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お義母様とイザベラ様②

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 祭りのことを断ったら今度はお義母様とイザベラ様が次の日わたしの部屋にやって来た。

 お義母様はあからさまにわたしに対してひどい態度は取らない。
 イザベラ様ははっきりと敵意を剥き出しにしてくるけど。




「セレンったらお祭りの参加は妻として次期公爵夫人として大切なことなのよ?」

「あ、はい、でも仕事が溜まっていますので参加する余裕はーー」

「そんなことではスティーブの妻としてやって行けないわ。上手に時間を作るのも大切なことよ」

「はあ、まあ、ソウデスネ」

 ーー貴女はわたしに仕事を押し付けたから好きなだけ自由な時間があるかもしれないけど、わたしは不慣れなんだから無理に決まってるじゃない!!


 と言いたいところだけど、ぐっと我慢した。
 スティーブ様には言えるけど流石に公爵夫人には言えない。

 イザベラ様はお義母様の隣でクスッと笑うと

「おば様?わたしが代わりにスティーブとご一緒しましょうか?セレン様は妻の勤めも出来ないようだから」と言った。

「え?本当ですか?助かりました。よろしくお願いいたします」

 わたしは「ちょっとお待ちくださいね」と言って急いで執務室へ戻った。

 机に山積みにされた書類の中を掻き分けて、重たい封筒を持ってイザベラ様とお母様のところへ戻った。

「じゃあこちらをお願いいたします」

「え?これは何かしら?」

「お祭りに出席するに当たってご挨拶をしなければいけない貴族の方達のお名前とその家族について。それから主催者達のお名前とその方の職業です。ご挨拶する時に一人一人お話をしなければいけませんので全て頭に入れておいてください。あと公爵家とお付き合いのある方についてはご趣味やその方の最近の出来事なども書いてあります。わたしはある程度お義母様に教わって頭に入れているので新しい情報だけでいいのですがイザベラ様は初めてなので一から覚えてくださいね。あと2週間もあるので、優秀なイザベラ様だったら簡単なことだと思います。本当に不甲斐ない妻で申し訳ありません。ただの幼馴染でしかないイザベラ様が夫のためにそこまでしてくださって感謝いたしますわ」


 ーーあ~、長い話だった。話すのも疲れるわ。

 わたしはお二人に微笑んで「では仕事がまだまだ残っておりますので」と言ってその場を立ち去った。

「ちょ、ちょっと!」

 後ろから叫び声が聞こえたけどーー

 無視よ無視!

 ふふふふふ。




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