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21話
「す、すまない」
今度はネージュ様が店に現れた。
「もう結構です。私はこれから頑張ってこのお店で稼いで息子を育てたいんです。もちろんリュシアンの将来のために貴族としての名は残しておきたいというのも本音です。でも貴方の恋人に引っ掻き回されたくはありません」
あまりにも小さな声で言い訳をするネージュ様。
「ち、違う……恋人ではない……」
「えっ?何か?もういいですから、二度と私の前に現れないでください。次に会うときは息子が貴方を必要とした時だけです。その時は是非貴方が息子の前で立派な姿を見せられることを願っております。これ以上失望させないでください」
そう言うと「誰かお客様がお帰りなので扉をお開けてして!」と店の従業員に頼んだ。
レベッカ様の時と違いデレっとした姿はもちろんなく、さっさと扉を開けて「どうぞお帰りはこちらです」と言ってネージュ様を帰るように促した。
「いや、俺は……」
まだ何か言おうとするネージュ様に一言。
「一昨日きやがれ!」
「はっ?なに?その言葉の意味?」
「い・い・か・ら・か・え・れ!!」
すごすごと帰っていくネージュ様の後ろ姿に「あー、もう、塩!」と叫んだ。
しっかり塩を巻いて、店の中に入るとすぐに奥の部屋の机に座った。
とにかく仕事!
今度子供向けのパーティーがあるなら新作を考えなくっちゃ。
靴はお姫様みたいなキラキラのついた靴やリボンをあしらったもの。
服だってただ可愛いものもいいけど、前世の時のテレビ番組を思い出して、アイディアが浮かぶ。
ネージュ様やレベッカ様に構っていられない。売り出さなきゃ。
マシューの商会で働くうちのお店専属のクリスティが毎日顔を出してくれる。
「いいアイディアが見つかりました?」
「ええ、もちろん。この靴なんかどうかしら?」
「あら?可愛いらしい。ドレスはこちらですか?」
「子供には出来るだけ軽い素材の生地でドレスを作りたいと思っているの。調べたらリンぜ国のシフォンの生地がとても軽くて良質だと聞いたの、それを使えないかとマシューに取り寄せてもらっているの。
それからレースは私がいた伯爵家で働くメイドのサラから以前教えてもらったんだけど、ユース領のバルサ村に伝わる伝統のレース編みの技術があって、シルク糸で作られたボビンレースは花模様や変わった模様の連続織のレースで、見せてもらったのだけど、他のものよりもより薄く軽く美しいの。是非採用したいと思っているの」
私はサラにもらったレースをクリスティに見せた。
「すごい!!こんな素敵なレース見たことがありません!」
「でしょう?バルサ村にこのレースを独占で販売出来るように契約したの」
離縁の時の慰謝料はここの契約金で支払ったのでかなりの先行投資になったので、実は手持ちがかなり減ってしまった。
でも良い物はみんなに紹介したいし、是非使ってあげたい。
サラのバルサ村ではこんなに素敵なものを作っているのに、悪どい商人に安い値段で買われていた。あまり特産品のない村は貧しくいつも貧困に喘いでいた。
これからは少しずつ生活も向上していってくれると思う。
「うちで扱わせてもらいたいです。会長たちと話し合ってみます」
「ええ、是非」
リュシアンをパーティーに連れて行かなければならないのなら、私も参加することになる。そこには着飾った母親である貴族の夫人たちももちろんたくさん参加するだろう。
稼ぎ時だわ!
たくさんの方々と交流してうちのお店の商品を薦めなくっちゃ!
レベッカ様には嫌な思いをさせられた時、ここは良いように考えてお金儲けをさせてもらったと思おう。
リュシアンには他の子息とは違う衣装を作って注目を浴びなきゃ。
もちろん私もドレスのデザインはしっかりこだわろう。こここそ、前世の記憶を思い出しうまく利用しなくっちゃ。
前世で生きた人生は75年。
シングルマザーはお金はないけど、図書館で読んだ本やテレビ、雑誌で得た情報だけなら沢山ある。
つい今のこの状況に流されてルシナとして生きたつらい日々に気持ちがいってしまうけど、前世のど根性を思い出して、強かに生きなきゃ。
気持ちを切り替えた。
頑張って仕事をしていると2階で子守のおばちゃんと遊んでいたはずのリュシアンが目を擦りながら「かあさま、あそぼぉ」と寂しそうに絵本を持ってきた。
仕事は大事だけど、リュシアンのために始めた子供用のお店。
ふと時計を見るともう午後の2時。昼食の時間も忘れて仕事をしていたみたい。
「うん、絵本を読んであげるからお昼寝しましょう」
「まだねむたくない!」
「お目目がトロンとしているわ。抱っこして絵本を読んであげるわ」
「だっこ?」
嬉しそうに膝の上に座ってきた。
奥の部屋はリュシアンのために絨毯を敷いて遊べるスぺースも作っている。そこに座ってリュシアンを膝に座らせ抱きしめた。
「かあさま、ぎゅってしたら、くるしぃ」
「あら?力が強すぎた?」
「ううん、もっと!!」
「もっと?わかったわ」
小さな温かい子供の体に疲れた体と心が癒やされる。
その昔、娘と息子のために必死で働いた。でもなかなか子供達とゆっくり過ごすことはできなかった。
今世ではリュシアンとの時間も大切にしたい。
そう思いながらリュシアンを抱きしめた。
今度はネージュ様が店に現れた。
「もう結構です。私はこれから頑張ってこのお店で稼いで息子を育てたいんです。もちろんリュシアンの将来のために貴族としての名は残しておきたいというのも本音です。でも貴方の恋人に引っ掻き回されたくはありません」
あまりにも小さな声で言い訳をするネージュ様。
「ち、違う……恋人ではない……」
「えっ?何か?もういいですから、二度と私の前に現れないでください。次に会うときは息子が貴方を必要とした時だけです。その時は是非貴方が息子の前で立派な姿を見せられることを願っております。これ以上失望させないでください」
そう言うと「誰かお客様がお帰りなので扉をお開けてして!」と店の従業員に頼んだ。
レベッカ様の時と違いデレっとした姿はもちろんなく、さっさと扉を開けて「どうぞお帰りはこちらです」と言ってネージュ様を帰るように促した。
「いや、俺は……」
まだ何か言おうとするネージュ様に一言。
「一昨日きやがれ!」
「はっ?なに?その言葉の意味?」
「い・い・か・ら・か・え・れ!!」
すごすごと帰っていくネージュ様の後ろ姿に「あー、もう、塩!」と叫んだ。
しっかり塩を巻いて、店の中に入るとすぐに奥の部屋の机に座った。
とにかく仕事!
今度子供向けのパーティーがあるなら新作を考えなくっちゃ。
靴はお姫様みたいなキラキラのついた靴やリボンをあしらったもの。
服だってただ可愛いものもいいけど、前世の時のテレビ番組を思い出して、アイディアが浮かぶ。
ネージュ様やレベッカ様に構っていられない。売り出さなきゃ。
マシューの商会で働くうちのお店専属のクリスティが毎日顔を出してくれる。
「いいアイディアが見つかりました?」
「ええ、もちろん。この靴なんかどうかしら?」
「あら?可愛いらしい。ドレスはこちらですか?」
「子供には出来るだけ軽い素材の生地でドレスを作りたいと思っているの。調べたらリンぜ国のシフォンの生地がとても軽くて良質だと聞いたの、それを使えないかとマシューに取り寄せてもらっているの。
それからレースは私がいた伯爵家で働くメイドのサラから以前教えてもらったんだけど、ユース領のバルサ村に伝わる伝統のレース編みの技術があって、シルク糸で作られたボビンレースは花模様や変わった模様の連続織のレースで、見せてもらったのだけど、他のものよりもより薄く軽く美しいの。是非採用したいと思っているの」
私はサラにもらったレースをクリスティに見せた。
「すごい!!こんな素敵なレース見たことがありません!」
「でしょう?バルサ村にこのレースを独占で販売出来るように契約したの」
離縁の時の慰謝料はここの契約金で支払ったのでかなりの先行投資になったので、実は手持ちがかなり減ってしまった。
でも良い物はみんなに紹介したいし、是非使ってあげたい。
サラのバルサ村ではこんなに素敵なものを作っているのに、悪どい商人に安い値段で買われていた。あまり特産品のない村は貧しくいつも貧困に喘いでいた。
これからは少しずつ生活も向上していってくれると思う。
「うちで扱わせてもらいたいです。会長たちと話し合ってみます」
「ええ、是非」
リュシアンをパーティーに連れて行かなければならないのなら、私も参加することになる。そこには着飾った母親である貴族の夫人たちももちろんたくさん参加するだろう。
稼ぎ時だわ!
たくさんの方々と交流してうちのお店の商品を薦めなくっちゃ!
レベッカ様には嫌な思いをさせられた時、ここは良いように考えてお金儲けをさせてもらったと思おう。
リュシアンには他の子息とは違う衣装を作って注目を浴びなきゃ。
もちろん私もドレスのデザインはしっかりこだわろう。こここそ、前世の記憶を思い出しうまく利用しなくっちゃ。
前世で生きた人生は75年。
シングルマザーはお金はないけど、図書館で読んだ本やテレビ、雑誌で得た情報だけなら沢山ある。
つい今のこの状況に流されてルシナとして生きたつらい日々に気持ちがいってしまうけど、前世のど根性を思い出して、強かに生きなきゃ。
気持ちを切り替えた。
頑張って仕事をしていると2階で子守のおばちゃんと遊んでいたはずのリュシアンが目を擦りながら「かあさま、あそぼぉ」と寂しそうに絵本を持ってきた。
仕事は大事だけど、リュシアンのために始めた子供用のお店。
ふと時計を見るともう午後の2時。昼食の時間も忘れて仕事をしていたみたい。
「うん、絵本を読んであげるからお昼寝しましょう」
「まだねむたくない!」
「お目目がトロンとしているわ。抱っこして絵本を読んであげるわ」
「だっこ?」
嬉しそうに膝の上に座ってきた。
奥の部屋はリュシアンのために絨毯を敷いて遊べるスぺースも作っている。そこに座ってリュシアンを膝に座らせ抱きしめた。
「かあさま、ぎゅってしたら、くるしぃ」
「あら?力が強すぎた?」
「ううん、もっと!!」
「もっと?わかったわ」
小さな温かい子供の体に疲れた体と心が癒やされる。
その昔、娘と息子のために必死で働いた。でもなかなか子供達とゆっくり過ごすことはできなかった。
今世ではリュシアンとの時間も大切にしたい。
そう思いながらリュシアンを抱きしめた。
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