【完結】戦争から帰ってきた夫が連れてきたのは彼が愛する人の子供だった。

たろ

文字の大きさ
28 / 73

28話  パーティー ①

 公爵家で過ごす日々はとても穏やかだった。
 お店の報告を受けながら新しい商品を考え、マティアス兄様やクリスティ達と意見交換をする日々はとても有意義で私自身も楽しい時間を過ごすことができた。
 リュシアンも伯父様と伯母様が祖父母のように可愛がってくれるし、使用人達もリュシアンに優しく接してくれて毎日笑顔で過ごしている。

 最近はリュシアンもソフィアのことはあまり口に出さなくなった。忘れたとは思わないけどまだ幼い子供なので今の時間を過ごすことが精一杯で思い出す暇がないのかもしれない。

 だけどもうすぐ子供達のお茶会がある。

 その時ソフィアとも会うだろうしレベッカ様とも顔を合わせることは避けられない。

 色々考えると気が重いけどリュシアンにとっては避けては通れない。まだ3歳でも貴族の子息として王宮のお茶会に呼ばれれば顔を出すしかない。
 まぁ、いつものようにみんなとお菓子を食べて庭園を駆け回って遊んでいるだけで大人の社交になるだけなんだけど。

 そして母親である私もたくさんのご婦人達と関わらざるを得ない。

 夫が戦争に行っている間、社交界に伯爵夫人として顔を出してきた。

 それなりに顔を広めたしお店のお客様として今もたくさんの方々が買いに来てくださる。皆離縁した私に対して友好的だ。

 ただ……やはりレベッカ様がどんな行動や発言をするのか、考えると気が重くなるしやはり怖いと感じてしまう。








 そして……とうとう当日。

 昼間のパーティーなので朝早く起きてしっかり朝食を食べた。

 昼間は軽くつまむ程度でお茶を飲んで過ごすことになる。

 リュシアンは「おともだちいっぱい?たのしみだね~」と嬉しそうに朝からしっかり食欲がある。

 私は仕方なく胃に流し込んでる状態なのに。うっ……胃が痛い。

 昼間のお茶会のドレスは夜のように露出度が高く豪華絢爛というより、シンプルな落ち着いたデザインのドレスを着るのが我が国の暗黙のルール。

 私は20歳なのであまりに落ち着きすぎるのも逆に似合わないのでレースをふんだんに使ったシフォン生地の淡いクリーム色のマーメイドドレスを選んだ。

 もちろんレースは私が一押ししたバルサ村でお願いした。とても繊細なレース編みで絶対今回のパーティーでは目立つはず。
 シフォン生地もリンゼ国から取り寄せた。

 マシューは仕事が早い。

 たくさんの人に着ているドレスを見てもらい宣伝するつもり。
 もちろんお店を贔屓にしてもらっているお客様にレースを勧めてドレスを作ってくださった方もいるし、子供用ドレスにリンゼ国のシフォン生地を使って作ってくださった方もいる。

 前世の記憶を思い出しながら超可愛らしいフリフリの子供用のドレスを提案したら速攻採用された。

 デザインはなんとなくこんな感じで、と伝えればデザイナーが形にしてくれた。さすがドレスが当たり前の今世。

 手際もいいし、新しいものはどんどん取り入れて流行を作り出そうと貪欲に私の話を聞いてくれた。

 私が着るドレスはギュウギュウと締め付けるコルセットから前世の締めるところだけ締めてあとは締め付けないコルセットを提案した。もちろん伸縮性のある生地を作り出すのに四年程かかったのだけど、今回私を含め数人に着用してもらいパーティーで着用の感想をみんなの前で話してもらう予定。

 気は重いけどここで一気に売り出したい。

 伯母様は少し心配そうに「私もついて行こうかしら?」と言ってくださる。

 招待状は子供のリュシアンになので付き添い人は二人までは大丈夫。

「伯母様、大丈夫です。今夜のパーティーに参加するのに昼間までとなればお疲れになると思います」

 私も含め貴族は夜のパーティーも参加しなければならない。戦争に勝ったお祝いでもあり戦争で戦った方達への慰労の会としての意味もある。



 準備が終わり馬車に乗り込もうとしたら後ろから声がかかった。

「ルシナ、リュシアン、気をつけて行ってくるんだよ」

 マティアス兄様が少し心配そうな顔をして見送ってくれた。

「近くに護衛を配置させているからね、何かあったら大きな声を出して。ついでに王太子殿下にも声はかけてあるからね」

 私の耳元で小さな声でそう言った。

 そしてにこりと笑った兄様。

 公爵家はこの国ではかなりの財産を有していて発言力も強い。そして王太子殿下とも懇意にしているそうだ。

 私が伯爵夫人の時は貴族の一人として挨拶させていただくことはあっても大勢のうちの一人だった。ほとんど名前すら知られていないと思う。

 そんな私のことを殿下になんて伝えたのだろう。考えるだけで恐ろしくなる。

 馬車の中でつい考え込んでいるとリュシアンが心配そうに覗き込んできた。

「かあさま?」

「………」

「かあさま?だいじょうぶ?」

「……あっ……ごめんなさい、うん、リュシアン、パーティー楽しみね?」

「うん!!ふぃあに、あえるかな?」

 ああ、やっぱりソフィアのことは忘れていないわよね。ソフィアに会えることはわたし自身も嬉しい。

 ただ……レベッカ様が……

 そう思うとまたつい考え込んでしまった。



感想 295

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
【 お知らせ 】 先日、近況ボードにも お知らせしました通り 2026年4月に 完結済みのお話の多数を 一旦closeいたします。 誤字脱字などを修正して 再掲載をするつもりですが 再掲載しない作品もあります。 再掲載の時期は決まっておりません。 表現の変更などもあり得ます。 他の作品も同様です。 ご了承いただけますようお願いいたします。 ユユ 【 お話の内容紹介 】 辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は、公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。 「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」 ある日、ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。