15 / 55
新婚生活。
スティーブ様との結婚生活はとても……気楽だった。
何も求めていない………から。
お義母様はわたしに仕事を押し付け楽しく社交に精を出す。
ーーしっかりと公爵夫人になるための勉強はしていたので難なくこなせる。
お義父様は公爵としての仕事をこなしながら愛する人の元へ。
ーーわたしには全く支障がない。ま、おっさんのくせにとは思う。わたしのお父様だったら許せないけど他人なのでどうでもいい。
エディ様はまだ学生なので勉強に励む。
ーー休みの時はわたしとたわいもない会話をしてくれる。おかげで気分転換になる。
スティーブ様は………お義父様に仕事を教わりながら公爵家お抱えの騎士団で剣術に励んでいた。
ーーほとんど接触しないのでこちらもわたしには支障はない。だけど一応夫なので仕事上会話はある。
そして週に一度はイザベラ様が屋敷に来て楽しそうにお義母様と過ごしている。そして「スティーブ!」とやはり学院にいる頃と変わらない光景がそこにある。
ーーこっちはかなりストレスになる。
毎回わたしに対してマウントを取ってくる。
「あらセレン様?おしゃれする暇もないの?スティーブが悲しむわよ?」わたしの姿を見てクスッと笑う。
「おしゃれしても仕事は捗りませんから。それよりも動きやすくて働きやすいのが一番です!」
シンプルなワンピース。これがこの屋敷で仕事をするわたしに取っては一番いい。
「スティーブ、あなたの奥様って愛想もないのかしら?あなたの幼馴染が遊びに来ているのに笑顔もないのよ?怖いわ」
「セレン様ぁ、このイヤリング素敵でしょう?スティーブに誕生日のプレゼントでいただいたの」
髪の毛を掻き上げてわたしに嬉しそうに見せる。
ーースティーブ様とは白い結婚でイザベラ様との再婚までの繋ぎ。
そう思ってこの屋敷では「無」になって過ごす。
そんなわたしにいつも侍女のサリーは花を飾ってくれる。
最近はずっとブルースターの花。そこに可愛いかすみ草。
お母様が大好きだった青い花。
心遣いにいつも感謝した。
「サリーありがとう」
「………あ、いえ、喜んでいただけて嬉しいです」
お礼を言っても彼女は謙虚ですぐに口籠ってしまう。だけど、わたしはとても嬉しい。
強がっていても心は疲れているみたい。
わたしは執務室から持って来た残りの仕事を終わらせるべく、自室で帳簿と睨めっこをしていた。
公爵夫人であるお義母様が予算以上にお金を使いすぎだとわかっているのに、これを止めることができない。
しかし使い過ぎたお金の皺寄せが使用人達の給料に出始めている。このままでは使用人から不満の声が出る。
これはわたしの落ち度ではない。
公爵家自体はかなり裕福で蓄えもある。
しかし莫大な税金の支払い、いざという時のお金の蓄えもとても大事。
あるからと使いまくるわけにはいかない。
予算内に収めることは公爵夫人としての力量でもある。それすら出来ていないと言うことは……能力すらないと使用人からも侮られることになる。
「お義母様はわかっていてわざとお金を使われているのよね」
帳簿を見ながら思わず心の声が出てしまった。
使用人達の給料を減らした状態でわたしに全ての仕事を投げた。
「うーん、どうしよう。お飾りの妻が出来ることって少ないのに」
とりあえずわたしに使われる予算を使用人達の減らされた給料に回すことにした。
別に新しいドレスも宝石も必要ない。
でも、新妻の予算なんて大したことはない。
これを離縁するまで続けても足りない。
スティーブ様に泣きついたところで助けてもらえるか?
わたしはお義父様の執務室へと向かった。
お義母様も嫁が公爵家当主に直談判するとは思わないだろう。
「失礼致します」
「うん?セレン?どうした?何かわからないことがあるのか?」
「はい」
「公爵家内で使われる帳簿に目を通していたのですが、以前よりかなり金額がオーバーしていまして、わたし自身の予算を補填しても間に合わない状態になっています。
調べてみますと使用人の給金の額が減らされております。今はまだわずかな減りですがこのままいくとみんなからの不満は増えていくと思います。
まだ嫁いで三月しか経たないわたしでは抑えることは難しいかと……」
「見せてみなさい」
わたしはお義母様の無駄遣いのわかる帳簿を見せつつ、別紙にわかりやすく全て書き出したものも見せた。
しばらく黙ったままお義父様は見ていた。
「………妻の予算を増やそう」
ーーあ、そっちの対処をするのね。注意はしないんだ。
「ありがとうございました」
「スティーブとは仲良くしているのか?妻が君たちは早く結婚をしたいと急かしたと聞いている。愛するもの同士結婚させてあげられてわたしもホッとしているよ」
「はい⁈」
思わず変な声が出てしまった。
わたしはお父様に無理やり嫁ぐように言われたのに。
とりあえず適当に愛想笑いをしてその場を去った。
何も求めていない………から。
お義母様はわたしに仕事を押し付け楽しく社交に精を出す。
ーーしっかりと公爵夫人になるための勉強はしていたので難なくこなせる。
お義父様は公爵としての仕事をこなしながら愛する人の元へ。
ーーわたしには全く支障がない。ま、おっさんのくせにとは思う。わたしのお父様だったら許せないけど他人なのでどうでもいい。
エディ様はまだ学生なので勉強に励む。
ーー休みの時はわたしとたわいもない会話をしてくれる。おかげで気分転換になる。
スティーブ様は………お義父様に仕事を教わりながら公爵家お抱えの騎士団で剣術に励んでいた。
ーーほとんど接触しないのでこちらもわたしには支障はない。だけど一応夫なので仕事上会話はある。
そして週に一度はイザベラ様が屋敷に来て楽しそうにお義母様と過ごしている。そして「スティーブ!」とやはり学院にいる頃と変わらない光景がそこにある。
ーーこっちはかなりストレスになる。
毎回わたしに対してマウントを取ってくる。
「あらセレン様?おしゃれする暇もないの?スティーブが悲しむわよ?」わたしの姿を見てクスッと笑う。
「おしゃれしても仕事は捗りませんから。それよりも動きやすくて働きやすいのが一番です!」
シンプルなワンピース。これがこの屋敷で仕事をするわたしに取っては一番いい。
「スティーブ、あなたの奥様って愛想もないのかしら?あなたの幼馴染が遊びに来ているのに笑顔もないのよ?怖いわ」
「セレン様ぁ、このイヤリング素敵でしょう?スティーブに誕生日のプレゼントでいただいたの」
髪の毛を掻き上げてわたしに嬉しそうに見せる。
ーースティーブ様とは白い結婚でイザベラ様との再婚までの繋ぎ。
そう思ってこの屋敷では「無」になって過ごす。
そんなわたしにいつも侍女のサリーは花を飾ってくれる。
最近はずっとブルースターの花。そこに可愛いかすみ草。
お母様が大好きだった青い花。
心遣いにいつも感謝した。
「サリーありがとう」
「………あ、いえ、喜んでいただけて嬉しいです」
お礼を言っても彼女は謙虚ですぐに口籠ってしまう。だけど、わたしはとても嬉しい。
強がっていても心は疲れているみたい。
わたしは執務室から持って来た残りの仕事を終わらせるべく、自室で帳簿と睨めっこをしていた。
公爵夫人であるお義母様が予算以上にお金を使いすぎだとわかっているのに、これを止めることができない。
しかし使い過ぎたお金の皺寄せが使用人達の給料に出始めている。このままでは使用人から不満の声が出る。
これはわたしの落ち度ではない。
公爵家自体はかなり裕福で蓄えもある。
しかし莫大な税金の支払い、いざという時のお金の蓄えもとても大事。
あるからと使いまくるわけにはいかない。
予算内に収めることは公爵夫人としての力量でもある。それすら出来ていないと言うことは……能力すらないと使用人からも侮られることになる。
「お義母様はわかっていてわざとお金を使われているのよね」
帳簿を見ながら思わず心の声が出てしまった。
使用人達の給料を減らした状態でわたしに全ての仕事を投げた。
「うーん、どうしよう。お飾りの妻が出来ることって少ないのに」
とりあえずわたしに使われる予算を使用人達の減らされた給料に回すことにした。
別に新しいドレスも宝石も必要ない。
でも、新妻の予算なんて大したことはない。
これを離縁するまで続けても足りない。
スティーブ様に泣きついたところで助けてもらえるか?
わたしはお義父様の執務室へと向かった。
お義母様も嫁が公爵家当主に直談判するとは思わないだろう。
「失礼致します」
「うん?セレン?どうした?何かわからないことがあるのか?」
「はい」
「公爵家内で使われる帳簿に目を通していたのですが、以前よりかなり金額がオーバーしていまして、わたし自身の予算を補填しても間に合わない状態になっています。
調べてみますと使用人の給金の額が減らされております。今はまだわずかな減りですがこのままいくとみんなからの不満は増えていくと思います。
まだ嫁いで三月しか経たないわたしでは抑えることは難しいかと……」
「見せてみなさい」
わたしはお義母様の無駄遣いのわかる帳簿を見せつつ、別紙にわかりやすく全て書き出したものも見せた。
しばらく黙ったままお義父様は見ていた。
「………妻の予算を増やそう」
ーーあ、そっちの対処をするのね。注意はしないんだ。
「ありがとうございました」
「スティーブとは仲良くしているのか?妻が君たちは早く結婚をしたいと急かしたと聞いている。愛するもの同士結婚させてあげられてわたしもホッとしているよ」
「はい⁈」
思わず変な声が出てしまった。
わたしはお父様に無理やり嫁ぐように言われたのに。
とりあえず適当に愛想笑いをしてその場を去った。
あなたにおすすめの小説
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―
柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。
最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。
しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。
カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。
離婚届の上に、涙が落ちる。
それでもシャルロッテは信じたい。
あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。
すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです
古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。
皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。
他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。
救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。
セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。
だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。
「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」
今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。