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27話
マシューの動きは早かった。
確かに荷物は大したことはない。
「リュシアンのためなら」そう言って返事をしたら「じゃあ早速」と当日すぐにエヴァリア公爵家に連れて行かれた。
屋敷に着く。
エヴァリア公爵家の領地にある本家の屋敷に比べれば小さいが、それでも元旦那様の伯爵家や実家の侯爵家の本家よりも大きい。
敷地の面積も使用人の数も桁違い。
手入れされた庭園は全て見て周り歩くのは一日では無理。
お屋敷も大きいが、少し離れた場所に建てられた使用人達のための居住用の建物もかなり大きい。
エヴァリア公爵家お抱えの騎士団もあり敷地には専用の鍛錬のための演習場もある。
レーヴ商会はマシュー……ううん、エヴァリア公爵家にしばらくお世話になるのでマティアス兄様と呼ばなければ使用人達の手前おかしいわね。仕事の時はマシューと呼ぶように言われて呼んでいたけど、いつもは兄様と呼んでいたんだもの。
マティアス兄様はレーヴ商会を趣味で立ち上げた。
元々外国を飛び回り国内に良い物を紹介したいと始めた仕事が思ったよりも成功して、少しずつ商会も大きくなっている。
エヴァリア公爵家からすれば領地から入る高額な税金の収入、鉱山や輸出入で稼ぐ金額に比べれば商会の売り上げなんて微々たるもの。
でもマティアス兄様は少数の貴族だけではなく数多くいる平民の生活を向上させる商品を作り出すことが大切なんだと言ってくれる。
私はそんなマティアス兄様を尊敬している。
「ルシナ、リュシアン久しぶりだな」
屋敷に着くとすぐに当主である伯父様と伯母様にご挨拶をした。
「ご迷惑をおかけ致しますがしばらくお世話になります」
リュシアンが私の挨拶を隣に立ってじっと見ていたと思ったら「おせわ…なります」と頭をペコっと下げた。
「リュシアンいらっしゃい」
伯母様はリュシアンを抱っこして膝に座らせた。
「美味しいケーキを用意してあるのよ?いつしよにたべましょう」
「けーきぃ?たべる!」
さっきまで少し不安そうにキョロキョロして落ち着かなかったのに、今は目をキラキラ輝かせてケーキが来るのを伯母様の膝の上に座って仲良くお話ししながら待っていた。
私はマティアス兄様と伯父様と三人、隣の部屋に移動した。
「ルシナ、リュシアンを公爵家が後ろ盾となり守ろう」
伯父様の言葉に感謝しつつ戸惑いを隠せなかった。
「リュシアンは……ウォーレン伯爵家の嫡男です。離縁したとはいえ籍は置いていますのでいずれ伯爵家を継ぐかもしれません」
ーーリュシアン次第だけど、私が勝手に彼の将来の可能性を消したくない。
「ウォーレン伯爵が再婚して新しい後継者が出来たらどうするんだ?」
「……もちろんその可能性はあると思います。ソフィアだって……後継者としての権利はありますし……考えたことはありますが……嫡男だし、離縁の時弁護士を通して話し合って、リュシアンが継ぎたいと言ったら譲ることは約束されています」
「あのレベッカ嬢が再婚相手ならウォーレン伯爵はいいようにされてしまいそうだ。彼女の言いなりにね」
マティアス兄様も二人のことを思い出しながら渋い顔をした。
「ルシナ、悪いことは言わない。あの家との関係は諦めなさい。私も君の実家のガレイラ侯爵家には愛想が尽きている。妹が亡くなった後すぐに再婚すると聞いてルシナを引き取りたいと言ったんだ」
伯父様はその時のことを思い出したのか唇を噛んで悔しそうにしていた。
「『ルシナは私の大切な娘です。私がしっかりと愛情を持って育てます』と言い切ったんだ。その言葉を信じた。もちろんお前のことは気になっていたから情報だけは集めたが、ルシナは頭も良く令嬢として申し分なく育った、そして家族仲も良く大切に育てられていると聞いていたんだ」
ハァーっとため息をついて肩を落とす伯父様。
「くそっ、情報操作されていて全て出鱈目だと知ったのはお前がレーヴ商会に商売の話を持ってきてくれたからだ………すまなかった……ルシナは幸せに暮らしていると思い込んでいたんだ」
「気にしてくださっていたと知って、それだけで嬉しかったです。結婚前はずっと誰も私のことなんて気にしていないと思っていました。ネージュ様には幻滅しましたが、伯爵家の使用人達は家族のように温かく、毎日が幸せだったんです。久しぶりに家族の愛情をあそこで知ったんです。そして伯父様達と再会できて私のことを愛してくれる血の繋がった家族がここにいることを知って、私は今幸せです」
「そうか……うん、うん、ルシナ、ずっとここにいてもいいんだ。お前がどうしたいかゆっくりと考えなさい。レベッカ嬢や侯爵からは私が守ってやる。辺境伯の騎士団と公爵家の騎士団、どちらが強いか世間に知らしめる時が来たんだな」
うん?なんだか話が怖い方へと言ってる気がする……
「あ、あの……別にそこまでは……」
「くくくっ、ルシナ、今まで何もしてあげられなかったんだ。甘えたらいいと思うよ、父も母も娘と孫ができたと喜んでいるんだ。好きにさせてやってくれ」
確かに荷物は大したことはない。
「リュシアンのためなら」そう言って返事をしたら「じゃあ早速」と当日すぐにエヴァリア公爵家に連れて行かれた。
屋敷に着く。
エヴァリア公爵家の領地にある本家の屋敷に比べれば小さいが、それでも元旦那様の伯爵家や実家の侯爵家の本家よりも大きい。
敷地の面積も使用人の数も桁違い。
手入れされた庭園は全て見て周り歩くのは一日では無理。
お屋敷も大きいが、少し離れた場所に建てられた使用人達のための居住用の建物もかなり大きい。
エヴァリア公爵家お抱えの騎士団もあり敷地には専用の鍛錬のための演習場もある。
レーヴ商会はマシュー……ううん、エヴァリア公爵家にしばらくお世話になるのでマティアス兄様と呼ばなければ使用人達の手前おかしいわね。仕事の時はマシューと呼ぶように言われて呼んでいたけど、いつもは兄様と呼んでいたんだもの。
マティアス兄様はレーヴ商会を趣味で立ち上げた。
元々外国を飛び回り国内に良い物を紹介したいと始めた仕事が思ったよりも成功して、少しずつ商会も大きくなっている。
エヴァリア公爵家からすれば領地から入る高額な税金の収入、鉱山や輸出入で稼ぐ金額に比べれば商会の売り上げなんて微々たるもの。
でもマティアス兄様は少数の貴族だけではなく数多くいる平民の生活を向上させる商品を作り出すことが大切なんだと言ってくれる。
私はそんなマティアス兄様を尊敬している。
「ルシナ、リュシアン久しぶりだな」
屋敷に着くとすぐに当主である伯父様と伯母様にご挨拶をした。
「ご迷惑をおかけ致しますがしばらくお世話になります」
リュシアンが私の挨拶を隣に立ってじっと見ていたと思ったら「おせわ…なります」と頭をペコっと下げた。
「リュシアンいらっしゃい」
伯母様はリュシアンを抱っこして膝に座らせた。
「美味しいケーキを用意してあるのよ?いつしよにたべましょう」
「けーきぃ?たべる!」
さっきまで少し不安そうにキョロキョロして落ち着かなかったのに、今は目をキラキラ輝かせてケーキが来るのを伯母様の膝の上に座って仲良くお話ししながら待っていた。
私はマティアス兄様と伯父様と三人、隣の部屋に移動した。
「ルシナ、リュシアンを公爵家が後ろ盾となり守ろう」
伯父様の言葉に感謝しつつ戸惑いを隠せなかった。
「リュシアンは……ウォーレン伯爵家の嫡男です。離縁したとはいえ籍は置いていますのでいずれ伯爵家を継ぐかもしれません」
ーーリュシアン次第だけど、私が勝手に彼の将来の可能性を消したくない。
「ウォーレン伯爵が再婚して新しい後継者が出来たらどうするんだ?」
「……もちろんその可能性はあると思います。ソフィアだって……後継者としての権利はありますし……考えたことはありますが……嫡男だし、離縁の時弁護士を通して話し合って、リュシアンが継ぎたいと言ったら譲ることは約束されています」
「あのレベッカ嬢が再婚相手ならウォーレン伯爵はいいようにされてしまいそうだ。彼女の言いなりにね」
マティアス兄様も二人のことを思い出しながら渋い顔をした。
「ルシナ、悪いことは言わない。あの家との関係は諦めなさい。私も君の実家のガレイラ侯爵家には愛想が尽きている。妹が亡くなった後すぐに再婚すると聞いてルシナを引き取りたいと言ったんだ」
伯父様はその時のことを思い出したのか唇を噛んで悔しそうにしていた。
「『ルシナは私の大切な娘です。私がしっかりと愛情を持って育てます』と言い切ったんだ。その言葉を信じた。もちろんお前のことは気になっていたから情報だけは集めたが、ルシナは頭も良く令嬢として申し分なく育った、そして家族仲も良く大切に育てられていると聞いていたんだ」
ハァーっとため息をついて肩を落とす伯父様。
「くそっ、情報操作されていて全て出鱈目だと知ったのはお前がレーヴ商会に商売の話を持ってきてくれたからだ………すまなかった……ルシナは幸せに暮らしていると思い込んでいたんだ」
「気にしてくださっていたと知って、それだけで嬉しかったです。結婚前はずっと誰も私のことなんて気にしていないと思っていました。ネージュ様には幻滅しましたが、伯爵家の使用人達は家族のように温かく、毎日が幸せだったんです。久しぶりに家族の愛情をあそこで知ったんです。そして伯父様達と再会できて私のことを愛してくれる血の繋がった家族がここにいることを知って、私は今幸せです」
「そうか……うん、うん、ルシナ、ずっとここにいてもいいんだ。お前がどうしたいかゆっくりと考えなさい。レベッカ嬢や侯爵からは私が守ってやる。辺境伯の騎士団と公爵家の騎士団、どちらが強いか世間に知らしめる時が来たんだな」
うん?なんだか話が怖い方へと言ってる気がする……
「あ、あの……別にそこまでは……」
「くくくっ、ルシナ、今まで何もしてあげられなかったんだ。甘えたらいいと思うよ、父も母も娘と孫ができたと喜んでいるんだ。好きにさせてやってくれ」
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