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逃げる。
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夜になっても何事もなく時間は過ぎている。
本当にこの城から逃げられるのかしら?
つい不安になりながらも、しっかり食事を摂り、脱出用に備えて準備をしていた男性用の服を、隠していたベッドの下から取り出した。
これは、城によく顔を出す行商のおじちゃんと仲良くなって頼んで買った服だ。
世話の仕事でもらった給金を使い少しずつ準備を進めていた。いつかこの城から抜け出そうと、ずっと考えてはいた。
ただ、あまりにも見張りが張り付いていて思うように行動出来なかった。
邪魔だからと王妃様がこの城から追い払ってくれるなら、とてもありがたく受け入れる。
どうぞ両陛下と聖女であるオリビア様と三人で仲良く暮らしてほしい。
そして、愛するネルヴァン様のところへ嫁がれて、側妃に迎えられるリリア様と三人、仲睦まじく暮らせばいい……男を取り合いながら。
わたしが嫁いで、色々災害が起きたけど、聖女であるオリビア様なら、そんなことは起こらず幸せに暮らせるだろう……たぶん、知らないけど。
前世では、オリビア様は国を捨ててさっさと逃げたとルドーが話してくれたけど、ルワナ王国の王妃ともなれば責務もあるし簡単には逃げられない………周りが押し付けてくるし、見張られるしね、苦しめ!!
あの頃はわたしに全て押しつけてリリア様もネルヴァン様も、面白おかしく過ごしていたけど、そこにオリビア様まで参加すれば国は混乱するしかない……自滅もいいかも!?
わたしの苦労を味わえばいい。
王妃なんて仕事、華やかそうに見えるけどかなり大変なんだから!
ーーーこの国の王妃様も大変なのかしら?
ううん、そんなことどうでもいい。
お腹を痛めて産んだはずのわたしへの情など一切なかったんだもの。
あの冷たい無表情を思い出すと、諦めてしまったはずなのに胸が痛い……悔しい。
まだ沙耶香でいた時のわたしは、家族は優しくて、とても温かい家庭で幸せだった。
わたしが亡くなって今も大泣きしているだろうか……悲しみに暮れていなければいいけど。
今頃になって思い出すなんて……わたしも薄情だな……元彼と田所有紗を除けば、あの頃は幸せだったな。
戻れるならあの頃に戻りたい。
次に死んだら、沙耶香に戻れた!なんてないかしら?
そうしたら次は、あんな奴とは絶対付き合わないし、あの会社に就職はしない。
もっといい大学を出て、たくさん資格も取って、絶対いいところに就職してやる!
呑気にそんなことを考えながらルドルフのところへ逃げるための装具をつけていた。
「ルドルフ、これからも一緒にいてくれる?」
ルドルフが鼻をわたしの顔にすり付けて来た。
「もう!くすぐったい!でもありがとう」
さらにルドルフの顔がくっついて来る。
「ルドルフはここに居れば美味しい食事もお腹いっぱいできるし寝所もあるし、ブラッシングもしてもらえて幸せだよね。ごめんね、それでも一緒に居て欲しい」
ルドルフのわたしを見る瞳は、とても優しい。わたしを大切にしてくれているのがわかる。
この世界でわたしを一番想ってくれているのかもしれない。
いつでも逃げられる準備をし終わる。
少し手が震えて来た。やっとこの城から逃げ出せる。
「ソフィア様」
厩舎に顔を出したのはソラさんと一番仲良しの仕事仲間のおじちゃんだった。
「あ……これは…」
やばい、いつもと違う服装を見られてしまった。それもルドルフも準備万端だし。
夜も遅いので誰も来ないと思っていた。
薄明かりのランタンの火だから外に漏れているとは思わなかった。
「大丈夫です」
ソラさんが安心させるように優しく声をかけて来た。
「え?」
「王妃様からのご命令です」
「ソフィちゃん、これから一頭の馬が暴れる。そして混乱した他の馬も暴れ始め、馬が裏門から逃げ出す。ルドルフもその中の一頭じゃ。ソフィちゃんは馬達をなだめようとして、その混乱の中城から出るんじゃ」
「ふふ、とても素敵な茶番劇ですね」
「ああ、わしが考えた。いつの間にかソフィちゃんの姿が消える。その時に誰の責任も問われない。暴れた馬達も優秀なサラブレッドじゃ。死末されることはないし、王妃様に疑いの目はいかない。わしらも疑われない」
「ただ、ソフィア様……この国から出て逃げてください。この国にいればずっと貴女は狙われます。どうかこの国を捨てて幸せに暮らしてください」
ソラさんはそう言うと肩から下げる鞄をわたしに渡した。
「この中には干し肉や堅パン、水が入っております」
小さな袋に入ったお金も渡された。
「僅かですが旅の資金としてお使いください」
「ありがとう」
二人の心遣いが嬉しい。
本当にこの城から逃げられるのかしら?
つい不安になりながらも、しっかり食事を摂り、脱出用に備えて準備をしていた男性用の服を、隠していたベッドの下から取り出した。
これは、城によく顔を出す行商のおじちゃんと仲良くなって頼んで買った服だ。
世話の仕事でもらった給金を使い少しずつ準備を進めていた。いつかこの城から抜け出そうと、ずっと考えてはいた。
ただ、あまりにも見張りが張り付いていて思うように行動出来なかった。
邪魔だからと王妃様がこの城から追い払ってくれるなら、とてもありがたく受け入れる。
どうぞ両陛下と聖女であるオリビア様と三人で仲良く暮らしてほしい。
そして、愛するネルヴァン様のところへ嫁がれて、側妃に迎えられるリリア様と三人、仲睦まじく暮らせばいい……男を取り合いながら。
わたしが嫁いで、色々災害が起きたけど、聖女であるオリビア様なら、そんなことは起こらず幸せに暮らせるだろう……たぶん、知らないけど。
前世では、オリビア様は国を捨ててさっさと逃げたとルドーが話してくれたけど、ルワナ王国の王妃ともなれば責務もあるし簡単には逃げられない………周りが押し付けてくるし、見張られるしね、苦しめ!!
あの頃はわたしに全て押しつけてリリア様もネルヴァン様も、面白おかしく過ごしていたけど、そこにオリビア様まで参加すれば国は混乱するしかない……自滅もいいかも!?
わたしの苦労を味わえばいい。
王妃なんて仕事、華やかそうに見えるけどかなり大変なんだから!
ーーーこの国の王妃様も大変なのかしら?
ううん、そんなことどうでもいい。
お腹を痛めて産んだはずのわたしへの情など一切なかったんだもの。
あの冷たい無表情を思い出すと、諦めてしまったはずなのに胸が痛い……悔しい。
まだ沙耶香でいた時のわたしは、家族は優しくて、とても温かい家庭で幸せだった。
わたしが亡くなって今も大泣きしているだろうか……悲しみに暮れていなければいいけど。
今頃になって思い出すなんて……わたしも薄情だな……元彼と田所有紗を除けば、あの頃は幸せだったな。
戻れるならあの頃に戻りたい。
次に死んだら、沙耶香に戻れた!なんてないかしら?
そうしたら次は、あんな奴とは絶対付き合わないし、あの会社に就職はしない。
もっといい大学を出て、たくさん資格も取って、絶対いいところに就職してやる!
呑気にそんなことを考えながらルドルフのところへ逃げるための装具をつけていた。
「ルドルフ、これからも一緒にいてくれる?」
ルドルフが鼻をわたしの顔にすり付けて来た。
「もう!くすぐったい!でもありがとう」
さらにルドルフの顔がくっついて来る。
「ルドルフはここに居れば美味しい食事もお腹いっぱいできるし寝所もあるし、ブラッシングもしてもらえて幸せだよね。ごめんね、それでも一緒に居て欲しい」
ルドルフのわたしを見る瞳は、とても優しい。わたしを大切にしてくれているのがわかる。
この世界でわたしを一番想ってくれているのかもしれない。
いつでも逃げられる準備をし終わる。
少し手が震えて来た。やっとこの城から逃げ出せる。
「ソフィア様」
厩舎に顔を出したのはソラさんと一番仲良しの仕事仲間のおじちゃんだった。
「あ……これは…」
やばい、いつもと違う服装を見られてしまった。それもルドルフも準備万端だし。
夜も遅いので誰も来ないと思っていた。
薄明かりのランタンの火だから外に漏れているとは思わなかった。
「大丈夫です」
ソラさんが安心させるように優しく声をかけて来た。
「え?」
「王妃様からのご命令です」
「ソフィちゃん、これから一頭の馬が暴れる。そして混乱した他の馬も暴れ始め、馬が裏門から逃げ出す。ルドルフもその中の一頭じゃ。ソフィちゃんは馬達をなだめようとして、その混乱の中城から出るんじゃ」
「ふふ、とても素敵な茶番劇ですね」
「ああ、わしが考えた。いつの間にかソフィちゃんの姿が消える。その時に誰の責任も問われない。暴れた馬達も優秀なサラブレッドじゃ。死末されることはないし、王妃様に疑いの目はいかない。わしらも疑われない」
「ただ、ソフィア様……この国から出て逃げてください。この国にいればずっと貴女は狙われます。どうかこの国を捨てて幸せに暮らしてください」
ソラさんはそう言うと肩から下げる鞄をわたしに渡した。
「この中には干し肉や堅パン、水が入っております」
小さな袋に入ったお金も渡された。
「僅かですが旅の資金としてお使いください」
「ありがとう」
二人の心遣いが嬉しい。
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