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騒動の中。
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ルドルフのそばにいると、別の厩舎で騒がしくなった。
「逃げたぞ!」
「捕まえろ!」
騒々しい声が聞こえ出した。
「ルドルフ、準備は大丈夫?」
ルドルフがわたしの体に顔を擦り寄せてきた。
ブライアンの方を向くと、彼がわたし達をじっと見ていた。
ここに来てからはルドルフと同じくらいの時間世話をしてきたブライアン。
彼にも懐かれ、ネルヴァン様の馬とは言え、可愛がってきた。
「今までありがとう。もう会えないけど元気でいてね」
ブライアンのそばに行き彼の頭を撫でた。
彼もまたわたしの体に頭を擦り寄せてきた。
彼の体を抱きしめ「元気でね」と挨拶をした。
前世では彼のことは知ってはいたけれど、そばに寄ることもなかったし、こうして触れ合うなんて考えたこともなかった。
今では嫌いでしかないネルヴァン様の馬だけど、前世ではブライアンの美しさに何度も目を奪われた。
金属光沢のある美しい毛並みと、シルクのような輝きを持つブライアン。
無駄のない筋肉で構成された身体。
そして優雅で力強い躍動感、風になびくたてがみや、知性を感じさせる優しい目、全てにおいてブライアンに叶う馬はいない。
わたしのルドルフはもちろん素敵な馬だ。漆黒の馬体や艶やかなたてがみを持つ美しい外見、そして圧倒的な速さと強さを誇る名馬でもある。
黄金の馬と漆黒の馬。
二頭の美しさは全くの真逆。
性格も違う。
ルドルフは賢く、そして少し頑固で好奇心旺盛だ。
ブライアンは、生真面目で警戒心が強い。慣れてしまえばとても甘えん坊になる。
ブライアンの寂しそうな瞳に胸がズキンと痛くなった。
もう二度と会うことはない。
「ブライアン、貴方のことは大好きだったわ。ご主人様は……とても嫌いだったけど」
そう言いながらつい笑ってしまった。
やっと言葉にできたこと。
そう、わたしは「彼」に囚われている。
前世も今世も。嫌いなのに、大嫌いなのに、裏切られたのに、「会いたい」と思ってしまう。
別に愛してなんかいないはずなのに、前世の気持ちが今もなお押し寄せてきてしまう。
振り払っても。だからこそ嫌いだ。
わたしの心の隙間に入り込もうと、何度も厩舎にやって来る彼が嫌いだ。
会いたくない、関わり合いたくない。さっさと消えてしまって欲しい。
何度もそう思うのに、目の前に現れた彼が嫌いだ。
やっとその呪縛から逃れられる。
「ソフィちゃん、この厩舎の馬達も放つ」
騒動の中おじちゃんが現れた。
コクンとうなずいて、ルドルフの背中に乗った。
姿勢を低くしてできるだけ人に見えないようにした。
「おじちゃん、ありがとう」
おじちゃんは姿勢を正すと頭を深々と下げた。
「ソフィア王女。どうぞ良い旅を」
短い言葉の中に、とても温かい気持ちがあふれていた。
「うん、行ってきます」
ルドルフは賢い。わたしを落とさないように走り出す。
ルドルフはわたしの意思を正確に捉え、裏門へと走った。
そばには何十頭の馬たちが、わたしを守るように裏門へとついてきた。
「うわぁ」
「馬達が逃げ出した」
なんとか馬達を外に出さないようにしようとしている使用人や騎士達。
でもみんな興奮して言うことを聞こうとしない。
おじちゃん達が後で大変になるのではと心配したけど、彼らは馬の世話のプロ。
「心配するな、俺たちは分かってて馬を城から出すんだ。外で捕まえるようにみんな準備はしている」
おじちゃん達の言葉通り城から出たら、数人のおじちゃんが馬に乗り、出て来る馬達について来た。
「おいこっちだ」
「みんなこっちに」
おじちゃんの言葉と笛の音で、先導するおじちゃんの馬について行き始めた。
ルドルフだけが別の道へと走り続けた。
そう、わたしとルドルフは王都を離れ、ルドーのところへ一旦向かうつもりだ。
わたしが城に連れて来られる前に置いたままになった荷物の行方。
ルドーなら回収してくれているはず。そう願いながらカインの街へ向かった。
この国を出るためにはまずお金が必要。小袋に入ったお金をもらったけど足りないだろう。
出国許可証を取るだけでかなりのお金も必要になる。
「ルドルフ、ルドーに会いに行こう」
「逃げたぞ!」
「捕まえろ!」
騒々しい声が聞こえ出した。
「ルドルフ、準備は大丈夫?」
ルドルフがわたしの体に顔を擦り寄せてきた。
ブライアンの方を向くと、彼がわたし達をじっと見ていた。
ここに来てからはルドルフと同じくらいの時間世話をしてきたブライアン。
彼にも懐かれ、ネルヴァン様の馬とは言え、可愛がってきた。
「今までありがとう。もう会えないけど元気でいてね」
ブライアンのそばに行き彼の頭を撫でた。
彼もまたわたしの体に頭を擦り寄せてきた。
彼の体を抱きしめ「元気でね」と挨拶をした。
前世では彼のことは知ってはいたけれど、そばに寄ることもなかったし、こうして触れ合うなんて考えたこともなかった。
今では嫌いでしかないネルヴァン様の馬だけど、前世ではブライアンの美しさに何度も目を奪われた。
金属光沢のある美しい毛並みと、シルクのような輝きを持つブライアン。
無駄のない筋肉で構成された身体。
そして優雅で力強い躍動感、風になびくたてがみや、知性を感じさせる優しい目、全てにおいてブライアンに叶う馬はいない。
わたしのルドルフはもちろん素敵な馬だ。漆黒の馬体や艶やかなたてがみを持つ美しい外見、そして圧倒的な速さと強さを誇る名馬でもある。
黄金の馬と漆黒の馬。
二頭の美しさは全くの真逆。
性格も違う。
ルドルフは賢く、そして少し頑固で好奇心旺盛だ。
ブライアンは、生真面目で警戒心が強い。慣れてしまえばとても甘えん坊になる。
ブライアンの寂しそうな瞳に胸がズキンと痛くなった。
もう二度と会うことはない。
「ブライアン、貴方のことは大好きだったわ。ご主人様は……とても嫌いだったけど」
そう言いながらつい笑ってしまった。
やっと言葉にできたこと。
そう、わたしは「彼」に囚われている。
前世も今世も。嫌いなのに、大嫌いなのに、裏切られたのに、「会いたい」と思ってしまう。
別に愛してなんかいないはずなのに、前世の気持ちが今もなお押し寄せてきてしまう。
振り払っても。だからこそ嫌いだ。
わたしの心の隙間に入り込もうと、何度も厩舎にやって来る彼が嫌いだ。
会いたくない、関わり合いたくない。さっさと消えてしまって欲しい。
何度もそう思うのに、目の前に現れた彼が嫌いだ。
やっとその呪縛から逃れられる。
「ソフィちゃん、この厩舎の馬達も放つ」
騒動の中おじちゃんが現れた。
コクンとうなずいて、ルドルフの背中に乗った。
姿勢を低くしてできるだけ人に見えないようにした。
「おじちゃん、ありがとう」
おじちゃんは姿勢を正すと頭を深々と下げた。
「ソフィア王女。どうぞ良い旅を」
短い言葉の中に、とても温かい気持ちがあふれていた。
「うん、行ってきます」
ルドルフは賢い。わたしを落とさないように走り出す。
ルドルフはわたしの意思を正確に捉え、裏門へと走った。
そばには何十頭の馬たちが、わたしを守るように裏門へとついてきた。
「うわぁ」
「馬達が逃げ出した」
なんとか馬達を外に出さないようにしようとしている使用人や騎士達。
でもみんな興奮して言うことを聞こうとしない。
おじちゃん達が後で大変になるのではと心配したけど、彼らは馬の世話のプロ。
「心配するな、俺たちは分かってて馬を城から出すんだ。外で捕まえるようにみんな準備はしている」
おじちゃん達の言葉通り城から出たら、数人のおじちゃんが馬に乗り、出て来る馬達について来た。
「おいこっちだ」
「みんなこっちに」
おじちゃんの言葉と笛の音で、先導するおじちゃんの馬について行き始めた。
ルドルフだけが別の道へと走り続けた。
そう、わたしとルドルフは王都を離れ、ルドーのところへ一旦向かうつもりだ。
わたしが城に連れて来られる前に置いたままになった荷物の行方。
ルドーなら回収してくれているはず。そう願いながらカインの街へ向かった。
この国を出るためにはまずお金が必要。小袋に入ったお金をもらったけど足りないだろう。
出国許可証を取るだけでかなりのお金も必要になる。
「ルドルフ、ルドーに会いに行こう」
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