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新しい恋。
番外編 リリアンナの後悔②
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怖い、恐い、こわいの。
目を瞑ればわたしを恨んで事故で死んだ人たちが恨みを言ってくる。
わたしの心は蝕んでいった。
「リリアンナ……お前を処刑出来ないのは仕方がない。王族を処刑することはできないのが我が国の法律だ。その代わりお前は永久に北の塔で過ごすことになる」
陛下であるお兄様が冷たい目を向けてそう言った。
北の塔……一番古くて冬になるとあまりの寒さに凍死してしまうこともあると聞いたことがある。
逆に夏は暑すぎて脱水を起こし生きることが辛く死にたくなると聞いた。
ーーでもそこに行けばこの罪悪感から少しは解放されるのかしら?
わたしは自殺防止の為、口に猿ぐつわをされたまま過ごすことになる。
首吊りも出来ないように紐を引っ掛けるような場所はない。
あるのは眠るためのマットと毛布だけ。
窓すらない部屋。
食事をする時だけ猿ぐつわを外される。
監視される中、食欲のないわたしは少しのスープを飲んで後は返却する。
「王女様にはこんな飯じゃ気に入らないんだろうな」
看守の一人が呆れたように吐き捨てた。
ーー違う。自分のしたことへの罪悪感から全く食事が喉を通らないだけ……
なのに猿ぐつわの所為で話すことすらできない。
わたしは生かされるだけの、モノでしかない。
そんなある日、突然目の前にカイお兄様が現れた。
「リリアンナ、猿ぐつわを外そう」
そう言って優しい温かい手がわたしの顔に近づいて来た。
なのにわたしはビクッとして体が震えた。
ここに来てからは看守がわたしの猿ぐつわを乱暴に嵌めたりは外したりするのが当たり前になっていた。
一言「人殺し」だの「何故まだ死なないんだ」と吐き捨てられることもあった。
「リリアンナ、少しは反省したか?」
優しく声をかけるカイお兄様。
わたしは頷いて良いのか迷った。
反省しているか?反省なんてものではない。どうせなら死んでしまいたい。たくさんの命をわたしの我儘で奪ってしまった。
そんな言葉では言い表せない。
「なあ、リリアンナ……お前の我儘から確かに始まった列車事故だ。だがなあれは、元々起こることになっていたらしい」
「……?」
わたしは驚いてカイお兄様を見た。もう数ヶ月声を出していないので声は微かにしか出ない。
食欲も無くなっていたので骨と皮になって体も動かない。
「最近調べてわかったんだが、うちの国は俺と弟が前国王を倒して新しく国を作っただろう?前国王を支持する者はまだ完全に排除仕切れていない。そいつらが列車事故を起こす予定にしていたんだ。たまたまその列車にバズールとライナが乗ることになっていた。お前はライナを呪っていただろう?それに便乗してお前が全て命令したように見せかけて事故を起こしたんだ」
「え?」
「事故を起こした犯人と術者は同じ仲間だ、そしてお前の周りにいた取り巻きの数人は前国王の支持者の中の息子達だったんだ」
「そんな…」
「お前は確かにバズールを欲しいあまりライナに酷いことをしようとした。それは許されることではない。だがな、お前が列車事故を起こそうと企てたわけではない。犯人達は別にいたんだ」
カイお兄様は辛そうな顔をしてわたしの頬をそっと触った。
「辛い思いをさせた。陛下には許可を得ている。ここから出よう」
わたしは首を横に振った。
「どうした?ここから出たいだろう?」
もう一度首を横に振る。
少しずつ必死で声を出した。
「わ……た……し…が……わ……る……い………の…………つみ……つぐ…な……い……ます」
「すまない……お前はずっと王女として生きて来た。だけどお前は乳母や侍女に育てられた。家族の誰もがお前を顧みようとしなかった。嫁に叱られた……平民になって俺は好きに生きて来た。王族としての権利を放棄してお前とも関わろうとしなかった。
悪いのはお前だけじゃない、俺も弟である陛下もお前を甘やかして怒ることもなければ、お前と向き合うこともしなかった」
ーー違う、わたしが悪い。王女だからどんなことでも叶うと思っていた。わたしは何をしても許される存在なのだと驕り高ぶっていた。
わたしは何度も何度も首を横に振る。
ーーカイお兄様……そんな顔をさせてごめんなさい。わたしのために必死で動いてくれたんですよね?
服はボロボロになって髪もボサボサ、わたしをなんとか助けたくて必死で真実を見つけてくれたんだろう。
わたしが捕まる前に「列車事故だけは指示していない」と言ったから。
その気持ちだけでわたしはもう十分嬉しい。
ああ、頭がふらふらする。
もういいのかな?
生きていなくて……
目を瞑ればわたしを恨んで事故で死んだ人たちが恨みを言ってくる。
わたしの心は蝕んでいった。
「リリアンナ……お前を処刑出来ないのは仕方がない。王族を処刑することはできないのが我が国の法律だ。その代わりお前は永久に北の塔で過ごすことになる」
陛下であるお兄様が冷たい目を向けてそう言った。
北の塔……一番古くて冬になるとあまりの寒さに凍死してしまうこともあると聞いたことがある。
逆に夏は暑すぎて脱水を起こし生きることが辛く死にたくなると聞いた。
ーーでもそこに行けばこの罪悪感から少しは解放されるのかしら?
わたしは自殺防止の為、口に猿ぐつわをされたまま過ごすことになる。
首吊りも出来ないように紐を引っ掛けるような場所はない。
あるのは眠るためのマットと毛布だけ。
窓すらない部屋。
食事をする時だけ猿ぐつわを外される。
監視される中、食欲のないわたしは少しのスープを飲んで後は返却する。
「王女様にはこんな飯じゃ気に入らないんだろうな」
看守の一人が呆れたように吐き捨てた。
ーー違う。自分のしたことへの罪悪感から全く食事が喉を通らないだけ……
なのに猿ぐつわの所為で話すことすらできない。
わたしは生かされるだけの、モノでしかない。
そんなある日、突然目の前にカイお兄様が現れた。
「リリアンナ、猿ぐつわを外そう」
そう言って優しい温かい手がわたしの顔に近づいて来た。
なのにわたしはビクッとして体が震えた。
ここに来てからは看守がわたしの猿ぐつわを乱暴に嵌めたりは外したりするのが当たり前になっていた。
一言「人殺し」だの「何故まだ死なないんだ」と吐き捨てられることもあった。
「リリアンナ、少しは反省したか?」
優しく声をかけるカイお兄様。
わたしは頷いて良いのか迷った。
反省しているか?反省なんてものではない。どうせなら死んでしまいたい。たくさんの命をわたしの我儘で奪ってしまった。
そんな言葉では言い表せない。
「なあ、リリアンナ……お前の我儘から確かに始まった列車事故だ。だがなあれは、元々起こることになっていたらしい」
「……?」
わたしは驚いてカイお兄様を見た。もう数ヶ月声を出していないので声は微かにしか出ない。
食欲も無くなっていたので骨と皮になって体も動かない。
「最近調べてわかったんだが、うちの国は俺と弟が前国王を倒して新しく国を作っただろう?前国王を支持する者はまだ完全に排除仕切れていない。そいつらが列車事故を起こす予定にしていたんだ。たまたまその列車にバズールとライナが乗ることになっていた。お前はライナを呪っていただろう?それに便乗してお前が全て命令したように見せかけて事故を起こしたんだ」
「え?」
「事故を起こした犯人と術者は同じ仲間だ、そしてお前の周りにいた取り巻きの数人は前国王の支持者の中の息子達だったんだ」
「そんな…」
「お前は確かにバズールを欲しいあまりライナに酷いことをしようとした。それは許されることではない。だがな、お前が列車事故を起こそうと企てたわけではない。犯人達は別にいたんだ」
カイお兄様は辛そうな顔をしてわたしの頬をそっと触った。
「辛い思いをさせた。陛下には許可を得ている。ここから出よう」
わたしは首を横に振った。
「どうした?ここから出たいだろう?」
もう一度首を横に振る。
少しずつ必死で声を出した。
「わ……た……し…が……わ……る……い………の…………つみ……つぐ…な……い……ます」
「すまない……お前はずっと王女として生きて来た。だけどお前は乳母や侍女に育てられた。家族の誰もがお前を顧みようとしなかった。嫁に叱られた……平民になって俺は好きに生きて来た。王族としての権利を放棄してお前とも関わろうとしなかった。
悪いのはお前だけじゃない、俺も弟である陛下もお前を甘やかして怒ることもなければ、お前と向き合うこともしなかった」
ーー違う、わたしが悪い。王女だからどんなことでも叶うと思っていた。わたしは何をしても許される存在なのだと驕り高ぶっていた。
わたしは何度も何度も首を横に振る。
ーーカイお兄様……そんな顔をさせてごめんなさい。わたしのために必死で動いてくれたんですよね?
服はボロボロになって髪もボサボサ、わたしをなんとか助けたくて必死で真実を見つけてくれたんだろう。
わたしが捕まる前に「列車事故だけは指示していない」と言ったから。
その気持ちだけでわたしはもう十分嬉しい。
ああ、頭がふらふらする。
もういいのかな?
生きていなくて……
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