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新しい恋。
バズール編④
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リリアンナ殿下は見たままの人。
思ったことは即行動。
「みんな、今日は街へ出て視察よ!」
そう言うと誰の予定も聞かずにさっさと用意を始めた。
「「行きます!」」速決する奴。
「あ、あの、僕、今から授業が………」
「え?いや、い、今からですか?」
「リリアンナ様、今流行りのお店にも行かれますか?」嬉しそうに聞く令嬢達。
取り巻きも毎回反応はさまざま。
俺は「無理です」と言って帰ろうとしたら
「バズールは強制的に参加よ、拒否権はないわ」
「チッ」舌打ちをしたら
「何?文句でもあるの?」
「いえ、喜んで参加させていただきます」
仕方なく了解の返事をした。
リリアンナ殿下は街に行くとひたすら歩いて回る。
街の人々の生活を見て回り、困った人の話を聞く。
「最近物騒で物盗りが増えた」
「隣の家の子供がよく泣いているので心配だ、親が放置しているみたいだ」
「一家みんなが倒れて寝込んでいる。病気が流行り出す前かもしれない」
「あそこの店は高くて買えない。最近は砂糖も塩も値段が上がって困る」
などちょっとした愚痴話を聞いては、周りにいる騎士に確認に行かせる。
そして情報を集めて精査するのだ。
その中には大き過ぎる国家では見落としてしまう情報ばかり。だけどもし見落とさなければ小さな話で終わることなのに、気がつかないうちに国をも揺るがす大変なことになるケースもある。
特に物価高や地方の不作について、いち早く情報を知ることもできる。病気も蔓延する前に抑え込むことも可能だ。
それをこの19歳のリリアンナ殿下は周りのこと細かい情報を聞いて探し出し、大事になる前に処理してしまう。
俺はそれを彼女の側で見て驚き感心した。
ただの我儘な姫だと思ったら本当は物凄く知的で情の深い人だった。
だから彼女の周りのみんなは、我儘姫の機嫌とりの取り巻きと馬鹿にされても離れようとしないのだ。
彼女を知って仕舞えば、この人の行動力と性格に魅了されてしまう。
「どう?バズール?わたしに惚れた?」
「あー、人間性には惚れました」
「ふふ、素直になりなさい。わたしのこと好きでしょう?」
「はい、好きですね」
ライナが俺とリリアンナ殿下のやり取りを聞いていたなんて知らなかった。
学校のガゼボで何人かでたまたまお茶をしている時、ライナもたまたま近くにいて俺の話を聞いていた。
それも「はい、好きですね」と言ったところだけ。
その後、『性格だけなら』と付け加えたところは聞いていなかったみたいだ。
「ライナ!」
お互い忙しくなかなか会えない中で、ライナが友人達と歩いているのが見えた。
俺はリリアンナ殿下といたが、ライナを見つけて思わず声をかけた。
なのに気がついているはずの俺を見ようとしない。
「バズール、あの子は?」
リリアンナ殿下は無視をされた俺をみて、興味津々で俺の顔を覗き込んだ。
「やめてください」
リリアンナ殿下の顔が俺に近づいて、いたずらっ子のような顔をしている。
「ふーん、バズールにそんな顔をさせる女の子がいるのね」
ーーそんな顔?俺がどんな顔をしていると言うのか?
「ふふふ、泣きそうな顔……そうね、フラれた顔ね」
そんなリリアンナ殿下とのやりとりをライナは、俺に気づかないフリをしながらもみていたようだった。
俺はリリアンナ殿下からの茶々に、イライラしながら返事をしていて気が付かなかった。
俺がリリアンナ殿下のそばに仕えることになって、ライナとの距離はこうして開いていった。
もちろん俺はそんな原因にも気が付かず、ライナがなぜか俺を避けることに腹立たしくて、ライナに会うとつい不機嫌になっていた。
そんなある日久しぶりにライナと約束をした。
「久しぶりだな、やっと会えた」
俺はライナに会えて嬉しくてつい本音を彼女に向けて言った。
なのにライナの表情は少し困った顔をしていた。
「ねぇバズール、リリアンナ殿下は大丈夫なの?」
「リリアンナ殿下?」
「ええ、いつも一緒にいるじゃない?」
「今日くらいはいいさ。以前約束した店に行こう」
俺はライナの手を取り、「行くよ」と言って歩き出した。
やっと二人だけの時間を過ごせることに俺は浮かれて、ライナの曇った表情に気づかなかった。
「ライナ、ねぇ、毎日ギルバート様のところへ通ってたの?」
歩きながら気になっていた事を聞いた。
ライナが何をして過ごしているのか気になっていたのに、リリアンナ殿下の側近になってもっと近づけるはずが遠のいてしまっていた。
本当は休みの日は一緒に過ごしたかったし、俺の気持ちを伝えたかった。ライナに俺を意識して欲しくて頑張るつもりだったのに。
「ええ、先生ね、とても面白いの。部屋の中はいつも本や資料で足の踏み場なんてないし、気になる事を調べ始めると食事も摂ろうとしないのよ。仕方ないから簡単な食事を作ってあげるの。そしたら『あ、食べるの忘れてた』なんて言いながらも美味しそうに食べてくれるの」
「ふーん、態々手作りしてるんだ」
「栄養が偏っているから心配なの、ふふ、今日はバズールと約束があるでしょう?一緒に作業が出来ないから今朝まで頑張ったのよ」
「え?」
ーー今朝まで?二人で一緒に過ごしたのか?
俺は驚いて目を大きく開けて
「二人っきりで?」
「え?ずっと二人ではないわ、最初は他の人たちも勿論いたの。でも気がついたら寝落ちしていて、先生と二人っきりになっていたの」
「そ、それはダメなやつでしょう?」
「でも何もないわ。それに早朝までは他にも人が居たのよ?」
「危ないとは思わないのか?」
「危ない?何を言っているの?」
「先生は独身の29歳。ライナは学生とはいえ19歳の女性だ。いくら先生とは師弟関係とは言え二人っきりなんて……何かあったら取り返しがつかないと思わないの?」
「変なこと言わないで!先生はそんな人ではないわ。大人だしいろんな事をご存知で尊敬しているの。学校で過ごす留学の期間をより充実した日々にしてくださった方なのよ?」
ライナが俺に対して腹を立てた。
ーー充実した日々?その言葉にイラッとした。
本当は俺がライナとそうしたかったのに。
いとこでしかない関係に無性に腹が立つ。
「愛している」そう言ってライナを今抱きしめてキスをしたい。あわよくば朝まで一緒に過ごしたい。
19歳の男なんて好きな子の前ではカッコつけていても本音はずっと一緒にいたい。
そんな俺の気持ちに気がつかないライナは、ギルバート様との楽しい日々を話してくれる。本人には恋愛感情なんてないのはわかっている。
でも他の男の話を聞かされるのは楽しいものではない。
ましてや朝まで一緒に?
俺は不機嫌でついライナに当たってしまった。
「じゃあ睡眠とれていないんでしょう?無理してるんじゃない?」
「そんな事ないわ。久しぶりに出かけるんだから楽しみにしてたもの、だから頑張って作業をこなしたんだもの」
「それならどうして最初困った顔をしていたんだ?俺との約束が嫌だったからじゃないの?」
「違うわ……ただ、いいのかなとつい思ってしまったの」
「なにが?」
「バズールこそリリアンナ殿下を敬愛しているのでしょう?いつも楽しそうにしているみたいだし。わたしとこんな時間を過ごしていいのかなとつい思ったの」
思ったことは即行動。
「みんな、今日は街へ出て視察よ!」
そう言うと誰の予定も聞かずにさっさと用意を始めた。
「「行きます!」」速決する奴。
「あ、あの、僕、今から授業が………」
「え?いや、い、今からですか?」
「リリアンナ様、今流行りのお店にも行かれますか?」嬉しそうに聞く令嬢達。
取り巻きも毎回反応はさまざま。
俺は「無理です」と言って帰ろうとしたら
「バズールは強制的に参加よ、拒否権はないわ」
「チッ」舌打ちをしたら
「何?文句でもあるの?」
「いえ、喜んで参加させていただきます」
仕方なく了解の返事をした。
リリアンナ殿下は街に行くとひたすら歩いて回る。
街の人々の生活を見て回り、困った人の話を聞く。
「最近物騒で物盗りが増えた」
「隣の家の子供がよく泣いているので心配だ、親が放置しているみたいだ」
「一家みんなが倒れて寝込んでいる。病気が流行り出す前かもしれない」
「あそこの店は高くて買えない。最近は砂糖も塩も値段が上がって困る」
などちょっとした愚痴話を聞いては、周りにいる騎士に確認に行かせる。
そして情報を集めて精査するのだ。
その中には大き過ぎる国家では見落としてしまう情報ばかり。だけどもし見落とさなければ小さな話で終わることなのに、気がつかないうちに国をも揺るがす大変なことになるケースもある。
特に物価高や地方の不作について、いち早く情報を知ることもできる。病気も蔓延する前に抑え込むことも可能だ。
それをこの19歳のリリアンナ殿下は周りのこと細かい情報を聞いて探し出し、大事になる前に処理してしまう。
俺はそれを彼女の側で見て驚き感心した。
ただの我儘な姫だと思ったら本当は物凄く知的で情の深い人だった。
だから彼女の周りのみんなは、我儘姫の機嫌とりの取り巻きと馬鹿にされても離れようとしないのだ。
彼女を知って仕舞えば、この人の行動力と性格に魅了されてしまう。
「どう?バズール?わたしに惚れた?」
「あー、人間性には惚れました」
「ふふ、素直になりなさい。わたしのこと好きでしょう?」
「はい、好きですね」
ライナが俺とリリアンナ殿下のやり取りを聞いていたなんて知らなかった。
学校のガゼボで何人かでたまたまお茶をしている時、ライナもたまたま近くにいて俺の話を聞いていた。
それも「はい、好きですね」と言ったところだけ。
その後、『性格だけなら』と付け加えたところは聞いていなかったみたいだ。
「ライナ!」
お互い忙しくなかなか会えない中で、ライナが友人達と歩いているのが見えた。
俺はリリアンナ殿下といたが、ライナを見つけて思わず声をかけた。
なのに気がついているはずの俺を見ようとしない。
「バズール、あの子は?」
リリアンナ殿下は無視をされた俺をみて、興味津々で俺の顔を覗き込んだ。
「やめてください」
リリアンナ殿下の顔が俺に近づいて、いたずらっ子のような顔をしている。
「ふーん、バズールにそんな顔をさせる女の子がいるのね」
ーーそんな顔?俺がどんな顔をしていると言うのか?
「ふふふ、泣きそうな顔……そうね、フラれた顔ね」
そんなリリアンナ殿下とのやりとりをライナは、俺に気づかないフリをしながらもみていたようだった。
俺はリリアンナ殿下からの茶々に、イライラしながら返事をしていて気が付かなかった。
俺がリリアンナ殿下のそばに仕えることになって、ライナとの距離はこうして開いていった。
もちろん俺はそんな原因にも気が付かず、ライナがなぜか俺を避けることに腹立たしくて、ライナに会うとつい不機嫌になっていた。
そんなある日久しぶりにライナと約束をした。
「久しぶりだな、やっと会えた」
俺はライナに会えて嬉しくてつい本音を彼女に向けて言った。
なのにライナの表情は少し困った顔をしていた。
「ねぇバズール、リリアンナ殿下は大丈夫なの?」
「リリアンナ殿下?」
「ええ、いつも一緒にいるじゃない?」
「今日くらいはいいさ。以前約束した店に行こう」
俺はライナの手を取り、「行くよ」と言って歩き出した。
やっと二人だけの時間を過ごせることに俺は浮かれて、ライナの曇った表情に気づかなかった。
「ライナ、ねぇ、毎日ギルバート様のところへ通ってたの?」
歩きながら気になっていた事を聞いた。
ライナが何をして過ごしているのか気になっていたのに、リリアンナ殿下の側近になってもっと近づけるはずが遠のいてしまっていた。
本当は休みの日は一緒に過ごしたかったし、俺の気持ちを伝えたかった。ライナに俺を意識して欲しくて頑張るつもりだったのに。
「ええ、先生ね、とても面白いの。部屋の中はいつも本や資料で足の踏み場なんてないし、気になる事を調べ始めると食事も摂ろうとしないのよ。仕方ないから簡単な食事を作ってあげるの。そしたら『あ、食べるの忘れてた』なんて言いながらも美味しそうに食べてくれるの」
「ふーん、態々手作りしてるんだ」
「栄養が偏っているから心配なの、ふふ、今日はバズールと約束があるでしょう?一緒に作業が出来ないから今朝まで頑張ったのよ」
「え?」
ーー今朝まで?二人で一緒に過ごしたのか?
俺は驚いて目を大きく開けて
「二人っきりで?」
「え?ずっと二人ではないわ、最初は他の人たちも勿論いたの。でも気がついたら寝落ちしていて、先生と二人っきりになっていたの」
「そ、それはダメなやつでしょう?」
「でも何もないわ。それに早朝までは他にも人が居たのよ?」
「危ないとは思わないのか?」
「危ない?何を言っているの?」
「先生は独身の29歳。ライナは学生とはいえ19歳の女性だ。いくら先生とは師弟関係とは言え二人っきりなんて……何かあったら取り返しがつかないと思わないの?」
「変なこと言わないで!先生はそんな人ではないわ。大人だしいろんな事をご存知で尊敬しているの。学校で過ごす留学の期間をより充実した日々にしてくださった方なのよ?」
ライナが俺に対して腹を立てた。
ーー充実した日々?その言葉にイラッとした。
本当は俺がライナとそうしたかったのに。
いとこでしかない関係に無性に腹が立つ。
「愛している」そう言ってライナを今抱きしめてキスをしたい。あわよくば朝まで一緒に過ごしたい。
19歳の男なんて好きな子の前ではカッコつけていても本音はずっと一緒にいたい。
そんな俺の気持ちに気がつかないライナは、ギルバート様との楽しい日々を話してくれる。本人には恋愛感情なんてないのはわかっている。
でも他の男の話を聞かされるのは楽しいものではない。
ましてや朝まで一緒に?
俺は不機嫌でついライナに当たってしまった。
「じゃあ睡眠とれていないんでしょう?無理してるんじゃない?」
「そんな事ないわ。久しぶりに出かけるんだから楽しみにしてたもの、だから頑張って作業をこなしたんだもの」
「それならどうして最初困った顔をしていたんだ?俺との約束が嫌だったからじゃないの?」
「違うわ……ただ、いいのかなとつい思ってしまったの」
「なにが?」
「バズールこそリリアンナ殿下を敬愛しているのでしょう?いつも楽しそうにしているみたいだし。わたしとこんな時間を過ごしていいのかなとつい思ったの」
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