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16話
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旦那様は私の質問に眉をピクリと動かした……が、しばらく黙ったまま全く口を開かなかった。
ほんと、このお方、人のことは責めたくせに自分のことは話すつもりはないのかしら?
少しは何か言ってくれないと何にも前に進まないわ。離縁するにしてもリュシアンが伯爵家の息子だときちんと認めてもらわなくてはそれこそ誰の子だと後ろ指をさされて生きていかなければいけなくなる。
このままでは離縁したら平民になるか、伯父様にリュシアンの後見人になってもらい名だけでも貴族として残してもらって過ごすしかない。
「はあぁ~」
またため息が出た。
私のため息にピクリと眉を動かした。
「…………すまない」
「すまないとは?浮気して子供を作ったことですか?リュシアンを自分の子だと認めなかったことですか?それとも私の頬を叩いたことですか?」
「………っ…ぐ………いや、言い訳はよくない……すまなかった……俺は友人たちの噂に惑わされ、そして君を正面から見ることができなくて、態ときつい態度をとってしまった。その……手紙も執務についての報告だけでそこに気持ちがないのかと……つい不信感もあって……いや……俺は……」
小さな声でぶつぶつと言いながら旦那様が髪をガシガシと掻いた。
「旦那様?」
「うん……」
「旦那様……?ネージュ様?」
「ああ……ルシナ……俺はソフィアの父親なのか違うのかわからないんだ……世話になった辺境伯の娘と……その……一度だけ……」
「浮気をしたの?」
まぁ、したから子供が自分の子供かもなんて思ってるのよね。聞くだけ野暮よね。
「それも……わからない……」
「したから、子供ができたんでしょう?」
「媚薬を盛られる事件があったんだ……その時、処理をしなければならなくて……娼館からその…女性を呼んでもらって……のはずが……目が覚めたら辺境伯の娘がいて……避妊薬を飲んでもらったはずが……いつの間にか妊娠して子供が生まれていて……髪がブロンドで……俺の子か聞こうとしたけど、答えてもらえなくて……」
「それで?」
「何も訊かずに戦争が終わったらソフィアを王都の俺の屋敷に連れていってほしい、しばらく預かってほしいと頼まれたんだ。そしたら俺の子だと言わないと言われて……」
「じゃあ、旦那様の子供なんじゃないの?」
「………っ…そうかもしれない」
旦那様とこんなに話をしたのは初めてかしら?
「どうして何も説明をしなくて無理やり押し付けたのか教えてほしいの」
「君をみて、どう話せばいいのかわからなくて……それに手紙だっていつも素っ気ないもので……俺だけが会いたかったんだと思うと腹が立って……」
「私はいつも報告とは別に貴方に子供について手紙を書いていました」
「それなんだが……俺は一度もリュシアンについての手紙はもらっていない」
「……やっぱり……誰かが手紙を改竄してたの?」
「俺は君へ、元気でいるだろうか、今何をして過ごしているのかと手紙を書いていた。それに誕生日やお祝いのたびに気持ちばかりだけどプレゼントを贈っていたんだけど、それについても一切触れてこなかった……だから……早く会いたい、早く帰りたいと思っていたのに……素直になれなかった」
「そんなもの一度ももらっていないわ」
「……そんな」
旦那様は愕然と項垂れた。
そのなんともカッコ悪い姿が可笑しくて腹が立っていたのにクスッと笑ってしまった。
「なんで笑うんだ?」
「だって……旦那様を許そうとは思えないけど、空回りばかりでなんだか可笑しくて……ごめんなさい。でも、私の手紙も旦那様の手紙もどうしてそんなことになってるのかしら?」
「……あ……手紙は一度検閲があるんだ…戦地での情報漏洩は戦況に影響する。何気ない話でも、もし敵に伝われば困ることもある。例えば戦地で伝染病が蔓延しているとか、薬品や食料が足りないとか、兵の数が足りないとか、武器のことはもちろん、どこの誰の子供が生まれたとかでも、その子のことをたまたま知らずに敵国の人に何気ない会話で話して人質にされるかもしれない」
え?そんなことあるの?
私の顔が信じられないと言ったように見えたらしく旦那様が苦笑した。
「それは以前の戦いで本当にあった話なんだ。だから怪しい内容や他人の事など敢えて書いていたらそれは相手に渡らないように削除されてしまう……だが、自分の子供が生まれることやプレゼントが届かないのはおかしい……」
うん、私もそう思うわ。
まぁ、自分の子かわからない旦那様も大概だけど。
「その辺は調べてみる」
旦那様は考え込みながらそう言った。何か思い当たることでもあるのかもしれない。
「………リュシアンにもう一度改めて会いたいんだが駄目だろうか?」
「えっ?でも、旦那様、私の頬を叩いたのをリュシアンは見てしまいましたよ?多分怖くて嫌がると思います」
「………そ、そうだな……本当にすまなかった……カッとなったとはいえ女性に手を挙げるなんて……悪かった」
「今更ですね?許してはあげませんよ?とても痛かったのですから」
私はまだ根に持っている。心が狭いのかもしれないけど。
ほんと、このお方、人のことは責めたくせに自分のことは話すつもりはないのかしら?
少しは何か言ってくれないと何にも前に進まないわ。離縁するにしてもリュシアンが伯爵家の息子だときちんと認めてもらわなくてはそれこそ誰の子だと後ろ指をさされて生きていかなければいけなくなる。
このままでは離縁したら平民になるか、伯父様にリュシアンの後見人になってもらい名だけでも貴族として残してもらって過ごすしかない。
「はあぁ~」
またため息が出た。
私のため息にピクリと眉を動かした。
「…………すまない」
「すまないとは?浮気して子供を作ったことですか?リュシアンを自分の子だと認めなかったことですか?それとも私の頬を叩いたことですか?」
「………っ…ぐ………いや、言い訳はよくない……すまなかった……俺は友人たちの噂に惑わされ、そして君を正面から見ることができなくて、態ときつい態度をとってしまった。その……手紙も執務についての報告だけでそこに気持ちがないのかと……つい不信感もあって……いや……俺は……」
小さな声でぶつぶつと言いながら旦那様が髪をガシガシと掻いた。
「旦那様?」
「うん……」
「旦那様……?ネージュ様?」
「ああ……ルシナ……俺はソフィアの父親なのか違うのかわからないんだ……世話になった辺境伯の娘と……その……一度だけ……」
「浮気をしたの?」
まぁ、したから子供が自分の子供かもなんて思ってるのよね。聞くだけ野暮よね。
「それも……わからない……」
「したから、子供ができたんでしょう?」
「媚薬を盛られる事件があったんだ……その時、処理をしなければならなくて……娼館からその…女性を呼んでもらって……のはずが……目が覚めたら辺境伯の娘がいて……避妊薬を飲んでもらったはずが……いつの間にか妊娠して子供が生まれていて……髪がブロンドで……俺の子か聞こうとしたけど、答えてもらえなくて……」
「それで?」
「何も訊かずに戦争が終わったらソフィアを王都の俺の屋敷に連れていってほしい、しばらく預かってほしいと頼まれたんだ。そしたら俺の子だと言わないと言われて……」
「じゃあ、旦那様の子供なんじゃないの?」
「………っ…そうかもしれない」
旦那様とこんなに話をしたのは初めてかしら?
「どうして何も説明をしなくて無理やり押し付けたのか教えてほしいの」
「君をみて、どう話せばいいのかわからなくて……それに手紙だっていつも素っ気ないもので……俺だけが会いたかったんだと思うと腹が立って……」
「私はいつも報告とは別に貴方に子供について手紙を書いていました」
「それなんだが……俺は一度もリュシアンについての手紙はもらっていない」
「……やっぱり……誰かが手紙を改竄してたの?」
「俺は君へ、元気でいるだろうか、今何をして過ごしているのかと手紙を書いていた。それに誕生日やお祝いのたびに気持ちばかりだけどプレゼントを贈っていたんだけど、それについても一切触れてこなかった……だから……早く会いたい、早く帰りたいと思っていたのに……素直になれなかった」
「そんなもの一度ももらっていないわ」
「……そんな」
旦那様は愕然と項垂れた。
そのなんともカッコ悪い姿が可笑しくて腹が立っていたのにクスッと笑ってしまった。
「なんで笑うんだ?」
「だって……旦那様を許そうとは思えないけど、空回りばかりでなんだか可笑しくて……ごめんなさい。でも、私の手紙も旦那様の手紙もどうしてそんなことになってるのかしら?」
「……あ……手紙は一度検閲があるんだ…戦地での情報漏洩は戦況に影響する。何気ない話でも、もし敵に伝われば困ることもある。例えば戦地で伝染病が蔓延しているとか、薬品や食料が足りないとか、兵の数が足りないとか、武器のことはもちろん、どこの誰の子供が生まれたとかでも、その子のことをたまたま知らずに敵国の人に何気ない会話で話して人質にされるかもしれない」
え?そんなことあるの?
私の顔が信じられないと言ったように見えたらしく旦那様が苦笑した。
「それは以前の戦いで本当にあった話なんだ。だから怪しい内容や他人の事など敢えて書いていたらそれは相手に渡らないように削除されてしまう……だが、自分の子供が生まれることやプレゼントが届かないのはおかしい……」
うん、私もそう思うわ。
まぁ、自分の子かわからない旦那様も大概だけど。
「その辺は調べてみる」
旦那様は考え込みながらそう言った。何か思い当たることでもあるのかもしれない。
「………リュシアンにもう一度改めて会いたいんだが駄目だろうか?」
「えっ?でも、旦那様、私の頬を叩いたのをリュシアンは見てしまいましたよ?多分怖くて嫌がると思います」
「………そ、そうだな……本当にすまなかった……カッとなったとはいえ女性に手を挙げるなんて……悪かった」
「今更ですね?許してはあげませんよ?とても痛かったのですから」
私はまだ根に持っている。心が狭いのかもしれないけど。
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