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オリソン国①
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港に着くとルイスがすぐに知人を見つけ手を振った。
ミルヒーナは思わずその人を二度見してしまった。
ルイスは侯爵家の次男で、貴族の中でも将来有望だと言われていて、品位もあり周りにいる人たちもどちらかと言うと高位貴族の人ばかり。
なのに今目の前にいる人は、「おい!ルイス!」と大きな声で近づいてきた。
そこには品などなく、豪快で何処から見ても平民の中年男だった。
なのに何処か威圧感があり親しげに笑っているはずなのに隙がない。
「カイさん、お迎えありがとうございます」
「この娘があの例の子か?」
上から下をジロジロ見られたのにミルヒーナは不思議に不快感を感じなかった。
カイは興味と好奇心が先に立ち、思わずミルヒーナをマジマジと見ていたら、ルイスが呆れた声を出した。
「カイさん、ミルヒーナが固まってます!それくらいでやめてください」
「おっ、すまんすまん。ウェルシヤ国には何度か仕事で行ったことがあるが、【譲渡】や【魔力量】なんて魔法聞いたことがないからどんな魔法使いが現れるのかと思ったらこんな小娘だと思わなかったんだ。
可愛いらしい嬢ちゃん、しばらく我が家で暮らすことになる。よろしくな、俺はカイ」
大きなごつごつした手を差し出されミルヒーナも慌てて手を出した。
ーーわたしってバードン侯爵のところへ行くんじゃなかったのかしら?ルイス兄様は変更するなんて話してなかったわよね?
「ミルには伝えてなかったな。さっき連絡があってミルを守るのならカイさんが適任だからとバードン侯爵が頼んだらしい」
「侯爵家よりもこの方が?」
どう見ても平民で口の悪そうなおじさんが、侯爵家より適任で自分を守ってくれる⁈
ミルヒーナは少し不安に思っているのが顔に出てしまっていた。
「ミル、俺は強いぞ!それに何でも屋だから、お前のことを守るのは簡単なことだ。任せろ!」
ーー不思議だわ。この人の言葉には力強さと安心感があるわ。どうしてかしら?
「ふふっ、よろしくお願いします」
素直に彼になら自分を任せられる。ミルヒーナは直感を信じることにした。
三人は馬車に乗りカイの自宅へと向かう。
そして着いた家は………
ーーえっ?平民とはいえ客を泊まらせるのだから、屋敷とまではいかなくてもそれなりに大きな家だと思ったのに……
普通の家だった。
中に案内されるとすぐに広いリビング兼客間がありキッチンと寝室、それに個室が3部屋とバスルームとトイレ。とてもシンプルな作りだ。
玄関の前は、庭になっていて手入れされた花や野菜まで栽培されていた。
ルイスは馬車の中でカイのことを説明した。カイは馬車を運転していたので中にいるのは二人だけだった。
「ミルが心配するのも仕方がないかもしれないけど、カイさんはこの国の国王陛下の王兄なんだ。今は結婚して平民だけど、剣も体術も優れているし、この国一番の強者だよ、それに世界中を飛び回っていて情報にも長けてるから君の魔法の話を聞いて興味が湧いたみたいだけど悪用することはないよ」
ルイスがカイをとても信頼しているのは話し方でわかった。
「兄様がそう仰るのなら信用するわ。それに彼はとても安心感があるの、とっても不思議な人だわ」
「不思議な人だろう?僕も初めて会った時驚いたよ。陛下はカイさんを一番信頼している、そしてカイさんも一度懐に入れた人は絶対に裏切らない人なんだ。ミルを気に入ってくれたのはすぐわかった。だからミルがこの国にいる間は安心して暮らせると思う」
「兄様、ここでわたしを脅かす人はいないと思うわ。ウェルシヤ国に帰ったら大変なことになるかもしれないけど……」
「あっ、ミルは魔法が使えないから大丈夫だと思うけど、この国では魔法が使える人は基本的にはいない。魔道具もない。だから不便かもしれないけど我慢して欲しい、その代わりに魔法とは違う文化が発達しているんだ」
「ガス灯で灯りもつくし井戸もあるし、下水道も発達しているんだ。馬車もあるけど最近は自動車や汽車も走っているんだ」
「自動車?汽車?それは本の世界で読んだわ。本当にあるのね?とっても楽しみだわ」
ミルヒーナは目をキラキラさせてルイスにオリソン国の話を色々尋ねた。
カイの家に住んでいる妻のメルーさん。
娘のマーラさんは嫁いでいて、たまに帰ってくるらしい。
それから長年ここで暮らしたオリエ様というシャトナー国の公爵令嬢で元王太子妃がよく遊びにくる。一度離縁して女騎士になり今は同じ人ともう一度結婚して一人娘のエヴァと三人で仲良く暮らしていると聞いた。
「ここはわたしみたいに問題のある人が逃げてくるところなのかしら?」
ルイスは苦笑しながら言った。
「ミルはなんにも悪いことはしていないよ。ただ君の力を欲する人が多いだけなんだ」
「モテる女は辛いわ」
ミルヒーナもルイスに苦笑いをして返した。
メルーは優しくミルヒーナに声をかけてくれた。
「ミルと呼んでもいいかしら?」
「もちろんです、しばらくお世話になります」
「わたしのことはメルーと呼んでね」
「はい」
「明日はミルの歓迎会をしましょうね?マーラや婿のマリウス、オリエ様やイアン様も声をかけるつもりなの」
「ルイス兄様に少しだけお話は聞いています。会えるのがとても楽しみです!」
次の日みんなが集まった。
初めて会う大人の人たちなのに、すぐにミルヒーナと仲良くなった。
「ミル、よろしくね」
「へぇ、ルイスと少し似ているかもしれないな」
「ルイスと同じ魔法使いかぁ。ウェルシヤ国の人たちは他国にくると魔法を使わないで過ごすんだ。だから僕たちは見たことがない、だからとても興味深いんだ」
ミルヒーナはこの国なら自分が魔法を使えないことも畏怖されてしまう魔法しか使えないことも忘れて暮らせるかもしれないと思った。
噂以上に優しいオリエ様や明るく可愛らしいマーラさんともすぐに仲良くなった。
明日は女性たちで街へ買い物に行こうと話をした。ミルヒーナは慌ててこの国へ来たので持ってきたものはほんの僅かだった。
ミルヒーナは思わずその人を二度見してしまった。
ルイスは侯爵家の次男で、貴族の中でも将来有望だと言われていて、品位もあり周りにいる人たちもどちらかと言うと高位貴族の人ばかり。
なのに今目の前にいる人は、「おい!ルイス!」と大きな声で近づいてきた。
そこには品などなく、豪快で何処から見ても平民の中年男だった。
なのに何処か威圧感があり親しげに笑っているはずなのに隙がない。
「カイさん、お迎えありがとうございます」
「この娘があの例の子か?」
上から下をジロジロ見られたのにミルヒーナは不思議に不快感を感じなかった。
カイは興味と好奇心が先に立ち、思わずミルヒーナをマジマジと見ていたら、ルイスが呆れた声を出した。
「カイさん、ミルヒーナが固まってます!それくらいでやめてください」
「おっ、すまんすまん。ウェルシヤ国には何度か仕事で行ったことがあるが、【譲渡】や【魔力量】なんて魔法聞いたことがないからどんな魔法使いが現れるのかと思ったらこんな小娘だと思わなかったんだ。
可愛いらしい嬢ちゃん、しばらく我が家で暮らすことになる。よろしくな、俺はカイ」
大きなごつごつした手を差し出されミルヒーナも慌てて手を出した。
ーーわたしってバードン侯爵のところへ行くんじゃなかったのかしら?ルイス兄様は変更するなんて話してなかったわよね?
「ミルには伝えてなかったな。さっき連絡があってミルを守るのならカイさんが適任だからとバードン侯爵が頼んだらしい」
「侯爵家よりもこの方が?」
どう見ても平民で口の悪そうなおじさんが、侯爵家より適任で自分を守ってくれる⁈
ミルヒーナは少し不安に思っているのが顔に出てしまっていた。
「ミル、俺は強いぞ!それに何でも屋だから、お前のことを守るのは簡単なことだ。任せろ!」
ーー不思議だわ。この人の言葉には力強さと安心感があるわ。どうしてかしら?
「ふふっ、よろしくお願いします」
素直に彼になら自分を任せられる。ミルヒーナは直感を信じることにした。
三人は馬車に乗りカイの自宅へと向かう。
そして着いた家は………
ーーえっ?平民とはいえ客を泊まらせるのだから、屋敷とまではいかなくてもそれなりに大きな家だと思ったのに……
普通の家だった。
中に案内されるとすぐに広いリビング兼客間がありキッチンと寝室、それに個室が3部屋とバスルームとトイレ。とてもシンプルな作りだ。
玄関の前は、庭になっていて手入れされた花や野菜まで栽培されていた。
ルイスは馬車の中でカイのことを説明した。カイは馬車を運転していたので中にいるのは二人だけだった。
「ミルが心配するのも仕方がないかもしれないけど、カイさんはこの国の国王陛下の王兄なんだ。今は結婚して平民だけど、剣も体術も優れているし、この国一番の強者だよ、それに世界中を飛び回っていて情報にも長けてるから君の魔法の話を聞いて興味が湧いたみたいだけど悪用することはないよ」
ルイスがカイをとても信頼しているのは話し方でわかった。
「兄様がそう仰るのなら信用するわ。それに彼はとても安心感があるの、とっても不思議な人だわ」
「不思議な人だろう?僕も初めて会った時驚いたよ。陛下はカイさんを一番信頼している、そしてカイさんも一度懐に入れた人は絶対に裏切らない人なんだ。ミルを気に入ってくれたのはすぐわかった。だからミルがこの国にいる間は安心して暮らせると思う」
「兄様、ここでわたしを脅かす人はいないと思うわ。ウェルシヤ国に帰ったら大変なことになるかもしれないけど……」
「あっ、ミルは魔法が使えないから大丈夫だと思うけど、この国では魔法が使える人は基本的にはいない。魔道具もない。だから不便かもしれないけど我慢して欲しい、その代わりに魔法とは違う文化が発達しているんだ」
「ガス灯で灯りもつくし井戸もあるし、下水道も発達しているんだ。馬車もあるけど最近は自動車や汽車も走っているんだ」
「自動車?汽車?それは本の世界で読んだわ。本当にあるのね?とっても楽しみだわ」
ミルヒーナは目をキラキラさせてルイスにオリソン国の話を色々尋ねた。
カイの家に住んでいる妻のメルーさん。
娘のマーラさんは嫁いでいて、たまに帰ってくるらしい。
それから長年ここで暮らしたオリエ様というシャトナー国の公爵令嬢で元王太子妃がよく遊びにくる。一度離縁して女騎士になり今は同じ人ともう一度結婚して一人娘のエヴァと三人で仲良く暮らしていると聞いた。
「ここはわたしみたいに問題のある人が逃げてくるところなのかしら?」
ルイスは苦笑しながら言った。
「ミルはなんにも悪いことはしていないよ。ただ君の力を欲する人が多いだけなんだ」
「モテる女は辛いわ」
ミルヒーナもルイスに苦笑いをして返した。
メルーは優しくミルヒーナに声をかけてくれた。
「ミルと呼んでもいいかしら?」
「もちろんです、しばらくお世話になります」
「わたしのことはメルーと呼んでね」
「はい」
「明日はミルの歓迎会をしましょうね?マーラや婿のマリウス、オリエ様やイアン様も声をかけるつもりなの」
「ルイス兄様に少しだけお話は聞いています。会えるのがとても楽しみです!」
次の日みんなが集まった。
初めて会う大人の人たちなのに、すぐにミルヒーナと仲良くなった。
「ミル、よろしくね」
「へぇ、ルイスと少し似ているかもしれないな」
「ルイスと同じ魔法使いかぁ。ウェルシヤ国の人たちは他国にくると魔法を使わないで過ごすんだ。だから僕たちは見たことがない、だからとても興味深いんだ」
ミルヒーナはこの国なら自分が魔法を使えないことも畏怖されてしまう魔法しか使えないことも忘れて暮らせるかもしれないと思った。
噂以上に優しいオリエ様や明るく可愛らしいマーラさんともすぐに仲良くなった。
明日は女性たちで街へ買い物に行こうと話をした。ミルヒーナは慌ててこの国へ来たので持ってきたものはほんの僅かだった。
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