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キース編。 あの女の子が。
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俺がまだ5歳の時、母上が俺に会わせた小さな小さな女の子。
ベビーキャリーに入ったその子はまだ産まれて6ヶ月。小さな手にそっと触れると俺の指をぎゅっと握った。慌てて手を離そうとしたら小さいのに力強い手で握りしめて俺を見て笑った。
「可愛い」思わず呟いていた。
その赤ちゃんの母親であるエレファ様は赤ちゃんを愛おしそうに見つめながら俺に言った。
「この子の名前はダイアナ。キース様、ダイアナは貴方が大好きみたい、もしよかったら仲良くしてね」
「はい」
それからはよくダイアナが遊びに来た。
ダイアナはよく笑いよく泣いた。
泣く度に俺の膝の上に座らせるとすぐに機嫌が良くなった。
1歳になり歩き出すとテクテク歩いて俺の後を追うようになった。「にいに」「だっこ」と片言を話し出すとますます可愛くて俺はダイアナに夢中になった。
そうしてダイアナが4歳までよく一緒に過ごした。
4歳のダイアナはオシャマで
「にいに、ダイアナのことすき?」
「ダイアナはにいにがだいすきなの」
「にいに、だっこ!」
俺が勉強で忙しくなっても隣でじっと絵本を眺めていたダイアナ。手を休めるとそれを待っていたみたいに、
「にいに、おべんきょうおわった?おはなししてもいい?」
と嬉しそうに聞いてくる。
「にいに、このきしさまかっこいいね」
絵本の絵を指さして俺に見せた。
お姫様を守る騎士はダイアナにとってはカッコよく見えたみたいだ。
「にいにはダイアナのきしさまなの」
「俺?」
「うん、にいにはいつもいっしょね」
嬉しそうに話すダイアナ。
我儘を言わず俺の後ろをついて回るダイアナ。
俺の大切な妹。俺が守るべき存在。そんな気持ちでずっと過ごして来たのに……
突然顔を出さなくなった。
「お母様、ダイアナとエレファ様はどうしてこないの?」
「しばらくは来れないみたいなの」
母上の返答に困って心配そうな顔を見るとそれ以上聞けなくなった。
ダイアナが来なくなった日々は寂しくて退屈で……でも気がつけば会えないのが当たり前になって、子供だった俺はダイアナとの日々は思い出になっていった。
そして再開したのが彼女が13歳。そして俺が騎士になったばかりの頃だった。
次男の俺は自分のこれからを考えて騎士を目指した。
優秀な成績で騎士学校を卒業できた俺は見習い騎士として王妃様の側付きとなった。
騎士見習いになっても女の人に異様に付き纏われることが多かった。
可愛いと言われながら体をベタベタ触ってくる母上の知人や屋敷のメイド達。もちろん母上はその度に排除してくれた。
騎士学校に入ると所謂追っかけという令嬢達にはうんざりした。俺はモテるために騎士になったのではない。
だったら何故?
『にいにはダイアナのきしさまなの』
その言葉を彼女を見て思い出した。
俺が騎士として進んだのはこの子の幼い頃の一言だった。
それからは王妃様のそばで、親から離れて必死で耐える彼女の様子を見ていた。
俺がなんと声をかけるべきなのか。
この子には俺と過ごした記憶はない。それに王妃様にも止められた。
「キース、ダイアナは幼い頃の記憶が少しあやふやなの。無理して思い出させれば忘れたい記憶も思い出してしまうかもしれないの」
「それは?」
王妃様に聞いたのは、エレファ様が亡くなった時のことだった。
3日間も納屋に閉じ込められて忘れられていたダイアナ。
なんとか生きていたがその時の記憶だけは忘れてしまっているらしい。
そしてその前の記憶も少し曖昧だと王妃様は言った。
そんな彼女に俺との思い出話しは語ることはできなかった。
俺は王妃様の言葉通り彼女を黙って見守ることにした。
13歳の少女を、妹のように。
まさかダイアナと3年後、婚約するとは夢にも思わなかった。
ベビーキャリーに入ったその子はまだ産まれて6ヶ月。小さな手にそっと触れると俺の指をぎゅっと握った。慌てて手を離そうとしたら小さいのに力強い手で握りしめて俺を見て笑った。
「可愛い」思わず呟いていた。
その赤ちゃんの母親であるエレファ様は赤ちゃんを愛おしそうに見つめながら俺に言った。
「この子の名前はダイアナ。キース様、ダイアナは貴方が大好きみたい、もしよかったら仲良くしてね」
「はい」
それからはよくダイアナが遊びに来た。
ダイアナはよく笑いよく泣いた。
泣く度に俺の膝の上に座らせるとすぐに機嫌が良くなった。
1歳になり歩き出すとテクテク歩いて俺の後を追うようになった。「にいに」「だっこ」と片言を話し出すとますます可愛くて俺はダイアナに夢中になった。
そうしてダイアナが4歳までよく一緒に過ごした。
4歳のダイアナはオシャマで
「にいに、ダイアナのことすき?」
「ダイアナはにいにがだいすきなの」
「にいに、だっこ!」
俺が勉強で忙しくなっても隣でじっと絵本を眺めていたダイアナ。手を休めるとそれを待っていたみたいに、
「にいに、おべんきょうおわった?おはなししてもいい?」
と嬉しそうに聞いてくる。
「にいに、このきしさまかっこいいね」
絵本の絵を指さして俺に見せた。
お姫様を守る騎士はダイアナにとってはカッコよく見えたみたいだ。
「にいにはダイアナのきしさまなの」
「俺?」
「うん、にいにはいつもいっしょね」
嬉しそうに話すダイアナ。
我儘を言わず俺の後ろをついて回るダイアナ。
俺の大切な妹。俺が守るべき存在。そんな気持ちでずっと過ごして来たのに……
突然顔を出さなくなった。
「お母様、ダイアナとエレファ様はどうしてこないの?」
「しばらくは来れないみたいなの」
母上の返答に困って心配そうな顔を見るとそれ以上聞けなくなった。
ダイアナが来なくなった日々は寂しくて退屈で……でも気がつけば会えないのが当たり前になって、子供だった俺はダイアナとの日々は思い出になっていった。
そして再開したのが彼女が13歳。そして俺が騎士になったばかりの頃だった。
次男の俺は自分のこれからを考えて騎士を目指した。
優秀な成績で騎士学校を卒業できた俺は見習い騎士として王妃様の側付きとなった。
騎士見習いになっても女の人に異様に付き纏われることが多かった。
可愛いと言われながら体をベタベタ触ってくる母上の知人や屋敷のメイド達。もちろん母上はその度に排除してくれた。
騎士学校に入ると所謂追っかけという令嬢達にはうんざりした。俺はモテるために騎士になったのではない。
だったら何故?
『にいにはダイアナのきしさまなの』
その言葉を彼女を見て思い出した。
俺が騎士として進んだのはこの子の幼い頃の一言だった。
それからは王妃様のそばで、親から離れて必死で耐える彼女の様子を見ていた。
俺がなんと声をかけるべきなのか。
この子には俺と過ごした記憶はない。それに王妃様にも止められた。
「キース、ダイアナは幼い頃の記憶が少しあやふやなの。無理して思い出させれば忘れたい記憶も思い出してしまうかもしれないの」
「それは?」
王妃様に聞いたのは、エレファ様が亡くなった時のことだった。
3日間も納屋に閉じ込められて忘れられていたダイアナ。
なんとか生きていたがその時の記憶だけは忘れてしまっているらしい。
そしてその前の記憶も少し曖昧だと王妃様は言った。
そんな彼女に俺との思い出話しは語ることはできなかった。
俺は王妃様の言葉通り彼女を黙って見守ることにした。
13歳の少女を、妹のように。
まさかダイアナと3年後、婚約するとは夢にも思わなかった。
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