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新しい恋。
バズール編⑤
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「リリアンナ殿下は側近として仕えているだけだ。別に側にいたいわけではない。ライナこそいつもギルバート様を優先してるだろう?」
「わたしは先生の助手として時間がある時にお手伝いをさせてもらっているだけだわ。バズールとは違うわ」
「何が違うんだ?いつも楽しそうにしているのは君だろう?」
ライナは下唇を噛んで少し悔しそうにしていた。
俺はライナに言われて腹が立ちながらも、ライナの唇を塞ぎたい衝動に駆られながら我慢した。
ライナの少し拗ねた怒った顔も可愛い。
こんな事思うのはライナだけ。
だけど俺の気持ちを知らないライナに無理やりキスなんて出来ない。
「………リリアンナ殿下を好きだと言ってたじゃない」
聞こえないくらい小さな声で呟いた。
「えっ?」
俺が聞き直そうとしたら
「もういいわ、そんなにわたしに文句ばかり言うならわたしは帰るわ。せっかく急いで作業を終わらせてバズールとの時間を作ったのに……」
拗ねてたはずのライナの瞳が潤んでいた。
ーー言いすぎた。ライナの性格を知り尽くしているくせについ追い詰めた。
ライナは約束を破ったりしない。スケジュールが詰まっていたらなんとか頑張って調整してでも約束を守ろうとする。
今回だって、ただそれだけ。
先生のところに泊まったと言っても作業中居眠りしただけなのだから本人にはお泊まりなんて自覚はない。
元々ギルバート様に恋愛感情のないライナは何にも思っていない。あそこは人の出入りが多くバカなことは出来ない。
ーーわかってる、わかってるのにライナのことになると昔っから感情的になってしまう。
「待って!ごめん」
「離して!」
俺を睨むライナの顔を見て胸がズキっと痛んだ。
「ダメだ。行かないで!やっと久しぶりに会えたのに……」
理性より先に体が動いた。
ライナを抱きしめて……そしてキスをした。
ライナは目を見開き俺の目を見つめた。
俺はライナの体を強く抱きしめて固まって動けないライナに何度もキスをした。
我に返ったライナは俺の腕の中で暴れた。
何度か胸元を叩かれた。
そして……俺もハッと我に返り、唇を離した。
「ご、ごめん。そんなつもりじゃなかった」
「………ばかぁ!」
ライナは涙をためて俺をキッと睨んだ。
言い訳をさせて欲しい。
そう思ったのに……
俺がライナの腕を掴もうとしたら振り払った。
「………………」
何か言いたいのに、俺はただ呆然と立っていた。
そしてライナは瞳に涙をいっぱい流しながら去って行った。
「ライナ!」
俺の言葉なんて聞こえていない。
ライナは振り返ることもなく俺の前からいなくなった。
何度も謝ろうと女子寮に行ったり、学校で待ち伏せしたりした。でもライナは会ってくれることはなかった。
リリアンナ殿下には
「どうしたの?最近側近の仕事が疎かになっているわよ」と叱られたが
「すみません、必要な仕事はきちんとこなしています。それ以上のことはもう出来かねます」
「あら?わたしがいつ無理をさせたのかしら?貴方が勝手に必要以上の仕事をしていただけでしょう?わたしの所為にするのはやめてくれないかしら?」
リリアンナ殿下は不愉快だとあからさまに嫌な顔をした。
確かに強制はなかった。みんなが当たり前のように彼女のそばにいた。だから自分も当たり前のように仕えていた。
「すみません」俺は頭を下げるしかなかった。
「ふうん、で、バズールは側近をやめたいの?兄様に頼まれて側近になったのでしょう?本当は断ろうとしていたことも知っているわ」
リリアンナ殿下はクスリと笑い、俺の顎を指でぐっと持ち上げた。
そして俺の顔に自分の顔を近づけてきた。
思わず顔を逸らすと、リリアンナ殿下はまたクスリと笑った。
「バズール、キスされると思ったのかしら?貴方はお気に入りのおもちゃだけどわたしを愛してもいない男にキスを求めないわよ」
おもちゃと言う言葉にカチンときた。
「おもちゃ?貴方は最低ですね」
イライラしていた俺はリリアンナ殿下に八つ当たりをしていたのかもしれない。
この言葉は言ってはいけない、と思ったけど抑えることができなかった。
「わたしに逆らうの?言い返すなんて!」
リリアンナ殿下はさらに不機嫌になっていた。
「申し訳ありません」
王妹であるリリアンナ殿下に言い返してしまって慌てて謝罪したが、リリアンナ殿下は笑いもせず言った。
「バズール、不敬罪には問わないわ。ただし、嫌でもわたしの側近として貴方の余った時間はわたしに費やしなさい」
「了解いたしました。ただリリアンナ殿下、わたしは優秀ではありません、あまり近くにいすぎると殿下の評判を落としかねないのではありませんか?」
「バズール、わたしは貴方を気に入っているの。他の者がわたしに対してそんな事を言ったらすぐにクビにするわ。でもバズール貴方にはそばにいて欲しいの。出来れば………ううん、今はこれ以上言わないわ」
そう言って俺の顔をまたまじまじと見た。
「ふふ、バズールの顔はわたし好みなの。その綺麗な顔、優秀な知能、声も素敵だし、貴方を手放す気はないわ」
俺は結局ライナを見つけ出して謝ることはできなかった。
完全に避けられているのだとわかった。
いつの間にか話すこともできず俺は結局ほとんどの余暇の時間をリリアンナ殿下の側近として過ごすことになった。
そんなある日リリアンナ殿下はライナを気にするようになった。
「ライナ様?」
リリアンナ殿下はライナを見つけると嬉しそうに近寄って行った。
「オリソン国のリリアンナ殿下にご挨拶申し上げます」
ライナは急いで廊下の端によりリリアンナ殿下に頭を下げた。
この大学では身分差はないとはいえ、さすがに王族に対して同じ扱いはできない。
「ふふ、バズールの従姉妹の貴女なのだから畏まらないで」
殿下の笑顔はリーリエ嬢を思い出すことがある。
リーリエ嬢はいつも男たちに媚を売って甘えて男達に言う事を聞かせていた。
リリアンナ殿下の周りにもたくさんの取り巻き達がいた。
その中にはもちろん俺もいる……仕方なくだけど。
俺はライナをチラッと見るが、もう無理やり追いかけるのをやめた。
ーー話すことすらなくなってしまった。
俺は無表情で立っていた。
ただ……リリアンナ殿下はこうして取り巻きを連れて歩いている時にライナに会うと、声をかけようとする。
リリアンナ殿下は態々立ち止まってライナを馬鹿にしたようにクスッと笑って話しかける。
「ありがとうございます。では失礼させていただきます」
挨拶だけ終わるとライナはさっさと廊下の端から移動しようとした。
「待って、せっかくだからご一緒にお茶でもいかが?」
殿下に誘われて仕舞えば断ることなど出来ない。
「ライナ、探していたんだ!」と少し離れた所から急いでくる人の姿が見えた。
その姿にライナはホッとしていた。
「すみません、今から伺うつもりでした」
「では、僕の研究室に一緒に行こう」
優しい笑顔で和かにライナの持っている重たい本を受け取ると「行くよ」と言ってさっさと歩き出した。
ライナはリリアンナ殿下に頭を深々下げて
「申し訳ございません、せっかくのお誘いなのに用事がありましてご一緒できません」
と謝り急いで彼について行こうとした。
「もう!おじ様ったら無理やりライナ様を引っ張って連れていくのね」
頬を膨らませてぷんぷん怒ってはいても、陛下とリリアンナ殿下の父親の弟であるギルバート様には逆らえず、ライナはすぐに解放された。
俺はライナがいなくなってから
「リリアンナ殿下、ライナに関わるのはやめてもらえませんか」
とお願いした。
「どうして?彼女はとても綺麗な子よね?みんなから注目されているわ。貴方もあの子も本当に綺麗な顔立ちでさらに優秀。わたしの取り巻きに入れるのもいいかもしれないわね」
そう言って楽しそうに話す彼女を横目で見ていた。
「わたしは先生の助手として時間がある時にお手伝いをさせてもらっているだけだわ。バズールとは違うわ」
「何が違うんだ?いつも楽しそうにしているのは君だろう?」
ライナは下唇を噛んで少し悔しそうにしていた。
俺はライナに言われて腹が立ちながらも、ライナの唇を塞ぎたい衝動に駆られながら我慢した。
ライナの少し拗ねた怒った顔も可愛い。
こんな事思うのはライナだけ。
だけど俺の気持ちを知らないライナに無理やりキスなんて出来ない。
「………リリアンナ殿下を好きだと言ってたじゃない」
聞こえないくらい小さな声で呟いた。
「えっ?」
俺が聞き直そうとしたら
「もういいわ、そんなにわたしに文句ばかり言うならわたしは帰るわ。せっかく急いで作業を終わらせてバズールとの時間を作ったのに……」
拗ねてたはずのライナの瞳が潤んでいた。
ーー言いすぎた。ライナの性格を知り尽くしているくせについ追い詰めた。
ライナは約束を破ったりしない。スケジュールが詰まっていたらなんとか頑張って調整してでも約束を守ろうとする。
今回だって、ただそれだけ。
先生のところに泊まったと言っても作業中居眠りしただけなのだから本人にはお泊まりなんて自覚はない。
元々ギルバート様に恋愛感情のないライナは何にも思っていない。あそこは人の出入りが多くバカなことは出来ない。
ーーわかってる、わかってるのにライナのことになると昔っから感情的になってしまう。
「待って!ごめん」
「離して!」
俺を睨むライナの顔を見て胸がズキっと痛んだ。
「ダメだ。行かないで!やっと久しぶりに会えたのに……」
理性より先に体が動いた。
ライナを抱きしめて……そしてキスをした。
ライナは目を見開き俺の目を見つめた。
俺はライナの体を強く抱きしめて固まって動けないライナに何度もキスをした。
我に返ったライナは俺の腕の中で暴れた。
何度か胸元を叩かれた。
そして……俺もハッと我に返り、唇を離した。
「ご、ごめん。そんなつもりじゃなかった」
「………ばかぁ!」
ライナは涙をためて俺をキッと睨んだ。
言い訳をさせて欲しい。
そう思ったのに……
俺がライナの腕を掴もうとしたら振り払った。
「………………」
何か言いたいのに、俺はただ呆然と立っていた。
そしてライナは瞳に涙をいっぱい流しながら去って行った。
「ライナ!」
俺の言葉なんて聞こえていない。
ライナは振り返ることもなく俺の前からいなくなった。
何度も謝ろうと女子寮に行ったり、学校で待ち伏せしたりした。でもライナは会ってくれることはなかった。
リリアンナ殿下には
「どうしたの?最近側近の仕事が疎かになっているわよ」と叱られたが
「すみません、必要な仕事はきちんとこなしています。それ以上のことはもう出来かねます」
「あら?わたしがいつ無理をさせたのかしら?貴方が勝手に必要以上の仕事をしていただけでしょう?わたしの所為にするのはやめてくれないかしら?」
リリアンナ殿下は不愉快だとあからさまに嫌な顔をした。
確かに強制はなかった。みんなが当たり前のように彼女のそばにいた。だから自分も当たり前のように仕えていた。
「すみません」俺は頭を下げるしかなかった。
「ふうん、で、バズールは側近をやめたいの?兄様に頼まれて側近になったのでしょう?本当は断ろうとしていたことも知っているわ」
リリアンナ殿下はクスリと笑い、俺の顎を指でぐっと持ち上げた。
そして俺の顔に自分の顔を近づけてきた。
思わず顔を逸らすと、リリアンナ殿下はまたクスリと笑った。
「バズール、キスされると思ったのかしら?貴方はお気に入りのおもちゃだけどわたしを愛してもいない男にキスを求めないわよ」
おもちゃと言う言葉にカチンときた。
「おもちゃ?貴方は最低ですね」
イライラしていた俺はリリアンナ殿下に八つ当たりをしていたのかもしれない。
この言葉は言ってはいけない、と思ったけど抑えることができなかった。
「わたしに逆らうの?言い返すなんて!」
リリアンナ殿下はさらに不機嫌になっていた。
「申し訳ありません」
王妹であるリリアンナ殿下に言い返してしまって慌てて謝罪したが、リリアンナ殿下は笑いもせず言った。
「バズール、不敬罪には問わないわ。ただし、嫌でもわたしの側近として貴方の余った時間はわたしに費やしなさい」
「了解いたしました。ただリリアンナ殿下、わたしは優秀ではありません、あまり近くにいすぎると殿下の評判を落としかねないのではありませんか?」
「バズール、わたしは貴方を気に入っているの。他の者がわたしに対してそんな事を言ったらすぐにクビにするわ。でもバズール貴方にはそばにいて欲しいの。出来れば………ううん、今はこれ以上言わないわ」
そう言って俺の顔をまたまじまじと見た。
「ふふ、バズールの顔はわたし好みなの。その綺麗な顔、優秀な知能、声も素敵だし、貴方を手放す気はないわ」
俺は結局ライナを見つけ出して謝ることはできなかった。
完全に避けられているのだとわかった。
いつの間にか話すこともできず俺は結局ほとんどの余暇の時間をリリアンナ殿下の側近として過ごすことになった。
そんなある日リリアンナ殿下はライナを気にするようになった。
「ライナ様?」
リリアンナ殿下はライナを見つけると嬉しそうに近寄って行った。
「オリソン国のリリアンナ殿下にご挨拶申し上げます」
ライナは急いで廊下の端によりリリアンナ殿下に頭を下げた。
この大学では身分差はないとはいえ、さすがに王族に対して同じ扱いはできない。
「ふふ、バズールの従姉妹の貴女なのだから畏まらないで」
殿下の笑顔はリーリエ嬢を思い出すことがある。
リーリエ嬢はいつも男たちに媚を売って甘えて男達に言う事を聞かせていた。
リリアンナ殿下の周りにもたくさんの取り巻き達がいた。
その中にはもちろん俺もいる……仕方なくだけど。
俺はライナをチラッと見るが、もう無理やり追いかけるのをやめた。
ーー話すことすらなくなってしまった。
俺は無表情で立っていた。
ただ……リリアンナ殿下はこうして取り巻きを連れて歩いている時にライナに会うと、声をかけようとする。
リリアンナ殿下は態々立ち止まってライナを馬鹿にしたようにクスッと笑って話しかける。
「ありがとうございます。では失礼させていただきます」
挨拶だけ終わるとライナはさっさと廊下の端から移動しようとした。
「待って、せっかくだからご一緒にお茶でもいかが?」
殿下に誘われて仕舞えば断ることなど出来ない。
「ライナ、探していたんだ!」と少し離れた所から急いでくる人の姿が見えた。
その姿にライナはホッとしていた。
「すみません、今から伺うつもりでした」
「では、僕の研究室に一緒に行こう」
優しい笑顔で和かにライナの持っている重たい本を受け取ると「行くよ」と言ってさっさと歩き出した。
ライナはリリアンナ殿下に頭を深々下げて
「申し訳ございません、せっかくのお誘いなのに用事がありましてご一緒できません」
と謝り急いで彼について行こうとした。
「もう!おじ様ったら無理やりライナ様を引っ張って連れていくのね」
頬を膨らませてぷんぷん怒ってはいても、陛下とリリアンナ殿下の父親の弟であるギルバート様には逆らえず、ライナはすぐに解放された。
俺はライナがいなくなってから
「リリアンナ殿下、ライナに関わるのはやめてもらえませんか」
とお願いした。
「どうして?彼女はとても綺麗な子よね?みんなから注目されているわ。貴方もあの子も本当に綺麗な顔立ちでさらに優秀。わたしの取り巻きに入れるのもいいかもしれないわね」
そう言って楽しそうに話す彼女を横目で見ていた。
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