36 / 76
救出③
しおりを挟む
血生臭い小屋から出るとまだ外は暗かった。
「あ、あの、キース様……わたし屋敷には帰りたくないんです」
「もう二度とあそこへは帰らなくていいよ。王妃様には連絡しておくから今からうちにおいで」
「キース様の?…ですか?」
「うん、父上達にはもう連絡してあるから準備はしてあるはずだ。とりあえずうちにおいで」
「……ご迷惑ではありませんか?」
「ダイアナ、君は婚約者だ。それにもうジャスティア殿下との演技はしなくても大丈夫だから。全て解決するから安心して」
「解決?」
「また後で詳しく話すよ。とにかくここから移動しよう。今から犯人達を捕らえ連行するために騎士団の者たちがたくさん集まる。俺たちはまた明日事情を聞かれることになるだろうから、今は帰ってゆっくりしよう」
ダイアナは素直に頷いた。流石に疲れの色は隠せない。服もかなり汚れて髪もボサボサ、早く俺の実家に連れて帰ってゆっくりとさせてやりたい。
「あっ…お父様は……」
「多少怪我してもあれくらいなら死なないさ。ダイアナが命をかけて守ってやったんだ。あとは自分でなんとかするだろう」
俺の言葉に驚きながらも「そうですね」と力なく頷いた。
馬車に乗せた途端ダイアナは死んだように眠った。
神経を張り詰めていたのが一気に緩んだのだろう。
屋敷に着くと俺はそのまま彼女を抱えて部屋へと連れていった。
起きて準備をしてくれていた侍女に体を拭いてもらい着替えさせてもらった。
このまま朝までゆっくり眠らせてやろう。
俺はダイアナの眠った顔を見て安心して自室へと戻った。
明日は報告へ行きつつ、前公爵との対峙が待っている。
公爵も少しはダイアナのために父親と戦う気になっただろうか。
前公爵が素直に罪を認めることはないだろう。
あのクソジジイをこの国からいやもう二度と太陽の下に出られないようにしなければ安心してダイアナが暮らすことができない。たとえブラン王国へ行くことが決まってもあのジジイだけはどうにかしないといけない。また何をしでかすかわかったものではない。
王妃様と団長と共にあの男の罪を見つけ出し、証拠を集めてきた。公爵もこちらについてもらえればあのクソジジイを潰すことが出来るだろう。
色々考え込んでいたらいつの間にか朝になっていた。
ダイアナはまだ寝ていることだろう。
父上に昨日のことを全て今から話して、しばらくはダイアナの身の安全を守ってもらうように頼まなければならない。
本当なら俺がずっと一緒にいてあげたいが、ダイアナのこれからを考えると今は急いで動くしかない。
眠っているであろう父上の部屋へ今から押しかける。
今日は長い一日になりそうだ。
◆ ◆ ◆
やっとやっと体調が戻ってきました。生後ひと月のベビーは入院するし全員寝込むことになるし、いまだに咳が続いて集中して書けないでいますが、夕方もう一話更新予定です。
短編のはずがまた長編になりそうな予感。ですが頑張って書いていきますのであともう少しお付き合いください。
いつも読んでいただきありがとうございます。
たろ
「あ、あの、キース様……わたし屋敷には帰りたくないんです」
「もう二度とあそこへは帰らなくていいよ。王妃様には連絡しておくから今からうちにおいで」
「キース様の?…ですか?」
「うん、父上達にはもう連絡してあるから準備はしてあるはずだ。とりあえずうちにおいで」
「……ご迷惑ではありませんか?」
「ダイアナ、君は婚約者だ。それにもうジャスティア殿下との演技はしなくても大丈夫だから。全て解決するから安心して」
「解決?」
「また後で詳しく話すよ。とにかくここから移動しよう。今から犯人達を捕らえ連行するために騎士団の者たちがたくさん集まる。俺たちはまた明日事情を聞かれることになるだろうから、今は帰ってゆっくりしよう」
ダイアナは素直に頷いた。流石に疲れの色は隠せない。服もかなり汚れて髪もボサボサ、早く俺の実家に連れて帰ってゆっくりとさせてやりたい。
「あっ…お父様は……」
「多少怪我してもあれくらいなら死なないさ。ダイアナが命をかけて守ってやったんだ。あとは自分でなんとかするだろう」
俺の言葉に驚きながらも「そうですね」と力なく頷いた。
馬車に乗せた途端ダイアナは死んだように眠った。
神経を張り詰めていたのが一気に緩んだのだろう。
屋敷に着くと俺はそのまま彼女を抱えて部屋へと連れていった。
起きて準備をしてくれていた侍女に体を拭いてもらい着替えさせてもらった。
このまま朝までゆっくり眠らせてやろう。
俺はダイアナの眠った顔を見て安心して自室へと戻った。
明日は報告へ行きつつ、前公爵との対峙が待っている。
公爵も少しはダイアナのために父親と戦う気になっただろうか。
前公爵が素直に罪を認めることはないだろう。
あのクソジジイをこの国からいやもう二度と太陽の下に出られないようにしなければ安心してダイアナが暮らすことができない。たとえブラン王国へ行くことが決まってもあのジジイだけはどうにかしないといけない。また何をしでかすかわかったものではない。
王妃様と団長と共にあの男の罪を見つけ出し、証拠を集めてきた。公爵もこちらについてもらえればあのクソジジイを潰すことが出来るだろう。
色々考え込んでいたらいつの間にか朝になっていた。
ダイアナはまだ寝ていることだろう。
父上に昨日のことを全て今から話して、しばらくはダイアナの身の安全を守ってもらうように頼まなければならない。
本当なら俺がずっと一緒にいてあげたいが、ダイアナのこれからを考えると今は急いで動くしかない。
眠っているであろう父上の部屋へ今から押しかける。
今日は長い一日になりそうだ。
◆ ◆ ◆
やっとやっと体調が戻ってきました。生後ひと月のベビーは入院するし全員寝込むことになるし、いまだに咳が続いて集中して書けないでいますが、夕方もう一話更新予定です。
短編のはずがまた長編になりそうな予感。ですが頑張って書いていきますのであともう少しお付き合いください。
いつも読んでいただきありがとうございます。
たろ
514
あなたにおすすめの小説
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
さようなら、私の愛したあなた。
希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。
ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。
「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」
ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。
ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。
「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」
凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。
なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。
「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」
こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。
捨てられた妻は悪魔と旅立ちます。
豆狸
恋愛
いっそ……いっそこんな風に私を想う言葉を口にしないでくれたなら、はっきりとペルブラン様のほうを選んでくれたなら捨て去ることが出来るのに、全身に絡みついた鎖のような私の恋心を。
あなたの幸せを、心からお祈りしています
たくわん
恋愛
「平民の娘ごときが、騎士の妻になれると思ったのか」
宮廷音楽家の娘リディアは、愛を誓い合った騎士エドゥアルトから、一方的に婚約破棄を告げられる。理由は「身分違い」。彼が選んだのは、爵位と持参金を持つ貴族令嬢だった。
傷ついた心を抱えながらも、リディアは決意する。
「音楽の道で、誰にも見下されない存在になってみせる」
革新的な合奏曲の創作、宮廷初の「音楽会」の開催、そして若き隣国王子との出会い——。
才能と努力だけを武器に、リディアは宮廷音楽界の頂点へと駆け上がっていく。
一方、妻の浪費と実家の圧力に苦しむエドゥアルトは、次第に転落の道を辿り始める。そして彼は気づくのだ。自分が何を失ったのかを。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる