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謝ろうと思ったのに。
「セレン?」
お父様が心配して扉の外から声をかけてきた。
「セレン様?」
返事をしないでいるとずっと私に付いてくれているメイドのミルが声をかけてきた。
わたしは部屋から出ることが出来なかった。
「お父様もミルもお願いだから今日は一人にしてちょうだい」
声は涙声になっていた。
スティーブ様のあの冷たい目、酷い言葉。
エディ様にケーキ作りのお手伝いをさせたのはわたしが悪かった。確かに公爵令息様にさせるべきではなかった。
でも、でも、あんな言い方ってある?
悔しい、なんでスティーブ様にケーキを作ってあげようなんて馬鹿なことを考えたのだろう。
ーー婚約解消したい……
わたしは廊下に居たお父様にもう一度頼んでみた。
「やっぱりスティーブ様との婚約は絶対嫌です。お願いですから解消を申し出てください」
「だから……セレン。それは難しいと言っているだろう」
「あんな酷いこと言われても我慢しないといけないの?」
「何があったんだい?」
わたしは婚約解消の話をしてくれるならと、ずっと我慢してきたこと全てお父様に伝えた。
「わ、わたしの可愛いセレンに……」
ーーあ、これは泣き落としだわ。
「わたしスティーブ様にお会いするのが怖いの」
お父様に涙うるうるで見てからハンカチに顔を埋めた。
「うっ…ううっ………」
「お嬢様……」ミルがわたしの肩にそっと手を置いて優しく頭を撫でながら
「もう少し上手に泣かないと旦那様にバレていますよ」とこっそり言われた。
「えっ?」
ハンカチから顔を離すと、「ハア、演技をしたくなるくらい嫌なんだな。わかった一度公爵と話してみるよ」
「ほんとぉ?やったぁ!」
もうこれでスティーブ様のお顔を見なくて済むわ。
毎回会うたび会うたび、冷たい目で見られて冷たい言葉を言われて。
「わたし、今日は公爵家へは行かなくていいかしら?」
「とりあえずわたしが顔を出してこよう」
お父様が暗い顔をして帰ってきた。
「な、なんで?」
「仕方がない。向こうは婚約を解消しないと言うんだ」
「父上、それならしばらくセレンは精神的に参っているので公爵家に通うのだけでもやめさせてあげてください」
「お兄様……大好き!」
わたしは大好きなお兄様に抱きついた。
「わかった……もう一度話し合いをする。だが公爵夫人になるための勉強はここで続けることになると思う、わかっているのか?」
「………はい」
ーーとりあえずしばらくはスティーブ様の顔を見なくて済む。
後一年したらスティーブ様は学院に通い出す。
わたしは一年後の入学を回避するために王都学院ではなく我が領土の貴族学校へ通うつもりだ。
そうすれば13歳になるまでの3年間は会わないで済む。
お父様にどんな風に話そうか悩みながらも、なんとかお兄様を味方につけてスティーブ様との学院生活はしばらくの間だけでも回避するつもりだ。
そして、公爵家へ行かなくなった代わりに、公爵夫人が月に二回、我が伯爵家に顔を出して勉強を教えてくれることになった。
「セレン、ごめんなさいね。スティーブにはしっかりと怒ったのだけど、あの子はなかなか頑固で、素直になれないの。だけど反省はしているみたいなの」
「あの……わたしは伯爵家の娘です。わたしなんかよりスティーブ様にはもっと相応しい婚約者がいると思うのですが?」
わたしは何故『わたし』なんだろうと不思議で仕方がなかった。
思い切って聞いてみた。
「主人はね、とても可愛がっていた10歳年下の従妹がいたの。その従妹が病気で亡くなったの……セレン、貴女はあまりにも似ていたの……ごめんなさいね、主人は貴女をレテーシアに重ねているの。
だからどうしても貴女を自分の娘にと求めてしまっているの。それに……スティーブも貴女といる時は不思議なくらい話すの」
「あれは……話しているのではなく怒ったり嫌味を言ったりしているだけだと思うんだけど………」
夫人に聞こえないように小さく呟いた。
だけど聞こえていたみたいで
「ふふ、セレンからしたらそう感じてしまうわよね?だけどあの子はあまり感情を表に出さないの。
そんなスティーブが貴女といる時だけは怒ったりするのよ?
わたしは貴女に悪いと思いながらもスティーブの表情が変わることがとても嬉しいの」
少し寂しそうにしている夫人にこれ以上何も聞けなかった。
わたしはよくわからないけど、公爵家の人たちに選ばれて婚約者になったのだと感じた。
………………うん?逃げられないってことかしら?
◇ ◇ ◇
スティーブ様と会わなくなって半年。
もうすぐ彼は王立学院に入学する。
一度くらいそろそろ顔を出してみたらどうかとお父様に言われた。
ちょうどもうすぐ彼の誕生日なので、プレゼントを持って公爵家へ行くことになった。
選んだのは筆ペンとペンケース。
ーーま、無難な物にした。
一人で行きたくないと駄々をこねてお兄様について来てもらった。
お父様が心配して扉の外から声をかけてきた。
「セレン様?」
返事をしないでいるとずっと私に付いてくれているメイドのミルが声をかけてきた。
わたしは部屋から出ることが出来なかった。
「お父様もミルもお願いだから今日は一人にしてちょうだい」
声は涙声になっていた。
スティーブ様のあの冷たい目、酷い言葉。
エディ様にケーキ作りのお手伝いをさせたのはわたしが悪かった。確かに公爵令息様にさせるべきではなかった。
でも、でも、あんな言い方ってある?
悔しい、なんでスティーブ様にケーキを作ってあげようなんて馬鹿なことを考えたのだろう。
ーー婚約解消したい……
わたしは廊下に居たお父様にもう一度頼んでみた。
「やっぱりスティーブ様との婚約は絶対嫌です。お願いですから解消を申し出てください」
「だから……セレン。それは難しいと言っているだろう」
「あんな酷いこと言われても我慢しないといけないの?」
「何があったんだい?」
わたしは婚約解消の話をしてくれるならと、ずっと我慢してきたこと全てお父様に伝えた。
「わ、わたしの可愛いセレンに……」
ーーあ、これは泣き落としだわ。
「わたしスティーブ様にお会いするのが怖いの」
お父様に涙うるうるで見てからハンカチに顔を埋めた。
「うっ…ううっ………」
「お嬢様……」ミルがわたしの肩にそっと手を置いて優しく頭を撫でながら
「もう少し上手に泣かないと旦那様にバレていますよ」とこっそり言われた。
「えっ?」
ハンカチから顔を離すと、「ハア、演技をしたくなるくらい嫌なんだな。わかった一度公爵と話してみるよ」
「ほんとぉ?やったぁ!」
もうこれでスティーブ様のお顔を見なくて済むわ。
毎回会うたび会うたび、冷たい目で見られて冷たい言葉を言われて。
「わたし、今日は公爵家へは行かなくていいかしら?」
「とりあえずわたしが顔を出してこよう」
お父様が暗い顔をして帰ってきた。
「な、なんで?」
「仕方がない。向こうは婚約を解消しないと言うんだ」
「父上、それならしばらくセレンは精神的に参っているので公爵家に通うのだけでもやめさせてあげてください」
「お兄様……大好き!」
わたしは大好きなお兄様に抱きついた。
「わかった……もう一度話し合いをする。だが公爵夫人になるための勉強はここで続けることになると思う、わかっているのか?」
「………はい」
ーーとりあえずしばらくはスティーブ様の顔を見なくて済む。
後一年したらスティーブ様は学院に通い出す。
わたしは一年後の入学を回避するために王都学院ではなく我が領土の貴族学校へ通うつもりだ。
そうすれば13歳になるまでの3年間は会わないで済む。
お父様にどんな風に話そうか悩みながらも、なんとかお兄様を味方につけてスティーブ様との学院生活はしばらくの間だけでも回避するつもりだ。
そして、公爵家へ行かなくなった代わりに、公爵夫人が月に二回、我が伯爵家に顔を出して勉強を教えてくれることになった。
「セレン、ごめんなさいね。スティーブにはしっかりと怒ったのだけど、あの子はなかなか頑固で、素直になれないの。だけど反省はしているみたいなの」
「あの……わたしは伯爵家の娘です。わたしなんかよりスティーブ様にはもっと相応しい婚約者がいると思うのですが?」
わたしは何故『わたし』なんだろうと不思議で仕方がなかった。
思い切って聞いてみた。
「主人はね、とても可愛がっていた10歳年下の従妹がいたの。その従妹が病気で亡くなったの……セレン、貴女はあまりにも似ていたの……ごめんなさいね、主人は貴女をレテーシアに重ねているの。
だからどうしても貴女を自分の娘にと求めてしまっているの。それに……スティーブも貴女といる時は不思議なくらい話すの」
「あれは……話しているのではなく怒ったり嫌味を言ったりしているだけだと思うんだけど………」
夫人に聞こえないように小さく呟いた。
だけど聞こえていたみたいで
「ふふ、セレンからしたらそう感じてしまうわよね?だけどあの子はあまり感情を表に出さないの。
そんなスティーブが貴女といる時だけは怒ったりするのよ?
わたしは貴女に悪いと思いながらもスティーブの表情が変わることがとても嬉しいの」
少し寂しそうにしている夫人にこれ以上何も聞けなかった。
わたしはよくわからないけど、公爵家の人たちに選ばれて婚約者になったのだと感じた。
………………うん?逃げられないってことかしら?
◇ ◇ ◇
スティーブ様と会わなくなって半年。
もうすぐ彼は王立学院に入学する。
一度くらいそろそろ顔を出してみたらどうかとお父様に言われた。
ちょうどもうすぐ彼の誕生日なので、プレゼントを持って公爵家へ行くことになった。
選んだのは筆ペンとペンケース。
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一人で行きたくないと駄々をこねてお兄様について来てもらった。
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