【完結】戦争から帰ってきた夫が連れてきたのは彼が愛する人の子供だった。

たろ

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56話  公爵家では

「ルシナが突然いなくなった?」

 そんな訳ないだろう!

 ガレイラ侯爵が突然先触れもなくやって来て帰って行った。

 その後ルシナの姿がなくなっていた。

 屋敷の者達に何か見ていないか調べたが誰も何も見ていないという。

 ルシナが勝手に外に出た気配はない。門番達も彼女の姿は見ていない。侯爵達は堂々と来た者達だけで帰って行った。

 人数も確認済みらしい。

 ならばどうやってルシナを運び出した?

 俺ならどうする?

 ここの使用人に向こうの息のかかった者がいると考えるしかない。

 ルシナがここに来てから半年……それくらいの時期にこの屋敷で働き出した者か?

 リュシアンはまだ何も知らない。

 ルシナが出かけていると伝えると「いいこで、まってる!」とメイド達と遊んでいる姿に胸が痛む。

 それから侯爵家に帰っていないか聞いてみた。もちろん帰っていないと言われた。

 ルシナにどんな用事があって突然先触れもなく来たのか問う。

『自分の娘にただ会いに来ただけ。おかしいことではないだろう?』

 今まで娘を蔑ろにしていいように利用してきた侯爵が今頃になって娘に情が湧くわけがない。

 ルシナがこの王都で最新の服や物を生み出して人気になっているのに目をつけたんだろう。

 元々ルシナは優秀で家の執務はほとんど一人でこなせていた。侯爵家でも伯爵家でも優秀な人材として重宝されていたのは知っている。

 嫁いだ後も二つの家での合同事業の要はルシナだった。

 そのルシナが離縁してどちらとも縁を切って独り立ちした今徐々に経営は悪化していると耳にした。

 だからこそルシナを戻して今までのようにいいように扱いたいのだろう。

 侯爵家の屋敷に罪状もないのに押し入りルシナを探すことはできない。

 リュシアンは帰ってこない母親に不安を覚え泣き出すことが増えた。

 ルシナが寝込んだりする姿を見ているリュシアンからすれば不安で仕方がないのだろう。

 それでも今までならリュシアンのそばに戻ってきていたのに。二週間経つのにいまだに助け出せないでいた。

 その間に公爵家の使用人の怪しい者の洗い出しをしたり、今妃殿下のことで大変な時期ではあるが王太子殿下に侯爵家についての書類を提出して屋敷に踏み込めるように話し合いをしていた。

 ルシナへのこれまでの酷い態度を考えればあそこがまともに金を稼いであるようにはみえない。

 絶対裏で何かやっているだろうと調査を続けていた。まだ完全には揃っていない証拠をとりあえず殿下に見せて、
「侯爵を捕まえるために屋敷に入って家宅捜査をしたい」と申し入れた。

 もちろんルシナを無理やり連れ去った件も含めて。

 しかし、親子なので「連れ去った。ではなくて連れて帰った」と言われればこちらとしては強く言えない。

 家宅捜査の時にルシナを見つけ、本人に直接無理やりだったと言う証言を取らなければ、我が家が逆に名誉毀損で訴えられると言われた。

 訴えられても困ることはない。しかし、ルシナを助け出せなければ意味がない。

 侯爵家の罪の証拠を見つけ出しルシナを助ける。

 時間はかかったが今日やっと騎士達を連れて侯爵家の屋敷に踏み込める。

「リュシアン、もうすぐ母様を連れて帰るからな」

「かあさま……あいたいよ」

 最近は食欲も落ちて笑うことも少なく部屋でじっとしていることが多いリュシアン。

「待ってろ。必ず連れて帰る」

「マティアス様、時間です。行きましょう」

 公爵家の騎士団の団長が緊張した表情で俺を呼びにきた。

「父上、行ってきます」

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