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2話 シェリーナは。
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お父様とお母様が亡くなった。
お二人が領地に視察に行かれた夕方、大雨の中馬車を走らせて帰る途中だった。
本当なら泊まってくる予定だった。でもわたしの体調が悪く寝込んでいたのでお二人は心配して早めに帰ろうと馬車を無理やり走らせたらしい。
そして転落事故。
「えっ?」
ベッドの中でゴホッゴホッと咳をしながら2人の悲報を聞いた。
頭がボーッとしていたから夢なのだと思った。だって朝二人はわたしの顔に手でそっと触れてから「待っていてね」「ゆっくりお眠り。早く治るといいんだが」と言葉をかけて出かけたのに。
お父様とお母様は亡くなったのに一緒になっていた執事は一命を取り留めた。そしてその時のことを後に執事が話して話して、わたしも幼いながらに何度も聞かされた。
わたしは『人殺し』なんだと。
まだ5歳だったわたしにはその言葉の意味が初めはよく分からなかった。
お二人がいなくなったという現実に向き合うことになったのは、お父様の弟家族に引き取られてからだった。
『お前のせいで兄上は亡くなったんだ』
『疫病神とはお前のことだ』
『人殺し』
何故そんなことを言われるのか初めはわからなかった。ただ、ただ、お父様に会いたい、お母様に会いたい、悲しくて寂しくて、泣き続けた。
たくさんのぬいぐるみやお人形、積み木や絵本、ドレスに可愛いリボン、大好きな物に囲まれて生活していたのに、ここはとても暗くて寂しい部屋だった。
質のいいベッドから硬くて寝心地の悪いベッドになり、真冬に毛布一枚で丸まって眠ることになった。
わたしの大好きだったものは叔父様の娘のものになった。
叔父様にとられないように唯一隠したペンダント。わたしはお母様の形見だけはベッドの下に隠して過ごした。
叔父様の家で過ごしたのは僅か一年だけなのに、まともな食事は与えてもらえず部屋から出してもらうこともなかった。
お世話をしてくれるメイドも一日一回の食事をトレーで運んでポンっとテーブルに置くと『まだ生きてるんだ』と吐き捨てるように言って出ていく。
ーーわたしはお父様とお母様を殺した娘。生きていく価値すらない。
5歳のわたしは叔父様達家族、メイドや使用人たちに、何故のうのうと生きているんだと蔑まれて過ごした。
わたしは生きている価値はない。
もうこのまま死んでもいいや。
いつも空腹で力が入らない。たまにおじさんが部屋にやってくるとわたしに『この厄介者!早く死ね』と言いながら鞭を打たれる。
生きる気力すら無くなった。
暗い部屋でぐったりと横たわり、虚な目でいつも小さなくもった窓ガラスから青い空をただ見つめていた。
そんな中、突然………
「シェリーナ!迎えにきたわ」
お母様と仲の良かった優しいおば様が、あの暗い部屋からわたしを救い出してくれた。
ケイン様のお母様、テリーヌ公爵夫人だった。
お二人が領地に視察に行かれた夕方、大雨の中馬車を走らせて帰る途中だった。
本当なら泊まってくる予定だった。でもわたしの体調が悪く寝込んでいたのでお二人は心配して早めに帰ろうと馬車を無理やり走らせたらしい。
そして転落事故。
「えっ?」
ベッドの中でゴホッゴホッと咳をしながら2人の悲報を聞いた。
頭がボーッとしていたから夢なのだと思った。だって朝二人はわたしの顔に手でそっと触れてから「待っていてね」「ゆっくりお眠り。早く治るといいんだが」と言葉をかけて出かけたのに。
お父様とお母様は亡くなったのに一緒になっていた執事は一命を取り留めた。そしてその時のことを後に執事が話して話して、わたしも幼いながらに何度も聞かされた。
わたしは『人殺し』なんだと。
まだ5歳だったわたしにはその言葉の意味が初めはよく分からなかった。
お二人がいなくなったという現実に向き合うことになったのは、お父様の弟家族に引き取られてからだった。
『お前のせいで兄上は亡くなったんだ』
『疫病神とはお前のことだ』
『人殺し』
何故そんなことを言われるのか初めはわからなかった。ただ、ただ、お父様に会いたい、お母様に会いたい、悲しくて寂しくて、泣き続けた。
たくさんのぬいぐるみやお人形、積み木や絵本、ドレスに可愛いリボン、大好きな物に囲まれて生活していたのに、ここはとても暗くて寂しい部屋だった。
質のいいベッドから硬くて寝心地の悪いベッドになり、真冬に毛布一枚で丸まって眠ることになった。
わたしの大好きだったものは叔父様の娘のものになった。
叔父様にとられないように唯一隠したペンダント。わたしはお母様の形見だけはベッドの下に隠して過ごした。
叔父様の家で過ごしたのは僅か一年だけなのに、まともな食事は与えてもらえず部屋から出してもらうこともなかった。
お世話をしてくれるメイドも一日一回の食事をトレーで運んでポンっとテーブルに置くと『まだ生きてるんだ』と吐き捨てるように言って出ていく。
ーーわたしはお父様とお母様を殺した娘。生きていく価値すらない。
5歳のわたしは叔父様達家族、メイドや使用人たちに、何故のうのうと生きているんだと蔑まれて過ごした。
わたしは生きている価値はない。
もうこのまま死んでもいいや。
いつも空腹で力が入らない。たまにおじさんが部屋にやってくるとわたしに『この厄介者!早く死ね』と言いながら鞭を打たれる。
生きる気力すら無くなった。
暗い部屋でぐったりと横たわり、虚な目でいつも小さなくもった窓ガラスから青い空をただ見つめていた。
そんな中、突然………
「シェリーナ!迎えにきたわ」
お母様と仲の良かった優しいおば様が、あの暗い部屋からわたしを救い出してくれた。
ケイン様のお母様、テリーヌ公爵夫人だった。
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