にも愛情をかけて育ててあげたかった。
でも私にとって一番大切なのはリュシアンなの。
「セバスチャン、クローゼットにある私の鞄を取ってきてちょうだい。……馬車は、少しの間だけ貸していただいてもよろしいかしら?」
私は実家に帰るつもりはない。
あそこは私が帰る場所ではない。
事業のために実家とやり取りはしたけどあくまでもお互いの利益のためであってそこに情はない。
私が子供を産んだからといって会いにきてくれたこともリュシアンに何かプレゼントを贈ってくれたこともない。
父は継母の顔色ばかり見て私のことなど利用するだけの娘だとしか思っていない。
玄関を出ようとした時、旦那様が扉の前に立ちはだかった。
「待て。その子だけ追い出せばいい話だろう?ソ、ソフィアだって君に懐いているんだ」
さっきからこの人は……
「私の子供はリュシアンです。ソフィアは貴方の子供でしょう?」
リュシアンも貴方の子供なんですけど。
その言葉は飲み込むことにした。だってリュシアンはこの人に怯えているのだもの。
そう言って睨みつけていた旦那様は私の赤くなった頬を見てハッと我に返ったようで、怒りに満ちていた顔が少し青ざめていた。
「っ、す…すまなかった」
そんな顔をするなら最初から叩かなければいいのに。でも不思議に腹が立たなかった。
ああ、男の人なんてこんなものよね。
と、当たり前のように……思う?
これは……多分………記憶にないけど前世の元夫のことを覚えていたのだろう。忘れたくなるくらい、嫌な思い出しかない夫だったのかもしれない。顔も名前も思い出さない、だけど暴力を振るわれたことはなんとなく思い出した。
叩かれることに慣れている自分に苦笑した。
冷静に以前のことを思い出しながらも、足元で怖がって泣くリュシアンの泣き声に我に返った。
「リュシアン?ごめんなさい………大丈夫だから、ね?泣かないで」
屈んで泣き出したリュシアンを抱きしめた。
「か……あ…さまぁ!うっ……わぁ~ん」
私の胸に顔を埋めて泣くリュシアンは体が震えていた。
「怖かったわね、もう大丈夫。早くお部屋へ行きましょう」
抱っこして立ち上がり部屋へ行こうとした私の腕をぐっと掴んだ旦那様。
「待てっ」
「離していただけますか?」
冷たくそう言うと彼の手を振り払った。
「その子は……君の子供なんだろう?誰の子か知らないが伯爵家に置いておく許可を出した覚えはない」
なんてことを言い出すの?この人っ!!
「な、何を……この子は確かに私の子供です……リュシアンは………」
ーー貴方の子供でもあるんですよ?
そう言いたいのに最後の言葉が言えなかった。
ううん、言わせてもらえなかった。
「悪いがその子を屋敷に入れるのはやめてくれ。ソフィアに悪い影響があっては困る」
「………はあ……」
またため息が出た。
怒りよりも呆れてしまってこの人とまともに話すことが馬鹿らしく感じた。
「そうですか……では、私はこの屋敷を出て行かせていただきます。政略結婚でしたので、そろそろお別れしてもよろしいかと。業務提携も上手くいき互いに利益を上げられました」
「ま、待てっ。ソフィアはどうする?」
「貴方が連れてきた子供でしょう?子供に罪はないと思い、リュシアンと同じように愛情を注ぎ育てるつもりでした。でもリュシアンを追い出すのなら私はここに留まるつもりはありません。離縁状はいつでも貴方に渡せるように用意してあります。ジョンソンにお願いして預かってもらっておりますのでサインしてくださればよろしいかと」
もういつでも離縁できるように準備はしていた。こんな歪んだ夫婦関係なんていくら政略結婚とはいえ続けてはいけない。
この人は私が不貞を行ったと思っていたのだろうか。だから帰ってきてからもまともに私と会話をしようとしないし不機嫌だったの?
手紙で子供が生まれたと書いたけど……まさか自分の子供だと思っていなかった?
まともに会話をしていなかったのは確かだけど仕事の引き継ぎや説明で話はたくさんしてきた。一言……何か言ってくれれば……ううん、私も子供のことは避けて話そうとしなかった。
リュシアンがあまりにも不憫だ。
私は……最低な母親だ。意地になって……この子を不幸にしようとしていた。
ソフィアはまだ小さい。一度は私の手元にきた子供なんだからあの子にも愛情をかけて育ててあげたかった。
でも私にとって一番大切なのはリュシアンなの。
「セバスチャン、クローゼットにある私の鞄を取ってきてちょうだい。……馬車は、少しの間だけ貸していただいてもよろしいかしら?」
私は実家に帰るつもりはない。
あそこは私が帰る場所ではない。
事業のために実家とやり取りはしたけどあくまでもお互いの利益のためであってそこに情はない。
私が子供を産んだからといって会いにきてくれたこともリュシアンに何かプレゼントを贈ってくれたこともない。
父は継母の顔色ばかり見て私のことなど利用するだけの娘だとしか思っていない。
玄関を出ようとした時、旦那様が扉の前に立ちはだかった。
「待て。その子だけ追い出せばいい話だろう?ソ、ソフィアだって君に懐いているんだ」
さっきからこの人は……
「私の子供はリュシアンです。ソフィアは貴方の子供でしょう?」
リュシアンも貴方の子供なんですけど。
その言葉は飲み込むことにした。だってリュシアンはこの人に怯えているのだもの。
2,273
あなたにおすすめの小説
王子様への置き手紙
あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる