【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

文字の大きさ
30 / 76

お父様。

しおりを挟む
 普段の俺なら監視を減らすことなんてしなかった。

 この時本当にたまたま、ダイアナの部屋に何もないことに驚き俺の手の内の者たちに調べるように言ったのが悪かった。
 まさかその隙にダイアナが連れ去られるなんて……

 父上がミリアと繋がっているのはわかっていた。

 だからこそ常にダイアナがいる時は監視を強化していた。
 俺の動揺が、目を違うところに向けた一瞬の隙にダイアナはいなくなっていた。
 しかもミリアも一緒に姿を消していた。

「ジェファ、お母様はどこへいくと言っていた?」

「お母様ですか?」
 ジェファは何も知らないようだった。

 この屋敷の半分は父上の息のかかった者達だ。
 俺のために動いてくれる信頼できる者は半分しかいない。
 つねに疑って過ごすしかない屋敷の中。

「ミリアがどこへ行ったか教えろ!ダイアナをどこへ連れて行った?知っている者は前へ出ろ」

 俺は屋敷の使用人を集めて怒鳴りつけた。

 目線を逸らす者、心配そうにしている者、ただ驚いている者。

 執事のトムが驚いたように言った。
「旦那様、ダイアナ様はどこへも出てはいないと思いますが?」

「何故そう言える?」

「屋敷の外に馬車が出た気配などありませんでした」

 ーーおかしい。

 トムが気が付かないはずはない。

 この屋敷のどこかに俺の知らない抜け道でもあるのだろうか。

 確かにこの屋敷も父上のものだった。
 今は隠居して別邸へ移り住んでいるが、この屋敷を建てたのは父上の代だ。

「この家の設計図を持ってこい」
 トムは慌てて取りに行く。
 その間に俺はミリアの部屋に入り何かないか、探して回った。





しおりを挟む
感想 309

あなたにおすすめの小説

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】 エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

私があなたを好きだったころ

豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」 ※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

私達、婚約破棄しましょう

アリス
恋愛
余命宣告を受けたエニシダは最後は自由に生きようと婚約破棄をすることを決意する。 婚約者には愛する人がいる。 彼女との幸せを願い、エニシダは残りの人生は旅をしようと家を出る。 婚約者からも家族からも愛されない彼女は最後くらい好きに生きたかった。 だが、なぜか婚約者は彼女を追いかけ……

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

後悔は手遅れになってから

豆狸
恋愛
もう父にもレオナール様にも伝えたいことはありません。なのに胸に広がる後悔と伝えたいという想いはなんなのでしょうか。

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

処理中です...