【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。

たろ

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イザベラ編③

 お母様に突き付けられた選択。

 どちらかを選ぶなら……


「結婚致します」

 苦渋の選択だった。
 修道院なんて絶対に嫌。

 スティーブににだと会えなくなる。

 勧められたおば様の兄の息子のトーリィ。伯爵家の次男で騎士をしているらしい。
 わたしはスティーブの従兄弟のトーリィと結婚することになった。

 婚約して半年後には籍を入れた。

 屋敷はわたしのお父様が持っている一つを譲り受けた。

 ただし、その屋敷で働く使用人は数人だけ。

 料理人二人が交代で料理を作る。それとメイドが通いで数人いるだけのなんとも寂しい暮らしだ。

「イザベラ、俺は騎士でしかない。侯爵令嬢の時のような贅沢は出来ない。だけど普通に暮らしていくことは出来るはずだから」

 トーリィはそう言うけど、好きなだけドレスや宝石を買うことはできない。
 騎士爵として一応貴族としてはいられるけどいままでのように社交をして回れるほど金銭的に余裕はない。

 もちろんお茶会を毎月何度もすることも出来ない。

 気がつけば親しかった友人達は離れて行った。

 それにトーリィはわたしを性奴隷のように抱く。

 初めての時ですら優しくしてはくれなかった。

 未だに嫌でたまらない。それなのに……わたしの体は彼を求めてしまう。最近はわたしを抱いた後、屋敷の離れに愛人を囲いそこに通いだした。

 わたしのことを抱いたあとにニヤッと笑い必ず愛人の元へ行ってくると言うのだ。

「貴方、わたしを愛しているわけではないのでしょう?どうぞ愛人とだけ愛し合えばよろしいのでは?」
 悔し紛れに言った。

「君は本当に気位が高いね?そんな君を組み敷くことが毎回楽しいんだ」

「なっ、何故そんな酷いことを?」

「酷い?そうかな?君は嫌だと言いながらも俺の体に反応しているじゃないか?」

「そんな……わたしは夫だから仕方なく……」

「俺も仕方なく君を抱いてやっているんだ。ま、君が誰にも相手にされないから可哀想で抱いてやっているって言うのもあるしね、それに傲慢で我儘な君が俺の下でヒイヒイ言っている姿はとても愉快だ」

「最低ですわ」

「最低なのは君だろう?人の気持ちがわからない。人を見下して生きている。俺のことだって伯爵家の次男で騎士爵があるからなんとか平民にならずに済んでいると馬鹿にしているくせに!」

「その通りでしょう?間違ってはいないわ」

「そんな性格だからスティーブだって相手にしないんだ!セレン嬢は頭も良くて可愛くてとても人気者だった。そんなセレン嬢に意地悪をして追い出して、あんたなんか誰も愛するわけがないだろう!」

「スティーブはわたしを愛しているわ」

「愛しているわけがないだろう?君を憎むことはあっても愛することはないよ」

「そんなことはないわ」

「君は俺に穢されて汚い女になったんだ。性欲を覚えて俺の体がないと生きていけない。ふん、娼婦と変わらないだろう?」

「な、何を言っているの?」

「君は俺に抱かれる理由が薬漬けにされているからだと知らないのか?催淫薬のおかげで君の体は俺なしでは生きていけないのさ」

「どう言うこと?」
 わたしは悔しさと羞恥でトーリィを睨んだ。

 この疼く体は薬のせい?恥ずかしいくらいに求めてしまうのも?

「君の体を俺なしではいられないようにして捨ててやるつもりだったんだ」

「最低ね」

「最低でいい、君のせいで俺の友人は死んだ。君はちょっとしたことですぐに怒る。その相手だって感情もあるんだ、君は友人に言ったんだ。
『わたしの前から消えなさい。ほんと使えないわね』と。友人は自殺した、君の言葉のせいで周りから相手にしてもらえず実家は破産して生きる気力を無くしてね」

「そんなこと知らないわ」

「君は侯爵令嬢だ、君の言葉で周りの貴族は機嫌をとるために友人の実家は仕事を切られた。そして自殺したんだ。言葉には責任が伴う、君は自分の感情だけで何も考えず言葉を発している。それがどれだけ周りに影響しているかも考えないでね」

「だからと言って貴方がわたしにこんなことをするのはおかしいわよ」

「友人は……俺の…恋人だったんだ……」

「知らない、知らないわ、わ、わたしのせいではないわ」

 わたしはトーリィが怖くて屋敷から逃げた。

 実家に帰るとお父様もお母様も屋敷に入れてくれなかった。

「公爵家から勧められた結婚よ?貴女の我儘で帰ってきてもらっては困るのよ」

「そんな……お父様お母様、お願い。わたし帰るところがないの」



 泣いて頼んだのに門の中に入れてはもらえなかった。

 わたしは頼るところもなくスティーブのおば様のところへ向かった。

「イザベラ、元気にしていたかしら?最近は顔も出さなかったから心配していたのよ」

 優しい言葉とは裏腹に目は笑っていなかった。

「おば様……しばらくおいて頂けませんか?」

「まぁどうしたの?イザベラはトーリィに愛されて幸せに暮らしていると聞いていたのに」

「トーリィは……」

「駄目よ?夫の愚痴はあって当たり前なのよ?わたしも主人が浮気をして辛くて精神的に苦しかった時があったわ。ずっと苦しんだもの。
 だけどいつかその苦しみから解放される時がくるの。わたしはセレンがわたしの心を救ってくれたの。セレンに酷いことをしたのにあの子はわたしを癒してくれたわ」

 わたしの肩に手を置いておば様は微笑む。

「だからね、貴女も苦しみの中でたとえ過ごしても平気なはずよ?だって貴女は人を突き落としてきたのだもの。その人達の苦しみと同じ思いをするのは当たり前のことよ?ううん、まだまだ甘いと思うわーーわたしもセレンに合わせる顔はないの……」

 わたしの頬を撫でながら

「貴女はそれくらいで逃げ出しては駄目よ?」と言った。

 ーーなんで?ずっと優しくしてくれたおば様はわたしの味方だったのに。

 あんな冷たい顔をしてわたしを見るの?

 トーリィの恋人が自殺したのはわたしのせいみたいに言ってるけどわたしの機嫌を損ねたんだから仕方がないじゃない。死んだのは弱いからよ、わたしのせいではないわ。

 それにセレン、セレンって。

 なんでみんなしてセレンなの?

 もう離縁して平民に近い暮らしをしていると聞いたわ。

 ほんと目の前から居なくなってもまだわたしの邪魔をするのね。結婚してからはスティーブにも会えない。そのうえセレンの良い評判は耳にする。

 わたしは行き場を失ってトボトボと歩いた。

 そんな時……ふと目についたのがセレンの屋敷だった。

 平民のくせにわたしよりもいい屋敷に住んでいるのがムカついた。

 わたしは帰る場所すらないのに。

 セレンなんて死ねばいいのよ。

 そう思うと心がワクワクしてきた。

 マッチと油を買ってきて外壁に火をつけた。

 真っ赤に燃え上がる炎が温かい。

 なんだか冷えた心が温まっていく……


 この時は知らなかった。セレンが眠り続けていたこともこの屋敷にはいなかったことも。

 捕まって取り調べの時に聞いて

「はあ?居なかった?せっかく火をつけたのに!なんのためにつけたのかわからないじゃない!せっかく泣く姿を見たかったのに」

 ーーはあ、もう行くところもないししばらくはここに居てあげようかしら。





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