【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

文字の大きさ
70 / 76

番外編 ダニエルとその子供達①

 ダイアナの結婚式の日、わたしは遠くから彼女のウェディングドレス姿をそっと見つめた。

 渡せるはずもない花束を握りしめて。

 自分の屋敷に帰ると、ジェファが何も言わずに出迎えてくれた。

 そして部屋に入ると誰もいなくなったのを確かめてから

「お義姉様の姿を見ることはできましたか?」

「ああ、遠くからだったが少しだけ見ることができたよ」

 最近ジェファは公爵家の跡取りとしての勉強を始めた。
 ミリアのことがあってジェファもエリーナも甘えてばかりだった子供達の態度が少し変わってきた。
 ミリアは捕まり、今も服役している。

 彼女の刑は、終身刑だ。
 一生外へは出られない。処刑される方が幸せなのかもしれない。




 父上は新薬の人体実験のため生かされ続ける。

 そう地獄のような苦しみが死ぬまで続く。死んだ方がマシなのに死なせてはもらえない。

 高熱が続いたり全身の痛みでのたうち回ったり、時には全身の痒みで肌が爛れたり……眼球を抉られそこに薬を塗られたり……

 わたしへの罰は、二人の刑罰の報告を随時聞かされることだった。
 エレファとダイアナを蔑ろにしてきたわたしだが、罪には問われなかった。しかしエレファの友人の王妃は、
『罪に問われないからと言ってダニエルは許されるべきではないわ。貴方のせいでエレファは屈辱を受けたの、貴方のせいでダイアナはずっと一人寂しい生活を送ったのよ。
 貴方が今こうして暮らしているのは二人が辛い思いをしたおかげなのよ、幸せになることは絶対許されるべきではない』

 わたしだってそう思っている。
 だがまだ二人の子供達がいる。
 この子達には罪はない。


 ミリアが妻でいる間、ダイアナの存在を無視して幸せな四人だけの生活を送ってきた。
 それは、わたし自身が現実から逃げるために求めたものだった。

 ダイアナから、そしてエレファの死から逃げたかった。浮気をして子供を作り、エレファを顧みないで死なせた。そして目を背けダイアナを虐げた。

 現実から目を逸らすことでしか生きられなかった。

 今更ダイアナにお前が大切だなんて言えない、いや、言ってはいけない。わたしと彼女は親子の縁を切ったのだ。

 父上にひと月に一回面会をさせられる。
 これもわたしの罰。

 いろんな薬漬けのせいなのか薬の副作用なのか、精神はおかしくなっている。

「なんでお前がここにいる?わたしのエレファを奪うつもりか?殺してやる!」

 ぐったりして動けないはずの体なのにわたしの顔を見ると殺意が湧くらしい。父上はエレファに囚われているようだ。
「エレファの裸体はとても綺麗だ。あの身体を知って仕舞えばもう忘れる事はできない。エレファはわたしの子供を妊娠していたかもしれない。お前はミリアを孕ませ、わたしはエレファを孕ませる。
 なんて幸せなんだ。エレファ……愛している」

 これが罰なのか。

 檻に入れられた父上を殴ることも出来ない。

 罵られエレファを辱める言葉を吐く。

 殺してやりたい、殴りつけて首を締め上げたい。

 こんなことが毎月繰り返される。

 わたしはこの地獄を味わうしかない。エレファはもっと酷い目にあったのだから。

 そして、もう一人、陰でダイアナを虐げていた侍女長だったサリー。

 サリーはダイアナを攫った。常に父上に命令されていて父上に囚われ父上が全てだった従順な侍女。
 この女は捕まった後、刑に服した。

 その刑は父上の面倒をみること。

『もし、カステルを死なせることがあればサリーお前は即打首だ』

 そう言い渡され、父上のためではなく自分の命のため必死で父上の面倒をみている。

 恐怖の中毎日「旦那様、早く治療を」「旦那様、生きてください」「あー、また熱が下がらない」
 サリーは生きるために必死で父上を助けないといけない。あと余命半年かもって数年の命を。

そして、ミリアは……




感想 310

あなたにおすすめの小説

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】 エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。