【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。

たろ

文字の大きさ
5 / 55

13歳の再会。

 領地での生活は楽しくて。

 虫取りも木登りもかけっこも誰も怒ったりしない。

 王都では、女の子らしくしていなさい、貴族令嬢としてお淑やかにしなさい。
 毎日口煩く言われていたけど、領地での生活は毎日が楽しくて友達と笑い合って過ごした。

「みんなとお別れするのは寂しいわ」

「仕方がないだろう?セレン、また遊びに来いよ」

「戻ってきたらまた一緒にピクニックに行こう」

「セレン、王都では木登りは禁止だからな、わかったか?」

「もう、みんなと別れたくないよ……」

 涙ぐみながらみんなとお別れ。
 またいつか会おうって約束した。

「セレン、待って!一緒に行くって約束したじゃないの」
 後ろから追いかけてきたのは隣の領地の侯爵令嬢のマリアナ。わたしと同じ13歳で3年間王立学院の高等部に入学する予定だ。 


「ごめんなさい、でもマリアナの馬車は我が家と違って高級な馬車でしょう?一緒には無理ではないかしら?」

「あら?よくわかっているじゃない。うちの馬車に乗って行きましょうよ」

「遠慮させていただくわ。お兄様がお迎えに来てくださるの」
 マリアナはどちらかと言うと我儘令嬢だと学校で言われていた。

 威張り散らして人から何か言われるのを嫌がり、常に上から人を見下すように話す。

 そんなマリアナが苦手で学校の生徒はあからさまに避けていた。

 マリアナが「静かでいいわ」と寂しそうにしている姿に、何故かスティーブ様の姿を重ねてしまい放って置けなくて、気がついたら彼女の近くにいつもいた。

 話しかけるわけでもなく、一緒に行動している訳でもない。だけど、何故か気になって離れられなかった。


 そんなある日、学校内に外からの侵入者が。逃げ回っていた破落戸が門をぶち破って侵入したらしい

 庭を歩いている時に運悪くマリアナ様が人質として囚われてしまった。

 なんとか護衛の人たちに取り押さえられたのはいいけど、可愛いお顔から血が出ていた。

「わ、わたしの顔が……」
 震えて涙声になったマリアナにそっと近づいて

「駄目、大きな声を出さないの。静かにしていて」
 まだほとんどの人がマリアナの頬の切り傷に気がついていない。

「一瞬痛いけど我慢してね」

「えっ?…………あ、痛っ」

「もう大丈夫だよ」

 マリアナは血が流れていた頬に手を当てた。

「血が止まっている……ズキズキしていた頬が……」
 ーーわたしの癒しの魔法はどんな酷い怪我でも必ず治すことができる。

 ただ癒しのくせに治す時は痛みが伴う。

 こればかりは仕方がない。

「セレン、ありがとう。わたし……お嫁に行けなくなるところだったわ」

「このことは内緒。誰にも言わないでね」

 それからマリアナはわたしに懐いた。
 隣で文句を言いながらもいつもついて回る。

「セレンは頭がいいくせにのんびり屋さんなの。わたしがお世話をしてあげるしかないのよ」とぶつぶつ言いながら何かとお世話をしてくれる。

 ハンカチを貸してくれたりお弁当をわたしの分まで持参してくれたり。

 いつの間にかマリアナのそばにはたくさんの友人が出来ていた。
「わたし、一人でも平気なのに」と顔を赤くして嬉しそうにしているマリアナ。

 みんなマリアナが少し口が悪くて怖く見えるだけだと気がついて彼女を大好きになっていた。

 こうしてわたしの楽しかった学校生活は終わり、王都でまたスティーブ様の婚約者として過ごさなければいけなくなった。

 お父様が何度となく婚約解消を申し出たけどやはり受け入れてもらえなかった。

 ーーお父様、本気で解消のお願いをしてくれたのかしら?

 少し疑いながらも、わたしは仕方なく今もスティーブ様の婚約者……だ。

 この時は全く知らなかった。

 お父様はスティーブ様の味方で、婚約解消をお願いするどころかスティーブ様にわたしの好きなものや好きな食べ物など勝手に情報提供をしていたことを。


 だからお手紙には、王都であっている劇の話や作家の人の話が多かった。
 わたしは劇を観に行くのが大好き。そして本を読むのも大好きなのだ。

 さらにプレゼントはわたしの好きな青い物や本。

 青い物ならなんでも大好き。

 ペンやペンケース、服も小物も。

 亡くなったお母様の瞳はわたしと同じ青い瞳。わたしよりももっと澄んでとても綺麗な瞳だった。


 だからいつも気がついたらお母様の瞳の色を探していた。わたしの色ではなくお母様の色を。

 届けられる物に罪はないのでいつもありがたく貰っていた。
 手紙の返事はいつも
『元気です。贈り物ありがとうございました』
 と書いているだけ。

 だってなんて書いたらいいのかわからない。わたしが嫌われていることは確かなのになんと返事をかけと言うの?

 マリアナの高級な馬車に揺られてわたし達は王都へ。

 お兄様は「セレンがマリアナ嬢と帰るのなら僕はしばらく領地で仕事をしてから帰るよ」と仕事モードになって滞在を延ばすらしい。




 そして伯爵家に着くと、お父様が待っていた。

 その後ろには……

 ーーえっ?えええ~?

 スティーブ様⁈

 3年間会っていなかったスティーブ様はさらに磨きがかかり元々お顔達がとても良かったのに、14歳になり少し大人に近づき始めたスティーブ様は、どこぞの王子様?と思うほどかっこよく成長していた。

「セレン、久しぶり。あの時はごめん」

 いきなりの謝罪で驚いたけど、避け続けたスティーブ様も少しは性格良くなったのかしら?

あなたにおすすめの小説

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―

柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。 最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。 しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。 カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。 離婚届の上に、涙が落ちる。 それでもシャルロッテは信じたい。 あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。 すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです

古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。 皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。 他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。 救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。 セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。 だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。 「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」 今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。