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お義母様とイザベラ様
しおりを挟む結婚してからもイザベラ様の行動はまだ変わらない。
この人、暇なの?暇ならもう少しお勉強した方がいいのでは?
公爵夫人になるのは思った以上に大変。
たくさんの使用人を纏めないといけないし、公爵家の予算のやりくりも思った以上に大変。
それにお付き合いをしている貴族の方々の好みや話題、把握するだけでもかなり大変。
贈り物をいただくことも多いけど、贈ることも多い。失礼のないように一つ一つ選ぶのも頭が痛いが、お手紙を添える文章を考えるのはもっと頭が痛くなる。
少しでも相手にとって失礼になることは書けない。特にわたしにとっては全員目上の人だからお義母様の手本はほとんど意味がない。
いつも執事さんがわたしにアドバイスをくれるのでなんとかこなしているけど……
こんな大変な仕事をイザベラ様は出来るのかしら?思わず心配になる。
廊下を歩いているとイザベラ様とスティーブ様に会った。
「セレン様ったらそんな顔してわたしを見て。怖いわ、スティーブ」
スティーブ様になよなよとしな垂れて……気持ち悪っ!
疲れて入浴しようとバスタブに入ろうと思ったら……
「うわぁ素敵!お花がたくさん浮かんでいるわ」
「セレン様がお疲れのようなので…」
サリーの心遣いが嬉しかった。
「ありがとう、とっても嬉しいわ」
「……あっ、い、いえ」
サリーはお礼を言われるのが苦手みたい。毎回お礼を言うたびに困った顔をする。
ゆっくり入浴をした後は美味しいリンゴジュースを飲む。
一応成人したのでお酒も飲めるのだけど、わたしのお子ちゃまのお口にはまだまだジュースの方がいい。
マリアナの領地で作られるりんごを加工してジュースを作っている。この王都までジュースを運ぶとなると日持ちしないので難しいので、王都にたくさんのりんごを運びこちらでジュースを作ったりジャムやドライフルーツを作って売るお店を王都に出すことにしたマリアナ。
その試供品をマリアナが持って来てくれる。
マリアナはそれを持って約束通りこの公爵家に会いに来てくれる。
あまりにも美味しいので公爵家御用達にしてしまうつもり。
「美味しい」
ジュースを飲んでいると扉をノックする音が聞こえた。
「はい?」
「俺だけど……」
スティーブ様は『僕』から『俺』に変わった。
時折り用事がある時はこうしてわたしの部屋を訪ねてくる。夜に来るなんて珍しい。
あ、ちなみに二人の寝室はわたしが一人で寝ている。
スティーブ様は元々自分の部屋に寝室があるのでそこで寝ているらしい。
ーー入ったことはないので知らないけど。
「どうなさいました?そろそろ離縁でもしますか?サインならいつでも喜んでしますよ?」
顔を見るなり一言。
さっきのイザベラ様とのこと思い出して、笑顔で聞いた。
「………違う、今度市井で祭りがある。その時に公爵家は祭りの費用を寄付することになっている。そのため主催者から来賓として呼ばれるんだが今回は父上が俺たち夫婦で行くようにと言われたんだ」
「え?それは……ぜひイザベラ様と行ってください!」
「な、なんで?」
「だって来年のその祭りにはイザベラ様と参加されることになるのだから今年と来年の妻の顔が違っていたら困るのはスティーブ様ですよ?」
わたしがキョトンとして聞くと、
「…………離縁してもイザベラと再婚はしない」と何故か傷ついた顔をしていた。
「え?もったいない。あんなに愛し合っている二人なのに再婚しないなんて……わたしとは白い結婚なので堂々とお二人は愛し合えますのに?再婚した方がいいと思いますよ?」
「君は本気で言っているのか?」
「え?もちろんです。ぜひお幸せになってください。わたしはいつでも喜んで離縁いたしますので。と言うわけでお祭りはぜひイザベラ様と行ってください」
「………イザベラとはただの幼馴染だ。彼女に愛情なんて持ったことはない」
「あら?おかしいですね。あれだけ昔っから公爵家に堂々と出入りしてお二人で仲睦まじく過ごして来ているのに?それに学院でもお二人はいつも一緒でしたよね?結婚した今も………この屋敷でわたしはただのお飾りだと使用人でも知っていますよ?」
「あ、あれは、理由が……」
悔しそうに唇を噛んで手を握りしめているスティーブ様。
心の中で思っていたことを言えたわたしは少しだけスッキリとした。
「ごめんなさい、毎日の執務で疲れているの。もういいかしら?」
彼は項垂れて出て行った。
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