【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

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現在。  

 キース様はジャスティア殿下の提案を拒否しようとした。でもわたしは受け入れた。
 わたしには別に評判が落ちても困ることはない。
 元々あまり評判が良くないから。
 黒髪で翠色の瞳。若い世代からは受け入れられているが年寄りからはいまだに忌み嫌われている。さらに父親から愛されていないことも夜会など出してもらえないことも周知されている。

 キース様との婚約で、どうしても出席しないといけない時だけここ二年は参加しているがあまり出席はしていない。

 ジャスティア殿下には婚約者はいない。
 と言うか何度となく婚約者候補者の名はあがったのだが、ジャスティア殿下本人が嫌がって全て断っている。

 それも陛下が「仕方がない」と何も言わない。

 ジャスティア殿下の気持ちはよくわからない。キース様を本当に好きなのか、それともただ困らせて楽しんでいるのか。

 だけどそれからはジャスティア殿下とキース様は夜会で二人でいる姿が増えた。

 わたしをエスコートしたキース様は最初の曲だけ踊るとわたしから離れてジャスティア殿下のところへ向かう。

 まるで二人は愛し合っているかのように。

 最近はそれも周知され出して、「お二人が愛し合っているのに婚約者というだけで邪魔をしている」とわたしは悪く言われるようになった。

 これもジャスティア殿下の筋書き通りだ。

 キース様はわたしと踊る時に「ダイアナすまない、君が悪く言われるのを止められない」と悔しそうに謝ってくる。
 でもそれを選んだのはわたしだった。

 高等部を卒業すると共に婚約解消するはずだった二人の関係はそのまま継続することになった。

 王妃様にそのことは伝えていない。
 その話を聞けば王妃様はジャスティア殿下を叱るだろう。最近の王妃様とジャスティア殿下の関係は悪化している。

 王妃様が注意したり叱ると陛下が横から口出して「ジャスティアのことはお前が口を出すことではない」と逆に王妃様が叱られることが増えた。

 ジャスティア殿下の我儘はさらに進化して行っている。このまま彼女は何を思いどうしたいのだろう。

 わたしは、卒業とともに新しい道をいくつもりでいたのに未だにキース様の婚約者として過ごすことになる。
 キース様のご両親にはそろそろ結婚をしては?と言われ始めている。
 殿下との噂を気にして結婚を急いでいる節がある。

 わたしの父は冷たい目で見ているだけだった。


 だったのに……とうとう屋敷に久しぶりに帰るとお父様がわたしの部屋へとやって来た。

 最近はわたしと接しようともしなかったはずのお父様。

 わたしが部屋で本を読んでいると

「ダイアナ、キースとの婚約を解消しなさい」

 いきなりの発言に驚いた。

「お前達の婚約は見せかけだけの契約だったはずだ。何故未だに婚約を続けているんだ?」

 ーー何故この人も知っているのかしら?

「今はまだ出来ません」

「お前はこの国に必要のない人間だ。早くこの国から出てブラン王国へ行ってしまえ」

「どうして今更?だったらもっと早くわたしを追い出したらよかったではないですか?」

「……お前はそんなにわたしが嫌いか?」

「嫌い?嫌っているのは貴方でしょう?わたしが何をしたと言うのですか?お母様のことがお嫌いだったからですか?お母様の娘であるわたしが憎いですか?」

「……いいから、この国を出て行け。明日にでも出ていけるように船の手配はして置く。必要なものを纏めて置くように」

「この部屋にわたしの大切なものなんてありません。クローゼットにも引き出しにも……わたしにはお母様と過ごした大切な物なんて何一つ残っていません。あるのはこの屋敷で過ごした思い出だけでした。だから何があってもこの屋敷から出ていかなかったのです。お母様の大切な思い出を貴方とミリア様にこれ以上壊されたくなかったから」

「な、何を言っているんだ、お前に必要な予算はきちんと用意していたはずだ」

 お父様はそう言うとわたしの部屋のクローゼットを開けた。そこには数枚のドレスがあるだけだった。
 箪笥や引き出しを開けてわたしの荷物を確認するお父様……何も入っているはずがない。
 この部屋はたまに帰ってきて寝るだけの部屋。

 わたしがお母様の思い出を壊されたくなくて必死で過ごしただけの部屋。

「………お前はどうやって今まで過ごしてきたんだ?」

「そんなことを今更聞いてどうするのですか?」


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