【完結】わたしが嫌いな幼馴染の執着から逃げたい。

たろ

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ああ!もう!

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 神殿での生活は、ただ淡々と過ぎていった。

「もうそろそろわたしの魔法についての調べは終わったのではないでしょうか?」

 顔見知りになった神官に尋ねると「まだです」と首を振るだけだった。

 何かと話しかけてみるが無言で返ってくるので最近は諦めて部屋に篭ることが増えた。


「何日経ったのかしら?」

 あまりにも同じ日々の繰り返しが続き日にちの感覚すらなくなった。

「うーん、外に出たい。ガトラに会いたい。本も読みたい。…………誰かと話したい…………あーー………もうやだ」

 まさかこんなことになるなんて。

 確かに神殿に来ればこれから先色々と利用されてしまうかもしれないとは思った。

 でもそれは……こんな軟禁状態ではなくて……頼まれて通う?的な感じだと思ってた。

 ーーはあ………お父様に言われた通りだった。

 ミルヒーナは神殿に行くと言い出した時、両親に大反対された。

 
『私達もいろいろこの先を考えているから大人しくここにいたらいい』
『ミル、やめて!私たちが守るから!』

 何度も言われたけど、リヴィにイラッとして勢いだけで神殿に来てしまった。

 王家に行くよりはマシだと思った。

 神殿の食事は質素だった。

 一日2食スープと固いパン、夜はおかずが一品追加されるだけ。

 おかげで体はとてもスリムになった。

 屋敷に戻ったらドレスは全てガバガバかもしれないわ。

 魔力だけはまだまだ豊富にある。これが普通の魔法使いなら簡単に神殿も抜け出せるのだろうがなんせ神殿にはたくさんの神官や信者、見習いであろう人たちがたくさんいる。

 そしてその人たちの目がミルヒーナを監視している。
 逃げ出せない。

 部屋を出ると廊下ではなく広間になっている。その広間には24時間神殿で見習いとして過ごす子供たちが勉強をしている。読み書きや簡単な計算、そして魔法についても習う。

 ここで教育され神官としていずれは各地にある教会や小さな神殿に配属されるらしい。

 そう、ミルヒーナの部屋は監視の目から逃れられない場所にある。

 それも24時間誰かがいる。

 夜は交代で広間で修行という名の神にお祈りをして過ごす。
 幼い子たちではなくある程度大人になりつつある子たちが数人が交代で行っているみたいだ。ミルヒーナもそっと部屋の中から【魔力量】を感知して、何人が広間にいるかチェックしてみた。

 すると誰もいないということがないことがわかった。

 ーー監視されているんだわ。

 常に人の目に晒され、毎日たくさんの魔力を【譲渡】して流石にストレスが溜まって来た。



「神官長にお会いしたいの。もしお会いしてくれなければもう【譲渡】はしないわ」

 いつも部屋に来る神官にそう告げるとほとんど反応しないはずの神官の顔色が変わった。

 神官は眉間に深く皺を寄せた。声が怖い。どうやら怒らせてしまったらしい。

「あなたはここで言われたことだけをすればいい。発言の許可などしていない」

 凄みのある声がは普段の淡々とした姿からは想像もできないほど怖くてミルヒーナは言い返すことができなかった。

 それからはいくらしませんと言っても聞き入れてもらえず両脇を抱えられて無理やり【譲渡】を待つ人たちのところへ連れて行かれた。

 初めは優しく接してくれた神官達もいたのに、今では『早くしなさい』とか『あなたの価値はこれしかないのです』と冷たく言われるようになった。

『わたしの価値は【譲渡】することだけなのね』

 毎日同じことを言われ毎日繰り返し【譲渡】の魔法を使う生活がミルヒーナの心を蝕んでいく。
 考えることを奪われ話すことも奪われ、食事も生きるためだけに与えられる。

 目が虚になり自分が誰なのか、どうしてここに住んでいるのか、思考すら儘ならない。

 もう生きていることが辛いのか幸せなのかすら感じなくなった。





 マックやトーマス、リヴィは何度も神殿に足を運んだ。

「ミルヒーナに会わせて欲しい」
「一目だけでも元気か確認したい」
「せめて手紙だけでも寄越して欲しい」
「そろそろ家に連れて帰りたい」

 諦めずに学校の帰りに毎日リヴィは神殿に通った。

 神殿に無理やり押し入ることはできない。

 国ですら強制的に入り込むことはできない。

 ただひたすらミルヒーナに会いたいと通うしか方法がなかった。

 リヴィの魔法は、いや、ここでは許可された者以外、魔法は無効化されてしまう。

 だから魔法を使い入り込むことはできない。

「ミルに会いたいんだ。一目でいいからお願いだ」

「ミルヒーナ様はお会いしたくないと言っております。おかえりください」

 毎回そう言って追い返される。

 父親達は国に訴えて動いてもらおうとしたがそれもうまく行かない。

「選んだのはミルヒーナ嬢だ」

 神殿ならそこまで酷い扱いはされないだろうとミルヒーナは笑って言った。

 神に仕える者が酷いことはしない。

 それは両親もそう思っていた。

 リヴィだけは最初から嫌な予感がした。もうミルヒーナに会えないかもしれないと。

 だから毎日神殿へ通った。

 だが最近は神官は会おうとすらしない。門前払いになってしまった。

(この国でミルを助け出せる人はいない。俺も無力だ……でも……)

 ミルヒーナが神殿に行って3ヶ月が過ぎた。

 マック達は焦り、憔悴していた。





「リヴィ、ミルを助けに来たぞ」

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