【完結】氷の騎士は忘れられた愛を取り戻したい〜愛しています〜令嬢はそれぞれの愛に気づかない

たろ

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25話 記憶が戻らなくても。

セルジオ様は何故かいつもわたしに優しい。

氷の騎士と呼ばれていたセルジオ様。笑うこともなく、少し近寄り難いと言われている人。
なのに女性達からかなりの人気がある。

聞くところによるとかなりの婚約の打診がきているのに全て断っているらしい。
あんなカッコいいのにどうして婚約者をつくらないのかしら?不思議。

だからマリーナ様に聞いてみたら

「セルジオ様はずっと一人の人を愛しているの」と教えてくれた。

ーーずっと一人の人を愛している……その言葉にズキンときて胸が苦しくなった。
セルジオ様に愛されている人はどんな人なのだろう。やはり彼に似合う大人の綺麗な人なのだろうか。
この領地に住んでいる人なのかしら?

つい綺麗な女性を見ると気になって探してしまう。セルジオ様の愛している女性。

名前もどんな人かも知らないのに探してもわかるわけがない。

「どうしてセルジオ様のことが気になるのかしら?」
自分に問う、でもよくわからない。

コンコン。

「はい?」

「ジェシカ?ちょっといいかな?」
セルジオ様のことを考えていたら彼が現れたので内心ドキドキしたけど、顔に出さずに扉を開けた。

「セルジオ様どうしたました?」

「これ、どうぞ」

なんだろう?

「ふふ、もしかしてこの前言っていたケーキですか?」

「そう、仕事で隣町へ行ったんだ。ジェシカが人気のお店があると言ってたからついでに買って来た」

「嬉しいです、では一緒にお茶をしましょう」

セルジオ様はわたしがふとした噂話を覚えていてくれて、近くに行ったからとよく色々なものを買って来てくれる。

綺麗なお花だったり食べ物だったり、アクセサリーだったり。
わたしが貰っても困らない程度のものを贈ってくれるのでわたしも気にせず受け取ることができる。

天気がいいのでジルも連れて中庭に出て、セルジオ様から頂いたケーキを一緒に食べた。

「ジェシカは本当にジルが好きなんだな?」

「ジル?もちろんです、ジルはわたしの護衛騎士なんです」

「ジルが?」

「はい、この前散歩している時も知らない人が話しかけてこようと近づいてきて、ジルが吠えて守ってくれたんです」

ジルが嬉しそうに尻尾をフリフリして可愛くてわたしは思わずジルの頭を撫でた。

「そうか、ジルは守ってくれるんだな」

「はい」

ーーうん?よくわからない、なんだろう?この感じは……何か大切なことを忘れている気がするのに。

「今度騎士団の剣技大会があるんだ、よかったらマリーナ達と見に来てほしい」

「剣技大会?」

「そう、一応俺もエントリーしたから、気が向いたら見に来てよ」

「セルジオ様の騎士姿を見るのは初めてですね?楽しみにしています」

セルジオ様は少し困った顔をした。たぶん……記憶をなくす前は騎士姿を見たことがあるのだろう。

マリーナ様を誘って剣技大会に行くと、観客の多さに驚いた。

「マリーナ様、人が多すぎない?」

「人気のある騎士に会いに来ているのよ、特に婚約者のいない人や恋人のいない騎士は物凄い人気なの」

「…そうなのね」

「セルジオ様はその中では一番人気なのよ」

「セルジオ様?」

「浮いた噂はないし女性にだらしなくない。剣も上手だし何より顔がいいでしょう?伯爵令息嫡男だしね、みんな狙っているのよ」

なんだかモヤモヤする。
周りの人たちがセルジオ様に熱い視線で見ているのが確かにわかる。

わたしはマリーナ様とティムと三人で椅子に座って大会を見学していた。

まだセルジオ様の順番が回ってくる前だったのか、セルジオ様が私たちの姿を見つけて近寄って来た。

「「「「キャー」」」」
周りの悲鳴のような声に驚き思わず見回しているとセルジオ様は耳にすら入っていないようにその叫び声を無視して淡々とこちらに向かって来た。

「ジェシカ!」
わたしと目が合うとさっきまでの淡々とした無表情な顔は消えていつもの優しい顔に戻っていた。
ーーよかった、一瞬怖くてどうしようかと思ったわ

「兄上、俺とマリーナもいるんだけど?」

ティムがセルジオ様に苦笑いをしながら言うと

「知ってる」と感情なく答えた。

「ったく、ジェシカしか見えていないんだから」
ティムはぶつぶつと言っていた。

「??」
わたしがキョトンとしているとマリーナ様がクスクス笑いながら

「セルジオ様は普段笑わないし氷の騎士と言われるほど愛想がないし、犯人を捕まえる時なんてとっても非情だと言われているのよ」

「マリーナ、余計なことは言わないで」

この会場でのセルジオ様は屋敷でいる時とは全く違っていた。

とても近寄りがたい雰囲気を出していたし、マリーナ様と親しげに話している姿は……ちょっと羨ましかった。
わたしには見せない姿だから……セルジオ様が近くにいるといつも心がザワザワとうるさい。ティムといる時はいつも落ち着いているのに………

「ジェシカもうすぐ俺の試合だから勝つから近くで見てて」

「うん、わかったわ」

セルジオ様がそう言うならと近くの席に行くことにした。その場所は身内しか座れない場所らしく、私たち三人が座るとみんながジロジロとこっちを見始めた。
みんながわたしのことを悪く言っているのが耳に入ってきた。

「ジェシカは気にしなくていい、知らん顔して座ってたらいいよ」

ティムがみんなからの視線を遮るようにして座ってくれた。

「だいたいさ、この剣技大会の主催者って君の父親なんだよ?この騎士団を運営しているのだってこの領地だって全てジェシカの父親である従叔父上のものなんだ、それなのにあの令嬢達の態度、どう思う?」
ティムが怒ってくれるのは嬉しいけどあまり気にしていないわたしとしてはどうでもいい。

「ったく、ジェシカ、どうでもいいと思ってるだろう?あいつらかなり酷いこと言ってるのに!少しは怒った方がいいぞ!」

「ふふ、わたしの代わりに怒ってくれるから怒ること出来ないじゃない」

「ほんと、ティムがそんなに怒るの珍しい」
マリーナ様も笑っていた。

「ま、いいや、兄上の試合見ようよ」

「うん、楽しみだわ。わたしセルジオ様の剣捌きを見るのは初めてなの」

「………そうだね」
やはりティムもなんとも言えない顔をしていた。やっぱり以前はセルジオ様の剣捌き見たことがあるのだろうと感じた。

試合が始まった。

相手は3歳年上で実力もセルジオ様よりもかなり上だと言われているらしい。

やはりセルジオ様が押されていた。それでも必死に食らいついて闘う姿にわたしはグッと手を握りしめて見ていた。


『セルジオは騎士様になるのね?かっこいい!いつかわたしの騎士様になって欲しいわ』

ーーわたしには何も記憶がない。なのにこの言葉はなんだろう?

セルジオ様のことを……「セルジオ?」

「セルジオ!貴方はわたしの騎士様になる約束でしょう?負けないで!」

気がつけばわたしは大きな声でセルジオ様に叫んでいた。

チラッとわたしを見たセルジオ様は勢いを取り戻して相手を倒していた。

「ティム、マリーナ!勝ったわ!」

わたしが二人に向かって叫ぶと「マリーナ?様がなくなってる!」

「え?ごめんなさい、無意識だったの。怒らないで嫌な気持ちにさせてしまった?」
わたしが急いで謝ると
「違うの!嬉しいの!以前はマリーナと呼んでくれていたから!またマリーナと呼んでくれることが嬉しいの」

「そ、そうだったの?」





◆ ◆ ◆

【え?嫌です、我慢なんて致しません!わたしの好きにさせてもらいます】

今日から新しいお話が始まります。
よければ読んでいただけたら嬉しいです!
よろしくお願いいたします。






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