【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

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番外編 ダニエルとその子供達①

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 ダイアナの結婚式の日、わたしは遠くから彼女のウェディングドレス姿をそっと見つめた。

 渡せるはずもない花束を握りしめて。

 自分の屋敷に帰ると、ジェファが何も言わずに出迎えてくれた。

 そして部屋に入ると誰もいなくなったのを確かめてから

「お義姉様の姿を見ることはできましたか?」

「ああ、遠くからだったが少しだけ見ることができたよ」

 最近ジェファは公爵家の跡取りとしての勉強を始めた。
 ミリアのことがあってジェファもエリーナも甘えてばかりだった子供達の態度が少し変わってきた。
 ミリアは捕まり、今も服役している。

 彼女の刑は、終身刑だ。
 一生外へは出られない。処刑される方が幸せなのかもしれない。




 父上は新薬の人体実験のため生かされ続ける。

 そう地獄のような苦しみが死ぬまで続く。死んだ方がマシなのに死なせてはもらえない。

 高熱が続いたり全身の痛みでのたうち回ったり、時には全身の痒みで肌が爛れたり……眼球を抉られそこに薬を塗られたり……

 わたしへの罰は、二人の刑罰の報告を随時聞かされることだった。
 エレファとダイアナを蔑ろにしてきたわたしだが、罪には問われなかった。しかしエレファの友人の王妃は、
『罪に問われないからと言ってダニエルは許されるべきではないわ。貴方のせいでエレファは屈辱を受けたの、貴方のせいでダイアナはずっと一人寂しい生活を送ったのよ。
 貴方が今こうして暮らしているのは二人が辛い思いをしたおかげなのよ、幸せになることは絶対許されるべきではない』

 わたしだってそう思っている。
 だがまだ二人の子供達がいる。
 この子達には罪はない。


 ミリアが妻でいる間、ダイアナの存在を無視して幸せな四人だけの生活を送ってきた。
 それは、わたし自身が現実から逃げるために求めたものだった。

 ダイアナから、そしてエレファの死から逃げたかった。浮気をして子供を作り、エレファを顧みないで死なせた。そして目を背けダイアナを虐げた。

 現実から目を逸らすことでしか生きられなかった。

 今更ダイアナにお前が大切だなんて言えない、いや、言ってはいけない。わたしと彼女は親子の縁を切ったのだ。

 父上にひと月に一回面会をさせられる。
 これもわたしの罰。

 いろんな薬漬けのせいなのか薬の副作用なのか、精神はおかしくなっている。

「なんでお前がここにいる?わたしのエレファを奪うつもりか?殺してやる!」

 ぐったりして動けないはずの体なのにわたしの顔を見ると殺意が湧くらしい。父上はエレファに囚われているようだ。
「エレファの裸体はとても綺麗だ。あの身体を知って仕舞えばもう忘れる事はできない。エレファはわたしの子供を妊娠していたかもしれない。お前はミリアを孕ませ、わたしはエレファを孕ませる。
 なんて幸せなんだ。エレファ……愛している」

 これが罰なのか。

 檻に入れられた父上を殴ることも出来ない。

 罵られエレファを辱める言葉を吐く。

 殺してやりたい、殴りつけて首を締め上げたい。

 こんなことが毎月繰り返される。

 わたしはこの地獄を味わうしかない。エレファはもっと酷い目にあったのだから。

 そして、もう一人、陰でダイアナを虐げていた侍女長だったサリー。

 サリーはダイアナを攫った。常に父上に命令されていて父上に囚われ父上が全てだった従順な侍女。
 この女は捕まった後、刑に服した。

 その刑は父上の面倒をみること。

『もし、カステルを死なせることがあればサリーお前は即打首だ』

 そう言い渡され、父上のためではなく自分の命のため必死で父上の面倒をみている。

 恐怖の中毎日「旦那様、早く治療を」「旦那様、生きてください」「あー、また熱が下がらない」
 サリーは生きるために必死で父上を助けないといけない。あと余命半年かもって数年の命を。

そして、ミリアは……




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