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17話
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もちろん私は旦那様を許す気はない。
離縁するつもりでこの話し合いに臨んだ。リュシアンをこの伯爵家の嫡子だと認めてもらうために。そしてしっかりと謝罪させてこれまでの働きに見合う慰謝料をもらうつもりだ。
さぁ、なんて話を持っていったらいいのだろう。出来るだけこちらに有利になるように話をしなければ。
そんなことを考えていたらーー
「旦那様!」
扉を慌ててノックするのは家令のジョンソンだった。
どうしたのかしら?私と旦那様が話し合いをしているのは知っているはずなのに。
邪魔をするなんて彼にしては珍しいことだわ。
「なんだ?」
仕方なさそうに席を立ち、扉を開けた。
「あ、あの…ソフィア様が…」
「ソフィア?どうした?サラが面倒をみているはずだろう?」
「はい、それが……」
私の方へと視線をチラリと向けて少し小さな声になったジョンソン。
「ソフィア様の母だと名乗る方がお見えになっております」
「レベッカ嬢が?」
「はい……レベッカ・ジャクソン様……辺境伯爵のご令嬢だと思われます」
「…は?なぜ?突然?」
「…………お待ちください」
扉の向こうから慌てた声が聞こえてきた。
「あらぁ?ネージュ様、久しぶりね?」
突然扉から姿を現した女性は栗色の髪をクルクルと巻いて真っ赤な派手なドレスと濃いめの化粧がつい目にいってしまう人だった。
そしてその女性は「ネージュ様ぁ!」とよろけるように抱きついた。ネージュは驚いた顔をしながらも思わずその女性を勢い余ったのか知らないけど……知らないけど、わざとじゃないの?と思って見ていたら、抱きついた女性を優しく抱き寄せた。
う、うん?私に見せつけるため敢えて?さっきまでの話は?
なんなのこの二人?
眉根をグッと寄せて私は二人の抱き合う姿を見ていた。
なぜかまたため息が出た。
「ハア~~」
「あっ……」
旦那様が私のため息に反応してその女性から慌てて離れた。
私は冷たい目で二人を見た後、にこりと優雅に微笑んだ。
「ではお話はこれで終わりにしましょう。離縁の書類はセバスチャンに渡しておきます。
あ、その前にリュシアンをこの伯爵家の子供として認めてくださいね。書類上は貴方の息子として出生届は出しておりますが、不承知などと言い出されては裁判をするしかなくなります。少しでもリュシアンの将来のために無駄なお金は使いたくはありませんので、よろしくお願いいたします」
私のことを浮気者だと思ったこの人とこれ以上話す気にもなれず、勝手に女性と抱き合っていればいいのよ、と呆れながら部屋を出ていった。
私の背中の後ろから聞こえる話し声。
「ネージュ様、ソフィアはどうしてます?」
「今はメイドが面倒をみてくれているよ」
一体何がしたいのかしら?いきなり押しかけてきたさっきの女性が、例の媚薬事件の時の令嬢なのだろう。
二人で夫婦ごっこをしたいならすればいい。
私に見せつけるように甘えて……なんだかムカムカする。
セバスチャンの家に帰るとアンナとリュシアンが私の帰りを待ってくれていた。
「おかえりぃ、ソフィアは?どこ?」
リュシアンはソフィアも連れて帰ってくると思っていたみたいで、私の後ろを覗いた。
「.…い、いない……ソフィアは?ねぇかあさま?」
瞳に涙をためて泣くのを堪えているリュシアンの前にそっと跪く。
「リュシアンには母様がいるでしょう?ソフィアにも本当の母様がいて、さっきお屋敷にきていたの。二人は親子だから久しぶりに会ってるの」
「ソフィアは…ぼくのいもうとだよ」
「リュシアンはお兄ちゃんでとっても仲良くしてくれたもの。ありがとう、ソフィアもとてもリュシアンが大好きだと思うわ」
「おにいちゃんは……なかない」
「うん、リュシアンはお兄ちゃんだもの」
ーーごめんね、辛い思いさせて。
大人の都合に振り回されてしまったリュシアンもソフィアも可哀想で……自分自身何もしてあげられなくて悔しくて腹が立って悔しい。
でもまさかソフィアと会えると思っているなんて。
母親失格ね。旦那様との話し合いばかりに気をとられて、あの子の体調のことや元気にしているか、全く尋ねていない。
「ソフィアにもさよならして、ここを出ないといけないわね」
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
「レベッカ嬢、突然どうしてここに?」
「王都に用事があったの。ついでに心配だからソフィアに会いたくて。ふふふ」
「そうですか………」
俺はどうしても知りたかった。
「俺の手紙に細工したのは貴女ですか?」
「えっ?何のことかしら?手紙?」
「はい、戦時中に謁見した手紙に手を加えることが簡単にできたのは貴女が命令したからですよね?」
「ええ~?私が?どうして?奥様が子供を産んだことを態々知らせないようにしたとでも言うの?
プレゼントはたくさんの使用人の誰かが代わりに大切に使っているのではないかしら?全て私の勝手な想像だけど、ねっ?」
自分がしたことを隠そうともしない。一体何を考えているんだ。
離縁するつもりでこの話し合いに臨んだ。リュシアンをこの伯爵家の嫡子だと認めてもらうために。そしてしっかりと謝罪させてこれまでの働きに見合う慰謝料をもらうつもりだ。
さぁ、なんて話を持っていったらいいのだろう。出来るだけこちらに有利になるように話をしなければ。
そんなことを考えていたらーー
「旦那様!」
扉を慌ててノックするのは家令のジョンソンだった。
どうしたのかしら?私と旦那様が話し合いをしているのは知っているはずなのに。
邪魔をするなんて彼にしては珍しいことだわ。
「なんだ?」
仕方なさそうに席を立ち、扉を開けた。
「あ、あの…ソフィア様が…」
「ソフィア?どうした?サラが面倒をみているはずだろう?」
「はい、それが……」
私の方へと視線をチラリと向けて少し小さな声になったジョンソン。
「ソフィア様の母だと名乗る方がお見えになっております」
「レベッカ嬢が?」
「はい……レベッカ・ジャクソン様……辺境伯爵のご令嬢だと思われます」
「…は?なぜ?突然?」
「…………お待ちください」
扉の向こうから慌てた声が聞こえてきた。
「あらぁ?ネージュ様、久しぶりね?」
突然扉から姿を現した女性は栗色の髪をクルクルと巻いて真っ赤な派手なドレスと濃いめの化粧がつい目にいってしまう人だった。
そしてその女性は「ネージュ様ぁ!」とよろけるように抱きついた。ネージュは驚いた顔をしながらも思わずその女性を勢い余ったのか知らないけど……知らないけど、わざとじゃないの?と思って見ていたら、抱きついた女性を優しく抱き寄せた。
う、うん?私に見せつけるため敢えて?さっきまでの話は?
なんなのこの二人?
眉根をグッと寄せて私は二人の抱き合う姿を見ていた。
なぜかまたため息が出た。
「ハア~~」
「あっ……」
旦那様が私のため息に反応してその女性から慌てて離れた。
私は冷たい目で二人を見た後、にこりと優雅に微笑んだ。
「ではお話はこれで終わりにしましょう。離縁の書類はセバスチャンに渡しておきます。
あ、その前にリュシアンをこの伯爵家の子供として認めてくださいね。書類上は貴方の息子として出生届は出しておりますが、不承知などと言い出されては裁判をするしかなくなります。少しでもリュシアンの将来のために無駄なお金は使いたくはありませんので、よろしくお願いいたします」
私のことを浮気者だと思ったこの人とこれ以上話す気にもなれず、勝手に女性と抱き合っていればいいのよ、と呆れながら部屋を出ていった。
私の背中の後ろから聞こえる話し声。
「ネージュ様、ソフィアはどうしてます?」
「今はメイドが面倒をみてくれているよ」
一体何がしたいのかしら?いきなり押しかけてきたさっきの女性が、例の媚薬事件の時の令嬢なのだろう。
二人で夫婦ごっこをしたいならすればいい。
私に見せつけるように甘えて……なんだかムカムカする。
セバスチャンの家に帰るとアンナとリュシアンが私の帰りを待ってくれていた。
「おかえりぃ、ソフィアは?どこ?」
リュシアンはソフィアも連れて帰ってくると思っていたみたいで、私の後ろを覗いた。
「.…い、いない……ソフィアは?ねぇかあさま?」
瞳に涙をためて泣くのを堪えているリュシアンの前にそっと跪く。
「リュシアンには母様がいるでしょう?ソフィアにも本当の母様がいて、さっきお屋敷にきていたの。二人は親子だから久しぶりに会ってるの」
「ソフィアは…ぼくのいもうとだよ」
「リュシアンはお兄ちゃんでとっても仲良くしてくれたもの。ありがとう、ソフィアもとてもリュシアンが大好きだと思うわ」
「おにいちゃんは……なかない」
「うん、リュシアンはお兄ちゃんだもの」
ーーごめんね、辛い思いさせて。
大人の都合に振り回されてしまったリュシアンもソフィアも可哀想で……自分自身何もしてあげられなくて悔しくて腹が立って悔しい。
でもまさかソフィアと会えると思っているなんて。
母親失格ね。旦那様との話し合いばかりに気をとられて、あの子の体調のことや元気にしているか、全く尋ねていない。
「ソフィアにもさよならして、ここを出ないといけないわね」
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
「レベッカ嬢、突然どうしてここに?」
「王都に用事があったの。ついでに心配だからソフィアに会いたくて。ふふふ」
「そうですか………」
俺はどうしても知りたかった。
「俺の手紙に細工したのは貴女ですか?」
「えっ?何のことかしら?手紙?」
「はい、戦時中に謁見した手紙に手を加えることが簡単にできたのは貴女が命令したからですよね?」
「ええ~?私が?どうして?奥様が子供を産んだことを態々知らせないようにしたとでも言うの?
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