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番外編 ダニエルとその子供達②
そしてミリアは今刑務所で男性囚人たちの慰め者として生きている。
『いやあ、やめて!』『なんで、どうして』
彼女がその日何人の慰めものになったのか、言動などわたしに報告される。
わたしはその報告書を読まなければならない。
読んでサインして、送り返す。
そこには
彼女の発言が。
「わたしは従兄様ががいいの!やめて!」
最初の頃は強気の発言が、日に日に変わっていった。
「ダニエル、助けに来なさいよ!公爵でしょう?」
そして最近では……
「……ごめんなさい、ダニエル、助けて……愛しているわ。子供達に会いたい」
一度報告書を取りに来た役人に「どう思われますか?」と聞かれた。
「何とも思わない」としか答えなかった。
元々彼女を愛していたわけではない。狡いし卑怯かもしれないが、エレファ達からの負い目から彼女達に逃げていただけだった。
息子のジェファもエリーナも可愛くないわけではないが、ダイアナに比べればそこまでの気持ちは持てなかった。
だったらダイアナをもっと大切にすれば良かったのに。今ならそう思う。でもあの時のわたしにはダイアナを突き放すのが、一番いいと思っていた。
それがミリアから守れると。そして父上のあの目から。
父上がダイアナに対して違う感情を持っていることは何となく感じていた。それはエレファに対しても。まさかエレファにあんな酷いことをしているとは思っていなかった。もしわかっていれば……父上を殺していただろう。
だからこそエレファはわたしに悟られないようにしたのだ。だからこそ日記を書いたのだ。
『ダニエル、貴方の幸せを願っています』
この言葉はエレファからの愛。だがわたしを縛る鎖でもある。
「幸せになるしかない」そう思うだけで苦しくて。
本当なら今すぐエレファのところへ行きたい。
また二人だけで幸せに暮らしたい。
怒られながらも「ほんとバカね」と笑ってくれるだろうか。
だがそれだけは出来ない。自分を犠牲にして死んでいった彼女のためにも俺は生を全うするしかない。
ダイアナは私の元から去った。
『大切にしてください』と最後に言われた。
二人の子供を育てることはダイアナへの贖罪になるのだろうか?
15歳になったジェファは、学院に通いながら休日は当主としての仕事を覚え始めた。
でも本人にも葛藤はあるようで
「父上、僕が当主になってもいいのでしょうか?姉上を不幸にした原因の僕が……」
悔しそうに辛そうにジェファが言ってきた。
「……お前達まで不幸になる必要はない。今の結果は全て私たち大人がしてしまったことだ。ジェファもエリーナも何も悪くない」
「でも僕たちが生まれてきたせいで姉上は……」
ジェファはエレファと父上のことは知らない。ただミリアがエレファから私を奪って自分が生まれたと思っている。
まだ本当のことを知る必要はない。
「いいかい、子供はみんな幸せになる権利を持っているんだ」
わたしはそう言いながらダイアナにはその権利すら与えなかったことを思い出し、心の中ではズキズキと痛みばかりが重くのしかかる。
そんな時、ダイアナが結婚すると聞いた。
幸せになれるのだ。
わたしは幸せな生活を与えてあげられなかった。
キースならダイアナを守り慈しみ大事にしてあげるだろうと思った。
そっと覗いた結婚式を見たあと、屋敷に帰って渡せず持って帰ってきた花束をじっと見つめていると、突然エレファの友人でもある王妃がやってきた。
「ほんと辛気臭いわね。エレファは貴方のことを絶対許さないわよ!ダイアナにしたことをずっと見守っているんだから」
「………そんなことわかってるさ、態々そんな話をしに来たのか?」
「ダイアナはとても幸せそうだったわ。貴方みたいな酷い父親がいなくてよかったわ」
「………そうだな」
「なのにね……ダイアナ……たぶん貴方を探していたのだと思うの……目がね、何度か参列者の方を見て探しているの。無意識にね」
「…………それはないだろう」
「わたしもそう思いたかった。でも教会でカタッて音がした時、ダイアナは一瞬嬉しそうに振り返ったのよ。
貴方が来たと思ったのよね、誰もいないとわかった時のダイアナの悲しそうな顔……わたしもアシュアも後で話したのよ、どんな碌でもない親だってあの子にとってはたった一人の父親なんだろうねって」
「…………」わたしは何も言い返せなかった。
ーーダイアナが?そんなはずはない。
あの時ダイアナはわたしのことを「公爵様」と呼んだ。もう「お父様」とは言ってもらえなかった。
それが答えのはず。
「その花は……エレファが好きだったかすみ草」
「すまない、わたしはどうしてもこの花束をダイアナに渡したい……ちょっと行ってくるよ」
「ふふ、頑張って、でもあそこの警備はかなり頑丈よ、一度ダイアナは攫われているのだから」
「………それも全てわたしのせいだな」
そしてわたしはダイアナのいる屋敷に向かった。
『いやあ、やめて!』『なんで、どうして』
彼女がその日何人の慰めものになったのか、言動などわたしに報告される。
わたしはその報告書を読まなければならない。
読んでサインして、送り返す。
そこには
彼女の発言が。
「わたしは従兄様ががいいの!やめて!」
最初の頃は強気の発言が、日に日に変わっていった。
「ダニエル、助けに来なさいよ!公爵でしょう?」
そして最近では……
「……ごめんなさい、ダニエル、助けて……愛しているわ。子供達に会いたい」
一度報告書を取りに来た役人に「どう思われますか?」と聞かれた。
「何とも思わない」としか答えなかった。
元々彼女を愛していたわけではない。狡いし卑怯かもしれないが、エレファ達からの負い目から彼女達に逃げていただけだった。
息子のジェファもエリーナも可愛くないわけではないが、ダイアナに比べればそこまでの気持ちは持てなかった。
だったらダイアナをもっと大切にすれば良かったのに。今ならそう思う。でもあの時のわたしにはダイアナを突き放すのが、一番いいと思っていた。
それがミリアから守れると。そして父上のあの目から。
父上がダイアナに対して違う感情を持っていることは何となく感じていた。それはエレファに対しても。まさかエレファにあんな酷いことをしているとは思っていなかった。もしわかっていれば……父上を殺していただろう。
だからこそエレファはわたしに悟られないようにしたのだ。だからこそ日記を書いたのだ。
『ダニエル、貴方の幸せを願っています』
この言葉はエレファからの愛。だがわたしを縛る鎖でもある。
「幸せになるしかない」そう思うだけで苦しくて。
本当なら今すぐエレファのところへ行きたい。
また二人だけで幸せに暮らしたい。
怒られながらも「ほんとバカね」と笑ってくれるだろうか。
だがそれだけは出来ない。自分を犠牲にして死んでいった彼女のためにも俺は生を全うするしかない。
ダイアナは私の元から去った。
『大切にしてください』と最後に言われた。
二人の子供を育てることはダイアナへの贖罪になるのだろうか?
15歳になったジェファは、学院に通いながら休日は当主としての仕事を覚え始めた。
でも本人にも葛藤はあるようで
「父上、僕が当主になってもいいのでしょうか?姉上を不幸にした原因の僕が……」
悔しそうに辛そうにジェファが言ってきた。
「……お前達まで不幸になる必要はない。今の結果は全て私たち大人がしてしまったことだ。ジェファもエリーナも何も悪くない」
「でも僕たちが生まれてきたせいで姉上は……」
ジェファはエレファと父上のことは知らない。ただミリアがエレファから私を奪って自分が生まれたと思っている。
まだ本当のことを知る必要はない。
「いいかい、子供はみんな幸せになる権利を持っているんだ」
わたしはそう言いながらダイアナにはその権利すら与えなかったことを思い出し、心の中ではズキズキと痛みばかりが重くのしかかる。
そんな時、ダイアナが結婚すると聞いた。
幸せになれるのだ。
わたしは幸せな生活を与えてあげられなかった。
キースならダイアナを守り慈しみ大事にしてあげるだろうと思った。
そっと覗いた結婚式を見たあと、屋敷に帰って渡せず持って帰ってきた花束をじっと見つめていると、突然エレファの友人でもある王妃がやってきた。
「ほんと辛気臭いわね。エレファは貴方のことを絶対許さないわよ!ダイアナにしたことをずっと見守っているんだから」
「………そんなことわかってるさ、態々そんな話をしに来たのか?」
「ダイアナはとても幸せそうだったわ。貴方みたいな酷い父親がいなくてよかったわ」
「………そうだな」
「なのにね……ダイアナ……たぶん貴方を探していたのだと思うの……目がね、何度か参列者の方を見て探しているの。無意識にね」
「…………それはないだろう」
「わたしもそう思いたかった。でも教会でカタッて音がした時、ダイアナは一瞬嬉しそうに振り返ったのよ。
貴方が来たと思ったのよね、誰もいないとわかった時のダイアナの悲しそうな顔……わたしもアシュアも後で話したのよ、どんな碌でもない親だってあの子にとってはたった一人の父親なんだろうねって」
「…………」わたしは何も言い返せなかった。
ーーダイアナが?そんなはずはない。
あの時ダイアナはわたしのことを「公爵様」と呼んだ。もう「お父様」とは言ってもらえなかった。
それが答えのはず。
「その花は……エレファが好きだったかすみ草」
「すまない、わたしはどうしてもこの花束をダイアナに渡したい……ちょっと行ってくるよ」
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そしてわたしはダイアナのいる屋敷に向かった。
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